臨床眼科 72巻4号 (2018年4月)

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要約 目的:黄斑円孔に対する内境界膜翻転法を行った症例の術後成績と,flapの方向の関連を検討する。

対象と方法:対象は内境界膜翻転法で硝子体手術を行った黄斑円孔27例27眼(男性16例,女性11例)。光干渉断層計を用いて,術前の最小円孔径,最大円孔径,眼軸長,術後6か月の時点での円孔閉鎖の有無,術後6か月までの視力,翻転した内境界膜flap上への粘弾性物質の使用の有無について検討した。また,翻転の方向を上方とその他の方向に分け,両群間の術後成績について検討した。

結果:黄斑円孔の閉鎖率は初回手術で27眼中21眼(78%),再手術で27眼中25眼(93%)であった。初回手術での閉鎖に関する因子の検討を行った結果,粘弾性物質を使用した症例のほうが有意に高い閉鎖率が得られた(p=0.027)。初回手術で非閉鎖であった6眼のうち4眼は再手術(2眼:flap修正,1眼:内境界膜剝離範囲拡大,1眼:内境界膜移植)により閉鎖した。術後6か月の視力は術前視力と有意な相関があった(p=0.028)。上方からの翻転とその他の方向からの翻転を比較した結果,術後3か月の視力は有意に上方からの翻転のほうが良好(p=0.003)であったが,術後6か月の視力,円孔閉鎖率,術後中心窩網膜厚については両群間に有意差はなかった。

結論:内境界膜翻転法による黄斑円孔手術で,良好な閉鎖が得られた。上方からの翻転とその他の方向からの翻転では術後成績に有意差はなかったが,flap上に粘弾性物質を使用することで良好な円孔閉鎖が得られた。

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要約 目的:筆者らは退行性眼瞼下垂に対して眼瞼挙筋短縮術を行い,術後角膜乱視の変化および視機能改善について報告した。今回,術前後のコントラスト感度変化について検討したので報告する。

対象と方法:対象は,はなみずき眼科にて退行性眼瞼下垂手術を施行した20例40眼(年齢72.8±8.7歳)。Margin reflex distance(MRD)≧1mmを軽症群,MRD≦0mmを重症群に分類した。全例に挙筋短縮術を行い,必要に応じて皮膚切除を併用した。術前および術後1か月に,MRD計測,裸眼視力,5mでの明所視および薄暮視のコントラスト感度をcontrast glare tester(CGT-2000)にて評価し,また,眼精疲労について視覚的評価尺度(VAS)によるアンケート調査を行った。

結果:両群ともに術後のMRDは有意に改善した(p=0.016,p=0.007)。視力変化は両群ともに有意差はなかった。軽症群では,コントラスト感度に術前後の有意な変化はなかったが,重症群では明所視および薄暮視のグレアoff状態の高周波数において有意な改善がみられた(p=0.022,p=0.018)。術後自覚症状のVASスコアは両群とも有意に改善し,特に重症群では視機能関連項目が有意に改善した(all p<0.05)。

結論:眼瞼挙筋短縮術後の視機能改善にはコントラスト感度向上が関与する可能性が示された。

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要約 目的:和歌山県立医科大学附属病院眼科での視神経炎の治療と予後,および抗アクアポリン4(AQP4)抗体との関連の検討。

対象と方法:過去5年間に当科にて視神経炎として加療した37例〔男性16例,女性21例,平均年齢57.4歳(22〜85歳)〕を研究対象とした。血清抗AQP4抗体の有無,治療,視力予後について検討を行った。

結果:抗AQP4抗体は4例で陽性,33例で陰性であった。抗AQP4抗体陽性視神経炎は4例ともステロイドパルス療法への治療反応性が悪く,血漿交換を行った3例とも視力の改善は認めたものの3例中2例は最終視力0.1以下であった。抗AQP4抗体陰性視神経炎30例のうち24例はステロイドパルス療法で視力の改善が認められたが,最終視力予後の悪い症例も含まれた。

結論:ステロイドパルス療法無効例に対しては血漿交換療法が有効な例がみられた。また,抗AQP4抗体陰性視神経炎のなかにもステロイド無効例を認めており,抗AQP4抗体の偽陰性や,その他の因子の関与も考えられる。

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要約 目的:後天性眼トキソプラズマ症の臨床的特徴の報告。

対象と方法:東京医科大学病院眼科で後天性眼トキソプラズマ症と診断された24例28眼を対象に,眼底病変の局在,フルオレセイン蛍光眼底造影(FA)所見,血清トキソプラズマIgM抗体,治療内容,再発の回数,視力予後について診療録をもとに検討した。

結果:病変は後極部に最も多く18眼を占め,Edmund-Jensen型は2眼,その他が17眼であった。20例にFAを施行し,black centerを伴う輪状過蛍光が10眼(50%)で,網膜血管炎が20眼中12眼にみられた。18例で血清トキソプラズマIgM抗体の測定が行われ,そのうち9例(50%)で上昇が確認された。治療はアセチルスピラマイシン内服のみが10例,同薬とステロイドの内服が5例,同薬とステロイドの局所注射が2例,クリンダマイシンの内服のみが2例で,その他が4例であった。経過観察中,22眼では一度も再発せず,2眼で1回,1眼で2回,3眼で3回の再発があった。治療の前後で矯正視力に有意差はなく,最終矯正視力0.8以上が26眼中15眼(58%)を占めた。

結論:後天性眼トキソプラズマ症は再発を繰り返すこともある疾患であるが,治療に対する反応は良好で,視力予後も比較的予後良好であった。血清トキソプラズマIgM抗体の上昇は診断に重要であるが,IgM抗体の上昇が確認できなくても後天性眼トキソプラズマ症の可能性を否定できるものではない。

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要約 目的:OCT angiography(OCTA)を用いて,緑内障眼の網膜血管密度(VD)と網膜神経節細胞複合体(GCC)厚との関連性を評価し,VDが緑内障診断および進行評価の有用なパラメータとなりうるのか,またVDに影響する因子を検討した。

対象と方法:当院を受診した広義開放隅角緑内障患者のうち,極早期緑内障(PPG群)26例28眼,早期緑内障(OAG群)22例24眼を対象とした。GCC厚解析はOCT(RS-3000,NIDEK社製)を用いて,G-Chart mapを水平に2分割し,上下の内円2セクターと外円2セクターの平均値を求め,健側と患側の上下差絶対値を算出し,VDとの関連性を検討した。OCTA(AngioVueTM,OptoVue社製)によるVD解析は,9セクターのvessel density mapより上下3セクターの平均値(%)を求め,健側と患側の上下差絶対値を算出し,GCC厚との関連性ならびにVDに影響する因子を検討した。

結果:GCC厚解析は,【PPG群】内円/外円の健側-患側差は,それぞれ11.5μm/15.3μm,【OAG群】内円/外円の健側-患側差は,それぞれ26.2μm/24.3μmとなり,両エリアとも2群間で有意差があり,OAG群がPPG群よりも健側-患側差が大きい結果であった(p<0.01)。VD解析は,【PPG群】上下の健側-患側差2.5%(健側47.3%・患側44.8%),【OAG群】上下の健側-患側差7.1%(健側45.8%・患側38.7%)と2群間で有意差があり(p=0.00002),病期進行とともに患側VDが低下し,OAG群の健側-患側差が大きくなっていた。GCCとVDの関連性については,エリア別にGCC内円とVD(r=0.62,p=0.0004),GCC外円とVD(r=0.45,p=0.016)となり,両エリアとも有意に相関した。また,VDに影響する因子を多変量解析で求めたところ,MD値が影響する因子であった(t=2.5,p=0.02)。

結論:VDが緑内障診断および進行評価のパラメータとなる可能性があり,VDの低下は視野異常の他覚的指標になりうることが示された。

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要約 背景:Paracentral acute middle maculopathy(PAMM)とは,急性の視力・視野障害が生じ,光干渉断層計(OCT)で網膜中間層に高輝度病変が生じる病態であり,網膜深層の毛細血管網の虚血が原因と考えられている。

目的:過去11か月間に経験したPAMM 5症例の報告。

症例:3症例は男性,2症例は女性で,年齢はそれぞれ39,52,69,78,81歳である。いずれも片眼性であり,3例は前医で網膜動脈分枝閉塞症,1例はVogt-小柳-原田病(原田病)と診断されていた。1例は当院に両眼網膜静脈閉塞症にて通院中であった。主訴は視野の中心または傍中心部の見えにくさであった。

所見と経過:患眼の診断時視力は,0.6〜1.0の範囲にあった。3眼では中心窩近くに浮腫状の色調変化があり,5眼すべてにOCTで中心窩近くに網膜中間層の帯状の高輝度病変があった。フルオレセイン蛍光眼底造影では,これに相当する異常所見はなかった。以上より5例すべてをPAMMと診断した。3〜6か月後に中心窩近くの色調変化は軽快し,OCTで同部位の網膜中間層が菲薄化した。原田病が当初疑われた例では,抗リン脂質抗体症候群の既往があることが判明した。

結論:今回の5症例でのPAMMは急性の視力または視野障害で発症し,中心窩近くの色調変化を呈した。蛍光眼底造影所見は正常であり,OCTがその診断に有用であった。

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要約 目的:翼状片手術後の強膜軟化症を契機に発症した交感性眼炎の症例報告。

症例:78歳,男性。

経過:両眼の視力低下にて当院を受診。両眼翼状片手術を施行した。術後3か月で両眼の強膜軟化症を発症し,副腎皮質ステロイド薬の点眼および内服にて加療した。術後15か月に両眼の肉芽腫性ぶどう膜炎を発症した。両眼に前房内炎症,豚脂様角膜後面沈着物,虹彩後癒着を認め,眼底は散瞳不良および白内障により透見不良であった。副腎皮質ステロイド薬点眼にて炎症が落ち着き,術後20か月に両眼水晶体再建術を施行した。術後の眼底検査にて両眼夕焼け状眼底,視神経乳頭周囲の輪状脱色素を認め,フルオレセイン蛍光眼底造影にて両眼視神経乳頭の過蛍光および顆粒状の透過蛍光を認めた。眼外症状として白髪,皮膚白斑を認めた。またHLA-DR4が陽性であった。以上より本症例は翼状片手術後の強膜軟化症を契機に発症した交感性眼炎と考えられた。

結論:強膜軟化症は交感性眼炎の初発症状となる可能性がある。

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要約 目的:重度脳性麻痺患者のoptokinetic nystagmus(OKN)をアイトラッカーで測定し,誘発されたOKNを能動的に追従したときに誘発されるlook OKN(LOKN)と受動的に見ているときに誘発されるstare OKN(SOKN)に分類する。

対象と方法:対象は痙直型の重度脳性麻痺患者4例。眼球運動の測定にはアイトラッカーを使用した。視覚刺激は0.3cycles/degreeの矩形波チャートを水平方向へ5秒間ずつ10degree/sec(dps)で移動させた。刺激の間にはインターバルを設け,刺激提示時と比較した(マン・ホイットニーのU検定)。視線位置からOKNの緩徐相速度を算出し,3.0dps以上をLOKN,3.0dps未満をSOKNに分類した。

結果:全例で視覚刺激提示時とインターバルの眼球運動速度の間に有意差があり(p<0.0001),OKNが誘発された。4例の緩徐相速度はそれぞれ3.4,4.0,4.6,1.8dpsで,3例がLOKN,1例がSOKNに分類された。

結論:本法により重度脳性麻痺患者4例のOKNをLOKNとSOKNに分類でき,LOKNに分類された3例については能動的に視覚を活用できることが示された。本法は重度脳性麻痺患者の客観的視機能評価法の1つとして期待される。

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要約 目的:低視力者に処方した拡大鏡の倍率と,患者の視力,視野,疾患との関連の報告。

対象と方法:過去7年間に当院のロービジョン外来で,新聞用に拡大鏡を処方した59名を対象とした。男性29名,女性30名で,年齢は55〜93歳,平均77歳である。糖尿病網膜症14名,加齢黄斑変性13名,緑内障8名,強度近視7名,網膜色素変性4名などであり,視機能が良い眼を主として検索した。拡大鏡の倍率は,拡大必要度数(D)を指標とした。

結果:最も強い拡大鏡は,0.1未満の視力不良者が必要とし,平均度数は25.2±7.6Dであった。疾患別では,加齢黄斑変性が最も強い拡大鏡を必要とし,糖尿病網膜症,強度近視,緑内障,網膜色素変性がこれに続いた。中心暗点がある患者は,ない患者よりも強い拡大鏡を必要とした。強い拡大鏡は,視野狭窄が顕著な患者と中心暗点が大きな患者に必要であった。

結論:拡大鏡の度数には,視力と視野が大きく関係した。低視力者ほど度数が大きくなり,視力0.1付近で理論値に近づいた。視野狭窄がある患者では,残存中心視野の大きさと形が拡大鏡の度数に関係した。

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要約 目的:視神経症を合併した特発性眼窩炎症を左眼に発症し,約半年後に右眼にも発症した両眼性特発性眼窩炎症を経験したため報告する。

症例:66歳,女性。複視のため他院脳神経外科を受診し,脳梗塞の診断で抗血小板薬を投与されていた。2週間後,左眼の視力低下を自覚し当院初診となった。左眼は矯正視力(0.01),対光反応鈍延,相対的求心性瞳孔障害陽性,中心暗点,眼球運動障害が認められた。MRI脂肪抑制T2強調像で左上斜筋,内直筋,下直筋,視神経に高信号域がみられたが,占拠性病変はみられなかった。血液検査は異常なかった。特発性眼窩炎症の視神経症合併症例と診断しステロイド治療を開始した。眼球運動は改善したが視力,視野は改善しなかった。約半年後,右眼の視力低下を自覚。右眼は矯正視力(0.4),中心暗点,眼球運動障害がみられた。MRI脂肪抑制T2強調像で右眼上直筋,内直筋,視神経に高信号域がみられた。左眼同様の特発性眼窩炎症と診断しステロイド治療を開始し,視力,眼球運動障害,視野の改善を認めた。ステロイド量を漸減し,再発なく経過している。

結論:両眼性視神経症で左右で異なる時期に発症し視力予後が異なった症例を経験した。視神経症を伴う特発性眼窩炎症は発症早期にステロイド治療を開始することが重要と考えられた。

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要約 目的:角膜ケロイドは,緩徐に増大する角膜中央部に生じる良性の結節性病変であり,過去に100症例ほどの報告がある。今回,急激に増大する角膜ケロイドの1症例を経験し,病理学的な検討を行った。

症例:10歳の男性。幼少時より右眼に角膜混濁を認め,視力が0.01と低下していることにより,原因精査目的で当院を紹介され受診した。右眼の角膜中央部に軽度に隆起した結節性病変を認めた。左眼の角膜にもわずかに血管侵入と上皮下混濁を認めた。原因を精査中に患者の通院は途絶えた。初診より8年後,右眼の角膜混濁が急激に増大してきたため,再度当院を紹介され受診した。右眼の結節性病変は8年前と比較して増大し,大きく前方に突出していた。患者は審美的な改善を希望していたため,角膜表層切除術を施行した。

所見:病理学的に,肥厚した角膜上皮,線維血管組織の増殖,局所的な血管外へのフィブリン析出を認めた。免疫組織化学的に線維芽細胞はα-smooth muscle actin陽性,vimentin陽性であり,活性の高さを示していた。

結論:急激に増大する角膜結節性病変として角膜ケロイドも鑑別に入れる必要がある。角膜ケロイドが急激に増大する機序としては,線維血管組織の増殖だけではなく,血管透過性の亢進も関与すると考えられた。

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要約 目的:斜視手術中に強膜穿孔をきたし,術後難治性裂孔不明網膜剝離を生じた1例を報告する。

症例:72歳,男性。局所麻酔下での右眼外斜視術中に強膜穿孔をきたしたが,穿孔部を冷凍凝固し手術を続行した。術後3か月に網膜剝離を認めた。硝子体手術中に冷凍凝固斑部位および全周鋸状縁まで観察したが,裂孔はなかった。意図的裂孔を作製し,高粘稠度の網膜下液を排出した。術後上耳側最周辺部に限局した網膜下液を認め,剝離は徐々に拡大した。7か月後剝離の範囲が意図的裂孔まで広がったため,再度硝子体手術を行った。強膜穿孔部位は瘢痕化し,前回同様に明らかな裂孔は検出されず,高粘稠度の網膜下液を排出した。術後6か月の経過観察では最周辺部に網膜下液が残存しているものの,範囲は拡大せず,視力は0.7を維持している。

結論:裂孔が検出されないため,過剰冷凍凝固および炎症の持続による滲出性網膜剝離が疑われた。

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要約 目的:糖尿病黄斑浮腫(DME)の硬性白斑について光干渉断層撮影(OCT)のen face画像と眼底写真との比較検討を行う。

対象と方法:患者は45歳,男性。右眼虹彩炎の発症を契機に糖尿病が判明した。以降,糖尿病虹彩炎と主に左眼の糖尿病黄斑浮腫の治療を継続されていた。経過中,虹彩炎に対するステロイド局所治療,糖尿病黄斑浮腫に対するアフリベルセプト硝子体注射を計3回施行されていた。通院期間中に撮影されたen face OCTとカラー眼底写真について,中心窩近傍ヘンレ層内の比較的大きな囊胞腔に着目しOCT所見と硬性白斑の比較検討を行った。

結果:En face OCT上の高反射の成分は,眼底写真で硬性白斑と考えられる黄白色の病巣とほぼ一致していた。また比較的大きな囊胞腔の内部には低,中等度,高反射領域が混在していた。高反射成分は囊胞腔内が低反射であるものにはほとんどみられず,中等度反射の領域に伴って囊胞腔の辺縁などに観察された。また経過とともに低反射の領域に中等度から高反射の成分が出現し,眼底写真との対比から硬性白斑の析出と考えられた。

結論:En face OCTによってDMEにおける囊胞内成分の不均一と偏在,経時的な変化を観察することができた。En face OCTはDMEの病理解析にも有用であることが示された。

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要約 目的:片眼のVogt-小柳-原田病(原田病)の治療中に,僚眼に多発性後極部網膜色素上皮症(MPPE)が発症した症例の報告。

症例:46歳の男性が左眼の霧視で受診した。

所見と経過:矯正視力は右1.2,左0.1で,左眼の黄斑部に漿液性網膜剝離があった。フルオレセイン蛍光眼底造影と光干渉断層計などの所見から原田病と診断した。ステロイドパルス療法などで左眼の網膜剝離は1か月後に寛解し,視力は1.2に回復した。2か月後に右眼に漿液性網膜剝離が生じた。ステロイドパルス療法には反応せず,その4か月後の蛍光眼底造影で6か所の漏出点があった。MPPEと診断し,5か所の漏出点を光凝固した。2か月後に右眼の網膜剝離は消失した。

結論:片眼の原田病の治療としてステロイド薬を全身投与したことが,僚眼のMPPEの原因となった可能性がある。

Special Interest Group Meeting(SIG)報告

眼科再生医療研究会 辻川 元一
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はじめに

 今回のSIGミーティングでは,眼科領域における再生医療の実現が期待される網膜色素変性を対象として,再生医療のみならず,ゲノム研究,薬剤開発,遺伝子治療といった最先端の医療研究について第一人者の先生4方のご講演を拝聴させていただいた。以下に,筆者の覚書をもとに内容をご紹介する。

連載 今月の話題

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 組織学的検討ではアーチファクトが入りやすく解析が困難であった脈絡膜。画像検査が進むにつれ生体内の変化が徐々にわかるようになってきた。筆者らは数年前にも加齢黄斑変性と脈絡膜の関連について総説で述べた1)が,本総説ではさらに最近の画像検査の進展でわかってきたこと,特にOCT-Aによる試みをクローズアップして述べる。

連載 症例から学ぶ 白内障手術の実践レクチャー・術前編3

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Q 回折型多焦点眼内レンズを挿入予定で,3.0Dの直乱視の若年の白内障症例において,連続円形前囊切開(continuous curvicular capslotomy:CCC)開始と同時に切開が赤道部にまで回ってしまいました(アルゼンチンフラッグサイン:図1)。このあと,乱視矯正,老視矯正,眼内レンズ選択をどうすればよいでしょうか?

連載 蛍光眼底造影クリニカルカンファレンス・第24回

視神経乳頭 伊勢 重之 , 石龍 鉄樹
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疾患の概要

 視神経乳頭の蛍光眼底造影所見は,さまざまな疾患で変化する。それは視神経乳頭が,網膜,脈絡膜,視神経に接しており,かつ二重の血管支配を受けるためである。視神経乳頭表層は,網膜中心動脈の血流を受け,視神経乳頭内部はZinn-Haller動脈輪を介して毛様動脈系の血流を受け,両者は視神経乳頭内の毛細血管レベルで交通をもっている。さらに,篩状板部では隣接する脈絡膜からも血流を受けており,視神経乳頭は,網膜中心動脈系,毛様体動脈系の循環,炎症による影響を受ける。視神経乳頭固有の炎症,先天異常もあり,視神経乳頭の造影所見には眼内に起こる多くの異常が造影所見に影響する。本稿では,視神経や網脈絡膜の循環障害および炎症性疾患,先天異常に分け,視神経乳頭の蛍光造影で異常所見を示す疾患について述べる。

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要約 目的:アデノウイルス(AdV)結膜炎の診断にはイムノクロマト(IC)法キットが広く使用されているが,結膜擦過を必要とする。今回,結膜擦過を行わずに採取可能な結膜滲出液を含む涙液(以下,涙液)を用いるAdV IC法キットを従来法と比較検討した。

対象および方法:2016年7〜11月に福岡大学病院眼科およびみぎた眼科を受診したAdV結膜炎が疑われる93眼に2種類の迅速診断キットで検査を行った。対照キットとして結膜ぬぐい液を用いた従来のIC法キットを用いた。評価キットは,ろ紙を結膜に付着させて採取した涙液を検体とし,銀増幅IC法による専用の自動測定機器で測定された。AdV DNAの検出はreal-time PCR法で行い,遺伝子配列により型別判定を行った。

結果:全93眼のうちAdV54型が55眼,3型および19/64型がそれぞれ2眼検出された。対照キットおよび評価キットのそれぞれのPCR法に対する感度は89.8%,98.3%であり,特異度はいずれも100%であった。2種のIC法のPCR法陽性例における感度の差には有意差があった(p<0.01)。

結論:涙液を検体とした評価キットは結膜擦過が不要で,患者への負担が少なかった。専用機器で増感を行い,対照キットに比較して感度が高かった。評価キットは客観的で有用であると考えられた。

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要約 目的:Baerveldt®緑内障インプラント(BGI)手術の中期成績の報告。

対象と方法:過去42か月間にBGI手術を行い,12か月以上の経過観察ができた38例41眼を対象とした。男性32眼,女性9眼であり,緑内障の内訳は,血管新生緑内障23眼,続発緑内障8眼,原発開放隅角緑内障3眼,落屑緑内障3眼,その他4眼であった。インプラントは前房挿入型21眼,経毛様体扁平部挿入型20眼であった。眼圧は術後3,6,12,18,24か月に測定した。手術が成功したと判断する基準は,術後3か月後に眼圧が5mmHg以上,21mmHg以下で,視力が光覚弁以上,追加の緑内障手術を必要とせず,眼内炎などの重篤な合併症がないこととした。

結果:平均観察期間は27.9か月で,術前の平均眼圧は36.1mmHgであった。術後24か月までの平均眼圧は,すべての測定時点で12.5〜14.0mmHgであり,術前に比べて有意に低下していた。術後に4眼が光覚なしとなり,眼内炎,前房消失,チューブへの硝子体嵌頓,前房に留置したチューブの露出が各1眼にあり,再手術が行われた。術後2年の成功率は75.3%であった。

結論:難治性緑内障に対するBGI手術は,術後2年間の評価で,眼圧コントロールがおおむね可能であった。

今月の表紙

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 症例は41歳,男性。右眼にサッカーボールが当たり近医を受診し,右眼網膜裂孔に対して網膜光凝固が施行されたが網膜剝離を発症してきたため,当院へ紹介され受診した。初診時の右眼矯正視力は(1.2)であったが,右眼上耳側の原因裂孔以外に,その周囲のレーザー瘢痕が裂孔となり,多発裂孔を呈していたため硝子体手術を選択した。LASIK既往眼であり年齢も考慮して水晶体は温存することとした。手術は,硝子体切除後に裂孔周辺に網膜光凝固を追加し,20%SF6ガスタンポナーデで終了し,術後体位は伏臥位とした。術翌々日,強いガス白内障を認め,以後ガス白内障はSF6ガスの減少とにとも徐々に消失していった。

 撮影は,TOPCON社製スリットランプSL-D7を使用した。今回の撮影は術翌々日に行ったもので,上方の写真は拡散照明法で撮影した。下方の写真は,徹照法で撮影したが,強いガス白内障の影響か,眼底からの反帰光が最も明るいところを捉えられているかどうわからず苦労した。また,露出過度に注意しながら光量の調整をした。ガス白内障がステンドグラスのように神秘的に感じられ,記憶に残る症例となった。

海外留学 不安とFUN・第28回

ボストン研究留学記・3 上田 高志
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余暇の過ごし方

 忙しい研究生活ですが,家族と過ごす時間が取れるというのも留学の1つの醍醐味です。土日,定休日以外の休暇も,普段しっかり仕事をしていれば比較的自由に取ることができると思います。ボストンはさまざまな観光名所があり,また子供も楽しめる博物館や美術館も数多くあります。スポーツ観戦では,野球(Red Sox),バスケットボール(Celtics),アメリカンフットボール(Patriots)と3大スポーツが揃います。

 ニューヨークへは車で4時間で着きます。カナダのモントリオールなども車で6〜7時間ですので,ビザの更新のついでに観光される方も多いです。その他,アメリカには素晴らしい国立公園や観光地がたくさんありますし,アメリカ国外では南米,アイスランドなどに旅行されている方もいらっしゃいます。私も仕事の目処が立てば訪れたいなあと思っていますが……どうなることでしょう。

Book Review

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 眼瞼や結膜の腫瘍は,眼科外来で頻繁に遭遇する疾患である。しかし,生検以外で確定診断することは難しく,臨床医を大いに悩ませるものではないだろうか。眼科病理学の日本の第一人者である後藤浩教授による本書は,この悩みを解決するための決定版になるものと言える。

 本書の素晴らしい点は,各疾患を理解するために必要な情報が,第一線で働く臨床医に理解しやすいように書かれている点である。腫瘍性疾患の本態を理解するには,病理組織像を理解する必要があるが,一般臨床においてまず得られる情報は外眼部の所見である。そして,臨床医はそれだけの情報に基づいて,ある程度正確な診断を患者に提供する必要がある。そのため,本書では美しい外眼部写真が過不足なく提示されている。海外の成書では,数多くの写真が提示されているものもあるが,それらは研究のためには重要でも,目前の患者を診断するには,むしろ判断を迷わせる。本書で示された写真は,診断のために重要な所見を中心に示されており,診断のためには必要かつ十分であるといえる。さらに,その所見を理解するために,重要なものには病理像が示されている。特に,外眼部写真の横に病理写真が提示されているのが役に立つ。外眼部を診るときには,病理像を頭に描きながら行うようにと教育を受けるが,病理診断は一般臨床医にはなじみが薄く,よほど病理に詳しくない限りは難しい。しかし,外眼部写真の真横にポイントとなる病理写真があれば,2回,3回と本書を読むうちに自然に頭に入るのではなかろうか。

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 このたび,医学書院から待望の『ENGアトラス』が出版された。ENG(electronystagmograhy,電気眼振計)とは言うまでもなく,眼振を含む眼球運動の電気的な記録・検査のことである。眼振や眼球運動の異常はめまいや平衡障害時に多く出現し,病変部位や原因疾患を同定する上で極めて有用であるが,その診察所見を客観的かつ定量的に記録し,分析や比較を可能としてくれるのがENGである。めまいや平衡障害を扱う耳鼻咽喉科,特に神経耳科,神経内科,脳神経外科などにおいては必須の検査である。ENGは基本的に両眼の上下,左右に付けた電極で両側の眼球の上下,左右の動きの速度,加速度,振幅が表示される。

 著者の小松崎篤先生は日本耳鼻咽喉科学会理事長も歴任された斯界の大家であるが,特に神経耳科学の領域では世界を代表する第一人者であり,PPRF(paramedian pontine reticular formation)の発見,OKP(opkinetic pattern test)の開発などその業績は枚挙に暇がない。この『ENGアトラス』は700件もの図のほとんどが自験例という,まさに小松崎先生ならではの快挙といえる。

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 いまの解剖用語では,「lensは水晶体」となっています。昔はlens crystallinaといったものですが,ずっと簡単になりました。

 ところが考えてみると,眼鏡に使うレンズが発明されたのは中世の13世紀頃で,古代ローマの時代には,老眼鏡は発明されていません。

べらどんな ヒトナミニ
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 一般に世の中のことは,数字なら2桁で間に合うようになっている。世論調査や選挙の予想でも,56%と56.3%では,別に差がない。

 自然科学でも,普通は3桁あれば十分だという。半径が10cmの円を芯が1mmの鉛筆で描いたとする。もしこれが地球の断面であれば,赤道半径が6,378kmなので,円周の線の幅は約64kmになる。

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あとがき 稲谷 大
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 今年の福井県の冬は40年ぶりの大雪で,全国の皆様から沢山の心配メールをいただきました。実は私,香港で開催のAPAOに出席するために,ほとんど県外におりました。しかし,出国の前日に大雪に見舞われて,北陸本線,小松空港,北陸自動車道はすべて閉鎖,レンタカーの貸し出しもお断りの絶体絶命のピンチを体験しました。

 早朝からタクシーを貸し切りでチャーターして自動車の立ち往生が続出した国道8号線を南下,JR敦賀駅まで行き,そこから普通電車で東海道新幹線の停車駅の米原駅に行って,新幹線で新大阪駅を経由してなんとか関西空港に着くことができました。途中,タクシーが自宅前の道路でスタックして脱出に2時間かかったりもしましたが,たった3万円で敦賀駅まで行っていただいた人情味あふれる運転手さんには感謝感激です! その運転手さん,自宅への道が雪で閉ざされ,ホテルに宿泊されたそうです。私が香港から帰国した時点でも特急「サンダーバード」や「しらさぎ」がすべて運休だったので,関西空港でスタッドレスタイヤを履いたトヨタアルファードをレンタルして無事深夜に帰宅することができました。

基本情報

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臨床眼科
72巻4号 (2018年4月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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