連載 助産婦のための臨床薬理・1【新連載】
妊娠と薬[1]—胎児に対する薬の作用は、ほとんど知られていない
柳沼 忞
1
1東京大学医学部付属病院分院産婦人科学
pp.340-345
発行日 1984年4月25日
Published Date 1984/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206438
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薬が投与される時,注意するのは助産婦の役割でもある
私にとって,産科学はサリドマイド・ベビーに始まったといっても過言ではない。私が東京大学産婦人科教室に入局した昭和36年のころから,サリドマイド・ベビーの出産の報告が急増してきたからである。私自身もこの年に,サリドマイド・ベビーの出産に立ち会い,強烈な印象を受けたことを今でも覚えている。このころは,製薬会社の薬剤売り込みの攻勢は,それほど強いものではなかったように記憶する。もちろん,医師が妊娠初期の婦人に,つわり止めや睡眠薬としてこのサリドマイドを処方した例もあるが,妊婦自らがつわりや不眠のためにこの薬を手に入れて服用した場合も多かったように思う。その中でも,薬を入手しやすいメジカルあるいはパラメジカルの仕事に従事した婦人が,比較的多かったのではないか。私自身の経験したその婦人は薬剤師で,不眠のためにその薬を妊娠初期に連用したものであった。
最近では,すべての薬に添付書(図1)というものが付いている。この添付書には,薬の化学的および薬理学的諸性質,適応疾患,用法,副作用と,ほかに妊婦および授乳婦人に対する使用上の注意が必ず明記されている。妊婦に対してある薬を投与する時には,特に,
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