小児科 61巻2号 (2020年2月)

特集 小児消化器疾患―最近の話題

  • 文献概要を表示

ミトコンドリア呼吸鎖複合体異常症は多彩な症状を呈するが,消化器症状が主症状となっている疾患群の報告は少ない.消化器症状を主症状とするミトコンドリア病をミトコンドリア腸症とよぶ.報告では難治性下痢症,嘔吐症,胃食道逆流症などの頻度が高い.酵素活性,病理検査,遺伝子検査などを参考に診断を行う.ミトコンドリア病は罹患臓器で酵素活性を測定するのが原則だが,腸管に関しては酵素活性測定が困難なため,他の臓器で代替する必要がある.治療に関して十分なエビデンスがあるものはないが,ミトコンドリア病全般で食事は高脂肪・低炭水化物食が望ましいとされる.

  • 文献概要を表示

ピロリ菌は胃がん発生の強力な促進因子である.ピロリ菌感染は5歳までの小児期に起こり,除菌療法を行わないと慢性胃炎である萎縮性胃炎や,胃十二指腸潰瘍などを引き起こす.感染診断は,内視鏡による生検組織を用いる侵襲的な「点」検査と内視鏡を必要としない非侵襲的検査である「面」検査に分けられ,それぞれの検査の特性を理解して検査を行う必要がある.小児に対するピロリ菌除菌治療はわが国では保険適用外であり,リスク・ベネフィットを十分に検討したうえで治療を考慮し,進めるべきである.CAM耐性が世界的に問題となっており,除菌治療を行う場合は菌株の抗菌薬感受性に基づいて治療法を選択することが重要である.

  • 文献概要を表示

炎症性腸疾患を診療するにあたり内視鏡検査は必須の検査である.内視鏡検査での所見だけでは正確な診断ができないことがあるため,常に病理組織の結果もふまえて診療を進めていく必要がある.小児科領域で内視鏡検査を積極的に行うようになったのはここ最近のことである.鎮静など成人領域とは異なることもあるため,安全に検査を行うことが非常に重要である.小児の内視鏡検査が安全に行えるようになった背景には,内視鏡機器のより細径化などの改善や進歩と小児科医の積極的な内視鏡技術の取得がある.内視鏡検査機器の進歩は現在進行形であり,内視鏡検査でできることの範囲は広がってきている.

  • 文献概要を表示

近年,成人の炎症性腸疾患において新たな抗生物学的製剤が保険適用となってきている.2017年には小児期発症の炎症性腸疾患患者が増加しているなかで,インフリキシマブが6歳以上の小児患者において保険承認となった.それに伴い,既存の治療でコントロール困難な患者に抗TNFα製剤が導入される例が増加した結果,病勢の寛解・維持やステロイド離脱に貢献している.今後,他の生物学的製剤も小児においても保険適用となることが予想され,投与方法や副作用,患者のQOLなどを考慮した生物学的製剤の選択が重要となる.そのため,小児炎症性腸疾患の病態や治療に精通した医師と相談しながら治療を行うことが望ましい.

5.腸内細菌と疾患 山西 愼吾
  • 文献概要を表示

分子生物学的手法による細菌の同定,定量が可能になり,次世代シークエンサーの登場による解析時間の高速化により,宿主に共生する細菌の研究が飛躍的に発展した.そして,無菌マウスとの比較から共生細菌が宿主臓器の発達や恒常性維持に非常に重要な役割を果たしていることが明らかとなった.近年,世界的に急増し医療問題になっているアレルギー疾患,炎症性腸疾患,肥満などの慢性炎症性疾患は共生細菌叢の変化による粘膜上皮,免疫システム,神経系の機能異常が病態の背景にあることが明らかにされつつある.本稿では腸内細菌が病態に関与する疾患に関して最近の知見を紹介する.

6.小児の便秘症 横山 孝二
  • 文献概要を表示

便秘は身近に存在する病態であり,日常診療でも遭遇する機会が多いが,身近であるがゆえにQOLに大きく関連し,長期にわたって患者を悩ませることもある.小児期の早期診断と治療介入で長期的な予後が改善する可能性がある.2013年に「小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン」が作成された.標準的な便秘診療の普及が期待される.昨今,成人領域ではいくつかの新しい便秘症治療薬が発売されているが,小児には適応がないものがある.一方,2018年,慢性便秘症治療薬として使用可能な国内初のポリエチレングリコール製剤が発売され,2歳以上の小児でも使用可能となった.本剤の導入により,今後便秘診療は大きく変化するものと考えられる.

7.若年性ポリポーシス 今川 和生
  • 文献概要を表示

若年性ポリポーシスはSMAD4BMPR1A変異を伴い,消化管に過誤腫性ポリープが多発する.小児期より下血などの症状で気づかれることが多い.本症では,胃癌や大腸癌などの消化器がんの発症リスクが高まるため,生涯にわたるサーベイランスが重要である.また,SMAD4変異を有する場合は,遺伝性出血性末梢血管拡張症を伴って肺動静脈瘻などの血管奇形や結合組織病変を合併することがあり,消化管のみならず循環器など全身の病変検索を行う.本稿では,遺伝子異常により特徴づけられるその他の消化管ポリポーシスとの鑑別点や,本症における医学的管理の方針について述べる.

  • 文献概要を表示

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)はメタボリックシンドロームを背景に発症する脂肪性肝疾患であり,進行して非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に至った症例の一部は肝硬変や肝癌を発症する.小児NAFLDの診断では小児期に脂肪肝をきたし得る疾患の除外が必要である.治療は食事療法および運動療法が中心となる.近年予後予測因子として最も重要視されているのは肝線維化であり,小児においても非侵襲的な肝線維化評価法や線維化と予後に関する検討が望まれる.

  • 文献概要を表示

最近の肝移植における話題として,移植後の免疫抑制療法におけるエベロリムス使用やABO不適合移植時のリツキシマブ投与による減感作療法が保険適用となりさらに成績が向上することが期待される.その一方で,思春期・若年成人(AYA)世代において,薬剤のノンアドヒアランスなどから移植成績が低下する問題がある.また,2018年に肝臓移植希望者選択基準が改正され,脳死ドナーの年齢が18歳未満の場合には,18歳未満のレシピエントを優先すると明記されたことにより,小児ドナーの増加につながるかが注目される.

綜説

腎臓病へのDOHaDの影響 粟津 緑
  • 文献概要を表示

慢性腎臓病(CKD)を含む生活習慣病発症の起源は胎生・周産期にあることが明らかになっている(DOHaD学説).低出生体重者に典型的にみられるネフロン数減少がCKDの要因と考えられているが,他の解剖学的(血管密度,ポドサイト減少),機能的(尿細管,内皮,レニン・アンジオテンシン系,交感神経系,酸化ストレス,ミトコンドリア)変化に加え,エピジェネティクスも関与する.さらに生後の栄養,成長,二次侵襲がCKD発症に重要な役割を果たす.啓発,ハイリスク者の同定,適切なフォロー,早期介入によりCKDの予防が可能である.

  • 文献概要を表示

急性巣状細菌性腎炎(AFBN)は,急性腎盂腎炎と腎膿瘍との中間に位置する疾患概念で,確定診断には造影CTが必要とされる.AFBNは早期診断できれば早期治療につながり瘢痕率を低下させることができる一方で,過剰診断して治療期間が長期に及ぶことが考えられる.われわれはUTI早期における腎臓の造影CT画像を正常群,楔状群,巣状群に分類して各群の治療経過を比較した.AFBNの早期診断に関する検討では,AFBN診断を目的とするUTI早期の造影CTは過剰診断となる可能性があり,治療経過や超音波検査所見も含め,撮影時期を考慮し診断する必要がある.

  • 文献概要を表示

小児における深頸部膿瘍は診断が重要であり,超音波検査や頸部造影CT検査を用いて迅速かつ的確に診断する必要がある.患児の年齢により炎症を呈する部位は異なり,その解剖学的位置関係などから呈する症状は変化する.とくに咽頭後間隙に発生する膿瘍は重症化しやすい.病原微生物はブドウ球菌や化膿性レンサ球菌が多く,緊急性がなければ内科的治療で経過観察が行うことができる.近年の傾向として外科的処置を要せず軽快する場合も多い.しかし48時間以上遷延する場合や気道症状が進行する場合には速やかな切開排膿術が必要である.症状が遷延し外科的処置が必要となる症例の背景ははっきりしないが,Th1優位の免疫応答を呈している可能性が高い.

  • 文献概要を表示

2018年の夏に予後の異なった早発型新生児エンテロウイルスB種(EVB)感染症2例を経験した.エコーウイルス18(E-18)が検出された症例1は満期で出生し日齢5に発熱を認め日齢8に解熱した.周囲に発熱者はなかった.エコーウイルス11(E-11)が検出された症例2は母親が分娩12日前に発熱と腹痛を認めていた.満期・経腟分娩で,羊水混濁・新生児仮死を認め出生し日齢9に死亡.病理所見で肝臓と副腎に広範な出血と壊死および骨髄血球貪食像を認めた.2011~2018年にEVBが咽頭ぬぐい液から検出された入院例88例について血清型を調べたところ,14種類を認めた.2018年以前,E-18は2015年と2017年に1例ずつ認め,E-11は2013年の1例のみであった.症例1は分娩時の垂直感染または出生後の水平感染,症例2は経胎盤感染と推測され,血清型,出生前14日以内の経胎盤感染,流行状況による母体の中和抗体価が予後に影響したと考えられた.

  • 文献概要を表示

皮質骨不整(cortical irregularity)は10歳代の若年者で,外傷のために撮影したX線画像で偶然発見されることが多く,約3~10%程度の頻度で認められる.辺縁硬化を伴う境界明瞭な透亮像が特徴で,一般的に年単位で画像上自然消失する.病理学的には大腿骨遠位骨幹端内側後面の皮質骨内に生じる,骨化成分をほとんど有しない線維組織を主成分とする良性骨腫瘍(線維性骨皮質欠損)である.良性であり,年齢・発生部位・画像所見からcortical irregularityが疑われる場合は,生検など侵襲的な検査を行わずに経過観察することが一般的である.患部の疼痛が強い例や骨膜反応を伴う例では骨髄炎や悪性疾患の鑑別を要する.今回われわれは化膿性膝関節炎の診断の際に画像上,cortical irregularityを認めた症例を経験した.MRI検査では骨髄炎や占拠性病変はなく,関節液から悪性細胞は検出されなかった.感染症の治療で疼痛は改善され,機能障害を残すことなく治癒したが,画像所見は変化せず残存しており,感染症との関連はなく偶然発見されたものと考えた.

[連載] 最近の外国業績より

  • 文献概要を表示

背 景  米国の1型糖尿病患者は100万名以上にのぼる.診断がつかない段階でも自己抗体が出現し,高血糖を呈して病状が進行することがわかっている.テプリズマブ(Fc受容体非結合性抗CD3モノクローナル抗体)はCD8陽性Tリンパ球を不活性化しβ細胞破壊を遅らせるとの報告がある.そこで本研究では1型糖尿病発症のハイリスク群を対象とし,テプリズマブ投与により発症時期が遅延するかを検討した.

--------------------

目次

著者プロフィール

書評

お知らせ

投稿規定

バックナンバー

次号予告

編集後記

基本情報

00374121.61.2.cover.jpg
小児科
61巻2号 (2020年2月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0037-4121 金原出版

文献閲覧数ランキング(
5月18日~5月24日
)