臨床眼科 72巻5号 (2018年5月)

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要約 目的:島根県隠岐の島における網膜色素変性症(RP)の外来占有率を内地の眼科外来と比較する。また,聴き取り調査によってRPの家族歴を調べる。

対象と方法:2016年1月1日〜12月31日の期間の隠岐病院眼科外来におけるRPの病名をもつ患者の割合をデータベースを用いて調べた。同意が得られた症例において,聴き取り調査を行った。同様の検討を山陰労災病院,野島病院,智頭病院で行った。

結果:RP外来患者/総外来患者は,隠岐病院では延べ数で143/12,315名(1.16%)であった。それに対して,山陰労災病院1/8,498名(0.01%),野島病院25/16,700名(0.15%),智頭病院1/2,698名(0.04%)であり,隠岐病院以外(内地)の合計では27/27,896名(0.10%)であった。隠岐病院でのRPの外来占有率は他の施設と比較して約11.6倍であった。隠岐病院におけるRP患者33名のうち,聴き取り調査を行った32名(97.0%)おいて,RPの家族歴を有する患者は19名(59.4%)であり,うち2親等以内に家族歴を有する患者は16名(50.0%)であった。近親結婚の家族歴を有する者はなかった。

結論:施設の特性が異なることから,本検討で求められた外来占有率が各地域での患者有病率を直接表すものではないものの,隠岐のような離島では歴史的に一親族が限られた地域にとどまることが多いため,RPにかかわる遺伝子比率が高いと考えられた。

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要約 目的:不完全型網膜中心動脈閉塞症発症6年後に網膜中心静脈閉塞症を発症した症例の報告。

症例:74歳,男性。当科で左眼の不完全型網膜中心動脈閉塞症と診断され,治療後の経過は良好であった。そのときの光干渉断層像では,栓子が存在した上耳側では菲薄化があり,脈絡膜血管も拡張していた。不完全型網膜中心動脈閉塞症発症6年後に左眼の視力低下を訴え,当科を受診した。矯正視力は0.1と低下していた。眼底検査では,網膜静脈の拡張,蛇行を認め,上耳側と下耳側で網膜出血の程度の差を認めた。以上の所見から,網膜中心静脈閉塞症を発症したと診断した。1か月後の光干渉断層像では黄斑浮腫を認めた。

結論:典型的な陳旧期の網膜中心動脈閉塞症は,網膜全体が菲薄化するので網膜循環障害を合併した報告はない。本症例は不完全型網膜中心動脈閉塞症であったので,網膜の菲薄化が軽度であったため網膜循環障害を発症した可能性が高い。

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要約 目的:網膜の微小塞栓症の光干渉断層計アンギオグラフィ(OCTA)とマイクロペリメータによる所見の報告。

症例:37歳女性が,未破裂の右内頸動脈瘤に対し瘤内塞栓術を受けた。術翌日から右眼の視野中央部に微小な欠損を自覚し,術2日目に当科を紹介され受診した。

所見と経過:矯正視力は右1.2,左1.5で,右眼の中心窩耳下部に白色の病変があった。OCTAで血流欠損があり,マイクロペリメータでその部位に感度低下があった。これらの異常は4か月後に自然寛解した。

結論:眼底の微小な検出と経過観察に,OCTAとマイクロペリメータが有用であった。

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要約 目的:網膜蔦状血管腫(RRH)は先天性,非遺伝性で通常無症候性の治療を要しない疾患であると考えられている。今回,筆者らは両眼性の視神経乳頭上のRRHに合併した網膜静脈分枝閉塞症に伴う黄斑浮腫に対し,アフリベルセプトにて加療した経験を報告する。

症例:48歳,男性。1週間前からの急な左眼視力低下を主訴に受診。初診時の視力は右(1.2)左(0.1),両眼眼底には視神経乳頭上の血管奇形と増殖組織,左眼は視神経直下に1乳頭径の境界不鮮明な白色隆起物およびその周辺に網膜刷毛状出血や軟性白斑,漿液性網膜剝離を伴う黄斑浮腫を認めた。蛍光眼底検査にて下方の網膜静脈分枝閉塞症を認めた。直ちにアフリベルセプト硝子体内注射を施行したところ,治療後1か月目に浮腫が著明に軽快し,視力は左(0.9)と改善,白色隆起物は境界鮮明となり縮小した。さらに治療後3か月目には視力は左(1.2)に改善した。現在治療後1年経過し,黄斑浮腫の再発を認めず,経過良好である。

結論:RRHは,無症候性で治療を要しない疾患であると考えられているが,これに伴う静脈閉塞は動静脈の直接吻合によって,静脈内に高い圧がかかり,静脈壁が変則的に肥厚,血管内皮がダメージを受けることで,血栓ができやすくなることが原因と考えられる。抗血管内皮増殖因子薬を投与することで,血管をいったん収縮させ,静脈への負荷が軽減したことも治療が奏効した要因でないかと考える。

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要約 目的:硝子体手術および同種造血幹細胞移植を施行した成人T細胞白血病(ATL)患者の樹氷状網膜血管炎の報告。

症例:35歳,女性。右眼の充血と眼痛を主訴に近医を受診した。両眼に強膜炎を認め,原因精査で抗ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)抗体陽性が判明した。血液検査で末梢血異常リンパ球を認め,PET-CTで全身リンパ節への高集積が確認され,ATLの診断で当院血液内科において多剤併用化学療法が開始された。当科初診時,網膜アーケード血管周囲に部分的な白色病変を認めたが,経過中に網膜血管全周へ拡大し,樹氷状網膜血管炎を呈した。初診から2か月後に,網膜変性部より裂孔原性網膜剝離を発症し,硝子体手術を施行した。術後網膜血管炎は著明に改善したが,徐々に再燃傾向となった。初診から6か月後に同種造血幹細胞移植が施行され,全身状態の改善とともに網膜血管炎も軽快した。

結論:ATL患者の樹氷状網膜血管炎において,硝子体手術および同種造血幹細胞移植が奏効した症例を経験した。

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要約 目的:脈絡膜骨腫は稀な良性腫瘍であるが,時に脈絡膜新生血管(CNV)を合併する。脈絡膜骨腫に合併したCNVとそれに伴う出血性網膜色素上皮剝離(hPED)および網膜下出血(SRH)を治療し,光干渉断層計アンギオグラフィ(OCTA)で観察した症例を報告する。

症例と所見:65歳,女性。左眼中心比較暗点および歪視を主訴に当科を受診した。左眼傍乳頭耳下側を中心にhPED,漿液性網膜剝離(SRD)とSRHを認めた。翌日SRHが中心窩で増加し,左眼視力(0.15)と低下した。フルオレセイン・インドシアニングリーン蛍光眼底造影(FA/IA)では出血によりCNVは不明瞭であったが,FAでの漏出が強く,CNVが疑われた。同日SF6ガスを硝子体腔内に注入し,血腫の移動を認め,同部に黄白色の脈絡膜病変を認めた。抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬硝子体注射を3回施行後,SRD・SRH・hPEDは消退し,視力は改善した。頭部CTにて左眼球後部に石灰化を認め,治療後FAにて蛍光漏出の減少を認めた。OCTAでは脈絡膜毛細管板レベルの血流は脈絡膜骨腫部で健常部よりやや減少して描出され,CNVが観察された。

結論:脈絡膜骨腫に合併したCNVからのSRH・hPEDはSF6ガス注入術後に良好に移動し,抗VEGF薬硝子体注射によりCNV活動性の抑制を得た。OCTAにより脈絡膜骨腫部では脈絡膜毛細管板レベルの血流の減少が示唆され,またCNV描出が可能な場合もある。

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要約 目的:Stomatococcus mucilaginosusRothia mucilaginosa)は口腔内や咽頭腔などの消化管の常在菌で,日和見感染の起因菌として知られている。同菌によると思われる播種性網脈絡膜炎の1例を報告する。

症例:75歳,男性。急性骨髄性白血病の寛解導入療法中に発熱し,血液培養からStomatococcus mucilaginosusが検出され,同菌による敗血症として加療されていた。好中球減少期の免疫不全下にあった。飛蚊症の訴えで眼科を初診。

所見:視力は右(0.8p),左(0.7)で,両眼底に播種性の黄白色の網膜下浸潤病巣と軽度の斑状網膜出血と硝子体混濁があった。光干渉断層計では網脈絡膜の波打ち所見を認めた。すでに抗菌薬と抗真菌薬の加療中であり,眼科初診後の血液培養と前房水からは菌は検出されなかった。抗菌薬の点滴加療で,解熱とともに眼底の病変は徐々に消退し,播種性の網膜萎縮瘢痕を残した。

結論:Stomatococcus mucilaginosusが免疫不全下に血行性に脈絡膜に至り,免疫回復時に播種性の網脈絡膜病巣を形成したと考えられた。

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要約 目的:エルロチニブ全身投与治療中に発症し,エルロチニブ中止後に改善したぶどう膜炎の症例の報告。

症例:78歳,女性。脳転移を伴う肺癌に対してエルロチニブ150mg/日内服加療が開始された。開始2週間後に下痢と低カリウム血症を生じ,いったん休薬となったが,2週間後にエルロチニブ内服が再開された。再開6日後に両眼の視力低下を主訴に受診となった。

所見:当科初診時の視力は右(0.5),左(0.4)で,両眼とも前房内炎症所見は著明で,硝子体混濁も伴っていた。エルロチニブが抗癌剤であるため,呼吸器内科と相談し,全身検索終了まではエルロチニブ内服を続行しつつベタメタゾンリン酸エステルナトリウム点眼での治療となった。当科受診後にエルロチニブ内服は中止となり,炎症所見は徐々に改善し,2週間後に前房内炎症所見はほぼ消失した。経過中,炎症の強かった左眼にはデキサメタゾンのテノン囊下注射を施行した。経過中に左眼にぶどう膜炎が原因と考えられる黄斑牽引症候群が生じたものの,最終1年後の視力は左右とも(0.8)まで改善した。

結論:本症例は,エルロチニブ治療が契機で発症したぶどう膜炎の可能性がある。

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要約 目的:Kahook dual blade®(KDB)による線維柱帯切開術の短期成績について報告する。

対象と方法:KDBによる線維柱帯切開術を施行し,6か月以上観察した17例17眼を対象とした。男性8眼,女性9眼,平均年齢は69.0±11.6歳であった。症例の内訳は開放隅角緑内障(9眼),落屑緑内障(5眼),ステロイド緑内障(3眼)であった。眼圧,生存率,薬剤スコア(点眼1点,アセタゾラミド内服1錠1点),早期合併症について後ろ向きに検討した。累積成功率は眼圧が5mmHg以上21,18,15mmHg以下を成功基準と定義した。

結果:平均眼圧は術前29.8±5.9mmHg,術後6か月13.8±2.1mmHgと有意に下降した。平均薬剤スコアは術前5.0±1.5,術後6か月で2.8±1.5と有意に減少した。術後6か月の成功率は基準眼圧が21,18,15mmHg以下でそれぞれ100,82.4,35.3%であった。術後合併症は前房出血が6眼,30mmHg以上の眼圧上昇が8眼にみられたが,いずれも自然経過または薬物治療で改善した。

結論:KDBによる線維柱帯切開術は有用な術式と考えられる。

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要約 目的:瘙痒抑制で片眼に冷却遮閉を行った後に感覚性外斜視を生じた症例の報告。

症例:8歳女児が,右眼瞼の瘙痒感が強くなり,皮膚科を受診し,抗アレルギー内服薬を処方され,濡らしたタオルで冷やすように指示された。その後,たまに複視を自覚するようになった。18日後,右眼の外斜を訴え受診した。視力は両眼とも1.5であったが,右眼は固視不良であり,左眼固視で,遠見45Δ外斜視18Δ右上斜視,近見50Δ外斜視18Δ右上斜視がみられた。両眼視機能も低下し,右眼を冷やし続けないことと左眼の時間遮閉を指示し,両眼視機能訓練を行った。4か月後に外斜視は消失し,両眼視機能も改善した。

結論:小児では,瞼をタオルなどで冷やす際にも,片眼のみで継続させると固視不良となり,感覚性外斜視になる可能性があり,注意が必要と思われた。

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要約 目的:蝶形骨洞原発で頭蓋内へ浸潤し,両外転神経麻痺による内斜視と両視神経乳頭浮腫を認めた小児バーキットリンパ腫の症例を報告する。

症例:3歳,男児。両眼の急性内斜視と頭痛を主訴に近医小児科を受診し,眼科精査目的にて当科へ紹介された。眼科初診時,両眼の視力低下,非共同性内斜視,両外転障害,両眼の視神経乳頭浮腫を認めた。頭部MRIで,蝶形骨洞を中心として両上眼窩裂から海綿静脈洞に広がる腫瘍を認めた。病理組織学的に蝶形骨洞を原発とするバーキットリンパ腫(Stage Ⅳ)と診断され,化学療法開始となった。

結果:化学療法開始直後より頭蓋内腫瘍の縮小が認められ,両外転障害および両視神経の乳頭浮腫は改善した。化学療法5年経過後も腫瘍の再発はなく,安定した状況が続いている。

結論:蝶形骨洞原発小児バーキットリンパ腫の報告はない。外転神経へ浸潤し,急性内斜視で発症したことより,早期発見に至り早期治療で腫瘍の寛解が得られた。

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要約 目的:脆弱なチン小帯がある3眼に,水晶体囊拡張リング(CTR)を併用してトーリック眼内レンズ(IOL)挿入を行った報告。

症例:症例は57歳女性,68歳男性,72歳男性で,それぞれ浅前房,スティーブンス・ジョンソン症候群の既往,水晶体震盪による脆弱なチン小帯があった。1眼には−2.5Dの角膜乱視があり,ZCT300を挿入し,矯正視力は0.5から1.2に改善した。1眼には−1.5Dの乱視があり,SN6AT3を挿入した。術後の角膜上皮障害が強く,視力は0.15であった。他の1眼には−2.0Dの乱視があり,SN6AT5を挿入し,矯正視力は0.2から1.0に改善した。これら3眼すべてにCTRを併用した。3眼すべてでIOLの軸ずれはほぼなかった。

結論:脆弱なチン小帯がある3眼にCTRを併用したトーリックIOLの挿入は有効であった。

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要約 目的:白内障手術後(術後)患者の,矯正状態や眼鏡処方の状況を調査する。

対象と方法:対象は2015年6月〜2016年11月に両眼の白内障手術を行った38名(平均69.4±9.6歳)である。白内障手術前・術後の等価球面屈折値,眼鏡処方の割合,処方に至った日数をレトロスペクティブに調査した。

結果:38名の白内障手術前の等価球面屈折値は−1.31±4.35D(平均SE),術後平均SEは−1.13±1.54Dであり,有意差はなかった(t検定,p=0.3418)。38名中27名(平均70.7±10.0歳)は,術後に梶田眼科にて眼鏡処方を行っていた。27名中26名は,累進屈折力レンズを処方しており,加入+1.75Dが17名,加入+2.50Dが9名で,手術から眼鏡処方までの平均日数は45日間であった。処方後に加入度数の変更を行ったのは26名中3名で,3名とも加入+1.75Dから加入+2.50Dに変更になった。当院で眼鏡処方を行っていない残りの11名の術後の矯正手段は,手術をした病院で作製した眼鏡を使用,術前に作製した眼鏡を使用,などがあった。

結論:術後,1か月以内に眼鏡処方に至った症例が半数であった。術前に累進屈折力レンズを使用している場合は,術後の最初の眼鏡処方において,高い加入度数でも問題なく使用できる可能性がある。累進屈折力レンズに慣れてくることにより,使用できる加入度数が変化していった。眼鏡作製の際は,度数を再調整するなどの選択肢が選べる,レンズの保証期間がある眼鏡店で作製するのが望ましい。

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要約 目的:5歳,6歳時にオルソケラトロジー(オルソ)を開始し2年間経過観察できた小児について,オルソの安全性および眼軸長変化量を検討する。

対象と方法:5歳,6歳時にオルソを開始し2年間経過観察できたオルソ群9名18眼と,同年齢でオルソを行わなかった近視の小児10名20眼(オルソ非治療群)を対象に,屈折検査,視力検査,角膜内皮細胞密度(ECD),細隙灯顕微鏡検査などの検査から有効性や安全性を確認した。光学式眼軸長測定装置(OA-1000)で眼軸長を測定し,年間眼軸長変化量を比較した。

結果:オルソ群の治療開始時の平均眼軸長は24.10±0.48mm,等価球面度数(SE)は−2.74±0.96Dであった。2年経過後のSEは−0.19±0.37D,裸眼視力はlogMAR値で平均−0.07,ECDは治療前と有意差はなかった(p=0.643)。合併症は5名8眼に認められたが,重篤な合併症はなかった。オルソ群,非治療群の年間眼軸長変化量は1年目0.34±0.23mm,0.58±0.22mm(p=0.003),2年目0.30±0.16mm,0.50±0.15mm(p<0.001)で有意差があった。

結論:オルソ治療を2年間継続した結果,ECDへの影響や重篤な副作用は認められず,眼軸長変化量もオルソ群のほうが有意に小さかった。オルソは5歳,6歳児にも安全に行え,眼軸長伸長抑制に有用であった。

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 緑内障診療に関しては,大規模臨床研究が進み,眼底三次元画像解析の進歩,新しい薬剤や手術が開発されたことで,大きく変化を遂げた。これらの変化を踏まえて,日本緑内障学会ガイドライン作成委員会は,新たな改訂作業を進め,2018年,緑内障診療ガイドライン(第4版)を公表した。本稿では,最新版のガイドラインについて解説するとともに,その背景にある世界の緑内障診療の流れについても言及する。

連載 症例から学ぶ 白内障手術の実践レクチャー・術前編4

術前の眼内レンズ度数選択 林 研
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Q 術前の等価球面度数で,右眼が−1.5D,左眼が−3.5Dと中等度の近視と軽度の不同視のある患者に対して,両眼の白内障手術を行う予定になっていますが,術後にどの程度の屈折になるように,眼内レンズ(intraocular lens:IOL)の度数を選択すべきか迷っています。特に,不同視は残したほうがよいでしょうか?

文庫の窓から

『十薬神書』 安部 郁子 , 松岡 尚則
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結核治療の「神書」

 『十薬神書』は,元時代の名医の葛可久の著作で,中国最初の結核症に関する医学の専門書である,といわれる。まず,当館所蔵の浅井周璞(養志堂)(1643〜1705)の校勘した元禄3年(1690)刊『十薬神書』序文(図1)を読んでみよう。読みやすいように,段落に分け,薬名に下線と番号を付した(和刻本の送り仮名による)。

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要約 目的:結膜弛緩症を伴う加齢下眼瞼内反症に対し,経球結膜眼瞼通糸埋没法手術を行った2症例の報告。

症例:症例はいずれも男性で,年齢は66歳と71歳である。1例は両眼の異物感と流涙があり,両眼に下眼瞼の内反と結膜弛緩があった。他の1例は左眼の異物感があり,下眼瞼の内反による睫毛接触と結膜弛緩があった。両症例に対し,①球結膜側の結膜から通糸し,②結膜囊の底部に糸を通過させ,③瞼板の下端を糸が通過し,④深さ0.5〜1.0mmの皮膚切開部で結紮する経球結膜眼瞼通糸埋没法手術を行った。両症例とも,下眼瞼内反と結膜弛緩が軽快した。加齢による結膜弛緩症と下眼瞼内反症はいずれもcapsulopalpebral fascia(CPF)の弛緩の結果である。本手術が奏効したのは,①により弛緩した結膜を下方と前方に牽引し,②の手技によりCPFを前方に牽引し,③の手技により瞼板の下端に向かって前方と後方の組織を牽引し,④の手技で結紮部の露出を防止できたことがその理由であると解釈できる。本手術では大きな皮膚切開,組織の露出や切除が不要であり,手技が簡便で,球結膜が温存できる。

結論:結膜弛緩症を伴う加齢下眼瞼内反症の2例3眼に対し,経球結膜眼瞼通糸埋没法手術が奏効した。

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要約 目的:急性網膜壊死(ARN)の臨床像,治療法および臨床経過に関する報告。

対象と方法:1999年1月〜2015年12月の間に岐阜大学医学部附属病院眼科にてARNと診断され,治療後6か月以上経過観察し得たARN 22例について,発症年齢,性別,原因ウイルス,病巣の広がり(zone分類),治療法および臨床経過について診療録をもとに後ろ向きに調査し,視機能予後に影響する因子について検討した。

結果:平均発症年齢は59.7±13.9歳,男性12例,女性10例で,両眼発症2例を含み,右眼13眼,左眼11眼であった。初診時logMAR視力は平均0.60±0.72(−0.30〜2.60)で,最終logMAR視力は平均1.21±1.07(−0.18〜2.90)であった。平均観察期間は5.79±4.89年(0.51〜15.61年)であった。原因ウイルスはVZV,HSV-1およびHSV-2がそれぞれ19例18眼,1例1眼および2例3眼であった。Zone分類ではzone 1が9眼,zone 2が10眼およびzone 3が3眼であった。全例とも抗ウイルス薬ならびに副腎皮質ステロイド薬を全身投与した。乳頭発赤は14眼,網膜剝離(RD)は10眼にみられた。硝子体手術は15眼,うち10眼ではRD発症後,他5眼ではRD発症前に予防的に施行した。網膜非復位は7眼,視神経乳頭萎縮は10眼にみられた。視力予後不良因子としては,高齢者,zone 1への進行,RD,硝子体手術および乳頭発赤がそれぞれ統計的に検出され,多変量解析にてRDが最も影響を有する危険因子として示された。また,RD発症には高齢者およびzone 1が有意因子として検出された。初診時眼底透見不能症例では全例ともRDを発症し,視力転帰が不良であった。原因ウイルスによる視力予後に有意差はなかった。

結論:当院でのARNの視力予後不良因子は,高齢者,zone 1への進行,RD,硝子体手術および乳頭発赤であることが示された。

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 症例は26歳,女性。右眼耳側視野欠損があることに気づき近医を受診した。精査目的で当院へ紹介され受診となった。初診時の視力は右(1.0),眼圧は19mmHg,前眼部・中間透光体に炎症所見はなかった。右眼眼底には視神経周囲に環状の白色病変(white annular ring)を認めた。

 光干渉断層計(OCT)では白色病変に一致してellipsoid zone(EZ)の消失がみられた。白色病変内部では外境界膜も消失していた。フルオレセイン蛍光眼底造影,インドシアニングリーン蛍光眼底造影では異常所見を認めなかった。多局所網膜電図(ERG)では白色病変内部に一致して振幅の低下を認めた。以上より,急性帯状潜在性網膜外層症(acute zonal occult outer retinopathy:AZOOR)の一病型,acute annular outer retinopathy(AAOR)と診断した。経過とともに白色病変は中心窩を越えて拡大,不鮮明になり消失した。

海外留学 不安とFUN・第29回

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 2015年7月から1年9か月の間,米国カリフォルニア州ロサンゼルス(LA)にありますDoheny Eye InstituteのArnold and Mabel Beckman Macular Research Centerに留学する機会に恵まれました。この間,思い描いていた以上にたくさんの,そしてかけがえのない経験をすることができました。

Book Review

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 「今日,外来で見た腫瘍はきっとこのなかに載っている!」,魅力ある帯の文言。さっそく本書を開いてみると,昨日診察した結膜血管腫の患者さんとほとんど同じような写真が……さすが後藤浩先生と思いました。これだけ多くの種類の腫瘍の写真がすべて東京医大で撮影されたとのこと,どれだけ多くの患者さんが受診されているのでしょうか? また,全ての患者さんにこんなに美しい写真を撮影されていること,病理組織像を管理されていることも驚愕に値します。

 本書は,眼瞼腫瘍,結膜腫瘍の2部で構成されています。まず,総論として,眼瞼腫瘍,結膜腫瘍に対してどのように診察すべきかを,診察のコツとして記載されています。続いて各論として眼瞼腫瘍,結膜腫瘍の各種疾患が列記されています。総論では東京医大における膨大な数の統計を基に,各疾患の頻度を知っておくことの重要性を強調されています。次に良性・悪性の見分け方のポイントとして好発年齢,腫瘍の見た目,そして経過を記録としてきちんと残しておくことの大切さ(これがなかなか難しいですね)を記載されています。最後にどのように治療戦略を考えるかについて,全摘出,生検,専門施設への紹介,どの手段を選択すべきかを理路整然,かつ誰が読んでもわかりやすく記述されています。

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 泉孝英先生による『ポケット医学英和辞典』第3版が出版された。辞典に「書評」というのも,おかしな企画と思われるかもしれないが,これは単なる辞典ではない。それは,故・渡辺良孝博士による1967年の初版以来,脈々と受け継がれてきた崇高で,そして謙虚な学びの精神「欧米から最新の医学を学ぶ」が宿っているからである。この「第3版序」には,第2版出版(2002年)からの医学・医療の変動が解説されており,この辞典に「現代性を与える(故・渡辺博士)」ことが理念とされていることがわかる。その流れの中で,医薬品,医療機器の開発のほとんどは米国を中心に行われている現状を嘆きつつも,急速な変貌・進展を遂げる米国医学・医療の的確な把握こそが,わが国の医学・医療の向上につながる,と結んでいる。この辞書の価値は,この泉先生の信念にある,と言っても過言ではない。

 収録語数は7万語と膨大なものになっているが,驚くほどコンパクトで,まさに“持ち歩ける”辞典となっている。収録語については,“Dorland's Illustrated Medical Dictionary”や“Current Medical Diagnosis & Treatment”などを参照し,また,八幡三喜男博士による“The New England Journal of Medicine”からの緻密な情報も取り入れて,用語の刷新,削除,追加が的確に行われている。うれしいことは,略語の収録が充実していること,薬剤名も充実し,薬剤用語集としても活用できること,さらに,医学研究者とその業績までもが収録されており,世界医学人名事典としても活用できることである。この膨大な人名の収録は,「日本近現代医学人名事典【1868-2011】」(医学書院,2012)という大著も出版されている泉先生の真骨頂である。「欧米から最新の医学を学ぶ」とともに,「過去から学ぶ」姿勢も大切にしてほしい,とのメッセージである。

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目次

欧文目次

ことば・ことば・ことば 皮質
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 日本語の「カプセル」は,広辞苑によると「飲みにくい薬品を封入して飲みやすくするゼラチン製の小さな容器」という定義しかありません。しかし,水晶体囊lens capsuleはこれでは説明できません。

 たまたま1721年に出版された英語の辞書があるので,これでcapsuleを引いてみました。「植物の種を包む殻」“Case or Husk that holds the Seed of any Plant”と書いてあります。あの時代のイギリスでは,いまのドイツ語と同じように,名詞すべてに大文字を使ったようです。

べらどんな 生薬
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 コカインが点眼麻酔薬として使えるようになってから,眼科の手術はずっと安全になり,患者も楽になった。その歴史はかなり新しく,英語にcocaineの単語が登場したのは1874年,すなわち明治7年のことであった。

 南米のペルーなどでは,インカの人々がコカの葉を噛む習慣があった。これから精製されたのがコカインである。習慣性があるので,これに代わる薬として,プロカインが1918年に発明された。化学構造はコカインとまったく違うが,「コカインの代用品」がその意味である。

学会・研究会 ご案内

希望掲載欄

アンケート用紙

次号予告

あとがき 寺崎 浩子
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 爽やかな緑に初夏の日差しも伺えるような今日この頃です。本号は第71回日本臨床眼科学会講演集の第3回目となります。学会で発表された演題を原著としてまとめておくことはとても大事なことであり,原著を準備することによって発表の際の考察も必ず深まります。したがって,発表後に書くのではなく,発表前に大方完成させ,発表時の議論を加えてブラッシュアップするのが良いと思います。

 本号の「今月の話題」は,今年新しく改定された緑内障診療ガイドライン(第4版)についてです。日本ではいわゆる正常眼圧緑内障が最も多い病型であるため,緑内障の早期診断には眼科医の積極的な介入が必要です。画像診断・解析の進歩により早期の“緑内障性視神経症”の存在を明らかにすることができるようになったことから,今回の改定では「前視野緑内障」の用語が採択されています。長寿命の社会に向けて最新のガイドラインを理解することは重要ですので,この総説を是非役立ててください。

基本情報

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臨床眼科
72巻5号 (2018年5月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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