臨床眼科 33巻2号 (1979年2月)

特集 第32回日本臨床眼科学会講演集 (その1)

特別講演

眼病と青の感覚 横山 実
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緒 言

 万人に安らぎの情緒を与えるといわれる青の感覚が眼病に際して侵されるとすれば,それは主として網脈絡膜病変の場合であり,視路の疾患ではむしろ赤緑障害の起りやすいことが古くから知られていた1)。この原則はおそらく現在でも全般的にはほぼ通用するように思われるが,なぜそのような相違が起るのか,あるいは,それが臨床的にどのような意味をもつものであるかについてはあまり明かにされていない。私たちは数年前に,たまたま青錐体系のERGを分離記録しえたことから2),青感受系の反応を種々の眼病について検討してきたが,症例があつまるにつれて,この感受系は,生理的な状態のみならず病態においても赤・緑系とはかなり異なつた反応を示すこと,しかも,ある種の疾患の早期に侵されやすいことが分つてきた。もちろん,単に青の感覚というならば,それにはすべての錐体系と桿体系が複雑に関与して生ずるわけではあるが,眼にしみるような"deep blue"のさわやかさを視界に導入する主役を演ずるものは,やはり青錐体系であると思われる。現在,未だ検索の途上で,十分なデータが集積されたとはいい難いが,二,三の主要な眼病におけるこの感受系の反応態度の特徴と,それが臨床的にどのような意味をもつかについて述べてみたいと思う。

学会原著

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緒 言

 Mooren潰瘍はただでさえ難治性,あるいは不治の眼病であるが,これに白内障を併発すると事態は甚だ悲惨となり,患者は不断の激痛と失明に耐えかねて,ついには眼球摘出を望むに至る。

 ところが,こうした眼を救う方法は,いまだ報告されていない。そこで私は,いろいろと工夫や試行を重ねた末,幸いにも最近の2例を完全に救うことができて,患者と喜びを共にした。

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緒 言

 1903年Fuchs1)は,次の様に述べている。『角膜輪状膿瘍とは,細菌感染により,角膜輪部に沿つて短期間のうちに出現する,輪状の,膿瘍の浸潤で,数日内に角膜全体の膿瘍や全眼球炎に至る。ほとんどは穿孔性の外傷後に起きるが,非穿孔性の外傷後にも現われることがある。また白内障術後の感染症はほとんど角膜輪状膿瘍である。』

 滅菌や消毒の概念が十分でなく,また抗生物質の発見される以前は,この感染症はFuchsが述べるように,眼科医にとつて恐るべき病気の一つであつたが,現在その報告は皆無といつてよい程である。これは,滅菌や消毒の発達で,手術後には全くといつてよい程起らなくなり,また外傷後でも速やかな抗生物質の投与によつて未然に防がれているからであろう。しかし絶無でなく,後述するように,いつたん進行した場合には,抗生物質の大量投与にもかかわらず予後が非常に悪く,また日常の些細な非穿孔性の外傷(角膜異物!)からも発病し得るので,注意を喚起したい。この5年問に8例の角膜輪状膿瘍を経験したので,典型的な病像,所見,全眼球炎後摘出した眼球の角膜組織像を示す。

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緒 言

 翼状片術後再発の予防にマイトマイシンC点眼を行ない,強膜に損傷をきたす症例をみることについては,既に報告5,6)してきたところであるが,今回更に6症例を経験し,この中5例については強膜移植を行なつたので追加報告する。

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緒 言

 現在わが国においては,IDUは角膜ヘルペス患者に対して唯一の化学療法剤として使われている。しかしその効果には限界があり,新しい抗ヘルペス剤の導入が望まれている。著者らは今回,核酸合成阻害剤に属するtrifluorothymidine (F3T)およびadenine arabinoside (ara-A)を使用する機会を得たので,角膜ヘルペスに対するこれら薬剤の臨床成績について報告する。

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緒 言

 シェーグレン病患者にとって,人工涙液の点眼は自覚症状の軽快に100%の効果があることが報告されている1)。しかし,ある会社の医家むけ人工涙液の販売中止により,適当な局所療法剤としての点眼液が姿を消した。また,頻回の点眼を要する不便さもあった。

 今回著者らは,シェーグレン病等の涙液分泌減少症には使用禁忌といわれていた2−HEMAの重合体を素材とするソフトコンタクトレンズ(以下SCL)を,そのbandage effectと,水分補給を目的として,厚生省研究班の診断基準による原因不明の乾性角結膜炎(以下KCS)患者に装用させた。また,自覚症状より得たKCS-Indexを作成し,初診時より治療によつてIndex値がいかに変化したかをも検討した。

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緒 言

 犬蛔幼虫による眼球の移行幼虫症候群(viscerallarva migrans syndrome)の報告は,欧米では1950年のWilder1)を始めとしてその後多くの報告がみられる。これに対して,本症の罹患条件が欧米とほぼ同じと考えられるにもかかわらず,わが国における本症の報告は,吉岡2),近藤3)の2例をみるのみできわめて少ない。

 最近われわれは,ブドウ膜炎で発症し,炎症の消退とともに網膜下に"虫跡"と思われる灰白色の線条が広範囲に観察され,免疫電気泳動法でtoxocara canisと診断された1症例に遭遇したので,その概要を報告する。

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緒 言

 近年,抗生物質,制癌剤,Steroid剤などの強力な化学療法の発達および放射線療法などの治療法の進歩に伴い,従来非病原性あるいは,弱毒菌といわれてきた常在性細菌によつて惹起されるOpportunistic infection1)がclose upされてきている。眼科領域においても,抵抗力の弱い新生児,乳児,あるいは老人などにこういつた細菌による疾患がおこりうることも十分考えられる。そこで著者らは,このようなOpportunistic patho-genと思われる細菌が眼科疾患において,どのように分布し,更に,これらが病因になりうるかどうかについても検討を加えることを試みた。今回はまず,結膜炎を中心とした疾患から細菌の分離同定を行ない,多数の分離をみたS.epidcrmidisについて,その薬剤感受性をはじめとして更に詳しい検索を行なつた。

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緒 言

 近年,化学療法の発達ならびに宿主側要因の変化にともない,いわゆるOpportunistic pathogensによる感染症が注目されている。Staphylococcusepidermidis (以下,Staph. epidermidis)はその一つであり,本菌による感染症の増加は本邦のみならず広く欧米において重視されているところである1)

 眼感染症においては,術後感染や眼内炎の報告がみられている2)

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緒 言

 春季カタルの原因は,不明であるが高温または光線のような物理的要素が誘発因子となつて,外因性アレルゲンまたは自己免疫によつて結膜に過敏性が発生し,アトピー性体質,内分泌異常やワゴトニーのある若年者に好発する疾患であるとDuke-Elder1)はのべ,多くの人々もこのように理解している。本症の根治療法は未だないが,発症再燃時に対症療法を行なつて自然治癒を待つのが通例である。対症療法に最も効果を発揮するのはステロイド剤の投与であるが,時に治療に抵抗し,角膜障害を併発したり経過が遷延する難治性のものが見られる。これらに対しては,ステロイド全身投与1),β線療法2,3),結膜瞼板の切除術4)など種々な治療が試みられているが,副作用の点から長時間の治療には適さないものもある。ところで,Amoils5)は1975年,眼科における冷凍手術の応用として,春季カタルに冷凍療法を試みその成果を,また本邦では古く1924年,秋谷6)が春季加答児に対し雪状炭酸を貼用してその効果をのべているが,追試報告は内外を通じてない。今回われわれはすでに種々な治療が行なわれたにもかかわらず角膜障害を併発した難治性の眼瞼型春季カタル8例に冷凍療法を試み二,三の知見を得たのでここに報告する。

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緒 言

 蚕蝕性角膜潰瘍(以下M.U.)は,Mooren'sUlcerとも呼ばれており,比較的まれな疾患であるが,激痛をともないまたしばしば両側性に出現し難治性である。原因も不明である。最近,角膜潰瘍の成因ならびに進行に角膜コラゲナーゼ活性の上昇が密接に関与することが,Slansky, Itoiら1)により指摘され,コラゲナーゼ阻害物質を用いた治療法が,M.U.に対しても応用されたが,決定的なものとはなりえなかつた。

 1975年Brown2)は,M.U.の潰瘍隣接部結膜にも,角膜と同様にコラゲナーゼ活性の上昇を認め,この結膜コラゲナーゼの病的産生こそが,角膜潰瘍を進行せしめるものと推論している。さらにBrownはこの論拠から,結膜コラゲナーゼを抑制することが,M.U.の治療として,より適切であるとし,その手段として角膜潰瘍部の掻爬を含む潰瘍隣接部結膜の切除3)を提唱している。この方法は,本邦では武井ら4)によつて追試され,有効であると判定されている。

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緒 言

 角膜真菌症は,年々報告例が増加する傾向にあり失明に至る症例も少なくないが,適切な治療法の原則については,ほとんど研究がなされていない。その主な原因は,第1に優れた抗真菌剤がなかつたこと,第2に個々の症例の経過が多種多様であるため治療効果の判定が困難であること,第3に実験に適したシステムがなかつたことなどがある。

 しかし最近は優れた抗真菌剤も新たに開発され,また著者は角膜真菌症の研究に適した実験システムを開発した。そこで今回は,これらを用いて各薬剤の最小発育阻止濃度(MIC)と治療効果との関連,ならびに点眼回数・点眼濃度・角膜上皮剥離が治療効果に与える影響について検討した。

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緒 言

 われわれはモアレ理論を使つて乳頭の深さを臨床的,定量的に測定する方法を発表してきた。しかし眼底上でモアレ縞を発生させる方法3,4),格子縞のある2枚のフイルムを重ねる方法5),いずれの方法も発生したモアレ縞が不明瞭であつた。このため前回報告のした眼底撮影装置5)によつて得られた1枚の格子像のある眼底フイルムを解析して陥凹の深さを定量的に測定する装置を作成し,既に一部は1978年に行なわれた国際眼科学会緑内障シンポジウムで発表した6)

 今回はこれらの装置を使つて正常および視野障害を持つ緑内障眼の乳頭を立体的に検討を加えたので報告する。

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緒 言

 ある程度進行した緑内障では視神経乳頭は定形的な陥凹と萎縮を示し,視野にも定形的な欠損が証明される。しかし何の症状,所見もない眼において,わずかの眼圧上昇が出没し,それが続いているときに,どのような症状,所見がどのように出現し,進行するものかについては全く知られていない。最近Hoyt1)は網膜神経線維層の弓形の欠損が緑内障の他覚的初期症状となりうることを推定している。現在動物実験により慢性型の実験モデルを作ることは尚技術的な困難がある。

 Posncr-Schlossman's syndromeは何れの例も短いときは1〜2日,長くとも8〜10日以内で終る比較的高くないレベルの眼圧上昇が時折り繰り返して起こるという,かなり限定された条件により規定されている自然界の優れた実験モデルともいえる。

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緒 言

 無水晶体眼の緑内障で眼圧が薬物療法によりコントロールできなくなつたときには,毛様体解離術が最もよい手術適応であるとされ,これまで広く行われて来た。しかし毛様体解離術についてはその効果が不安定なこと,および有効期間が短いことが問題点として指摘されている。特に手術部位として好適な眼球上半部が水晶体手術の際の合併症,すなわち硝子体脱出やハンモック瞳孔などで使えず,下半部に手術を行わざをえない場合は,更に有効期問が短いのが普通である。これは術後の出血や炎症でいつたん解離した強膜・ブドウ膜間隙が再び閉じてしまうためだと一般に考えられている。強膜・ブドウ膜間隙の再閉鎖を防止する目的でKrasnovの手術1)やSachsenwegerの手術2)等が老案されているが,手術材料等に問題点があつて末だ広く行われるに至つていない。われわれはこの解離間隙の再癒着防止のために,手術時,強膜・ブドウ膜間隙にシリコンロッド小片をはさみ込む「シリコンロッド挿入毛様体解離術」を考案し,薬物で眼圧コントロール不能の無水晶体眼緑内障8例8眼にこれを行つた。その結果,良好な成績を収めたのでここに報告する。

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緒 言

 近年真菌症の増加が注目を集め,検出される真菌も非常に多岐にわたる傾向にある。眼科領域においても,Aspergillus, Candida, Fusarium等を初めとして,種々の真菌のOpportunistic infectionを起した症例が報告されている。私たちはこの度やはりその範疇に属するものとして,Paecilomyceslilacinusによる眼炎を経験したので報告する。眼真菌症より本菌が分離されたのは本邦では初例と思われる。

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解説

 ケジラミの睫毛寄生phthiriasis palpebrarumは一時報告がみられなかつたが,近年報告が散見されるようになつている1〜4)。睫毛に寄生する場合,頭毛や眉毛にはあまり寄生しないようである。今回,睫毛ばかりでなく頭毛および眉毛からも虫体および虫卵を多数見出した症例を経験したので報告したいと思う。

 症例:8歳10カ月,男子。

連載 眼科臨床レントゲン診断学・14

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 脳血管撮影は脳血管に造影剤を注入してX線撮影を行い,脳血管の状態から頭蓋内の病変を診断する方法である。脳血管撮影にも種々の方法があるが,神経眼科で行われるのはその中でも比較的容易な頸動脈撮影carotidangiography(CAG)であろう。

眼科手術研究会

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緒 言

 一眼性白内障,特にかなり高年齢の患者を手術すべきか否かは,以前から疑問とされて来た。レンズによる矯正はいろいろな問題を含んでおり(Jack-in-the box phenomena),コンタクトレンズも諸家の統計の示すごとく,永年装用できる人は30%以下であつてみれば,一眼性白内障手術後のリハビリテーションには困難な問題が多い。眼内レンズはこの問題解決にかなり適切な方法ではあるが,人工レンズを眼内に入れ長期間必ず安全かどうかは未解決の問題であり,著者自身の30年以上の臨床において眼内レンズは浮んでは消え消えてはまた浮んできた課題の一つであつた。

 BarraquerはStrampeliの眼内レンズで永年勇敢な挿入手術を行つてきたが,1962年,ついに手術を断念した。その翌年,RohrschneiderとRe-mkyはミュンヘン大学において,Danheimレンズをかなり多数眼内に挿入していた。しかし,その後間もなくこの手術を中止した。これらは著者が親しく見聞したところである。こうした事実が著者をして,長年月に渡り眼内レンズ挿入術に関心を向けさせなかつた原因であつた。

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緒 言

 螢光眼底造影法は近年著しく普及し,多くの眼底疾患の診断,治療方針の決定,経過観察などに不可欠の検査法となつている。一般には眼底カメラを通して眼底造影の状態を観察しながら,眼底撮影を行うが,撮影したネガフィルムを観察する際に,これを直接反転投影すると観察はいつそう容易となる。

 今回,インバージョンビューワー(Nikon)を改良し,螢光眼底写真用試作機を作り,螢光眼底撮影後の黒白ネガフィルムを投影観察した結果,反転像は約3倍に拡大され,螢光像の観察が極めて良好であり,利用価値が大きいと考えられたので報告する。

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目 的

 両眼視検能検査法には種々あるが,できるだけ日常視に近い状態で両眼を分離する方法にはSectorを用いたAulhornの位相差ハプロスコープがある。今回われわれはSectorのかわりに液晶をシャッターとして利用したハプロスコープを開発した。日常視に類似した環境での自覚的,他覚的斜視角の測定,融像,立体視,対応,回旋偏位等両眼視機能の検査を目的とする。

基本情報

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臨床眼科
33巻2号 (1979年2月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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