臨床眼科 68巻8号 (2014年8月)

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要約 背景:可逆性後白質脳症症候群は,頭痛,高血圧,けいれん,皮質盲などを呈し,後頭葉と頭頂葉を中心に生じる可逆性血管原性浮腫が本態である。目的:シクロスポリン投与後に可逆性後白質脳症症候群による皮質盲が長期間持続した症例の報告。症例:6歳女児に咽頭痛と発熱が生じ,血球貪食性リンパ組織球症と診断された。発症の3週後からシクロスポリンを含む薬剤の投与を受けた。その8日後にけいれん発作があり,脳波にてんかん波があり,MRIで両側の後頭葉に高信号があり,可逆性後白質脳症症候群が疑われ,シクロスポリンを中止した。けいれんの翌日に視力が両眼手動弁に低下し,その9週後に当科を紹介受診した。所見:矯正視力は左右眼とも0.08であり,対光反射を含み眼科的には正常所見を呈した。脳波やMRI所見は正常であった。視力は3か月後に左右眼とも0.5,1年後に1.0に改善した。結論:可逆性後白質脳症症候群による小児での皮質盲で,脳症の改善後も視力障害が長期間続いた。心因性の要素が関係した可能性がある。

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要約 目的:開放隅角緑内障に対するEx-PRESSTM併用濾過手術の術後短期成績の報告。対象と方法:Ex-PRESSTM併用濾過手術が施行された20例20眼。男性16例,女性4例。平均年齢は64.4±13.1歳。術後3か月間の眼圧,合併症および線維柱帯切除術の結果との比較を行った。結果:Ex-PRESSTM併用濾過手術施行前の術前平均眼圧は35.2±7.2mmHgで,1か月後は15.3±4.9mmHg,3か月後は16.1±4.7mmHgと有意に下降していた(p<0.001)。線維柱帯切除術群では術前眼圧は平均32.5±8.4mmHg,術後1か月後は13.4±4.7mmHg,3か月後で14.0±5.7mmHgと両群ともほぼ同様の眼圧下降効果であった。Ex-PRESSTM併用濾過手術の合併症は前房出血,本体偏位,低眼圧,高眼圧などで,線維柱帯切除術群と有意差はなかった。結論:Ex-PRESSTM併用濾過手術は安全な手術手技であり,眼圧下降効果および合併症の頻度は線維柱帯切除術と短期的にはほぼ同様であった。

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要約 目的:シリコーンオイルを抜去した後に持続する高眼圧の検討。対象と方法:過去101か月間に硝子体中に注入したシリコーンオイルを抜去した120眼を対象とし,抜去後の経過を検索した。年齢は12~83歳,平均51歳で,シリコーンオイルの硝子体内滞留期間は2~413日,平均123日であった。21mmHg以上の眼圧を高眼圧と定義した。結果:抜去後の高眼圧は26眼(22%)であった。原因疾患は増殖糖尿病網膜症12眼,増殖硝子体網膜症8眼,外傷4眼,その他2眼であった。高眼圧群と非高眼圧群とでシリコーンオイルの滞留期間に差はなかった。高眼圧群には,外傷後の症例と25ゲージでシリコーンオイルを抜去した症例が有意に多かった。結論:シリコーンオイル抜去後の高眼圧は,眼内のシリコーンオイル滞留期間とは関連しなかった。25ゲージで抜去した症例に高眼圧が多いことは,少量のシリコーンオイルが残存した可能性が疑われた。

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要約 目的:緑内障患者の点眼補助具の使用のアドヒアランスを調査し,どのような因子と関連しているかを検討した。方法:対象は,ラタノプロス点眼液0.04%およびラタノプロスト・マレイン酸チモロール配合点眼液を単独に点眼しており,点眼方法に問題があると申告した緑内障患者110名(74.8±11.7歳,男性35名,女性75名)である。点眼補助具を渡し,6か月間にわたり,その使用状況を面接で調査し,それと年齢,性別,眼圧,視野,視力との相関を検討した。結果:6か月間の調査を104名(94.5%)が完了した。点眼補助具の使用率は2か月後57.7%,4か月後69.2%,6か月後(最終時)75.0%であり,時間経過とともに有意に上昇した(p<0.01)。60~74歳女性でのアドヒアランスが良好な患者は56.7%であり,ほかの患者群(82.4%)に比較して有意に低かった(p<0.01)。点眼補助具を渡してそれを使えるようになるまでの期間は,60歳未満では5.7±9.8日,60~74歳では16.6±21.0日,75歳以上では22.3±31.9日であり,高年齢化するとともに有意に延長した(p<0.01)。点眼そのもののアドヒアランスは,点眼補助具使用のアドヒアランス良好群では有意に改善したのに対して(p=0.0005),不良群では開始時と6か月後では有意差はなかった(p=0.2)。結語:比較的多数の患者が点眼補助具を使用したが,60~74歳の女性における点眼補助具の使用率がほかの患者群に比べて低くかった。緑内障薬の点眼補助具の使用にも学習曲線が存在し,高齢化に伴い延長していた。器具を使いやすくするような点眼補助具の改良が必要と思われた。

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要約 目的:適切な周産期治療と光凝固を受け,良好な経過をとった超低出生体重児の報告。症例:在胎24週で体重396gの女児が生まれた。呼吸を適度な低酸素状態で管理し,未熟児網膜症が国際分類zone 2,stage 3になった生後12週,修正36週の時点で半導体レーザーを用いてレーザー光凝固を行い,生後17か月後の現在まで経過は良好である。結論:適切な酸素投与と適切な時期での光凝固により,未熟児網膜症が進展せず,良好な経過が得られた。

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要約 目的:眼科手術モニタ録画システムを2系統導入する際,導入前以上の付加価値を加え,実用性検証のため半年間実動した。対象と方法:一系統は,ハイビジョンカメラの信号を,レイド1構成ハードディスクに,民生機で変換記録,操作はタッチパネルとした。もう一系統は3Dシステムで,記録映像をMeshLabというソフトでCG化した。結果:2系統とも,2013年4月から大きな問題なく動作した。ハイビジョンシステムは,安全性などを確保できた。作成した3DCGでは,画像を多方向から見ることができた。結論:民生機で実用的な高付加価値記録ができた。3DCGは,手術の解析,教育などへの応用が考えられた。

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要約 目的:手術的に治療した視神経鞘髄膜腫の小児の報告。症例:8歳女児に右眼視力低下が発見された。3歳のときに遠視性弱視が発見され,眼鏡装用で左右眼とも1.0の視力が得られていた。全身的に異常はなかった。所見:右眼+7.0D,左眼+5.75Dの遠視があり,矯正視力は右0.5,左1.2であった。対光反射は減弱し,相対的瞳孔求心路障害(RAPD)陽性で,右眼の乳頭が軽度に蒼白で中心暗点があった。磁気共鳴画像(MRI)で右視神経の腫大があった。プレドニゾロンのパルス療法には反応せず,その4か月後に中心暗点が顕著化し,発症から14か月後に右眼視力が0.04になった。MRIで鞍結節から右視神経管に伸展する腫瘍が発見され,手術で摘出した。病理所見は視神経鞘髄膜腫であった。1年後の現在まで再発はない。結論:視神経髄膜腫は,発症初期では視機能障害があっても画像診断が困難である。治療に抵抗する視神経症では,本症の可能性がある。

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要約 背景:渦巻き状角膜症はアミオダロンの有名な副作用であるが,これまでにニフェジピン内服により同所見をきたした報告はない。目的:ニフェジピン内服中に発症した渦巻き状角膜症の1症例の報告。症例:46歳男性。3週間前から増悪する両眼の霧視と羞明を自覚し,近医を受診した。両眼の角膜上皮混濁を指摘され,ステロイド点眼薬を開始されたが改善せず,当科紹介となった。両眼角膜上皮に渦巻き状混濁を認め,高血圧に対して内服中であったニフェジピンを中止したところ,5か月後には症状および角膜混濁はほぼ消失した。結論:ニフェジピンはアミオダロンと同様,陽イオン性両親媒性薬物であるため,渦巻き状角膜症を発症することがありうる。

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要約 目的:白内障術後に周辺部角膜潰瘍と結膜膿瘍を合併した角膜真菌症の1例を報告する。症例:85歳男性,右眼の異物感と視力低下で受診した。1か月前に白内障手術を受け,10日前の農作業中,稲穂で右眼をついたとのことであった。所見:初診時右眼矯正視力は0.4であり,前房内に炎症所見を認めた。角膜耳下側周辺に感染によると思われる実質混濁とびらんを認めた。抗菌点眼薬を開始したが効果なく, 入院5日目に抗真菌治療に変更した。12日目には周辺部角膜の菲薄化とその部位に接する結膜の隆起性病変を生じた。35日目にBrown手術と感染巣の生検を施行したところ, 角膜実質内に多数の真菌を認め, 培養にてアスペルギルスを検出した。結膜隆起部は膿瘍であった。5回の表層角膜切除を追加し,137日目に感染の沈静化に至った。1年後現在まで再発はなし。結論:外傷後の角膜真菌症に周辺部角膜潰瘍を併発し難治であったが, 外科的治療が有用であった。

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要約 目的:左右眼の視野スコア(VFS)を合成したVFSou,両眼開放で測定したbinocular VFS(bVFS)が同等であるかを調べる。また,機能する視野スコアであるfunctional field score(FFS)との関係も知る。対象と方法:対象は同意を得た36名の患者(男性23名,女性13名,平均年齢70.6±12.7歳)。Humphrey視野計のカスタムプログラム,Colenbrander grid testを各眼と両眼開放で測定。結果よりVFSou,bVFS,FFSを求めた。結果:VFSouとbVFSの間に有意差はなかった。全対象のFFSは,VFSou,bVFSと比べて有意に低かった(p<0.0001)。結論:本研究ではVFSouとbVFSの間に有意差は検出されなかった。FFSは片眼の欠損を無視しないため,スコアが低くなると推察された。

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要約 目的:毛様体光凝固後にMooren潰瘍が発症し,角膜穿孔と眼球破裂が生じた症例の報告。症例:64歳女性の右眼圧が上昇した。16年前に右眼に白内障と緑内障手術を受け,4年前から当科に通院中であった。所見:矯正視力は右0.7,左0.05であった。右眼は眼内レンズ挿入眼で,右眼は-9.0D,左眼は-18.0Dの近視であった。両眼とも開放隅角で,右眼圧は40mmHgであった。手術が拒否され,右眼に経強膜的に毛様体光凝固を行った。その直後から毛様充血が生じた。1か月後に角膜の耳側下方にびらんが生じ,3か月後に角膜が菲薄化した。ヘルペス感染と膠原病は否定され,Mooren潰瘍と診断した。毛様体光凝固の8か月後に角膜穿孔が突発し,眼球が虚脱した。角膜移植は拒否され,眼球内容除去術を行った。結論:経強膜毛様体光凝固には重篤な合併症として角膜障害が生じる可能性がある。

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要約 目的:配合剤から単剤併用に切り替えた眼圧変化の後ろ向き報告。対象と方法:ドルゾラミド塩酸塩/チモロールマレイン酸塩配合剤(DTFC)使用中の眼刺激症状を訴える正常眼圧緑内障15例27眼を対象。男性3例,女性12例,平均年齢は72.8±8.5歳。DTFCから眼刺激症状の少ないブリンゾラミド懸濁性点眼液を選択し単剤併用とし,6か月間の眼圧経過とアドヒアランスについて調べた。結果:切り替え後,全経過において有意な眼圧下降を得た。点眼回数増加にもかかわらず良好なアドヒアランスであった。結論:アドヒアランスに関しては眼刺激症状の改善も重要な因子であり,単剤併用においてさらなる眼圧下降が得られる可能性がある。

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要約 目的:黄斑疾患に対する20mgと40mgトリアムシノロンアセトニドのテノン囊下注射の効果の比較。対象と方法:黄斑疾患38例44眼を対象とした。糖尿病網膜症34眼,網膜静脈分枝閉塞症8眼,ぶどう膜炎2眼で,全例に囊胞様黄斑浮腫があった。症例を無差別に2群に分け,21眼には20mg,23眼には40mgトリアムシノロンアセトニドをテノン囊下に注射した。治療後3か月間の経過を追った。結果:投与の翌日から3か月後まで,各群で眼圧が上昇した。眼圧上昇は,投与の2か月後までは40mg群が20mg群よりも有意に高く,3か月後には両群間に有意差がなかった。中心窩網膜厚の減少と視力の改善については,両群間に差がなかった。結論:黄斑浮腫に対するトリアムシノロンアセトニドのテノン囊下注射では,20mg投与群と40mg投与群と効果が同様であり,40mg投与群では眼圧上昇効果が大きいことから,20mg投与が望ましい。

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要約 目的:Pit-macular症候群が発症した網膜色素変性の症例の報告。症例:71歳女性が3か月前からの右眼視力低下で受診した。10年前に網膜色素変性と診断され,左眼は失明していた。網膜色素変性についての家族歴はなかった。症例:矯正視力は右0.3,左0で,両眼に網膜色素変性の眼底所見があった。右眼の視野は固視点から10°に狭窄していた。両眼の乳頭中央部に小さな陥凹があり,右眼の黄斑部に2.5乳頭径の網膜剝離と分層孔があった。Pit-macular症候群と診断し,硝子体切除を行い,ガスタンポナーデを実施した。4か月後に網膜は復位し,0.4の視力を得た。結論:網膜色素変性に併発したpit-macular症候群の症例に硝子体手術を行い,黄斑部の網膜剝離が復位し,視力が向上した。

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要約 目的:Rathke囊胞により片眼性視神経炎が発症した小児例の報告。症例:15歳男児が右眼の視力低下で受診した。4年前に片頭痛と0.3への右眼視力低下があり,プレドニゾロン内服で軽快した。所見:矯正視力は右指数弁,左1.2で,眼底は正常であった。蛍光眼底造影で造影後期に右眼乳頭に過蛍光があった。ステロイド内服などで視力は1.2に回復したが,再び悪化し,頭痛,視野障害,失神発作などが生じた。初診の14か月後に,CTで下垂体の右方にRathke囊胞が発見された。囊胞を摘出し,その2週間後に視力は1.2になり,視野も改善した。結論:Rathke囊胞による圧迫が小児の視神経炎の原因であった。

連載 今月の話題

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 「後部硝子体皮質前ポケット」(PPVP)は黄斑前方にある硝子体液化腔である。PPVPの後壁は薄い硝子体皮質で,前壁はゲルからなっている。PPVPはさまざまな網膜硝子体界面病変の原因となっているが,生体眼では観察が困難であった1)。最近,スウェプトソースOCTにより,PPVPが容易に観察できるようになり,さまざまな疑問が急速に解明されつつある。

連載 硝子体手術アジュバント―知っておきたいコツと落とし穴・第7回

ヨード洗浄 島田 宏之
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コツ

1.ヨード製剤の原液を希釈する際には,生理食塩水,灌流液を用いる。

2.8倍希釈した2%ポリビニルアルコール・ヨードと,40倍希釈した10%ポビドンヨードとは,同等の殺菌効果を示す。

3.0.25%ポビドンヨードは,手術前~終了時の眼表面洗浄に適している。

4.0.25%ポリビニルアルコール・ヨードは,手術前の眼表面洗浄に適している。

落とし穴

1.ヨード製剤は,精製水(蒸留水)で希釈すると,低浸透圧による角膜上皮障害が生じる。

2.本邦ではヨード製剤として,ポビドンヨードと,ポリビニルアルコール・ヨードがあるため使用上の注意が必要である。

3.ポリビニルアルコール・ヨードは,眼内毒性が不明なため,手術中の眼表面洗浄には注意が必要である。

連載 何が見える? 何がわかる? OCT・第19回

OCTによる視神経乳頭形状解析 齋藤 瞳
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Point

◎SD-OCTを用いた視神経乳頭形状解析は全自動で行われ,HRTに準じたパラメータが算出される。

◎HRTのパラメータと互換性はないので注意が必要。

◎PPAが大きい症例,大・小乳頭や極端な近視性乳頭はSD-OCTでも誤判定されることが多いので解釈には注意。

連載 眼科図譜・367

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緒言

 Valsalva出血性網膜症は,Duane1)が初めて報告した比較的稀な疾患概念である。今回,スペクトラルドメイン光干渉断層計(spectral domain optical coherence tomograph:以下,SD-OCT)で特異な血腫形態を示した嘔吐が原因のValsalva出血性網膜症を経験したので報告する。

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 ここ十年余りの歳月の間に,原発閉塞隅角緑内障ほど大きな変革がもたらされたものは少ない。疾病の分類,名称に始まり,検査法,治療方針に至るまで大幅な変化がもたらされたのである。このような状況の下,新しい教科書,解説書が求められるのはけだし当然のことであり,本書の出版は誠に時宜を得た企画であるといえよう。

 Fosterらにより提唱された新分類では,緑内障という名称は緑内障性視神経症(GON)の存在の有無をもってのみ定められるという考え方に基づいている。そしてGONを伴わない狭隅角眼は閉塞隅角症(PAC)とし,緑内障という名称が取り除かれた一群として取り扱われることになったのである。この分類法の詳細や問題点について,いろいろな角度から明快な解説がなされていている。加えて日本緑内障学会による「緑内障診療ガイドライン」の初版から第3版までの変遷も対比されていて,理解を助けてくれる。しかしながら,久米島での疫学調査の成績のみならず,緑内障の名称が除かれたとはいえ,原発性のPACは原発閉塞隅角緑内障(PACG)と同様,急性発作によって失明につながる恐れのある様態であることに変わりはなく,その継続的な管理が大切であることが強調されている。

Pocket Drugs 2014 大内 尉義
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 福井次矢先生が監修され,小松康宏先生,渡邉裕司先生お二人の編集と,臨床疫学,臨床内科学,臨床薬理学を専門とされるお三方の手による『Pocket Drugs 2014』は,現在,わが国の臨床現場において使用されているほぼ全ての医薬品の効能,適応,用量・用法,副作用や禁忌等の注意事項など,薬物療法に関する最新の知識をまとめたものである。言うまでもなく,薬物治療は医療の中心であり,全ての医師は現行の薬剤について精通しておく必要がある。本書はその手助けをする目的で編纂されている。

 本書の最大の特徴は,その名の通りポケットに入るサイズの中に,個々の医薬品に関する情報が満載されていることであるが,多忙な外来,入院診療の場で使われる本書のようなreference bookは,必要な情報に素早くアクセスできることが極めて重要であり,本書はそのためにさまざまな工夫がされている。4色刷りのカラフルな紙面は,項目による色使いが統一されていてわかりやすいだけでなく,見ていて楽しい。索引も事項索引,薬剤索引が充実していて目的の薬剤へのアクセスが容易である。また,各章の冒頭に,そのジャンルの薬剤の特徴,作用機序などの総論的事項がわかりやすく記載されているのも本書の有用性を高めている。さらに,その中に,ガイドラインにおけるその薬剤の位置付けとエビデンスが記載されており,また個々の薬剤の最後にも「治療戦略」として〈evidence〉の項があり,エビデンスを重視する編集の特徴がよく表れている。薬剤の写真付きであること,薬価が記載されていることも有用で,さまざまな点で大変よく工夫されている。

今月の表紙

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 症例は48歳,女性。2週間前より感冒様症状があり,左眼の変視症,軽度の頭痛を自覚し来院。

 初診時視力は右0.3(矯正1.2),左0.1(矯正0.6),眼圧は右12mmHg,左14mmHg。両側の軽度前房内炎症,視神経乳頭の発赤あり。後極を主とする広範囲の漿液性網膜剝離を両側に認め,炎症所見の特に強かった左眼では,網膜周辺部から毛様体扁平部にかけて全周に滲出性変化がみられた。フルオレセイン蛍光眼底造影にて,早期の脈絡膜充盈遅延,中期に顆粒状蛍光漏出,後期には網膜下への色素貯留とVogt-小柳-原田病の典型的所見を呈した。

やさしい目で きびしい目で・176

趣味の時間 丹羽 やす子
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 開業医は時間がたっぷりあって,公私共々充実した時間を過ごせるものと思っていました。勤務医時代は開業医の先生が羨ましく,いつかは私も趣味にたっぷり時間を割いて…と夢見ていました。

 現在,父が院長を務める眼科に副院長として戻って早3年。憧れだった開業医生活を送っていますが,現実と夢のギャップがひどく泣きそうです。

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要約 目的:パターンスキャンレーザー光凝固の2か月後に硝子体手術が行われ,術中に網膜剝離が生じた1例の報告。症例:64歳女性が糖尿病と診断され,紹介受診した。高血圧と認知症があり,35歳のとき糖尿病を指摘されたが,放置していた。所見:矯正視力は右0.9,左0.5であり,両眼に増殖糖尿病網膜症があった。パターンスキャンレーザーで両眼に汎網膜光凝固を行った。波長は黄色で,出力は500~800 mW,凝固サイズは200μm,照射時間は0.02~0.03秒とした。2か月後に白内障と硝子体の同時手術を左眼に行った。最周辺部の硝子体切除の際に,耳上側眼底に医原性と思われる網膜裂孔を認め,レーザー凝固瘢痕を越えて網膜剝離が拡大した。液空気置換の後,裂孔周囲をレーザーで凝固し,網膜は復位した。以後2年間,網膜剝離の再発はない。結論:今回の条件で行われたパターンスキャンレーザー光凝固では,網膜の接着が必ずしも強固ではない。

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要約 目的:スペクトラルドメイン光干渉断層計(SD-OCT)でうっ血乳頭の経過を定量評価した特発性頭蓋内圧亢進症の症例の報告。症例:38歳女性が1週前からの左眼の飛蚊症と頭痛で受診した。所見:視力は両眼1.2,両眼にMariotte盲点の拡大およびうっ血乳頭を認めた。MRIで頭蓋内に占拠性病変はなかった。髄液圧は400mmH2Oと亢進し,特発性頭蓋内圧亢進症と診断した。SD-OCTによる乳頭浮腫面積の定量値は,治療前右11.3mm2,左12.9mm2。アセタゾラミド内服治療後,早期より乳頭浮腫面積は減少し,3か月後には右2.2mm2,左3.8mm2であった。結論:SD-OCTによるうっ血乳頭の定量評価は,特発性頭蓋内圧亢進症の治療効果を非侵襲的かつ客観的に評価するのに有用であった。

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要約 背景:「隅角形成異常を伴う先天性瞳孔虹彩水晶体膜」(congenital pupillary-iris-lens membrane with goniodysgenesis:CPILMG)は,1986年にCibisらが報告した片眼性の稀な疾患で,白色膜が隅角,虹彩,水晶体前囊の表面で増殖することが特徴である。目的:本疾患で瞳孔ブロックによる緑内障が生じ,手術を行った症例の報告。症例:生後9日目の男児が,右眼の白濁で紹介受診した。両親は健康で,2名の同胞も正常であるという。妊娠と出産には問題がなく,生下時体重は3,044gであった。所見:右眼に浅前房と白色膜による虹彩後癒着があり,眼圧は右35mmHg,左11mmHgであった。CPILMGによる続発緑内障と診断し,周辺虹彩切除術,隅角癒着解離術,瞳孔形成術を即日実施した。術後は前房深度が正常化し,眼圧は10mmHg台で安定した。6か月後の現在,透光体は透明で,眼底に異常はない。結論:CPILMGによる続発緑内障のある新生児に周辺虹彩切除術,隅角癒着解離術,瞳孔形成術を行い,良好な結果を得た。

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欧文目次

第32回眼科写真展 作品募集
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 第68回日本臨床眼科学会(神戸ポートピアホテル・神戸国際展示場)会期中の2014年11月13日(木)~11月15日(土)に開催される「第32回眼科写真展」の作品を募集します。

ことば・ことば・ことば プラセボ
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 外国の学会に行くと,よく食事に招待されます。

 招待状にはちょっとしたきまりがあります。必ず角封筒で,日本よりもずっと上等な紙を使い,文章はいささか形式ばっています。いちばん下の行にRSVPとあるのが通例です。

べらどんな ステロイド白内障
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 「セカンドオピニオンを」ということで,43歳の男性を紹介された。「眼内レンズのずれ」が問題点である。

 まず今までの経過を説明してもらった。ところが簡単ではない。幼時からアトピー性皮膚炎があり,軽症ではあるが,ずっと服薬中である。

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あとがき 坂本 泰二
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 現在は6月中旬で,ワールドカップ予選リーグの真っ最中です。ザックジャパンは今の所不振のようですが,本号が出るころはすでに結果は出ているでしょう。

 さて,今月の話題は群馬大学岸教授の「網膜硝子体界面病変の新しい理解」です。ご存じのとおり,岸教授は硝子体黄斑前ポケットを最初に発見されただけではなく,黄斑前ポケットと多くの疾患が関連していることを証明されました。これは今後も長く引用され続けるお仕事でしょう。この発見は,発表された時から評判になりましたが,最終的には本文に述べられているようにSS-OCTにより完全に可視化されました。若い時の発見が,在命中に評価,証明されるというのは学者としては理想的な道程であり羨望を禁じえません。本文にはそのことがわかりやすく解説されています。

基本情報

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臨床眼科
68巻8号 (2014年8月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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