臨床眼科 35巻5号 (1981年5月)

特集 第34回日本臨床眼科学会講演集 (その5)

シンポジウム 超音波の眼科的応用

序論 澤田 惇
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はじめに

 第34回日本臨床眼科学会において,「超音波の眼科的応用」と題するシンポジウムの司会をつとめるにあたり,この方面の先駆者らを敬意をもって紹介し,あわせて超音波に関する学会などについてお伝えしたい。

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 一般にAモード法は眼球の計測や眼球内および眼窩内病変の詳細な組織鑑別に有用で超音波診断法の基本となり,Bモード法はこれらの眼疾患の断層映像の把握による診断の確立という面で応用される。特に両法とも軟部組織の描写に優れているので,光学的検査法,およびX線検査法の短を補い,かつそれらとの併用により,眼科における第3のルーチンの検査法となりつつあり,さらに今日日常臨床面でのより一層の装置と診断法の改善と普及が望まれる。また眼内血流の動的解析に,Mモード法とドップラー法は非観血的観察法として優れているので,今後の発展が期待される。眼部断層像の精密診断には,水浸法Bモード装置が形態描写と内部エコーの検出に優れ,スクリーニング検査には直接法Bモード装置が簡易迅速なために有用性を発揮する。特に著者らが最近開発した新高解像度眼科用超音波診断装置は,分解能と操作性に優れ,眼科臨床上有用であった。

 また,過去15年間(1966〜1980)における総検査症例5,386例中,超音波による診断適中率は,網膜剥離96%(818/852例),網膜芽細胞腫89%(50/56例),眼内,ならびに眼窩腫瘍ならびに眼球突出例92%(569/618例)であった。これらの諸検査には規格化(標準化)された出力装置と探触子が使用された。

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 土浦協同病院眼科外来を1980年5月から8月の4カ月間に受診した患者より,健常結膜100例,病的結膜100例を選び,その結膜嚢内細菌叢と分離菌の薬剤感受性について実験を行い次の結果を得た。

(1)健常結膜より細菌が検出されたものは57症例(57劣),病的結膜より細菌が分離されたものは58症例(58%)であり,いずれも従来の検出率とほぼ一致するものであった。また健常結膜と病的結膜の検出率には差がないものと考えられた。

(2)健常結膜より分離された菌はStaph.epidermidisが43株(58.9%)と最も多く,次いでMicrococcus 12株(16.4%)であった。病的結膜からは,やはりStaph.epidermi—disが26株(34.7%)と最も多く認められたが,健常結膜に比較してその割合は減少していた。次いでStaph.aureus 13株(17.3%),α—Streptococcus 10株(13.3%),Hemophilus9株(12.0%)の順に検出された。正常細菌叢を考慮すると,Staph.aureus,α—Streptococcus,Hemophilusの3種の細菌が,土浦地方における細菌性結膜炎の主たる原因菌であることが示唆された。

(3)分離された細菌の各薬剤に対する感受性は,従来の報告に比較して良い傾向を示していたが,これは当地方における特色と思われた。

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 1979年2月13日から3月6日の問に,当院眼科で多数発見された急性結膜炎の原因につき,細菌学的およびウイルス学的に検討を行った。結膜嚢および咽頭からのウイルス分離は陰性であったが,血清反応からenterovirus 70型による急性出血性結膜炎(AHC)の流行が証明された。血清学的にAHCと診断できた25例の臨床的特徴は,10年前の大流行に比べ結膜下出血の頻度が少なく,出血があってもその程度が軽いことであった。

 当院職員および受診患者のAHCウイルスに対する中和抗体保有率を検討したところ,対照群では抗体保有率は10%以下であったが,AHCの流行した病棟の看護職員では結膜炎がないのにかかわらず,66.7%と著明に高かった。血清疫学的にみてAHCの不顕性感染の可能性が示唆された。

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(1)誘発前の涙液ヒスタミンは,健常者は1.6±6.8ng/ml,アレルギー性結膜炎3.7±1.5ng/ml,春季カタル4.8±5.1ng/mlで,健常群とアレルギー性結膜炎との間にp<0.005で有意差を認めた。抗IgE点眼15分後の涙液ヒスタミンは,健常群2.1±1.7ng/mlアレルギー性結膜炎5.0±5.1ng/ml,春季カタル6.2±4.8ng/mlで,健常群に比し,アレルギー性結膜炎ではp<0.05で,春季カタルではp<0.02で有意差を認めた。アレルギー性結膜炎と春季カタルの間には有意差はなかった。

(2)ヒスタミン点眼後の充血に関しては,健常群に比しアレルギー性結膜炎では1%,春季カタルでは2%以下の危険率で,結膜の過敏性亢進が認められた。アレルギー性結膜炎と春季カタルの間には有意差はなかった。

(3)ヒスタミン点眼後の掻痒または眼痛に関しては,健常群に比しアレルギー性結膜炎では,0.5%以下の危険率で,結膜の過敏性が亢進していた。春季カタルでは健常群との間に有意差を認めなかった。またアレルギー性結膜炎と春季カタルの間に有意差はなかった。

(4)血清ヒスタミン固定能は,アレルギー性結膜炎,春季カタルとも,P<0.005で有意に低下していたが,アレルギー性結膜炎と春季カタルの間では差が認められなかった。

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 スギ花粉症結膜炎11例(ただし3例は春季カタルを併発)を対象に0.1%Keto—tifen点眼剤を用いて安全性,薬効につき検索を行い,以下の成績を得た。

(1)総合効果では11例中著効3例,有効7例,無効1例で,有効以上の有効率は91%であった。

(2)効果発現の時期については,効果の認められた10例中7例(70.0%)が3日以内であった。

(3)本剤点眼による副作用として,点眼時に一過性のしみる感じを7例にみとめたが,その他の重篤な副作用はみられなかった。

 以上の結果から,本剤は花粉症結膜炎に対して有用な薬剤と考えた。

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 春季カタル100例の角膜病変につき検討した。

(1)おもな病変は高度びまん性表層角膜炎58例,限局性上皮病変35例,角膜潰瘍3例,老人環様混濁8例であった。

(2)角膜病変の増悪は7〜13歳に多く,また発症後4年以内のものに多く認められた。

(3)現在アトピー性皮膚炎を有する症例では角膜病変の増悪が多かった。

(4)継続観察例では角膜病変は4月から8月と11月に多くみとめられ約半季は冬期にも増悪をみとめた。また花粉アレルゲンに対する感受性の有無には影響されなかった。

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 Dry eyeの治療として,

(1)涙道閉塞法を行い,55眼中44眼に持続的効果を認めた。

(2)ヒトリゾチーム点眼法によって35眼中28眼に症状の改善を認めた。

(3)症例によっては,この二者の併用療法も試みる価値があると認められた。

 なお,いずれの方法においても,重篤な副作用は認められなかった。

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 ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌,P. cepacia 10症例ならびにP.maltophilia 1症例の臨床的検討を行った。なお,P. cepacia家兎眼接種実験で角膜炎の発症がみとめられた。

 本菌群は日常生活環境に広く常在して,二次的に眼感染症の原因菌となりうるもので,常用抗生剤,消毒薬に抵抗性の多いことから,院内感染,治療にあたっては十分に注意すべきこと,ならびに今後の臨床的検討が必要であることを述べた。

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(1)慢性関節リウマチ(RA)にて金療法施行中の症例81例につき眼科的検索を行ったところ,30例に角膜金症を認めた。

1)総投与量1,500mg以上では,32例中24例に角膜金症を認めた。投与期間2年以上では41例中29例に沈着を認めた。

 総投与量および投与期間と金沈着の程度には,相関関係を認めた。

2)血中濃度および1回注射量と角膜金症との間には,相関関係を認めなかった。

3)生体角膜内皮撮影装置にて,角膜実質に黄褐色の光輝性粒子を認めた。

(2)白色家兎6羽に100mg/kgのGold Sodium Thiomalate (GTM)を筋注し,臨床的検索,眼組織の金含有量測定,組織学的検索を行った。

1)家兎角膜には,人眼にみられるような金粒子の所見は認めなかった。

2)涙液,房水,硝子体に金が検出された。

3)光顕的検索で,角膜,結膜,強膜,ぶどう膜,外眼筋,涙腺,Harder腺に金染色陽性顆粒を認めた。

4)電顕的検索にて,角膜実質細胞,内皮細胞,膠原線維間に電子密度の高い顆粒状,針状の物質を認めた。

 以上より,角膜への金沈着ルートとして,涙液,輪部血管,房水の可能性を考えた。

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 白内障術後の角膜乱視の推移を,ophthalmometerおよびphotokeratometryシステムで測定し,切開の大きさ,縫合糸の種類について,その影響を検討した。

(1)切開の大きさについては,160度より3mmの方が,乱視頻度の増加,乱視の種類変化に及ぼす影響が小さい。

(2)縫合糸については,非吸収性縫合糸の方が,術者の意図,手加減を比較的長期間反映するという点ですぐれている。非吸収性縫合糸を用いて,手術終了時の角膜乱視をコントロールする縫合法を行えば,良い結果が得られる。

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要約 Shearing後房レンズ移植後における前眼部の状態を検討し,以下の結論を得た。

(1)術後前房深度は,平均3.45mmで,Binkhorstの提唱した後房レンズ前房深度より小さいものであった。また,術後2〜3カ月より浅くなる傾向がみられた。

(2)角膜厚は術後1週では.0.612mmと厚くなるが,術後5週より術前の角膜厚に復帰してくる。

(3) Shearing後房レンズ挿入後,角膜内皮のMean Cell Densityは初期の16症例において61.5%の減少を示したが,第2期16症例においては,33.0%の減少であり,全体として42.8%の減少であった。またMean Cell Areaは232%に拡大した。KPE後およびECCE後に挿入した例の間には差を認めなかった。

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要約 円錐角膜患者591名(1,018眼)に対するアンケート調査および32名(55眼)の眼軸長測定を行い,次のような結果を得た。

(1)患者の男女比は,男性71.1%,女性28.9%であった(2.46:1)。

(2)両,片眼性比は,両眼性72.3%,片眼性27.7%であった(2.61:1)。

(3)自覚的視力低下年齢は,X=14.21歳であった。

(4)全層角膜移植術は,16.6%に実施されており,移植年齢は,X=22.9歳であった。

(5)患者の体型的特徴は,日本人の標準値に近い体型,もしくは,やや痩せ型であると思われた。

(6)患者のABO血液型で,B型が29.2%と対照と比べ有意に多く認められた。

(7)既往歴に,アトピー性疾患が22.7%と対照に比べ有意に多く認められた。

(8)眼軸長測定の結果,前房深度X=4.15mm,水晶体前後径X=3.69mm,硝子体前後径X=17.20mm,全眼軸長X=25.05mmであった。

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(1)白内障嚢外摘出術後の視力は長期的安定性が良かったが,白内障嚢内摘出術後では,時間とともに視力低下の傾向が観察された。特に75歳以上の高齢者にこの傾向が見られた。以上は水晶体後嚢の防禦柵としての機能の一つの裏付けとも考えられる。

(2)視力0.5以下の場合,術前の合併症によると考えられる例が多く,現時点では,術前の合併症のない症例の選択に細心の注意を要する。

(3)矯正レンズに関しては,球面レンズ|1.0|D以内で矯正できた症例は視力が良かった。円柱レンズは,一定の傾向はなかった。

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 1975年12月〜1979年6月までにiris medallion lensを挿入した68人75眼について合併症を中心として統計的観察を行った。特に臨床的に重篤な合併症は,緑内障1眼と,角膜内皮ジストロフィーの4眼の内3眼,縫合糸が切れてレンズが完全脱臼した1眼,計5眼に生じた。しかしpilocarpinの点眼,レンズの除去,縫合糸の抜去により全例視機能は,大きく損われずにすんだ。脱臼は非常に高頻度(21.3%)に起きたが,非観血的に復位できた。60歳未満の合併症の発生率は非常に高頻度であり,従来よりいわれている,挿入は60歳以上の原則が厳守されねばならない。晩期合併症を防ぐのに重要なことは,確実なレンズの固定である。レンズの固定は嚢外法後,ループと後嚢を癒着させる方法がより確実,強固であると思われる。lris medallion lensは,この点に関して,大きすぎ,重すぎるので不適である。また60歳以上でも,合併症の発生は,16%と高頻度なので,筆者個人は,嚢外後はもちろん嚢内摘出後にiris medallion lensを使用することは,2度と行わない。既に挿入されたものについては,今後,脱臼,レンズ縫付糸の自然切断,角膜内皮ジストロフィーの発生に関して,特に厳重な長期にわたる管理が必要である。

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(1)我々はタイの眼科医療のレベルアップにつとめ,失明防止システム作りに参画した。

(2)タイ国は中進国の中間入りをし,失明率0.6%程度でWHOのランクでBランクに入っている。

(3)医師の意識の改革をめざし,インターンなど研修期を地方に送ることにより成功させつつある。

(4)失明防止活動はWHOの呼びかけにより活動をはじめたが,その対応が早くかつ実をいちはやく上げつつある基礎には,日本政府援助による人づくり,新しい眼科教育機関の創設が大きな力となっている。

(5)医療援助のあり力はいろいろあるが,我々が指向した,人づくり,システム作りの方向は,長い目でみてもっとも良い方法と確信する。

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 1975年6月から1979年11月までの5年間に松戸保健所が行ったアンケート方式による3歳児健康診査時の眼科検診を行って次の結論を得た。

(1)この方式でスクリーニングされた3歳児を検診して,かなり高率に屈折異常ならびに眼位異常を検出した。したがってこの方式は対象児の多い地域における3歳児の眼異常のスクリーニングとして有効な方法である。

(2)この方式の精度をあげるために,更にアンケート項目,判定指針,家庭における視力測定などについて検討が必要である。

(3)異常者の事後措置を十分に行うには,眼科医の緊密な連絡による一貫した指導が必要である。

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 小児の全身麻酔下における正常眼圧を求めるため,眼科手術前にSchiötz眼圧計およびPerkins圧平眼圧計で測定した。対象は男子1,365名,女子1,329名,合計2,694名(5.184眼/5.59,5,099眼/Perkins)で,Halothane麻酔により眼位の安定した術前深度にて眼圧測定を行った。

 測定した眼圧は低年齢ほど低く,低年齢児の眼圧と高年齢児の眼圧値について1%の危険率で有意差を認めた。また,Perkinsによる眼圧値はSchiötzによる値よりも2〜3mmHg低かった。

 1歳児の眼圧はSchiötzで15.35±2.95mmHg/5.59/637眼,Perkinsで12.7±3.3mmHg/619眼であった。全身麻酔下の正常限界値を>M+2S.D.として求めると21.26mmHg (Schiötz),19.3mmHg (Perkins)となり,緑内障眼の病的限界より考えて,全麻下では21mmHg (Schiötz),19mmHg (Perkins)以上の眼圧を示した場合,注意が必要である。

連載 眼科図譜・282

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 最近では眼トキソプラズマ症は決して稀な疾患ではない。しかし,この例は(1)後天性であること,(2)発病のごく初期(3日目)の眼底写真をとりえたこと,(3)その後10年間経過を観察しえたことなどで他の報告例にはない特徴を有すると思いここに報告する。

 症例:14歳,女子中学生。

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(1)1974年から1977年までの東京大学眼科外来のブドウ膜炎(総数1,066名)のうちベーチェット病は17.6%,原因不明のブドウ膜炎12.9%,原因不明の虹彩炎9.4%,フォークト・小柳・原田病7.7%,サルコイドーシス5.6%,Glaucomato-cyclitic crisis 5.4%,原因不明の網脈絡膜炎4.9%がこれに次いだ。また増田型中心性網脈絡膜炎は24.1%であった。

(2)1973年から1977年までの東京大学眼科ベーチェット病患者152名の視力経過をみた。ベーチェット病患者全体では視力が0.1未満が発症後9年以上の80%を占め,女性患者では発症後11年でも視力0.1未満のものは20%以下であった。前眼部型では発症8年後でも視力が0.5以上が70%以上で,眼底型では20%以下であった。

(3)1973年から1977年までの東京大学眼科ベーチェット病患者209名の主な眼合併症は白内障35.6%,視神経萎縮15.2%,黄斑部変性13.4%,緑内障11.3% などであった。

(4)ベーチェット病の併発白内障の手術をした27名39眼の術式と合併症と術後6カ月以上経過観察した20名30眼の術後視力を検討した。最終的に視力改善をみたのは22眼であった。

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 片眼の無裂孔原性網膜剥離を伴う2例のnanophthalmosについて報告した。網膜剥離を伴わない他眼にはそれぞれ視神経萎縮,高眼圧を認めた。症例1にはBrockhurstによる渦静脈周囲強膜半層切除術を行い好結果を得た。更に両症例の網膜剥離眼の螢光眼底写真にみられた網脈絡膜循環の遅延・脈絡膜異常螢光より,網膜剥離の原因は長時間の脈絡膜うっ血による脈絡膜からの漏出と考えた。視神経萎縮眼では脈絡膜への血液流入減少が,高眼圧眼では脈絡膜循環の正常化が網膜剥離を発症しない原因と思われた。

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 非定型的脈絡膜欠損に伴う網膜剥離および,網膜嚢胞と思われる嚢胞が脈絡膜欠損部にみられ,特異な経過をたどった網膜剥離の各1例について報告した。

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 ベーチェット病患者38例を対象にコンピューターを用い解析し,次のことが明らかとなった。

(1) Hypopyonは対象眼の67.1%,前眼部発作の31.6%に,黄斑部出血は対象眼の40.8%,眼底発作の23.6%にみられ,いずれも対象眼の22.4%に再発した。

(2)眼発作は患者の89.5%が両眼,10.5%が片眼のみに発生し,両眼交互に起きる規則性はみられなかった。

(3)眼発作の期間は,前眼部発作2〜18日(平均9日),眼底発作5〜49日(平均23日)で,その間隔は2〜1,082日(平均96日),6カ月以内85.8%,2カ月以内50%であった。

(4)眼発作の特定季節への集中はみられず,患者の50%はすべての,84.2%は二つ以上の季節に発生し,夏の発作は梅雨と密接な関係がみられた。

(5)静脈血白血球・好中球数は眼発作を中心に変動した。ともに発作3週前から増加し発作前後各1週に最高となり,前眼部と眼底の発作の間に差はなく,重症な眼底発作は軽症より発作前早期に著しく増加した。

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 62歳男性の結晶沈着網膜症の1例を報告する。主訴は著明な視力低下と夜盲であり,家族歴,既往症に特記すべきものはない。

 眼底には,左眼黄斑部に白色萎縮巣を,右眼黄斑部に色素沈着をみとめ,両眼後極部にび慢性の色素上層萎縮と多数の黄白色点状沈着物をみとめた。ERG,EOGは準正常で,暗順応は著明に障害されていた。血清オルニチン値および尿中蓚酸値は正常であった。

 以上の所見から,本症例をある種の脈絡膜毛細管板と網膜色素上皮の萎縮を主体とする変性疾患に結晶沈着を伴った結晶沈着網膜症と診断した。

手術ノート

緑内障(虹彩切除術) 木下 渥
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 虹彩切除術は瞳孔ブロックによる原発性および続発性閉塞隅角緑内障に対する手術法であり,合併症が他の対緑内障手術にくらべて格段に少ないすぐれた手術である。

 虹彩切除術の作用機序:水晶体と虹彩のつよい接触あるいは癒着により後房から前房への房水の流れがさまたげられることにより上昇した後房圧のために虹彩根部が前進して隅角が閉塞し眼圧が上昇する。この状態に対して虹彩の周辺部に穴を開けると,前後房間の房水の圧差がなくなり前進していた虹彩がもとの位置にもどって隅角の閉塞が解除されて眼圧が正常化される。虹彩切除が有効に働くには隅角が虹彩根部の前癒着により広範囲に閉鎖されていないという条件が必要である。

文庫の窓から

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 わが国の戦国時代から安土桃山時代にかけては学説より実際の治療を重視したいわゆる実地医術が外科,眼科,産科および小児科等を中心に盛んになった。例えば戦場における負傷者に対する傷の手当などの必要性から金創医(専ら金創の術を行った士,軍陣外科医)がますます多くなった。眼科においても,伝統ある馬嶋流眼科以外にも,治療術そのものにはそれ程大差はないが,わずかの手技,治療法等の相違点をもって一流一派を唱えるものが漸く増して来た。また,この時代には中国(明)朝鮮との交流もあったので,貿易と共に留学僧や商人等の往来もあり,大陸の文化,医術等を直接学んで帰国する者も数を増しつつあった。一方,ポルトガル船が種子島に漂着(1543,一説1542)し,鉄砲を伝え,天文18年(1549)にはヤソ会宣教師ザビエルが鹿児島に渡来し,天主教を伝導する等いわゆる南蛮文化が漸くわが国に入ってきた。

 「白山院(陰)土当延流眼科書」には白山院土当延流の起りについて,以下のようにしるしている。

基本情報

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臨床眼科
35巻5号 (1981年5月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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