Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「ボヘミアン・ラプソディ」—クイーンなんて知らないよ,でも,風体・人種・性指向・エイズを超える音楽芸術
二通 諭
1
1札幌学院大学人文学部人間科学科
pp.287
発行日 2019年3月10日
Published Date 2019/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552201592
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1951年2月生まれの筆者は,ご多分に漏れずビートルズとボブ・ディランと共にあった世代の一人であり,その殻の中で,時にはその殻を美化,肥大化させながら人生をやり過ごしてきた.したがって,1970年代半ばから世に出てきたクイーンを聴く必要もなかったし,その存在を知ろうともしなかった.同年代の居酒屋音楽談義でクイーンが俎上に上ることもなかった.このような筆者,あるいは筆者の世代の一部が抱えていたと思われる浅薄さを「ボヘミアン・ラプソディ」(監督/ブライアン・シンガー)は,完膚なきまで叩き潰す.
本作は,イギリスが生んだ世界的ロックバンド「クイーン」のボーカルだったフレディ・マーキュリー(1946〜1991)の半生にスポットを当てた伝記映画としての性格をもつ.それはとりもなおさず,クイーンのデビューアルバム発売(1973)までのエピソードからアフリカの難民飢餓救済を目的とするチャリティコンサート「ライブエイド」(1985)に至るまでの生成,発展,対立・葛藤,止揚の過程を描くことになる.
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