看護教育 57巻11号 (2016年11月)

特集 使える「患者役」になろう!

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 看護教育においては,常に「患者役」が必要となります。ペーパーペイシェントや数値だけの事例を除けば,授業から演習,技術の習得から接遇対応のシミュレーションまで,患者役が存在しない場面はないと言ってもいいでしょう。ただ,高度な教育を受けたSP(Standardized Patient)が不可欠なOSCEはともかく,訓練された模擬患者を授業で活用できる機会は限られていますし,臨床看護師に患者役で協力してもらうのも,常にとはいきません。当然教員がその役割の大半をこなすことになります。

 大抵の教員は,自らの臨床経験と学んだ知識で患者役を演じます。けれども,そこに目的達成のために「演じている」という意識はあるでしょうか? さらに言えば,学生に患者役をさせる際に,「演じる」ことを意識させているでしょうか?

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はじめに

 看護教育において,ロールプレイは日常的に行われている手法である。特に,看護技術演習では,患者役と実施者(看護師役)を相互に演じることで看護が学び取られていくことを願ってさまざまなロールプレイが行われている。しかし実習室で演習し相互に体験すれば,それだけで目標とすることを学べるとは,おそらく誰も思ってはいないだろう。

 実習室と,実際の受け持ち患者を目の前にした臨地実習の間には越えなければならない壁が大きく立ちはだかっている。なぜなら,学校で学ぶ看護の方法は,臨床で同じ形で実施できることはほとんどなく,患者それぞれに,そのときその場で臨機応変に応用,アレンジしていくことが求められるからである。主に成人を対象とした一般的な実施方法の例をデモンストレーションやビデオで覚えた後,それを応用・アレンジする道は険しい。

 それでも,この険しい道を越えていこうとする学生を後押しできるような,できるだけ臨床状況に近い教育ができないかという教員の願いを実現する方法として,より効果的なロールプレイの工夫が重ねられているのだと思う。

 効果的なロールプレイには,有用な患者役が必要である。本稿では,特集テーマである「使える患者役」になるにはどんなことが必要なのか,筆者のこれまでの体験を紹介することで,日ごろのロールプレイという教育実践を,より豊かな学習の場にしていただけることを願いとする。

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ライフ・プランニング・センター(LPC)の模擬患者育成の経緯

 財団法人ライフ・プランニング・センター(以下,当財団)は,1973年,当時聖路加国際病院院長代行だった日野原重明が「一人ひとりの健康づくりとより良い医療の実現」をめざし設立された財団である。1970年代,医師やナースの継続教育がまだ一般に導入されていないときに海外から講師を招聘し,さまざまな新しい医療の知識と技術の普及に努めてきた。

 1975年,当財団は「模擬患者参加による教育法」にいち早く着目し,カナダのマクマスター大学のハワード・バロウ教授をLPC国際フォーラムに招聘し,日本の医学看護教育に模擬患者(以下,SP)の概念とその活用である「模擬患者参加による教育法」を紹介した。その後,米国・カナダから講師を招聘して,同様のワークショップを3回開催してきたが,SPを活用した教育は当初はほとんど普及しなかった。それは日本における医療従事者教育が長い間座学が中心であったこと,医療者が主導を取って患者を疾患別,臓器別にみるという医療であったこと,また医師の国家試験は医学知識に限られ,臨床能力をテストする機会はなかったことなどが理由としてあげられる。

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 東京大学では,医学科4年次学生を対象に模擬患者による医療面接実習を2002年より行っていたが,2008年より,大学として独自の模擬患者養成にふみきった。その際,地理的に近くかつ国立大学法人であるという共通項をもった東京医科歯科大学と共同で,『模擬患者つつじの会(以下,つつじの会)』を結成。ここで養成された模擬患者は5期51名にのぼり,現在も31名が登録されている。

 今回は,その『つつじの会』に所属する3名の模擬患者に「患者役を演じること」について伺った。

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当校での「OGナース」の模擬患者としての活用

 看護の現場では,急速な医療の高度化による侵襲の高い行為や,高齢者の増加・対象者の権利意識の変化などから高度なコミュニケーション技術が求められるようになってきた。しかしながら,臨地実習においてはそうした行為を十分に体験することが困難になっている。厚生労働省は「看護教育の内容と方法に関する検討会報告書」1)において,侵襲を伴う行為を習得するためのシミュレーターの活用や状況を設定した演習の充実およびコミュニケーション能力を伸ばすため模擬患者を活用したシミュレーション教育を提言している。つまり,より現実味のある演習を展開するためには,リアルな状況(シナリオ)を創り出すことと,それを実習室のような学びの空間で再現する患者役が必要ということである。患者役には,NPOなどでトレーニングされた模擬患者の活用が望ましいが,実施までの打ち合わせなどにかかる時間や労力,費用の問題があり,実現は難しいという学校・養成所が多いのではないか。

 当校は,3年課程の看護師養成とともに,看護職員の質の向上を図ることを目的に,看護職員の継続教育の機関として,2003(平成15)年度より看護研修センター(以下,当センター)を附帯している。当センターには,臨床経験30年以上の経験を有し定年退職した後の再任用・嘱託職員であるベテラン「OGナース」がおり,出張研修や看護職カムバック研修など,さまざまな研修事業で活躍している。「OGナース」は病院での長い臨床経験はもとより,人材育成・管理業務の経験や,なかには看護師養成所の教員の経験を有する者もおり,豊富な経験と人間的豊かさをもつ貴重な人材である。

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 弊誌56巻10号の特集『あらためてHow to ロールプレイ!』において,「1年生の基礎看護学のコミュニケーションの授業のなかでのロールプレイ」を,2人の看護教員と2人の俳優で行いました。食欲不振で食事をとらない80歳の女性患者のところへ看護師が食事をもってくるが,患者は「要らないからもっていって」と拒否する,というシチュエーションでのものでした。

 5分ほどのロールプレイ後に気づいた点などをフィードバックするという方法で,特に指示のない通常版と,演出家が教員にアドバイスしたバージョン,俳優が行ったバージョンと3パターン,それぞれ患者役と看護師役を交代して行いました。

 今回は,そこでロールプレイを行った教員の1人と,アドバイス・演出を行った演出家に,当時感じたことや,その後ロールを演じることについて思ったことなどについて話していただきました。

(昨年のロールプレイは,902頁に掲載したQRコードを読み取ることでご覧いただけます)

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はじめに

 2001年7月,保健師助産師看護師法(以下,保助看法)における欠格事由が,絶対的から相対的「心身の障害により,保健師,助産師,看護師又は准看護師の業務を適正に行うことができない者として,厚生労働省令で定めるもの」へと改正されました。同法において心身の障害分類や程度は明記されていませんが,保助看法施行規則第一章 免許 第一条にて「視覚,聴覚,音声若しくは言語機能又は精神の機能の障害」と特定されています。これらは,主に保健師・助産師・看護師国家試験合格後の免許申請時に提出する診断書において記載を求められます。

 2001年の改正以後,該当者の免許付与数は公開されておらず,長年,障害者欠格条項をなくす会および当事者により,公開が要望されてきました。その結果,2016年7月,過去3年分の免許付与件数の公開に至りました。また,2014年,当該診断書の様式が改訂されています。

 日々学生に接する看護教員に,より深い理解を期待し,今回の免許付与件数公開をめぐる状況について解説します。

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本校の災害看護への取り組みとその経緯

 本校における「災害看護」は,2005(平成17)年に3年次の臨床看護総論の科目として2時間を位置づけたのが始まりである。その後2006(平成18)年に高山赤十字病院からの要請を受け,ボランティアとして救護訓練の参加を開始。翌年の2007(平成19)年からは高山市総合防災訓練における,応急救護所開設班(Takayama Emergency Response Unit以下,T─ERU:高山市,高山赤十字病院,久美愛厚生病院,・医師会から高山市総合防災訓練を終了した者などから編成)の救護訓練への参加依頼を受け,ボランティアとして参加している。この高山市総合防災訓練において,学生がBLS・AEDを一般市民に指導できるように,2010(平成22)年からは消防署にて事前訓練を開始した。また,2012(平成24)年からはJA岐阜厚生連久美愛厚生病院(以下,久美愛厚生病院)からの要請を受け,傷病者役として救護訓練の参加。2013(平成25)年度からは4つの訓練すべてを授業に位置づけて確立し現在に行っている。

 災害看護の授業展開と4つの訓練の位置づけは表1の通りである。

連載 だから私はこう書いた 系看著者のフィロソフィー・3

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高まる精神保健福祉の重要性

地域移行への課題と現状

─昨年5月末,「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策の今後の方向性」のとりまとめが厚労省から発表され,文科省管轄の学校にも,送られました。これは精神看護のなかでも,特に「精神保健福祉」の話題だと思いますが,まず,こうしたまとめが送られた背景,精神保健福祉の現状を教えていただけますか。

連載 グループワークの“達人”への道・5

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 グループワークに向けてグルーピングの準備は整いました。しかし,いかに楽しくグループが編成されたとしても,それだけではグループワークは始動しません。学生がグループワークの意義や価値を理解しているか,ワークを進めるにあたって注意すべきことを知っているか,そのことを確認し,必要に応じて予感させたり,擬似的に体験させたりする必要があります。

 今回は,グループワークの初日に学生に対してどのような働きかけをすればよいのかを考えていきます。

連載 東西南北! 学生募集旅日誌・5

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 今回は三重県の伊賀上野への旅をご紹介します。伊賀市は三重県北西部に位置する都市です。旧上野市にあたる市の中心部に,本校の母体病院である信貴山病院分院の上野病院があります。地名は東京都の上野と区別するために,伊賀上野と呼ばれているそうです。上野病院は本校より車で1時間余りの場所にあり,毎年何度か行くことがあるのですが,私のとても好きな場所の1つです。伊賀上野は伊賀忍者の里,松尾芭蕉生誕の地として知られていますが,昭和初期に再築された上野城や忍者屋敷,芭蕉翁生家などの観光名所もあり,おいしい伊賀牛も有名です。旧城下町でよく見かける「丸の内」「銀座通り」「赤坂」といった名称の地があり風情を感じます。

 昨年より病院の会議室をお借りして本校の学校説明会を始めました。その結果,ここに参加して受験してくれた学生3名が現在1年生のクラスにいて,寮生活をしながらがんばっています。そこで今年も,学校長,教務主任,広報担当事務員とともに出向き,説明をさせていただきました。

連載 考える力を育てるシンキングツールの活用・8

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構成を計画する

 これまでに,シンキングツールを活用するときには,考えを断片的に書き出すだけでなく,それをもとに「自分の考え」をつくりあげることが大切だと書いてきました。自分の考えを書かせる機会は,レポートや報告書,卒業論文など何度もあると思います。文章を書くことを苦手とする学生が多いのも事実です。そういう学生にも,文章の構成を先に計画させてから書かせると,それまでより論理的に,しかも少しウィットに富んだ文章を書けるようになることが多いようです。そういう目的のために,ピラミッド・チャートを使います。

連載 笑いの伝道師Wマコトのコミュニケーション革命・11

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2人 はいどうも〜!Wマコトです。

中山 さぁ,本日も始まりました『笑いの伝道師Wマコトのコミュニケーション革命!』。中原さん,われわれの連載も残すところあと2回となりました。

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“教育不足”にかかわる事例とその影響

 日本医療機能評価機構の医療事故情報収集等事業の平成27年年報1)では,2015年1月1日から同年12月31日までの集計で,参加登録医療機関からの報告で挙げられている医療事故の発生要因のなかで,「確認を怠った」「観察を怠った」「判断を誤った」「知識が不足していた」「報告が遅れた(怠った)」など,さまざまな要因が挙げられている。このうち,「教育・訓練」は,9672件中,682件(7.1%)であった。また,ヒヤリ・ハット事例の発生要因では,「教育・訓練」は,7万9361件中,2856件(3.6%)であった。

 この結果をみると,教育や訓練の未実施あるいは不足(以下,教育不足)などの「教育・訓練」は,発生要因の中で大きな比重を占めているとは言えない。しかし,“教育不足”は,その結果として「確認を怠った」「観察を怠った」「判断を誤った」「知識が不足していた」「報告が遅れた(怠った)」などの影響を及ぼす可能性がある(図1)。もちろん,このように間接的に影響する発生要因は“教育不足”だけでなく,他にも複数あると思われるが,間接的な影響も含めると,“教育不足”が影響するインシデント・アクシデント事例発生における課題を明らかにすることが重要である。

連載 宮子あずさのエキサイティングWriting・23

批判の作法 宮子 あずさ
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看護師は看護師に厳しい?

 看護師が看護について著述をするとき,その人は「自分が看護師であること」をどう考えているのでしょうか。現状の看護に苦言を呈するような場合,私は特にそこが気になります。

 そのように考えるきっかけは,若い頃勤務していた内科病棟での体験です。そこにはときどき昔看護部で指揮を執っていたような方が入院し,ごくまれに,理不尽なお叱りを受けることがあったのです。

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 精神看護学実習に臨む学生の多くが,実習前に精神障がい者と向き合うことへの不安と緊張を口にする。学生のもっとも不安とするのがコミュニケーションである。他者との生身のコミュニケーションの機会の不足と未熟さ,体験したことのない未知の領域への不安がもたらす心的葛藤である。多くの先生方も,こうした学生の対応に悩まれていると思われる。

 一方で,精神障がい者にとっては,「自分を受け入れてもらえること」「自分の話をちゃんと聴いてもらえること」「自分の気持ちをわかってもらえること」が回復にとって必要である。

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 8月4・5日,第47回日本看護学会─看護教育─学術集会が,前滋賀県看護協会会長の石橋美年子学術集会会長のもと,滋賀県,びわ湖大津プリンスホテルにて開催された。

 基調講演には日本看護協会会長の坂本すが氏が,学会メインテーマでもある「未来をひらく看護教育」の講演を行った。協会長として,基礎教育4年制の実現を強く訴える坂本氏の話からは,変化する社会構造のなかで,看護の価値を改めて考え,また高めていこうとする意欲が感じられた。また,本会は会長講演のみならず,これからの看護のあり方を考える,という強い意思に貫かれていたように思う。未来を見据えた内容が充実していた。特に,シンポジウムのⅠとⅡは,非常に参加者も多く,まさに今,基礎,臨床問わず看護教育に携われている方々のニーズをとらえていた。

基本情報

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看護教育
57巻11号 (2016年11月)
電子版ISSN:1882-1391 印刷版ISSN:0047-1895 医学書院

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