連載 腹帯の歴史・1【新連載】
腹帯の呼び名とそのいわれ
石黒 達也
1
1滋賀医科大学産科学婦人科学教室
pp.336-339
発行日 1984年4月25日
Published Date 1984/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206437
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妊娠したら腹帯(はらおび)を巻くものとだれもかれもが信じている。一般の人はもとより,医者や助産婦まで何の疑いもなくそう信じているから,伝統といおうか信仰といおうか,積年の風習とはすごいものである。腹帯を巻くことにあまり医学的な根拠がないことは,今更言うまでもないが,このような風習がわが国独自のものであって,西欧諸国はもとより,近隣の中国や韓国にもその慣らわしがないことは意外に知られていない。欧米などでは妊婦用のコルセットが売られているらしいが,これとても安産を目的としたものではなくて,単に美容上の理由で着けているに過ぎない。
このような腹帯に敢えて反対の意を唱えるつもりは毛頭ないが,これが伝説に基づく単なる風習に過ぎないことを知っていても,あながち無意味ではないので,本稿では腹帯の歴史的ないわれについて考察してみたい。
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