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川崎の障害者支援施設に赴任してあっという間に15年以上になりました.れいんぼう川崎は,生活施設(生活介護事業と施設入所支援)をベースに,総合相談・短期入所・通所(自立訓練事業)・訪問(川崎市単独事業=在宅リハビリテーション事業)を行う多機能型の拠点です.1996年の開設当時,全国的にもかなり珍しい施設でした.福祉職とリハビリテーション専門職がチームを組み,リハビリテーション医の管理のもと,障害者の生活上の目標の実現のために協働しています.出前研修やパラスポーツ普及活動なども行っています.
支援はリハビリテーションとケアと医療の技術を総動員して行います.支援チームの中心は福祉職です.障害のある人とともに目標を設定し,計画を共有し,進捗状況を調整する前面に立つのは福祉職で,医療職はそれを側面から支えます.これは,生活期のリハビリテーションを進めるにあたり効果的な構造である,とひしひしと感じています.病院の中では患者として治してもらうという心持ちであった方が,自分の人生をどうしていくのか自分で考えるという生活者としての心持ちに至っていくときに,福祉職は大いに力を発揮します.人生の途中で大きな障害を負ったとき,機能や心身構造,失ったものに目をうばわれるのは当然で,他者からみれば非現実的ともとれる目標にとらわれる姿はよくみられます.そこに寄り添い,葛藤を聞き取り,強みや新しい生き方に目を向けるきっかけとなる活動を提示する引き出しを福祉職は多くもっています.治療者という役割を期待させないところが彼らの強みです.そして,福祉職は訓練室での機能や能力の向上を生活上のどこに生かすのか,についてシビアで現実的な目を向けています.医療職は予後を見極めるとともに,新しい生き方に照らして何を達成すべきかきっちりと整理し,そこに注力して専門技術を提供します.福祉職と医療職がフラットな関係で,お互いの専門性を尊重したきめ細かい連携をとることが非常に重要と考えています.
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