産科内分泌学入門・13
妊娠中毒症への内分泌学的アプローチ
安水 洸彦
1
,
加藤 順三
1
1山梨医科大学産婦人科
pp.346-351
発行日 1984年4月25日
Published Date 1984/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206439
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妊娠時の母体合併症のなかで最も重要な疾患を1つ挙げよ,というアンケート調査を行なったら,おそらく妊娠中毒症が圧倒的な支持をもってトップにランクされるだろう。妊娠中毒症は,子癇,肺水腫,脳出血,視力障害などの致命的な障害を母体に与えるとともに,児に対しても子宮内発育遅延,早産,胎児新生児仮死などの誘因となり,周生期死亡をひき起こし,かつ生存例にもさまざまな後遺症をのこす。発症する頻度の高さと,その母児に対する危険度の両面から,妊娠中毒症は間違いなく妊娠時合併症の横綱格である。
ところで,まず念頭におかねばならないのは,「妊娠中毒症とは,妊娠後期に発症し,高血圧,蛋白尿,浮腫を3主微とする症候群の名称である」ということである。少し説明を加えると,医師が診察によって客観的に観察したり,あるいは患者が主観的に感じた機能的な障害を「症状」といい,いくつかの症状が集まって1つのまとまった病態を形成している場合を「症候群」という。病態を一元的に理解することができず,1つの独立した疾患と認められない場合の逃げ道である。妊娠中毒症は,残念ながら,いまだにその病因がわかっていない。つまり,現在の時点では,あくまで症状から定義される症候群である。したがって,その原因は1つとは限らず,全く異なる病態がオーバーラップしている可能性が強い。
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