助産婦雑誌 38巻4号 (1984年4月)

特別記事 [誌上講演]

母性を考える 松本 清一
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母性とはなにか? 一見,自明なことのように考えられる"母性の概念"は,今日,改めてとらえ直す必要に迫られているのではなかろうか。母子関係や家族関係の崩壊に象徴される現代の諸事象を前にして揺れ動く母性の概念について,松本先生に包括的に論じていただきます。

なお,本誌上講演は,「第53回医学書院看護学セミナー」(1983年11月10日,大津市)での御講演を再録したものです。(編集室)

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馬場善子さんは,三重県立公衆衛生学院助産学科6回卒業生の若手助産婦。臨床2年めごろから「アメリカの助産婦は今何をしているのか」とだんだんもちあがる好奇心押さえがたく,その目で実態を確かめにアメリカまで一飛びしました。アメリカの助産婦の活動状況は単発的にはかなり紹介されることもあり,われわれにも「けっこう活躍しているらしい」という認識があるのですが,馬場さんのレポートはアメリカの助産婦の活動の実態をこまかなニュアンスまで十分正確に伝えてくれるものです。以下の内容を2回に分けて掲載します。(編集部)

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ダブリンで開催,国際心身産科婦人科学会

 アイルランドの首都ダブリンにおきまして昭和58年9月11日から15日までの5日間,第7回国際心身産科婦人科学会が開催されました。この学会は3年ごとの開催で,日本からも参加があり4つの演題が発表されました。この国際心身産科婦人科学会は日本ではあまり馴染みがないようですので,ご紹介したいと思います。

 産婦人科方面の心身症については,すでに環境性無月経や更年期障害などでご存知のことと存じますが,世界大戦によって戦場では兵士が,また戦場にならなかったところでも多くの人たちが心の病にかかりました。不安,心配,精神的葛藤などにより,器質的疾患がないにもかかわらず,その存在を疑わせるような自覚症状を訴えるのでした。このことはドイツやアメリカを中心に心理学を発達させ,また,心理的理由により多くの器質的疾患にまで発展させることもわかったのでした。たとえば胃潰瘍などもそうですね。

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 「トランスポートです」婦長の甲高い声が新生児センターのナースステーションに響く.一瞬の緊張がナースステーションを支配したあと,あわただしく搬送の準備が始まる.そしてわずか数分後,新生児救急車は,医師2名,看護婦1名が同乗し,病院から9キロ離れた修善寺へ向けて出発していった.搬送依頼の産科医院に到着するまで約10分間,その間にも,車内では,新生児受け入れのための準備が手際よく行なわれる.

 この日搬送した新生児は,体重2,500グラムで出生した女児,強度の黄疸のため,産科医院で光線療法を受けていた.医院での処置,救急車内でのケアを続けながらの搬送は,実に42分間という素早さだった.

ペリネータルケア・16

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■はじめに

 早産児(preterm baby)の臨床的な特徴を全般的に述べようとすれば,特に極小未熟児について解説すればすべてが網羅されることになろう.生命維持のための医療の進歩によって,従来なら表面に現われてこなかった問題や死亡によって徴候として出現する前に消滅していた問題が,日常の医療内容の重要な部分を占めるようになっており,早産児の問題もまさにこのような形で多様かつ複雑化してきたのであろう.

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はじめに

 厚生省では例年,現任教育の一環として,保健婦助産婦看護婦学校養成所の専任教員を対象に研修会を開催している。業務に支障なく参加できるという点から,夏期休暇の間に行なわれることが多く,昭和58年度に関しては,8月3〜6日(保健婦,助産婦課程)であった。

 この会の主旨は,教育上の諸問題について研修を行ない,情報の交換をし教育内容の向上を図るという点においている。構成は,グループワークと講義とで枠組みされているが,グループワークを重点においており,テーマはその課程のもっている今日的な問題が選定される。わずか4日間の中で1つのテーマを曲がりなりにも完成させるということは,そのテーマが,日常業務の中で遭遇し,常に問題意識をもってみつめているものであったにしても,相当,主体的な参加が要求されており,またそのプロセスが重要視される。

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はじめに

 近年,子宮摘出術は婦人科領域において比較的多く行なわれている。当院においても,年間約80件の子宮摘出術が行なわれている。

 ところで,子宮摘出患者は,子宮をどのように受けとめ,子宮を失うことをどのように感じているのだろうか。時に,手術や術後の欠落症状に対する不安などが聞かれるが,手術の必要性を納得して入院してくる彼女らから,子宮をとることについての心情を聞くことは少ない。また,医療の場でも,子宮摘出婦人の心理や性に関する問題はあまり論じられていない。

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はじめに

 当院においては新生児は,小児科医の管理のもとに助産婦・看護婦が看護している。正常新生児とはいえ,時間の経過とともに異常に移行する場合も少なくない。そんな中で,黄疸はほとんどの児に出現し,その程度もさまざまであるが,異常をどの時点で発見できるかということは,その後の児に大きく影響する。したがって,いつも児に接している私たちが早期に異常を発見することが大切である。しかし,肉眼的な観察だけでは自信が持てず,報告が遅れたり,また結果的に無意味な採血をしたりすることがあった。

 今回,小児科医より経皮的ビリルビン測定器(ミノルタ黄疸計)を紹介され,実際に使用してみた。そして,どの程度信頼がもてるのか,また,どのように活用すればよいか等を私たちなりに検討したので報告する。

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はじめに

 新生児の黄疸管理には,血清ビリルビン値の測定が必要であるが,繰り返しの採血は,児に少なからずの侵襲を与え,採血およびビリルビン値測定に労力と時間を費やさねばならない。従ってそのスクリーニングのために,当院でも肉眼的方法によるGossetのイクテロメーターを使用してきたが,それに代わって最近開発されたミノルタ黄疸計を使い始めた。この経皮的なビリルビン測定器の計測値と,血清総ビリルビン値の関係を調べてみた。

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緒言

 再生不良性貧血は,骨髄における血球生成不全のために,末梢血の赤血球・白血球・血小板のいずれもが減少する難治性の疾患で,抗癌剤,抗生剤などの薬物や放射線被曝などが誘因になるとされている1)が,原因不明のものも多く見られる。

 妊娠に合併する再生不良性貧血の多くは妊娠中に発見されるため,妊娠が発症の誘因になりうるとの見解もあるが,むしろ妊娠前から潜在していたものが妊娠によって顕在化したと考えるのが妥当であるとされている2)

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はじめに

 外来における継続看護の困難さがしばしば指摘されているが,産科と婦人科の混合外来診療システムのなかでの患者やクライアントへの関わり方や看護の指標がなかなか見当らないのが現状であろう。

 中でも夫婦いずれかの理由で妊娠できない場合,心の奥にひそむ心理的問題が大きく,その気持ちを十分に把握できない難しさがある。月平均70〜80人の不妊夫婦が受診する当科でも,精神的看護,患者やクライアントとのコミニュケーションをいかに不妊症の診療にくみ入れていくかは大きな課題である。

グラフ解説

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はじめに

 静岡県では新生児第三次医療の地域化が実現している。すなわち,県下を3つの地域に分け,西部地域では聖隷浜松病院の未熟児センター,中部地域では県立こども病院が中心となって新生児の救急医療システムが確立されている。

 東部地域では,昭和57年4月,県の助成をうけて,順天堂伊豆長岡病院に25床の新生児センターが開設され,ほぼ2年間が経過した。私たちの担当する東部地域には山間部が多く,とりわけ伊豆半島は,天城峠,熱海峠,船原峠など標高500メートル以上の峠をかかえている。

連載 腹帯の歴史・1【新連載】

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 妊娠したら腹帯(はらおび)を巻くものとだれもかれもが信じている。一般の人はもとより,医者や助産婦まで何の疑いもなくそう信じているから,伝統といおうか信仰といおうか,積年の風習とはすごいものである。腹帯を巻くことにあまり医学的な根拠がないことは,今更言うまでもないが,このような風習がわが国独自のものであって,西欧諸国はもとより,近隣の中国や韓国にもその慣らわしがないことは意外に知られていない。欧米などでは妊婦用のコルセットが売られているらしいが,これとても安産を目的としたものではなくて,単に美容上の理由で着けているに過ぎない。

 このような腹帯に敢えて反対の意を唱えるつもりは毛頭ないが,これが伝説に基づく単なる風習に過ぎないことを知っていても,あながち無意味ではないので,本稿では腹帯の歴史的ないわれについて考察してみたい。

連載 助産婦のための臨床薬理・1【新連載】

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薬が投与される時,注意するのは助産婦の役割でもある

 私にとって,産科学はサリドマイド・ベビーに始まったといっても過言ではない。私が東京大学産婦人科教室に入局した昭和36年のころから,サリドマイド・ベビーの出産の報告が急増してきたからである。私自身もこの年に,サリドマイド・ベビーの出産に立ち会い,強烈な印象を受けたことを今でも覚えている。このころは,製薬会社の薬剤売り込みの攻勢は,それほど強いものではなかったように記憶する。もちろん,医師が妊娠初期の婦人に,つわり止めや睡眠薬としてこのサリドマイドを処方した例もあるが,妊婦自らがつわりや不眠のためにこの薬を手に入れて服用した場合も多かったように思う。その中でも,薬を入手しやすいメジカルあるいはパラメジカルの仕事に従事した婦人が,比較的多かったのではないか。私自身の経験したその婦人は薬剤師で,不眠のためにその薬を妊娠初期に連用したものであった。

 最近では,すべての薬に添付書(図1)というものが付いている。この添付書には,薬の化学的および薬理学的諸性質,適応疾患,用法,副作用と,ほかに妊婦および授乳婦人に対する使用上の注意が必ず明記されている。妊婦に対してある薬を投与する時には,特に,

産科内分泌学入門・13

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 妊娠時の母体合併症のなかで最も重要な疾患を1つ挙げよ,というアンケート調査を行なったら,おそらく妊娠中毒症が圧倒的な支持をもってトップにランクされるだろう。妊娠中毒症は,子癇,肺水腫,脳出血,視力障害などの致命的な障害を母体に与えるとともに,児に対しても子宮内発育遅延,早産,胎児新生児仮死などの誘因となり,周生期死亡をひき起こし,かつ生存例にもさまざまな後遺症をのこす。発症する頻度の高さと,その母児に対する危険度の両面から,妊娠中毒症は間違いなく妊娠時合併症の横綱格である。

 ところで,まず念頭におかねばならないのは,「妊娠中毒症とは,妊娠後期に発症し,高血圧,蛋白尿,浮腫を3主微とする症候群の名称である」ということである。少し説明を加えると,医師が診察によって客観的に観察したり,あるいは患者が主観的に感じた機能的な障害を「症状」といい,いくつかの症状が集まって1つのまとまった病態を形成している場合を「症候群」という。病態を一元的に理解することができず,1つの独立した疾患と認められない場合の逃げ道である。妊娠中毒症は,残念ながら,いまだにその病因がわかっていない。つまり,現在の時点では,あくまで症状から定義される症候群である。したがって,その原因は1つとは限らず,全く異なる病態がオーバーラップしている可能性が強い。

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母乳哺育支援への具体性と科学性を提示される

母乳哺育の現在までのプロセス

 科学技術の進歩により,安全なミルクが開発され,昭和30年代の半ばごろから母乳にかわってどんどん用いられるようになった。科学万能の考え方が,自然のものよりも,人工的なものへの崇拝を作り出していったのと,社会情勢の変化や,便利さ,快適さを求める価値観の変化が相俟った結果であろう。

Medical Scope

骨盤位と帝王切開術 島田 信宏
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 骨盤位分娩と帝王切開術という表題は皆さんも雑誌の特集号的な話題として,あるいは,学会や講演会での講演の主題として,眼にし耳にしているものと思います。ここでひとつ,アメリカの大変有名な病院での歴史的な報告が発表されましたので,その話題を中心に,この問題に関して,アメリカではこんな風に臨床の実際が行なわれているのだ……ということを学んでみてください。

 アメリカ西海岸の大都市ロスアンゼルスのウィメンズ・ホスピタルというメディカルセンターでは,1970年には全分娩の9.3%が帝切例であったのが,1975年には10%になってきたというのです。この傾向はどこの病院でも同じで,日本の大きな産科施設での帝切率も,今日では10%前後から15%ぐらいまでの間になっているのがほとんどだと思います。これは全分娩例に対する帝切率で,この帝切率の増加とともに,母体死亡率や周産期死亡率も下降してきたことはいうまでもありません。このうち,骨盤位の症例に対する帝切率は一体どのくらいになっているのでしょうか。アメリカのことですから,非常に高いとは思いますが,年代別にみてみますと,

 1970年  31.7%

 1974年  63.3%

 1975年  72.5%

 1980年  74.5%

基本情報

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助産婦雑誌
38巻4号 (1984年4月)
電子版ISSN:2188-6180 印刷版ISSN:0047-1836 医学書院

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