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症例報告
聴覚言語性記憶を活用した学習障害児童に対する漢字書字指導が学習過程および情報処理過程において果たす役割—単一事例実験計画法に基づいた実験的検証から
The effect in learning and information process of Kanji writing instruction using auditory language memory for a child with learning disability: investigation with single case experimental design
多田 智絵
1
,
川崎 聡大
2
Tomoe Tada
1
,
Akihiro Kawasaki
2
1福井市酒生小学校
2東北大学大学院教育学研究科
1Fukui Municipal Sakoh Elementary School
2Graduate School of Education, Tohoku University
キーワード:
学習障害
,
漢字書字困難
,
機能的再編成
,
聴覚言語性記憶
Keyword:
学習障害
,
漢字書字困難
,
機能的再編成
,
聴覚言語性記憶
pp.265-270
発行日 2019年3月10日
Published Date 2019/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552201586
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要旨 【問題と目的】漢字書字指導における指導方法の違いによって学習過程や文字産出過程に及ぼす影響の違いを,実際の症例を通じて検討した.特に,「聴覚法」など聴覚言語性の記憶力をバイパスとする機能的再編成が,漢字を習得し運用するうえでどのように影響しているか検討を行った.【対象】限局性学習症に該当する診断既往があり「読み書き困難」を主訴とする小学校通常級4年在籍男児(指導開始時).【方法】神経心理学的評価を実施し書字障害の背景要因を検討した後,指導1では「文字パズル指導」と「聴覚法」を採用し指導方法の順序が結果に与える影響を検証した.指導2では文字構成要素を音声言語化して学習する「聴覚法」の手続きにおいて音声言語化する程度(全体・部分)が結果に及ぼす影響を検証した.指導文字は画数を統制し音読可能であるがベースラインで自発書字困難であった文字で各群を構成した.【結果・考察】指導1ではパズル指導を先行させた場合に比して聴覚法先行指導で指導効果の維持が高く,指導2では指導直後の効果に差は認められなかったが指導効果の維持は部分聴覚法が保たれていた.既知漢字の想起効率には対象となる文字イメージの強さ「depth of the encoding」(エンコーディングの深さ)が影響し,聴覚法での学習が文字構成要素の想起方略として機能することが示された.
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