小児科診療 87巻11号 (2024年11月発行)

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特集　遺伝学的検査Up to Date

序文古庄　知己 87巻11号 , 2024年11月 , pp.1475-1475

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　最近，小児科の日常診療のなかで，「遺伝学的検査」，「遺伝カウンセリング」といった「遺伝」にかかわる言葉が聞かれるようになっていませんか．新生児集中治療室や慢性疾患フォローアップ外来で見た「あの子」や「この子」のことが目に浮かぶ先生もおられることでしょう．小児領域の遺伝医学・遺伝医療を「小児遺伝」と称します．私は一般小児科研修を終えた後，四半世紀にわたりかかわってまいりました．私が感じる「小児遺伝」の魅力を一言で言えば，遺伝性・先天性疾患のある子どもと家族に長年寄り添うなかで，子どもの成長・発達に驚かされたり，絶望の淵にいた家族が再生する姿を間近で見られたりすることです．実は普通の，けれど究極の小児科診療といえるかもしれません．

Ⅰ．遺伝学的検査の基本を学ぼう！

染色体検査（G分染法，FISH法）の基本を学ぼう！河村　理恵 87巻11号 , 2024年11月 , pp.1479-1487

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SUMMARY

▷染色体検査は，遺伝性疾患の診断や研究において不可欠なツールである．

▷G分染法は染色体全体の構造を評価するのに適しており，FISH法は特定の領域の検出にすぐれている．

▷G分染法とFISH法の特性を理解し，適切に使い分けることで，正確な遺伝学的評価が可能となる．

マイクロアレイ染色体検査の基本を学ぼう！山本　圭子 , 山本　俊至 87巻11号 , 2024年11月 , pp.1489-1495

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SUMMARY

▷マイクロアレイ染色体検査は染色体ゲノムのコピー数の変化を網羅的に評価する検査である．

▷日本で保険収載されたマイクロアレイ染色体検査のプラットフォームはCGHとLOH検出が組み合わされたハイブリッド版であり，染色体のコピー数変化だけではなく，LOH領域も同時に検出できるすぐれたプラットフォームである．

▷マイクロアレイ染色体検査では構造異常を同定できないなどの限界を知っておく必要がある．

MLPA法/Sanger法の基本を学ぼう！竹下　絵里 87巻11号 , 2024年11月 , pp.1497-1504

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SUMMARY

▷Sanger法は微小変異の同定にすぐれる．

▷MLPA法はおもにエクソン欠失，重複の同定に用いられる．

▷疾患ごとにSanger法，MLPA法の優先度は異なる．

▷Sanger法とMLPA法の原理，留意点を把握する必要がある．

次世代シークエンスの基本を学ぼう！三宅　紀子 87巻11号 , 2024年11月 , pp.1505-1511

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SUMMARY

▷新しいシークエンス技術として，ショートリード・シークエンスとロングリード・シークエンスがある．

▷ショートリード・シークエンスを用いた解析には，パネル解析，全エクソーム解析，全ゲノム解析がある．

▷ロングリード・シークエンス技術には，ポリメラーゼ伸長反応をリアルタイムで解読する第3世代と，ナノポアとよばれる構造を通り抜けるときのイオン電流の変化で塩基を解読する第4世代とよばれるものがある．

エピジェネティクス解析の基本を学ぼう！鏡　雅代 87巻11号 , 2024年11月 , pp.1513-1520

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SUMMARY

▷片親性発現するインプリンティング遺伝子は，インプリンティング領域内の親由来特異的にDNAメチル化修飾状態が異なるdifferentially methylated region（DMR）により制御される．

▷DMRのメチル化異常は，インプリンティング遺伝子発現異常を引き起こし，インプリンティング疾患が生じる．

▷インプリンティング疾患の遺伝子診断は，DMRのメチル化解析で行われる．

▷変異解析や構造異常解析では同定できないエピジェネティックな機構で生じるインプリンティング疾患の遺伝子解析法を本稿で紹介する．

バリアントの記載法とACMG/AMPガイドラインを学ぼう！山口　智美 87巻11号 , 2024年11月 , pp.1521-1527

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SUMMARY

▷バリアント表記はHGVS Nomenclatureに基づく．

▷バリアントの評価にはACMG/AMPガイドライン（2015：ClinGen SVI WG推奨事項）が使用される．

▷臨床現場での実践に役立つバリアント評価法として，OMIM^®，gnomAD，ClinVarがある．

Ⅱ．遺伝学的検査の応用法を知ろう！

マイクロアレイ染色体検査の運用法を知ろう！清水　健司 87巻11号 , 2024年11月 , pp.1529-1536

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SUMMARY

▷網羅性と解像度が担保された保険収載マイクロアレイ染色体検査は，検査の特性と留意点の理解が重要である．

▷コピー数バリアント（CNV）の病原性解釈は，解釈ガイドラインやゲノムブラウザを有効利用しながら，遺伝学的知見を統合して行う．

▷コピー数不変ホモ接合領域（ROH）は，その発症機序・臨床的影響の推測から必要時は適切な追加解析につなげる．

▷病原性解釈を適切診断評価につなげ，診断後は適切な診療連携と臨床遺伝学的フォローアップにつなげる．

衛生検査所における遺伝学的検査提供の実際を知ろう！大沼　周平 , 小原　收 87巻11号 , 2024年11月 , pp.1537-1542

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SUMMARY

▷実際に遺伝学的検査を依頼される医療機関からはみえにくい，衛生検査所における検査実施体制を紹介する．

▷特に，広く遺伝子関連検査を提供している株式会社ビー・エム・エルと次世代シークエンシングに特化した検査を提供している公益財団法人かずさDNA研究所の活動を，衛生検査所での遺伝学的検査提供体制の例として紹介する．

▷収益性のあまり高くない難病の遺伝学的検査の提供の継続には，検査提供機関，臨床研究機関および医療施設の相互の協力・補完体制の確立が重要な課題である．

先天異常症候群領域における遺伝学的検査の運用法を知ろう！黒田　友紀子 87巻11号 , 2024年11月 , pp.1543-1547

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SUMMARY

▷認識可能な症候群（recognizable syndrome）はG-band検査，FISH検査，疾患パネル解析の適応である．

▷それぞれの遺伝学的検査の特徴と疾患の発症機序をよく理解することが診断に重要である．

▷エクソーム解析は，診断未定の先天異常症候群の遺伝学的診断に有用である．

▷マイクロアレイ染色体検査，次世代シークエンス解析（エクソーム解析，全ゲノム解析）のような網羅的遺伝子解析で解析できない点があることを留意する．

▷原因不明の先天異常症候群で網羅的遺伝子解析を行っても半数は未診断である．

循環器領域における遺伝学的検査の運用法を知ろう！石川　亜貴 87巻11号 , 2024年11月 , pp.1549-1556

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SUMMARY

▷循環器領域の遺伝学的検査は，早期診断や治療介入に有用であり，その多くが保険収載されている．

▷一方で，発症時期や重症度が不確定，浸透率の低さなどの「あいまい性」を持ち合わせている疾患もあり，発症者・未発症者ともに遺伝学的検査前後の遺伝カウンセリングは重要である．

▷また実際の運用に際しては，検査の意義，結果の解釈について専門的な知識が必要な場合がある．

▷「2024年改訂版　心臓血管疾患における遺伝学的検査と遺伝カウンセリングに関するガイドライン」が発表された．この指針を健全に活用し循環器領域の遺伝学的検査を確実に患者・家族の健康管理につなげていきたい．

神経領域における遺伝学的検査の運用法を知ろう！髙野　亨子 87巻11号 , 2024年11月 , pp.1557-1560

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SUMMARY

▷小児神経疾患で遺伝学的検査は患者の確定診断，疾患・体質の理解，合併症の早期発見や予防，生命予後の見通し，遺伝カウンセリングなどに役立つ．治療法のある疾患も少しずつ増えている．

▷知的発達症は臨床的にも遺伝学的にも異質性の高い疾患であり，遺伝要因の探索には網羅的遺伝子解析が有用である．

▷治療法や予防法が確立していない神経疾患の発症前診断は，本人に利益がないため基本的には成人し自分で同意ができる時期まで行うべきではない．

がん遺伝子パネル検査を知ろう！服部　浩佳 87巻11号 , 2024年11月 , pp.1561-1565

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SUMMARY

▷がん遺伝子パネル検査は標準治療終了後の治療法探索を目的として行われるがん組織の網羅的遺伝子バリアント検査系である．

▷わが国では固形腫瘍を対象として5種類の検査系が保険収載されており，近く造血器腫瘍を対象とするものも臨床実装される予定である．

▷がん遺伝子パネル検査を受けた患者のうち，約10%が治療法に到達している．

▷二次的所見として遺伝性腫瘍の生殖細胞系列病的バリアントとクローン性造血が重要である．

保因者診断を知ろう！荒川　玲子 , 高野　梢 87巻11号 , 2024年11月 , pp.1567-1571

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SUMMARY

▷保因者診断は，原則的には本人は発症しないが，子どもが発症する可能性を推定するための検査である．

▷一部の疾患では保因者も発症することがあり（症候性保因者），その場合は本人の健康管理のために有用な検査となる．

▷非発症保因者診断は，本人が成人した後に，自律的な意思決定により実施の判断をすべきである．

NIPT（非侵襲性出生前遺伝学的検査）を知ろう！古庄　知己 87巻11号 , 2024年11月 , pp.1573-1578

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SUMMARY

▷NIPTは，母体血漿中に存在するセルフリーDNAを用いたDown症候群，18トリソミー症候群，13トリソミー症候群を対象とした高精度の非確定的検査である．

▷NIPTは，「無認定施設」問題，「年齢制限撤廃」問題，「対象疾患拡大」問題など重大な懸念を包含する検査である．

▷出生前検査を受けなくても安心して子どもを産み育てられる社会づくりが求められている．

着床前診断を知ろう！真里谷　奨 , 倉橋　浩樹 87巻11号 , 2024年11月 , pp.1579-1584

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SUMMARY

▷網羅的染色体解析による検査手法の確立により，着床前診断（preimplantation genetic testing：PGT）の診断精度は大きく向上した．

▷PGTにまつわる倫理的な議論，特にPGT-M（重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査）に関連した内容は継続して行われており，検査適応については症例ごとの詳細な検討が必要となる．

▷PGTに関連した技術は現在も進歩を続けており，検査の応用範囲は今後さらに拡大していく可能性が高い．

最先端プロジェクト　その1 “未診断疾患イニシアチブ（IRUD）” を知ろう！要　匡 87巻11号 , 2024年11月 , pp.1585-1590

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SUMMARY

▷IRUDは，診断のつかない患者を診断へつなげるための基幹プロジェクトとして，開始された．

▷全国体制で，全ての領域の未診断患者を対象とし，全エクソーム解析を中心としてその解決を測るプロジェクトである．

▷現在までに9,046症例（家族を含む25,738検体）が登録され，48.1％で原因が判明した．

▷近年，様々な希少疾患の診断，新規疾患の発見の他，治療などにつながる例も増えつつある．

▷希少・未診断疾患は，IRUDを起点として，医療や他の研究との連携がすすめられており，さらなる進展が期待される．

最先端プロジェクト　その2 “Priority-i” を知ろう！武内　俊樹 87巻11号 , 2024年11月 , pp.1591-1595

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SUMMARY

▷原因不明の重症新生児の1割は単一遺伝子疾患をもつ．

▷網羅的遺伝子解析の進歩により約半数で分子遺伝学的診断が可能である．

▷迅速なゲノム診断の社会実装に向けたAMED研究Priority-iが進行中である．

カラー口絵

カラー口絵 87巻11号 , 2024年11月 , pp.i-v

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本誌本文中にモノクロ掲載した図表のうち，カラーで掲示すべきものを順に並べた．

［p. 1482　図3］

［p. 1501　図4］

［p. 1503　図7］

［p. 1516　図2］

［p. 1519　図4］

［p. 1532　図1］

症例報告

鉄欠乏性貧血を契機に診断したHelicobacter pylori感染慢性胃炎の男子2例白岩　直人 , 田坂　佳資 , 濱端　隆行 , 納富　誠司郎 , 下立　雄一 , 水野　元夫 , 脇　研自 87巻11号 , 2024年11月 , pp.1597-1600

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要旨

　小児の鉄欠乏性貧血（IDA）とH. pyloriの，内視鏡を含めた臨床像の詳細な報告は少ない．症例1は14歳男子．鉄剤中断後にIDAが再燃した．症例2は14歳男子．Hb 7.3g/dLの貧血あり．2例とも消化器症状なし，抗体陽性，内視鏡で胃前庭部に鳥肌胃炎を認め，除菌後にIDAは軽快した．消化器症状が乏しくとも難治性や重度IDAでは，H. pyloriを念頭に内視鏡検査を含めた精査が重要である．

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目次 87巻11号 , 2024年11月 , pp.1476-1477

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お知らせ 87巻11号 , 2024年11月 , pp.1478-1478

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お知らせ 87巻11号 , 2024年11月 , pp.1520-1520

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診断と治療〔第112巻・第11号〕特集予告 87巻11号 , 2024年11月 , pp.1542-1542

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本号掲載広告一覧 87巻11号 , 2024年11月 , pp.1601-1601

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次号予告 87巻11号 , 2024年11月 , pp.1601-1601

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投稿規程 87巻11号 , 2024年11月 , pp.1604-1605

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投稿論文チェックリスト 87巻11号 , 2024年11月 , pp.1606-1606

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バックナンバー 87巻11号 , 2024年11月 , pp.1607-1607

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奥付 87巻11号 , 2024年11月 , pp.1608-1608

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基本情報

小児科診療
87巻11号
(2024年11月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0386-9806 診断と治療社

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投稿規定

小児科診療 87巻11号 (2024年11月発行)

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