書評
山鳥 重(兵庫県立姫路循環器病センター)著―神経心理学入門
岩田 誠
1
1東京大学・脳研究施設
pp.351
発行日 1985年5月10日
Published Date 1985/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552105377
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入門書として優れた書物に要求される条件としては,一貫した観点から書かれていて,わかりやすいこと,その書かれた時点においてわかっていることと,わかっていないことが明示されていること,そして何よりも,読者をしてその分野に対する限りない興味を抱かせる魅力を持った書物であること,が挙げられよう.畏友 山鳥 重先生の手になる「神経心理学入門」は,正にこれらの条件を充分に満足した絶好の入門書と言える.
神経心理学の対象として最も重要な位置を占める失語,失行,失認の研究は,神経科学の他の領域の研究に比べてその歴史が極めて古いものであるが,比較的近年に至るまで,真の意味での生物学的,科学的なアプローチがなされて来なかった.その故をもって,神経心理学は,その難解なことでよく知られ,いざこの分野の勉強を始めようと志す人々をひるませ,たじろがせるに充分な,複雑きわまりない用語と,容易に理解しえない思弁的な理論という他の神経科学とは異質な特性を持っていた.
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