総合リハビリテーション 38巻11号 (2010年11月)

特集 BMIとリハビリテーション

今月のハイライト
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 昨年の日本リハビリテーション医学会学術集会でも大きく取り上げられたbrain-machine interface(BMI)は,感覚や運動に関わる脳機能を機械と融合させ,障害を低減させるためのインターフェース技術の総称で,近年,各方面から注目が寄せられている.この臨床応用が実現すれば,脳卒中,脊髄損傷をはじめとする身体機能障害に対して大きな福音をもたらすことは間違いなく,リハビリテーションの分野からも,その将来が大いに期待されている.本特集では,リハビリテーション関連の専門職として知っておくべきBMIの知識を整理する意味で,現状に関する総論的な解説,実際の脳機能記録・判読の方法,その臨床応用の試みについて,BMIの第一線で活躍されている方々に執筆をお願いした.

現在と未来 正門 由久 , 牛場 潤一
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はじめに

 Brain machine interface(BMI)とは,脳活動を読みとり,そこから得られた情報に基づいて機器を操作する技術の総称である.医療分野では,中枢神経疾患,神経筋疾患,外傷などにより失われた機能を援助することや回復させることが期待されている.

 BMIという呼称は脳と機器が連動するシステム全般を指しており,脳に対する作用の仕方から,機械から脳へ情報を送る「感覚入力型BMI」,脳内の情報処理過程に機械が関与する「介在型BMI」,脳から機械へ情報を送る「運動出力型BMI」に分類できる.このうち,感覚入力型BMIおよび介在型BMIは,すでに臨床応用が進んでいる.聴覚障害者の蝸牛に電極を挿入し,マイクロフォンでの集音結果に応じて聴覚神経を電気刺激することで聴覚を再建する人工内耳システム1)は,感覚入力型BMIと言える.また,パーキンソン病やジストニアでは,不随意運動を治療する方法として,視床下核や淡蒼球への脳深部刺激療法(deep brain stimulation;DBS)が行われており2),感覚運動系の情報処理過程を調節する一種の介在型BMIと言える.

 これに対して運動出力型BMIは,いまだ臨床応用を果たすには至ってはいないものの,近年,その研究が進んでいる.本稿では,運動出力型BMIを中心に,現在用いられている方法とその臨床応用を紹介する.さらに,運動出力型BMIのリハビリテーションにおける試みと展望を紹介する.

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はじめに

 近年の非侵襲脳計測技術の進歩は,ヒトの脳計測信号からさまざまな情報を解読することを可能にした.脳活動から,外界の刺激,被験者の認知や運動に関する情報を読みだすことを神経デコーディングという.現在,神経デコーディングは,脳の情報表現を探るためのツールとして神経科学の分野で広く使用されており,脳活動解析のスタンダードとしての地位を確立しつつある.また,身体を介さずに脳から直接情報を読みだし,機械やコンピュータを動かすブレイン・マシン・インターフェイス(brain-machine interface;BMI)あるいはブレイン・コンピュータ・インターフェイス(brain-computer interface;BCI)の実践的利用のために,今後の発展が期待されている技術でもある1)

 本稿では,まず非侵襲脳計測法について概観し,次に神経デコーディングの概念を説明する.その後,機能的磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging;fMRI)を用いた神経デコーディングに関するいくつかの研究例を紹介し,最後にfMRIデコーディング研究における問題点と今後の展望について述べる.

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はじめに

 Brain-machine interface(BMI)は,脳活動によって機械を操作する(あるいは機械から脳に情報を送る)身体代替技術のことを指す.古くは1971年に米国でBMIの研究が始まり,その原型が示された1).2000年代に入るとサルでのロボットアーム操作2)や脊髄損傷患者でのカーソル操作3)などの実証実験が相次いで発表され,BMIは工学や医学などを専門とする世界中の研究者を巻き込んだ一大研究フレームとして勃興期を迎えつつある.脳がどのような原理で情報を処理しているのか,という一端が脳科学の発展とともに明らかにされ,その応用技術としてBMIが隆盛しつつあるとの見方もできる.その一方で,脳と機械を直接つなぐ発想そのものは長年にわたって小説や映画におけるサイエンスフィクション(SF)のなかで繰り返し使われてきたことが,BMIの着想の根底にあると思われる.

 次項以降では,SFにみられるBMIの例を挙げたうえで,筆者らが開発してきた仮想現実内のアバターを操作するBMIの概要を説明し,慢性期筋ジストロフィー患者におけるBMIの長期利用について報告をしたい.

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はじめに

 近年,筋萎縮性側索硬化症(ALS),脊髄損傷や脳卒中後の運動麻痺をはじめとする脳機能障害患者に対して,brain-machine interface(BMI)技術を用いて機能補塡を図ろうとする研究が盛んになりつつある1).BMIとは脳信号を計測してこれをコンピュータで解読(デコーディング)して,脳信号の意味するところ,すなわち脳機能の内容を推定し,外部機器を思い通りに操作することにより,失われた神経機能を代行させる技術であり(図1),brain-computer interface(BCI)とも呼ばれる2).神経移植や神経再生による神経機能回復が比較的長期的展望にたった将来技術であるのに対して,BMIを用いた機能再建はより短期で実現可能なアプローチとして期待されている.

 BMIには頭蓋内に電極などを留置して脳信号計測を行う侵襲型BMIと,頭皮脳波などを用いて体外から非侵襲的に脳信号計測を行う非侵襲型BMIがある.侵襲型BMIは,さらに脳実質内への刺入電極を用いる高侵襲型BMIと,脳の表面においた電極から直接脳波(皮質脳波)を計測する低侵襲型BMIに分けられる.本稿では,この侵襲型BMIについて概説し,次いで主にわれわれが現在研究開発している皮質脳波を用いた低侵襲型BMIについて紹介する.また,最後に将来的な臨床応用について展望する.

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はじめに

 ブレイン・マシン・インターフェース(brain-machine interface;BMI)は,脳と機械を連動させるシステム全般のことを言い,さまざまな脳活動を利用したBMIが試みられている.BMIをリハビリテーションに応用する研究は,損なわれた機能を代償する「機能代償型BMI」から,機能回復を促通する「機能回復型BMI」へと広がってきている.

 本稿では,非侵襲型BMIのリハビリテーションへの応用について概説する.

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 少々大袈裟なタイトルですが,世界一の長寿国である日本では,今後さらに高齢化社会の流れが加速していきます.リハビリテーション医療は,国民に不利益が生じないように研究・教育も含めて今後さらに躍進していかなければなりません.

 リハビリテーション医療の発展に関して私が気にかけていることが二つあります.一つは,リハビリテーション以外の他科および医師以外の他職種あるいは医療以外の他分野とのさらなる連携です.それぞれの職種で考えがありなかなか難しいことですが,広い領域にわたるリハビリテーション科だからこそできることであり,せねばならないことであると思います.もう一つはリハビリテーション科医を増やすことです.現在,私は大学教員として医学生教育に関わっていますが,担当するクリニカルクラークシップのあとには独自のアンケートを行って医学生の考えを聞いています.アンケートの結果をみると,リハビリテーション医学に興味をもっている学生は少なくないというのが印象です.「患者のADL,QOLを向上させるためにリハビリテーションの果たす役割は大きいということを改めて認識した」,「たくさんの患者の社会復帰を支えているのはリハビリテーションなのだと改めて感じた」,「リハビリテーション科医にはあらゆる知識が必要で大変だと思うが,反面やりがいがあると思った」,「病気だけでなく生活にも踏み込むことで,もっと患者のためになれると気付いた」などの意見がみられました.もちろん,「リハビリテーション科には力がない」,「日本では十分にリハビリテーションが啓蒙されていない」などの意見もありますが,前者のような意見をもつ人をぜひリハビリテーション科医に育てたいと思っています.卒後の臨床研修制度など,教育の環境は非常に厳しいのが現実です.しかし,そこで理解していただきたいことは,医学教育を行う場は大学だけではなくなったということです.臨床研修などの卒後教育だけでなく,卒前教育でも一般病院が関わるようになってきています.市中病院のリハビリテーション科が大学のリハビリテーション科と関連していない場合や,リハビリテーション科以外の診療科での研修でリハビリテーション科医と遭遇する場合がありますが,今後は市中病院のリハビリテーション科医と大学のリハビリテーション科医が連携して情報や教育プログラムを共有する必要があります.さらに,出身大学と出身地あるいは卒後の勤務地が違う場合などは大学間でも同様に連携していく必要があるでしょう.

講座 ソーシャルワークの理論と実践・3

チームワーク 副田 あけみ
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はじめに

 地域包括支援センターが多機関・多職種とチームを組み,チームワークを発揮するのは容易なことではない.それはなぜか,どうすればよいのであろうか.本稿ではまず,地域包括支援センターが多機関・多職種との協働を必要とする典型事例を説明したうえで,なぜ地域包括支援センターが多機関・多職種チームを組むことが難しいのかについて,他のタイプのチームと比較して考察する.そして,チームを運営するうえでの望ましい基本方針とケースカンファランスにおいて試す価値のある技法を紹介し,チームワークのあり方について述べる.地域包括支援センターはソーシャルワークを実施する機関であるから,その職員に期待されることは,ソーシャルワーカーの役割であると言える.

実践講座 臨床評価のピットフォール・3

脳卒中機能障害 補永 薫
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はじめに

 脳卒中は多彩な徴候を呈し,その障害像は症例によって大きく異なる.そこに患者の社会的背景が加わると,同じ障害像を呈する患者はいないと言ってもよい.リハビリテーションは,患者の障害像に合わせて行われるため,障害像を正確に把握することはリハビリテーションアプローチの第一歩となる.しかし,一概に臨床評価といっても脳卒中後遺症は無数にあるため,症状により選択される評価法は異なる.

 日常の診療や訓練において多彩な症状を漫然と評価することにより,いくつかの徴候を混同したり,代償動作などにとらわれて障害の本質を見抜けないといったピットフォールに陥ることがある.また,適切な評価尺度を用いなかったため患者の全体像を誤って把握してしまうこともある.こういった問題点は適切なリハビリテーションアプローチの選択を阻害するばかりか,転帰先や環境設定を検討するうえでも問題となる.

 本稿では,脳卒中機能障害に対する評価スケールの特徴や陥りやすいピットフォールに関して概説する.

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要旨:本研究では,日本の地域在住高齢女性における国際版転倒関連自己効力感尺度(FES-I)の信頼性と妥当性を検証した.対象は地域在住高齢女性77名とし,翻訳手順に従って日本語に翻訳したFES-Iを配布回収法にて調査した.ただし,再現性を検討するため,18名の対象者に関しては,1週間の間隔をあけ2度FES-Iを調査した.さらに,握力,5m歩行時間,転倒歴に関しても調査を行った.結果,ICCは0.7908,Cronbachのαは0.9489であり,再現性および内的整合性は良好であった.因子分析では2因子が抽出され,原著のFES-Iと同様の因子構造が確認された.さらに,FES-I合計得点と握力や5m歩行時間との間には有意な相関が認められ,転倒に関連する尺度としての妥当性を示す結果であると考えられた.以上の結果より,日本語版FES-Iの高齢女性における尺度としての信頼性と基準妥当性を確認することができた.

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要旨:本研究の目的は,自宅で肺炎を発症した患者の自宅復帰に影響を与える要因を明らかにすることである.対象は,自宅で発症し入院となった肺炎患者81例(平均年齢79.3±13.4歳,男性53例,女性28例)であり,このうち自宅復帰群は67例,自宅非復帰群は14例であった.自宅復帰に影響を与える因子の分析のために,各因子について,両群間で比較,検討した.その結果,自宅復帰に影響を与える因子として重症度,誤嚥の有無,退院時のADL能力が挙げられた.さまざまな職種がチームで関わり,日常の口腔ケアや姿勢の調節などを管理し,また重症度や日常生活状況を把握することで,ADL能力の向上や今後の社会資源の活用など,共通の目標を定めて介入を行う必要がある.

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要旨:〔目的〕ADL評価法の構成にはどのような内容が求められているか,を分析することを目的に調査を行った.〔対象・方法〕500施設の作業療法士に,コンジョイント分析によって作成したアンケートを郵送した.〔結果〕有効回答は279通で,身体障害領域施設から204通,老年期障害領域施設から75通であった.全体の結果として,各要因の重要度は「評価時間」,「項目数」,「対象評価範囲」,「評価項目内容」,「対象者の主観の有無」,「資格の有無」,「費用の有無」の順に高かった.部分効用値は重要度が最も高かった「評価時間」で,「11~20分」が大きく正の値,「1~10分」が大きく負の値となった.次に重要度が高かった「項目数」は「11~15個」が大きく正の値,「1~5個」が大きく負の値となった.身体障害・老年期障害領域施設に分けて分析を行ったが,ほぼ同様の結果となった.〔結語〕ADL評価法としてどのような構成内容が好まれているか,がわかった.引き続き詳細な内容を検討していきたいと考える.

連載 高次脳機能障害の評価法

視覚失認 種村 純
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 本稿では,視覚失認の評価をするに当たり,症候の理解,視覚障害および失語症との鑑別,統覚型視覚失認と連合型視覚失認の鑑別,色彩,シンボルおよび相貌認知の検査法,生活障害の評価法について述べたい.

連載 リハビリテーション関連の各種統計

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はじめに

 本稿では,海外の主要リハビリテーション雑誌として,American Journal of Physical Medicine and Rehabilitation(AMJPMR),Archives of Physical Medicine and Rehabilitation(APMR),Disability and Rehabilitation(DR),Journal of Rehabilitation Medicine(JRM)を取り上げ,それらのImpact Factor,ならびに各雑誌のoriginal research articles原著論文における,国際障害分類(ICIDH)の障害単位,疾患単位,研究形態,研究分野,国別掲載数に焦点を当て,その傾向と推移について概観していきたい.

Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション

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 16世紀末に発表されたモンテーニュ(1533~1592年)の『エセー』第2巻第12章(原二郎訳,岩波書店)では,すぐれた精神活動は狂気に結びつきやすいという一種の病跡学的な認識が述べられている.

 この「レーモン・スボンの弁護」と題された章は,『エセー』中の白眉と目されている章だが,そのなかでモンテーニュは,「もっとも過敏な錯乱は,もっとも過敏な知恵から生ずる」,「われわれの精神の稀有な敏活な動きからは,もっとも稀有なもっとも調子はずれの錯乱が生まれる」など,狂気と精神活動の関係を強調して,次のように述べている.「狂った人間の行為を見ていると,狂気というものが,人間の精神のもっとも敏活な働きといかに密接に結びついているかがよくわかる」.

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 「若者支援」は現代のキーワードの一つである.経済的・精神的困難,自立困難,未来社会の担い手としての困難が顕在化しているからだ.若者たちに「昔は若者支援という言葉はなかったのだよ」と言ったとしても,傷口に塩をすりこむようなものだ.自尊心の低下著しい世代に,ネガティブな言葉を浴びせても意味はない.むしろ,良いところを指摘するべきだ.

 「SRサイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム」(監督/入江悠)は,ヒップホップと,その構成要素の一つであるラップを使った若者たちによる自己支援ムービーとして素晴らしい.真摯にもがいている若者たちの姿がそこにある.

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31.当院における摂食機能療法の直接処方開始後の変化について

 倉敷中央病院リハビリテーションセンター

  佐野 怜香・他

 2009年7月より摂食機能療法の直接処方を開始したが,その効用性について検討した.〔直接処方開始までの流れ〕入院時に嚥下スクリーニングを実施し,必要に応じて主治医が処方する.〔対象〕2008年,2009年7月~8月に,当院呼吸器内科でリハビリテーション科処方もしくは直接処方にてST治療を受けた患者である.〔比較項目〕①ST処方数,②ST開始までの期間,③PT/OT開始までの期間,④治療期間,⑤在院日数である.〔結果〕それぞれ①15件(08')→50件(09'),②12.3日→6.3日,③6.6日→6.3日,④19.4日→5.75日,⑤29.7日→19.7日であった〔考察〕直接処方の開始後,リハビリテーションの早期介入,適切なタイミングでの経口摂取開始,訓練日数や在院日数の短縮が可能となった.直接処方の導入が与える影響は大きく,医療者全体の嚥下機能に対する意識の向上にもつながった.〔今後の課題〕早期介入により得た経験をどのように臨床に生かすかを検討する.

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文献抄録

編集後記
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 弊誌では,2008年7月~2010年3月号で「印象に残ったリハビリテーション事例」を連載しました.これは,リハにおける暗黙知などを蓄積するために企画されたものです.連載終了後も再開を望む声が聞かれたため,来年1月号よりリニューアルすることになりました.今回のリニューアルでは,単著で,学術論文形式ではなくエッセイ風にお書きいただくことになっています.これは,同じ症例でも人によって感じることはさまざまであり,自分自身が症例,事例について思うこと,学んだことを紹介いただきたいためです.リニューアルに際しても前回のように多くの方にご執筆いただく予定であり,貴重な経験を共有できるよい企画になるのではないかと思います.また,できれば成功例だけでなく苦い教訓もご紹介したいと考えています.

 なお,今回は読者からの原稿の公募も始めました.詳しくは1036頁の案内をご参照ください.皆様の「印象に残った事例」のご応募をお待ちしております!

基本情報

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総合リハビリテーション
38巻11号 (2010年11月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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