助産婦雑誌 52巻11号 (1998年11月)

特集 フィットネス出産準備教育

  • 文献概要を表示

はじめに

 フィットネス(fitness)の意味は各種英和辞典によれば,「適合」「適格」「妥当性」。言行よろしきを得ること」「体力」「健康状態の良好なること」等とあります。一般的にフィットネスと言えば健康,体力を意味するとの認識が強く,健康産業界では有酸素運動,筋力トレーニング,持久力アップなどの運動効果を目的としたフィットネス・クラブ等が多くの人を集めています。

 しかし妊娠・出産する人のフィットネスは,単に虚弱でないというだけでなく,体と心の両面から健康でなければなりません。しかし,ややもすれば心の健康が軽視されて来たのではないでしょうか。このことは一般人としてヨーガ教室を開き,妊婦さんと水平の付き合いを通じて本音の話を聞くにつけ,ますます強く感じるようになりました。

  • 文献概要を表示

 ある助産所の助産婦の言葉。「最近では流行なのか,助産所での自然分娩を選ぶ人が増えている。でも,なかにはきちとんした生活ができていない人がいて,体力不足で分娩を乗り切れない人もいる」。助産所だけでなく病院でも,“いいお産”をするには,食事や運動も含めて健康的な生活をし,身体を整えることは大切である。食事は外食やコンビニ通い,運動不足に喫煙といった生活をしていたのでは難しい。

 生活が便利になり,食が欧米化した現代の日本人。昔と今では女性の身体は変わってきているのだろうか。

フィットネス出産へのアプローチ

マタニティウォーキング 東野 利夫
  • 文献概要を表示

日本人は「一億総運動不足病」

 経済の高度成長により,日本は都市と言わず農村,へき地に到るまで「車社会」となり,生活は著しく便利となり能率化されましたが,反面,ほとんどの人は歩かない習慣がつき,肥満者は増え,成人病予備軍(糖尿病,高血圧,骨粗鬆症など)が増え続けています。これは基本的に「一億総運動不足病」に由来するといわれています。

  • 文献概要を表示

はじめに

 近年,わが国ではオリンピック選手などトップアスリートを育成する目的とは別に,健康維持を目指した,いわゆる健康スポーツに対する関心が高まっている。妊婦スポーツはまさにこうした健康スポーツとして位置づけられる。

 本稿では,その中でも妊産婦が比較的容易に参加することができるエアロビックダンスを取り上げ,その理論と実際について解説する。

マタニティスイミング 鈴木 泰子
  • 文献概要を表示

マタニティスイミングは分娩準備教育か?

 日本のマタニティスイミングコースのほとんどは,民間スポーツクラブの営業種目の一つである。つまり営利目的のサービスであって,“分娩準備教育プログラム”として開設されているわけではない。しかし,そこには分娩に向けて心身の準備をするプログラムがふんだんに取り入れられており,そこに助産婦などの看護職員や医師が関わることによって,現実には分娩準備教育の一環として機能していると確信している。

 私は助産婦としてマタニティスイミングの現場で妊婦のケアに当たる他,インストラクターへのアドバイス,看護・助産婦学生への教育,研究などにも携わっている。

マタニティ・ヨーガ 森田 俊一
  • 文献概要を表示

マタニティ・ヨーガクラス参加者の妊娠・分娩

 現在私どもが把握しているだけで,全国で70か所以上の産院やスポーツクラブでマタニティ・ヨーガが実施され,好評を得ております。

 近年,母親学級の見直しがいくつかの産院・病院で行なわれていますが,愛媛県のある産院では,妊婦指導に行き詰まりを感じ,出産準備教育にマタニティ・ヨーガを導入したところ,帝王切開率がぐっと少なくなったと院長自ら喜んでおられます。また,愛知県のある総合病院では,導入の結果,吸引・鉗子分娩が少なくなり,分娩時間も短くなり,妊娠中の不快症状が緩和され,分娩時の動作もよくできるようになってきたそうです。最近では,指示しないのにもかかわらず,分娩第2期のいきみを上手に逃して,いきまないお産をする人も増えてきているそうです。

  • 文献概要を表示

はじめに

 1986年,筆者らは「妊婦の健康・体力・運動に関する意識と行動」というテーマで調査をしたことがあるが,その時の結果でも,すでに,多くの妊婦は自らを健康で体力もあるとしているものの,妊婦により運動不足を実感して,もっと運動がしたいと強い運動願望を抱いていた。しかし,どんな運動をどのくらい行なえば良いかわからず,適切な指導が受けられる場所や機会を望んでいた。このような妊婦の運動願望に呼応して,その後,妊婦水泳,マタニティエクササイズ,マタニティエアロビクス,ウォーキング,妊婦ヨガと,妊婦を対象とした様々な運動が盛んになり現在に至っている。

 今や運動は健康で快適な妊娠ライフにとって必須の条件と受け止められている。

  • 文献概要を表示

 九島 出産においては心身のリラックスが大変に重要になってきます。そのために,リラクセーション技法のひとつである自律訓練法が出産準備教育に利用されております。そこで本日は,自律訓練法の第一人者であられます佐々木雄二先生のお話をお聞きしたいと思います。

 まず最初に,自律訓練法の概略をご紹介いただき,その後に出産準備教育への利用などについてお話しいただければ幸いです。

  • 文献概要を表示

はじめに

 妊産婦体操はいいお産をするための心と体の準備教育を目的とし,スポーツにおける準備運動や整理運動の関係にも似ている。どのスポーツも競技の前後に行なうストレッチや身体能力を高めるエクササイズが重要であるのと同じように,妊産婦体操も妊婦体操という長いウォーミングアップによって,お産への自信と安心が培われ,意欲をもって本番の分娩を迎えることができる。分娩後はクーリングダウンにあたる産後の体操によって,子宮回復の状態をよくすることに役立つ。

 母体が妊娠前の状態に戻る産褥期(6〜8週間)までが妊産婦体操の領域ではあるが,子宮復古はしても体重やスタイルが戻るまでには個人差が多い。また中高年以降に増える失禁や骨粗鬆症が産後のケア次第で予防できることなど,先々のことを考えると産褥期以降のシェイプアップ体操は非常に重要である。

  • 文献概要を表示

 妊産婦体操は周産期のヘルスケアの1つとして行なわれるものであり,妊娠中の分娩準備教育としての「妊婦体操」と,産褥時に行なわれるリハビリテーションとしての「産褥体操」とに分けられる。

 分娩準備教育の歴史的な流れは,図1に示すように,イギリスからとロシアからの2つに分けることができる。

特別企画 母乳とダイオキシン問題—「母乳フォーラムinみやぎ」より

  • 文献概要を表示

 本日は,「宮城県母乳育児をすすめる会」と「日本母乳の会」の共催による「母乳フォーラムinみやぎ」にご参加いただきありがとうございます。

 今回のフォーラムでは,ダイオキシン問題を正面からとりあげたいと思います。この後すぐに,九州大学医療技術短期大学部の長山淳哉先生に「ダイオキシン類や農薬の乳児と胎児への影響の可能性」と題したご講演をお願いしております。また,引き続き「ダイオキシン問題を考える」シンポジウムも予定しております。さて,講演に移ります前に,宮城県の母乳育児の現状など踏まえつつ,簡単に「宮城県母乳育児をすすめる会」のご紹介をさせていただきます。

  • 文献概要を表示

 昭和40年代の後半にPCBや農薬などによる人体汚染や母乳汚染が問題になり,その当時かなりの方々が母乳から人工乳に変え,母乳育児の割合が落ち込んだということがありました。

 その後,助産婦さんたちや母乳育児を推進しようという方々の努力で,徐々に母乳育児の割合が上昇してきています。しかし,ここにきて,ダイオキシンの問題がでてきたことで,再び「母乳か人工乳か」ということが問題になっています。しかしこれは,単に母乳か人工乳かという短絡的な解決策では解消されない,もっと根の深い問題を抱えていると思っております。

  • 文献概要を表示

 シンポジウムは,堺武男氏の司会で行なわれました。まず最初に,宮城県生活環境部の高橋伸行氏が宮城県におけるダイオキシン対策を中心に話されました。

 「1997年に宮城県がまとめたダイオキシン総合対策の基本は,国の『ダイオキシン対策5か年計画』により1998年12月から焼却炉排出基準が厳しくなることを受け,この基準にできるだけ早くに適合するようにすることです。つまり,産業廃棄物処理施設への指導を強化することにあります。また,市町村ではなく県がもっている小型焼却炉は使用を中止し,市町村へも県との同調を要請しています。

  • 文献概要を表示

 本年第5回目を迎えた「宮城県母乳育児をすすめる会」は,「日本母乳の会」と共催で「母乳フォーラムinみやぎ」を7月4日に開催したが,そのテーマは幹事会での議論の末「ダイオキシン問題」を正面から取り上げることとなった。その背景は,ダイオキシン汚染が毎日のように報道される中で,「母乳育児は安全で大丈夫」と母親たちに説明している自分たちの対応が本当に正しいかを確認したいこと,これを機会に環境と母乳について学んでおきたいこと,等であった。

 講師には九州医療技術短期大学の長山淳哉先生しかいないということになりお願いした。また,行政にも参加を呼びかけ,宮城県,仙台市から担当者が参加,「ダイオキシン問題を考える」というシンポジウムも組むことにした。当日までに地元新聞3社が紹介記事を載せ,事前に会員有志50名による勉強会も行ない,基礎的なことも学習した。

  • 文献概要を表示

オランダの助産課程

 オランダの助産婦教育課程は日本とは若干異なる。現在オランダにはアムステルダム,ロッテルダム,およびケルクラーデの3か所に助産婦学校がある。各学校が毎年入学願書を受け付けるのは1,200名までで,このなかから無作為に(つまり抽選で)120名が選ばれる。この120名に対して選考面接が行なわれ,その結果入学を許可されるのは1校につき40名にすぎない。したがってオランダでは,全員で120名の学生が毎年助産婦になるための訓練を開始していることになる。教育年限は4年で,どの学年でも講義と実習が交互に行なわれるが,4年間で学生が学習する内容はきわめて多岐にわたる。実習は実際の経験を積む期間であり,ほとんどが開業助産院か各種病院の産科病棟で行なわれる。実習の場では学生は積極的に実務に参加し,厳しい作業のなかで技能の習得に努める。学生はまた,各種病院の超音波治療やソーシャルワーカーによるコンサルテーションを実地見学し,地域病院や大学病院の新生児病棟の日常業務にも参加する。

 最終学年になると,学生は自分で施設を選んで研修を受けることが許される。これには外国の施設を選択することも可能で,私たちふたりもそうであるが,仲間の学生も大半が外国へ出かけてそれそれの国の助産業務システムを学ぶことを選ぶ。

  • 文献概要を表示

 男の性と女の性は,相互にとって不可解で神秘的な人類永遠のテーマである。詳しくは大家の手に委ねることにして,本稿ではインポテンス外来で筆者が関わりあった事例を中心に,男性の性についてまとめてみた。読者のみなさまの理解につながれば幸いである。

  • 文献概要を表示

 この夏の初め,オランダから2人の助産学生,マイケ・ロイリンクさん(女性)とバート・グラーフさん(男性)が研修のため来日した。オランダの助産教育課程では4年の最終学年に1か月の自由研修が設けられ,学生の多くは海外で研修する。日本に関心の強かったマイケさんとバートさんは,2人の指導教官が2年前のICMオスロ大会で知りあった日本の愛育病院の小野紀子助産婦に相談,このたびの研修が実現した。研修先は湘南鎌倉総合病院,愛育病院,毛利助産所(神戸)の3施設。

 オランダの人口は1500万人,助産婦数は1400人,うち男性助産士は4%。助産婦学校は4校で毎年計120人しか入学ができないため狭き門である。オランダの助産教育のレベルの高さは世界でも定評のあるところだ。

連載 ハローベイビー—神戸市立王子動物園子育てストーリー・11

  • 文献概要を表示

 おや,双子のカンガルー?いや,双子ではない.母を失った孤児を引き取り,わが子と一緒に育てた心温まるカンガルーのお話.

 カンガルーは妊娠期間約1か月,初生児は体長2cm,体重1g以下という超未熟児,自力で母親の袋に入り,この中で6〜7か月間を過ごす.同じ有袋類のコアラとよく似た生態だ.普通は1産1子,成長して袋から出た直後に次の子どもが袋に入り,母親の袋は空いている間がない.

  • 文献概要を表示

 ヨーロッパの東,ルーマニアではたくさんの子供たちがエイズと闘っている,親の顔も知らず,赤ん坊の時から病院で育った孤児たち.その数は4,000人(死亡者を含む)を越え,ヨーロッパ幼児エイズの半分に匹敵する.

 どうしてルーマニアの子供たちだけに,HIVが広まってしまったのか.本来元気に成長しているはずの彼らがこんなに苦しめられるのは,1人の独裁者が原因である.

連載 りれー随筆・170

学生の気持ちと教師の思い 青木 美奈
  • 文献概要を表示

 私が母校の助産婦学校の教官になってから,早いもので2年6か月が過ぎました。自分の母校の教官になるというのは不思議な感覚でした。はじめて出勤した日も,学生に戻ったような気分で教務室に入ったものでした。

  • 文献概要を表示

遺伝子治療臨床研究:条件付承認

 岡山大学が申請していた肺がんの遺伝子治療臨床研究が,9月17日,厚生科学審議会先端医療技術評価部会(以下,審議会)で承認された。今後,中央薬事審議会でベクター(遺伝子を運ぶ物質)の安全性の確認と,文部省学術審議会の審査を経たのちに臨床研究が開始される(毎日新聞9月17日「遺伝子治療:岡山大の肺がん臨床研究を承認」)。

 17日の審議会では,最後までインフォームド・コンセント(以下,IC)の記述をめぐって議論が続いた。「有効性を期待させすぎる文章になっていないか」「患者が,自分に何が行なわれるのかイメージできないのではないか」「文章が難しい」「しかし,そもそも何をもって患者の“十分な”理解と言えるのか」など。(注:正確な表現は厚生省ホームページの議事録参照)

  • 文献概要を表示

はじめに

 産婦人科外来や集団指導の場に,妊婦やその夫が性にまつわる質問や相談を,直接持ち込むことはほとんどない。これは,妊娠中に性の問題が存在しないということではない。性をタブー視する見方,相談することは恥ずかしいことだという思いなどが影響して,性の問題が抑圧され,潜在化しているためであると思われる。なぜなら,個人指導の場面では,個室でプライバシーが守られる環境であるためか,時折,性の悩みが聞かれるからである。その内容は,妊娠中の性に関する知識の不足や誤解に基づくもの,妊娠したことで性的関心を失ったり,性交による流早産や胎児への影響を心配するもの,夫の性欲とのアンバランス,また性的役割に対する不満などである。妊娠中の性の援助は,他の保健指導と同様に重要だと言われながらもほとんど対応できていないのが現状である。

 そして,参考にできる事例の報告や専門書はまだ少ない。そこで,夫との性的関係に失調を来した妊婦のプロセスレコードをもとに,妊娠期の性の問題と援助について考察したことを報告する。

  • 文献概要を表示

 脳室周囲白質軟化症(PVL:periventricular leukomalacia)が低出生体重児の脳性麻痺の最大原因であるということは,皆さんはすでによくご存知のことと思います。今までにその発生原因や病態についての多くの研究が学会に発表されています。そして,ようやく結論として言われているのは,低出生体重児の分娩周辺期(主に早産の分娩周辺期)に,何らかの原因で胎児や新生児の脳室周囲に血流の減少が起こり,低酸素状態となってその辺の細胞がやられて発生するのだろうということでした。このことは以前にこの小欄でも述べてきました。

 その血流の低下による虚血の原因は,胎児や新生児の血圧が下降するために起こるのだろうということも推測され,出生前に発症しているものでは,おそらく臍帯の圧迫による血流低下が考えられるということでした。ですから変動一過性徐脈が出現している症例に多発する傾向のあることもわかっているのです。

基本情報

00471836.52.11.jpg
助産婦雑誌
52巻11号 (1998年11月)
電子版ISSN:2188-6180 印刷版ISSN:0047-1836 医学書院

継続誌

文献閲覧数ランキング(
8月3日~8月9日
)