看護教育 43巻6号 (2002年6月)

特集 臨地実習のあり方を考える―東京都看護系職員の試み

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東京都の看護行政

 東京都の看護行政(図1)は,「看護婦等の人材確保の促進に関する法律」に基づいて,都立看護專門学校10校の運営,民間養成所へ運営費補助をはじめ,再就業・定着・資質向上・普及啓発等の事業を展開して,東京都全体の看護職員の安定的な量的確保と資質向上に取り組んでいる.この看護職員の確保対策事業をするため,年間約50億の予算が使われている.

 図2は,東京都の看護職員の需給見通しである.

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都立病院に就職しない学生たち

 都立看護専門学校卒業生のうち,都立病院採用者の割合は年々減少しており,平成12年度は全卒業生のうちわずか11.3%である(図1).

 さらに,新卒看護職の東京都採用辞退率は年々増加している.平成13年度は28.2%にも達した(図2).

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 地域看護の立場から,“教育現場との連携にむけて”というテーマで,実際の実習生受け入れの現状と課題,実習生受け入れも含めた地域看護を担う看護職の質の向上をめざすための連携について述べたい.

 地域看護の実習期間は教育過程によって保健師学生は2~3週間,助産師学生は5日以内,看護師学生は3日以内となっている.

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大学における看護学教育の基本的事項

 大学における看護学教育は,以下の事項を抜きに考えることはできない.

 1)大学卒業要件:124単位以上を履修する.

 2)カリキュラム:看護師国家試験受験資格要件を満たす内容に編成する.

 3)大学としての所管は文部科学省,看護師養成機関としての所管は厚生労働省で,両省の指示を受けつつ,カリキュラムを編成する.

 このように,大学における看護学教育は両省の指示のもと,多様な価値観を組み入れて運営している.

 本稿では,大学における看護学教育と臨地実習について,カリキュラムの側面から考えてみたい.

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 全国の看護基礎教育機関の中で施設数,学生数ともに最も多い教育機関は看護師養成所3年課程であり,497校で全体の47.5%(平成13年),次いで2年課程が318校で全体の30.4%,双方で77.9%を占めている.年々減少傾向にあるとはいえ,看護師を養成する機関としては他の教育機関を圧倒しており1),これら養成機関のありようが,看護職全体のレベルに影響すると考えられ,常に社会のヘルスニーズに応じたカリキュラムの改善が求められる.

 平成12年「都立施設看護共同研究会」で,都立病院等に就職した新卒看護師(以下,新卒者)の就職後4か月,9か月時点における実践能力や心理的状況などを把握することと同時に,その新卒者を指導する立場にあるプリセプターや主任が,新卒者をどのように認識しているかについて実態調査を行った(詳細は割愛,回収率は267名で95%).

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 第91回看護師国家試験は,不適切問題が多い,時間が短かすぎるなど,厳しい意見が寄せられた,毎年意見が厚生労働省や看護協会に寄せられ,問題作成の検討が重ねられたなかでの,今年の試験問題であった.

 問題の評価を臨床から行ってみようと「臨床の看護師からみた看護師国家試験のあり方」というテーマで座談会を行った.参加者が各々問題を解き,意見を持ち寄り,臨床現場で働く看護師として国家試験をどう捉えたか,率直な意見を述べるとともにあり方についても意見交換した.

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 第91回看護師国家試験後,失意の色を隠せない学生が多く見られた.雇用先の病院には「試験に合格しないと思うから就職を辞退したい」といった電話が相次いだとも聞く.新聞紙上でも問題状況が報道された.昨年に比して状況の解釈・判断といった思考を問う設問が急増したことや,看護者の対応,特に選択肢に患者への説明文(会話文)が多くみられたこと,専門性が高い問題,解答が複数存在する可能性がある問題,看護研究に関する問題が新たに登場したというのが,教育する側としての我々の印象であった.その後,厚生労働省からの発表として,不適切問題とその対処方法,合格基準が示された.

 学生の今回の反応はかつてないもので,私たちは,国家試験問題を分析することにより,教育内容等の自己点検・自己評価に役立つ資料を得る必要性を感じた.看護婦国家試験出題基準1)によると「看護婦国家試験は質の高い看護職員の確保のために看護婦として必要最低限具有すべき知識・技能を評価するもの」とされている.したがって,個々の国家試験問題がどのような能力の評価をしようとしているのかを分析することにより,今後の教育上の資料が得られ,教育へのフィードバックが可能であると考える.

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 第91回看護師国家試験の合格率は84.3%で,2年連続して80%台前半の合格率となった.

 国家試験210問の正答率は,新カリキュラム初年度,第89回で正答率70.6%,正答数142点,第90回で正答率63.5%,正答数133.4点である.そして本年度第91回の正答率は56.7%,正答数119.2点であった.この数字から3年間で14%の正答率の低下を起こしていることがわかる.

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はじめに

 神奈川県川崎市の川崎協同病院(厚生労働省の臨床研修病院,病床数267)で,1998年11月,気管支喘息の発作で入院した男性患者(当時58歳)の主治医(女性,47歳)が,「これ以上の延命は忍びない」と患者の気管内チューブを抜き,鎮静剤,筋弛緩剤を投与して死亡させていたことが,3年半を経た2002年2月19日,分かった.

 堀内静夫院長は「安楽死の要件を満たしておらず,刑事事件に発展する可能性がある」として県警に事情を説明した.主治医は,カルテや死亡診断書に事実と異なる虚偽の記載をした疑いも出ているという.事件は現在,警察の捜査中であり,川崎市も立ち入り調査をはじめた.

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はじめに

 近年,少子化や核家族化により子育て環境が孤立してきたことなどに伴い,児童虐待が急増している1).2000年11月には児童虐待防止法が施行され,以前から考えられてきた地域システムにおける機関役割の明確化2)とともに,被虐待児に対する保護システムの整備3)が進められている.医療機関,保健機関,児童相談所,保育所・学校,保護施設など多くの機関で働いている看護者は人員も多く組織力があり,親や子どもと身近に接する機会があるため,ネットワークの重要な役割となることが期待される.具体的には,小児虐待の予防,異常の早期発見,被虐待児とその親へのケアなど,機会を捉えた適切な対応が求められる.

 一方,看護教育の中では小児虐待についてどのように教育されているのか,その実態は不明である.今回,われわれは,わが国の看護教育基礎過程における小児虐待に関する教育の実施内容について調査を行った.本研究が,小児虐待に関する教育の現状と課題を検討するための基礎資料となれば幸いである.

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No7:意識障害というと漠然としますが,原因とか評価方法はあるのですか?

 意識とは何かという定義は,現在のところ決定的なものはありません.ただ,実際的な臨床の場では『自分が誰で,どういう状態や環境に現在いるのかをちゃんと理解・認識している状態』と考えて良いと思います.意識障害といってもあくびが出る程度から,全く反応を示さない状態まで様々です.意識障害を疑った場合には,まず,意識レベルの評価をすることから始めましょう.

 意識レベルを客観的に評価する方法はいくつかありますが,日本で多く使用されるのは,表のGlasgow ComaScaleとJapan Coma Scaleの2つです.Glasgow ComaScaleは意識レベルを開眼(E:Eye Opening),言葉(V:Best Verbal Response),運動(M:Best Motor Response)の3つの項目で評価し,この合計点が高いほど意識レベルが高いことになります.またJapan Coma Scaleは急性期意識レベル分類法で,意識の覚醒を基本としています.刺激がなくても覚醒している,刺激を加えると覚醒する,刺激を加えても覚醒しないの3項目に分け,さらに呼びかけ,痛み刺激に対する反応を3つに分類し,最終的に9段階の意識レベルに分類します.こちらは合計点数が高いほど意識レベルが低いことになります.

連載 看護基礎教育において「安全」をどう学ばせるか・3

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はじめに

 日常の看護業務の中で実施頻度が最も多い相対的医療行為の一つが与薬である.与薬の方法は多岐にわたり,その適用経路は注射,服用,塗布・塗擦,吸入,注入等複雑で,使用される薬剤の数,形状も多種多様である.いったん,身体に入った薬物は,複雑な作用機序を呈し生体に反応を起こす.薬物治療により,患者が快方に向かうことが期待される一方,時に不快な副作用を引き起こす危険も孕んでいる.誤薬など,一歩間違えれば極めて重大な医療事故を招いてしまうこともある.よって,与薬は準備の段階から与薬後の観察に至るまで,緻密で適正な看護職者の専門的能力が要求される.

 本稿では,種々ある与薬の中でも,とりわけ実施頻度が高いと思われる「内服薬の与薬」についてその重要性と危険性,またいかに事故を未然に防げるよう,安全に行っていくべきか,基礎教育における学習方法について述べることとする.

連載 ユースカルチャーの現在・25

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はじめに

A 今回は,大学入試や就職試験の方法の問題について考えてみましょう.資料として最近の新聞記事から2つ取り上げます.資料1は今年3月の読売新聞の記事で,資料2は,4月の朝日新聞の記事です.

B 資料1の記事は,国位大学に対する公的な評価が始まったという話ですね.特に京大医学部が面接をせずに,学力試験だけで入学者を決めていたことが批判されています.資料2では,岐阜県の公務員の採用試験に,心の知能指数「EQ」が導入されたことが紹介されています.どちらも選抜試験の話を扱っているところが共通していますね.この2つの記事を見てどんなことを思ったんですか?

連載 病態生理学講義ノート・6

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はじめに

 看護の場では,患者さんの水分摂取量,尿量,食事の回数やその量,排便の回数および下痢の有無,ドレーンからの排液量,発汗の程度,体温測定や脈拍数あるいは,手術時の出血量などを記録します.それらのいずれも,患者さんの抱えているそれぞれの疾患に関するいろいろな情報が含まれていますが,その1つに体液の出納バランスが生命にとって重要な指標になることも見逃してはなりません.では,体液の出納バランスが崩れたら生命はどんな影響を受けるのでしょうか.今回は,この問題に触れてみたいと思います.

連載 私のすすめる本・6

「癒し」と距離 伊勢 英子
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 人生のある時期の5年間を,長いとか短いとか,美しかったとか辛かったとかは,後でふりかえって言えるかもしれない.だが,犬の5年間は平均寿命の約半分だ.その絶対的な数字の5年間を,人と犬が共有した時,犬の1日が人の何十倍もの濃度で過ぎていたことを教えてくれた犬がいた.

 その犬は,甘えることと食べることしか能がないようにみえたが,実は待つことも耐えることも演技することもできたし,はずかしがることもふてくされることも人をなぐさめることも知っていた.

連載 医療と社会 ブックガイド・17

臨床社会学 立岩 真也
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 まず御挨拶.職場が変わり引越して,ホームページを変更しました.http://www.arsvi.comです.ラテン語でars vivendiは「生の技法」といった意味で.それがいわれです.

 さて今回と次回は「臨床社会学」の本.最初取り上げようと思った本がまだ段ボール箱に埋もれているという事情もあるけれど,もう一つ,前回大熊一夫が学問が役に立たないことを嘆いていたのだが,臨床社会学は(臨床に)役に立つことを目指すものでもあるらしい,それをどう捉えるかというつながりもある.

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 私たちの活動,日本国際親善厚生財団(Japan International Friendship and Welfare Foundation=JIFF)では,1988年から1993年にかけてアフガニスタンの内戦で負傷した人々を日本に受け入れ,治療した後に,アフガニスタンまたはパキスタンに帰国させる活動をしてきました.その後も日本に患者さんを受け入れるかたわら,1991年にパキスタンのペシャワールに難民のための無料診療所,JIFFメディカルセンターを設立しました.センターはレントゲン設備,薬局,超音波検査設備,検査室を有し,成人・小児の診療に当たってきました.

 ところが,昨年の9・11アメリカ同時多発テロ,その後のアメリカによるアフガニスタンへの空爆によりアフガン難民は急増し,中でも栄養失調児の救済は現在最も優先されるべき課題となっています.そこでJIFFでは急遽栄養失調児のための緊急医療プロジェクトを立ち上げました.

海外文献にみる看護教育学研究

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 イギリスの看護職に占める男性看護師の比率は,1998年の統計で9.38%である.日本の男性看護師(看護師・准看護師を含む)の比率(3.8%)よりは多いものの,社会的には少数派の存在として認識されている.

 本研究の著者Frank Milliganは,イギリス国内の文献調査で,看護における男性看護師の立場と経験に関する研究論文が不足していることを確認し,看護と男性看護師の概念を探求するために本研究に取り組んだ.

基本情報

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看護教育
43巻6号 (2002年6月)
電子版ISSN:1882-1391 印刷版ISSN:0047-1895 医学書院

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