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「初心者が最初に読んで研究全体の流れやめざすべきもの,各段階で必要となる考え方や進め方など研究(テーマ/プロジェクト/論文/者)の育て方が1冊でわかる本」(序)である.研究方法や論文の書き方だけでは研究を実施できない.試行錯誤や途方に暮れた日々があり,また論文がアクセプトされたときの喜びがある.このような経験や感情を含めて研究のプロセスであり,よりよい研究にするために手間をかけ力を尽くして育む,まさに「研究の育て方」である.
本書は,学生目線で学生に語り掛けるように書かれている.学生がつまずいたり陥りやすい落とし穴について取りあげ,具体的な対処法を提示する.知りたいことについてすぐ答えを求めたい今どきの学生のために,研究プロセスにおける進め方や考え方について,あの手この手で理解できるように工夫されている.文章の表現の仕方を例示したり,コラム,図表を多用したり,研究の各段階でやることの落ちがないようにチェックリストで確認できるようにしている.分析の視点について理解を促すために,「串だんご」(p162),「駅のプラットフォームの写真」(p174)などを例示し,「なるほど」と納得させる.本の表の見返しには,「目的」「対象と方法」など各研究段階が書かれているページが,また裏の見返しには各チェックリストの書かれているページが示されており,すぐに目的のページにたどり着くことができる.なかでも,「優れた文献だけを20〜50本選んで引用する」(p74),「目的が3つあれば結論も3つ」(p74),「考察分量の目安は,1:3〜4:1〜2程度」(p177),「5〜7回は推敲する」(p190)と数字で目安を断定した記載は小気味よいほどであり,学生の心強い目安となり安心感を与えてくれることだろう.これは卓越した研究実績と豊富な学生指導の経験をもつ著者ならではのエビデンスに基づくものであり,どれも納得のいく数字である.これらはまさに「見える化」である.
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