medicina 50巻6号 (2013年6月)

『medicina』50周年を迎えるにあたり

特集 最新の動脈硬化診療―どう診断し,どう治療するか?

代田 浩之
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 動脈硬化の主要なリスクファクターの認識,それらに対する介入と有効性についてはこれまで多くのエビデンスが積み上げられてきた.特にスタチンを中心とする脂質低下薬の介入試験から,LDL-Cの低下によって冠動脈疾患の発症と再発を予防できることが明らかとなっている.しかしながら,動脈硬化性疾患は先進諸国だけでなく発展途上国を含めた世界中で増加を続け,相変わらず死因の第一位である.わが国においても,スタチンの普及を含めた高コレステロール血症に対する対策が実施されているにもかかわらず,心筋梗塞の発症が増加する現象がいくつかのコホート研究から示されている.当然のことながら,LDL-Cは動脈硬化の多くのリスクのなかの1つであり,それをコントロールするだけで十分ではない.これまでの介入試験でもスタチンの示した心血管事故回避率は3割程度であり,残りの7割の心血管事故は存在し続けることは当然といえよう.これらのリスクはいわゆる残余リスクとしてその制御の重要性が最近特に注目され,多方面から検討されつつある.

 一方,日頃の診療の場に目を向けてみると,私たちは個々の動脈硬化性疾患患者に対して,どこまで正確にその患者の病態を把握し,治療を選択しているだろうか.血液生化学検査,画像診断や機能検査などさまざまな評価の方法をもちながら,個々の患者のリスクを必ずしも正確に捉えているとはいえない.脂質異常症のプロフィールや動脈硬化の重症度,そして将来のリスクの予測を個々の症例で的確に行うことがその患者の予後改善につながる.身近な身体所見のとり方も大切である.CCUで回診をすると,急性冠症候群の症例のなかに家族性高コレステロール血症の存在が見過ごされていることも時に経験する.当たり前の話だが,ベッドサイドにおいても急増する動脈硬化性疾患とその高リスク患者の診療を,正確に,そして効率的に行うことは重要である.これまでのようにスタチンを使っておけばよいという時代から,より病態にあった診療を実践するための診察法,検査の解釈,そして薬剤選択が求められる.このような背景から,本特集ではbeyond LDLに焦点を当てて最新の動脈硬化診療のあり方を再考したい.

特集の理解を深めるための26題

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代田(司会) これまで,LDL-C低下療法を中心としたエビデンスがかなり集積されていたにもかかわらず,動脈硬化性疾患は少なくなるどころか,逆に増えています.そういう現象をみると,やはりこれまでの診療だけでは必ずしも十分ではないことは明らかで,もう一度動脈硬化性疾患の診療を再考する必要があると思います.本日は,先生方が日常診療でなさっていること,感じていることをそのままお話しいただければと思います.

動脈硬化の発生メカニズムを再考する

リポ蛋白と炎症 荒井 秀典
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ポイント

◎粥状動脈硬化発症にはLDL,HDLなどリポ蛋白が重要な役割を演じる.

◎LDLの酸化が炎症を惹起し,HDLは抗炎症効果を示す.

◎リポ蛋白に関連する慢性炎症の制御が動脈硬化進展抑制につながる.

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ポイント

◎急性冠症候群の多くは冠動脈の粥状硬化巣の破綻(プラーク破裂とプラークびらん)により血栓が形成されて発症する.

◎プラーク内の慢性炎症の持続は,プラーク不安定化・破綻と血栓形成にとって重要な因子である.

病歴・身体所見・検査の進め方

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ポイント

◎自覚症状の種類,出現時期,経時変化の聴取が重要である.

◎個々の患者の生活習慣を十分に把握し,リスク評価をする必要がある.

◎動脈硬化性疾患の既往の有無に加えて,動脈硬化の原因となる疾患や,それらに対する薬剤服用の有無について問診する.

◎冠動脈疾患の家族歴は,独立した危険因子であり,その聴取は必ず行わなければならない.

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ポイント

◎動脈硬化を意識して身体所見をとる際,特に気をつけるべきことは,動脈硬化を引き起こしやすい病態の診断のための身体所見と,動脈硬化そのものの診断のための身体所見である.

◎皮膚結節性黄色腫,角膜輪,腱黄色腫などは,FHを診断するうえで重要な身体所見である.

◎動脈硬化の診断には,各動脈の触知,左右および上肢下肢の血圧の差,心雑音および血管雑音の聴取が重要である.

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ポイント

◎問診,理学的所見を踏まえたうえで必要な検査を行う.

◎危険因子として重要な脂質異常症,糖尿病,高血圧,メタボリックシンドローム,CKDは見落とさないようにする.

◎局所病変の診断時には,そのほかの動脈硬化性疾患の合併にも留意する.

診断法:血液生化学検査

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 脂質異常症の診断は血清脂質の測定に始まる.健診や日常診療において簡便に測定できる血清脂質検査は総コレステロール(TC),HDLコレステロール(HDL-C)および中性脂肪〔トリグリセリド(TG)〕である.本稿ではこれら3種類の脂質を「一般脂質」と定義した.TCはすべてのリポ蛋白注1)に含まれるコレステロールの総量である.これらの濃度変化は,リポ蛋白の合成と異化・分解のバランスの結果である.

 臨床の場でリポ蛋白分析やアポ蛋白測定を頻繁に行うのは現実的ではない.基本的なリポ蛋白代謝の流れ(図1)を正しく理解したうえで,一般脂質の異常からリポ蛋白代謝異常症の実態を考えて診療することが重要である.この理解は治療薬の選択に通じる.本稿では一般脂質の測定について概説し,その結果から考えられる病態の鑑別方法について解説する.

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ポイント

◎アポ蛋白は,原発性脂質異常症の診断に重要である.

◎リポ蛋白分画は,特に脂質異常症の型分類に重要である.

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ポイント

◎レムナントリポ蛋白が食後血中に長時間蓄積する状態を食後高脂血症という.

◎レムナントリポ蛋白が蓄積する病態ではsmall dense LDLが形成される.

◎レムナント様粒子コレステロールとsmall dense LDL-Cの定量が可能である.

炎症マーカー:CRPとPTX3 井上 健司
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ポイント

◎近年,バイオマーカーはPOCT(point of care test)として循環器診療ではなくてはならないものとなった.

◎スクリーニング・診断・治療・予後予測,いずれに適したものであるのかを理解することが大切である.

◎Pentraxin 3はCRPと同じfamilyに属している炎症蛋白で心血管予後予測マーカーとして期待されている.

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ポイント

◎アディポカインは,動脈硬化病変と深く関連している.そのなかでも特にアディポネクチンは,多面的な抗動脈硬化,抗血管リモデリング作用を呈することが血管内皮を用いた基礎検討で明らかになっている.

◎血中アディポネクチン濃度は冠動脈疾患発生,プラークの安定化などと強く関連していることが臨床面でも明らかとされてきている.また低アディポネクチン血症は冠危険因子の集積そのものにも関与している.

◎アディポネクチンと補体C1qの結合比が,メタボリックシンドローム発症や冠動脈疾患のリスクと関連することが報告されている.

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ポイント

◎HDL-C濃度は,冠動脈疾患の独立した予測因子である.

◎HDL-C濃度からHDLの質そのものの評価へのパラダイムシフトが起こりつつある.

画像診断と機能検査の位置づけ

頸動脈超音波 三田 智也
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ポイント

◎IMTは,心血管イベント発症の予測マーカーとしての地位が確立されている.

◎IMTをルーチン検査に取り込むことは有用である.

内皮機能検査 東 幸仁
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ポイント

◎血管内皮機能測定は,動脈硬化の病態評価,治療効果の評価,予後予測に有用である.

◎さまざまな血管内皮機能測定法が臨床応用されている.

◎2012年4月より血管内皮機能測定は保険診療として承認されている.

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ポイント

◎動脈弾性能は,動脈硬化進展度を定量的に反映する指標である.

◎CAVIは,血圧に依存せず,固有の動脈弾性能を反映する.

◎肥満症,糖尿病,高血圧,喫煙のコントロールで,CAVIは変動する.

冠動脈CT 山本 秀也 , 木原 康樹
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ポイント

◎冠動脈CTAは良好な冠動脈狭窄検出能を有している.

◎検出不能例については心筋血流評価を併用することでその有用性の向上が期待される.

予防と治療の進め方

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ポイント

◎ガイドラインは,現状での治療エビデンスに基づいて作成されたものである.

◎ガイドラインは,総合的な指針であり,最終的な治療選択は医師の判断による.

◎動脈硬化予防のためには,脂質異常症治療のほかにも,禁煙,高血圧,糖尿病,肥満症などの包括的な管理が重要である.

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ポイント

◎喫煙および受動喫煙は動脈硬化性疾患の危険因子であり,禁煙し,受動喫煙を回避する.

◎動物性脂肪の摂取を減らし,魚類,大豆製品,野菜,果物,未精製穀類,海藻の摂取を増やす.

◎身体活動および体力の増加は,動脈硬化性疾患の発症および死亡リスクを減らす.

高LDL-C血症の治療 大村 寛敏
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ポイント

◎心血管イベント予防のためにはLDL-Cが脂質異常症の第一管理目標である.

◎LDL-C値180mg/dL以上では,家族性高コレステロール血症を鑑別する.

◎高LDL-C血症に対する治療薬としてスタチンが推奨される.

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ポイント

◎高TG血症が独立した動脈硬化危険因子であることを認識する.

◎高TG血症の基盤をなすレムナントが動脈硬化を惹起する.

◎特に糖尿病,肥満,腎不全における高TG血症の是正は重要である.

◎フィブラート系薬剤が高TG血症に対して最も効果的な薬剤である.

◎エゼチミブはTGを17%,レムナントコレステロールを39%低下させる.

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ポイント

◎HDL-C値と冠動脈疾患発症には,LDL-C値とは独立した負の相関関係がある.

◎HDLはコレステロール引き抜き作用をはじめとしたさまざまな心臓病防御作用を有している.

◎HDL-C値の上昇を標的とした薬物の量的アプローチでは必ずしもポジティブな結果は得られておらず,HDLの多面的作用に着目した質的アプローチが重要視され始めた.

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ポイント

◎エゼチミブは安全性に優れ,スタチンとの併用で強力な効果を発揮する.

◎EPA・DHA製剤は1日1回の投与で効果的にTGを低下させる.

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ポイント

◎診察室血圧と家庭血圧の降圧目標は年齢・合併症によって異なる.

◎診察室血圧と危険因子・臓器障害・心血管病の有無により脳心血管リスクを層別化し,管理計画を立てる.

◎一部の動脈硬化性疾患の治療に特定の降圧薬がより有効である可能性が示されている.

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ポイント

◎短期的血糖管理指標であるグリコアルブミン(GA)や1,5アンヒドログルシトール(1,5-AG)は血糖変動を推測できる.

◎血糖コントロールの急激な悪化ではHbA1cに先行してGAが上昇する.

◎1,5-AGの測定は軽症糖尿病患者が対象となる.

抗血小板薬 堀内 久徳
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ポイント

◎血小板は速い流れのなかでも障害血管に相互作用することができるので,動脈血栓症発症に重要な役割を演ずる.

◎そのため,抗血小板薬はハイリスク症例の脳梗塞や心筋梗塞の予防に用いられる.

◎冠動脈ステント留置後一定期間はステント血栓症予防のため,アスピリンとADP受容体拮抗薬の2剤併用抗血小板療法が必須である.

◎抗血小板療法は,心血管イベントの予防効果とともに出血性合併症の増加は避けられず,功罪を考えて施行すべきである.

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ポイント

◎LDLアフェレーシスは,現在最強のコレステロール低下療法である.

◎その主な適応は,家族性高コレステロール血症などの難治性高コレステロール血症と閉塞性動脈硬化症である.

◎LDLアフェレーシスによる積極的コレステロール低下療法により,心血管イベント減少効果が期待できる.

◎LDLアフェレーシスによりアポB含有リポ蛋白以外の物質も除去され,虚血症状改善に貢献する可能性がある.

血行再建術の適応と実際

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ポイント

◎頸動脈狭窄症はアテローマ血栓性脳梗塞の原因として重要である.

◎最良の内科的治療(抗血小板薬と脂質異常症改善薬を含む)を行っても,その効果が不十分である時に血行再建術が考慮される.

◎血行再建術の適応は症候および狭窄率で決定され,術式には内膜剥離術とステント留置術がある.

◎血行再建術の術式は内膜剥離術が優先されその高危険群に対してステント留置術が適応となるが,個々の症例の背景を勘案しつつ十分なインフォームドコンセントのうえに決定されるべきである.

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ポイント

◎慢性冠動脈疾患に対する冠血行再建法は,冠動脈疾患の重症度や患者背景を考慮し,循環器内科医と心臓外科医とからなるハートチームでの議論のうえで,PCIかCABGの選択がなされることが望ましい.

◎急性冠症候群の場合には,多くの症例でPCIによる速やかな血行再建の適応となるが,心室中隔穿孔や左室乳頭筋断裂などの機械的合併症を合併していれば,合併手術を含む緊急CABGの絶対的な適応である.

◎PCIでは,薬剤溶出性ステントとベアメタル・ステントの正しい使い分けが必要である.

血管内治療とバイパス術 小田代 敬太
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ポイント

◎PAD患者において,間欠性跛行と重症虚血肢の状態では治療は異なる.

◎間欠性跛行では,QOLに影響を及ぼす制限があるか,近位部病変(大動脈腸骨動脈病変)かどうかで治療が異なる.

◎重症虚血肢では可能な限り血行再建術を考慮する.

連載 顔を見て気づく内科疾患・6

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患 者:19歳男性

病 歴:詳細不明であるが精神疾患にて通院中,処方されていたリスペリドン液剤を誤って多量に内服(数量不明).同日の受診では特に異常を認めず帰宅したが,約20時間後「首が硬直して動かせない」「呂律が回らない」などの症状が出現し再度受診.

連載 実は日本生まれの発見・6

ジルチアゼム 村川 裕二
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 富士山に登るつもりだったのに「高尾山に着いた」ということはない.中央線快速に乗ってでかけたのだから,高尾山を目指したのだ.下りが徒歩かゴンドラかは別にしても,登った山は登りたかった山である.

 薬づくりの面白いのは,高尾山に向かって歩き出したのに,筑波山に登ってしまうこと.途中で,景色が変わったことに気付く.あえて立ち止まらない.「こっちでもいいか」と,目の前の山に登るのである.

連載 神経診察の思考プロセス 一般内科外来のカルテから・3

急に起こっためまい2例 大生 定義
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症例1:山田はるか(仮名)36歳女性

2日前の夜中にめまいで目が覚めた.めまいは初めてである.10日後に婦人科の手術を控えて大丈夫かと一般内科に本日相談にきた.熱はない.問診票の診察前の血圧130/70mmHg,脈拍80回/分.2歳の女児を伴って受診.

連載 こんなときどうする?内科医のためのリハビリテーションセミナー・15

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 リハビリテーション(リハ)は内科疾患の予後や経過を左右する治療手段である.最近は対象疾患も拡大し,診療報酬改定においても普及のためのさまざまな配慮がなされてきている.最終回にあたり,これまでの14回の連載を総括する.

連載 皮膚科×アレルギー膠原病科合同カンファレンス・15

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後期研修医(アレルギー膠原病科) 今回は健診にて軽度アミラーゼ高値を指摘された35歳女性です.リパーゼ,P-アミラーゼともに正常で,ドライアイもあるので唾液腺由来ではないかとのことで当科紹介になっています.

アレルギー膠原病科医 Sjögren症候群疑いということですね.診断に関してはどう思いますか.

REVIEW & PREVIEW

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最近の動向

 最近,大腸癌あるいは直腸癌患者において,phosphatidylinositol 3-kinase(PI3K)の触媒サブユニットをコードするPIK3CA遺伝子の変異が,アジュバント使用でのアスピリンの効果に影響するという分子疫学研究が報告された.PIK3CA遺伝子に変異のある大腸癌患者に対して,診断後にアスピリンを投与した場合,大腸癌特異的死亡が82%も減少したのである.しかし,PIK3CA遺伝子に変異のない場合には,アスピリン投与は生存に影響を与えなかった.驚異的な結果となったこの研究をさらに進めることにより,PIK3CA遺伝子をバイオマーカーとして使用することで,アスピリン投与による大腸癌の治療上の便益を予測できるようになることが期待されている.

 本稿では,これに関連した薬剤疫学研究の動向を概説する.

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 中村好一先生著の『基礎から学ぶ楽しい疫学』が,「黄色い本」の愛称で好評を得ていることを,この5年間ほど聞き及んでいた.今般,本書の第3版発行に当たり書評の依頼を受けたことを機に,全ページにくまなく目を通した.元来,医学部学生を対象にまとめられたようであるが,医学・公衆衛生の広範な領域で既に活躍されている多くの方々にも読んで欲しい,そして必ずや疫学を楽しく学んでいただけることを確信できるテキストである.

 国内外を問わず多くの疫学のテキストでは,本書の3つの章(疾病頻度の測定,疫学研究手法,偏りと交絡)の内容を中心に,「理解できぬ奴が悪い」と言わんばかりのしかつめらしい文章が続く.それはあたかも,「疫学者以外の者に疫学を容易に理解されてたまるものか」といった疫学者の偏屈な誇りが,行間にびっしりと詰まっているかのような雰囲気を醸し出している.その結果,多くの読者がもはや学ぶ気力を失って,「疫学は楽しくない」「疫学なんてわからなくとも構わない」と刷り込まれてしまっている.「疫学者とは数をかぞえることが得意な医師のことである」というジョークの所以でもある.

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 数年前に私の親しい友人で,長年の同僚である佐々木彰一先生から,学生向けの教科書を執筆中であると聞いた私は,これはきっと役に立つ素晴らしい教科書ができるに違いないと思った.私たちが共に働いてきた東京女子医科大学では,国家試験の受験を迎える最終学年の学生に対し,各領域の復習として補講を行ってきたが,それに際しては,学生たちにどの教師の講義を聴きたいかのアンケートをとり,その結果に従って補講カリキュラムを組んできたのだが,神経内科領域では毎年佐々木先生の希望が最多であり,いつも彼に講義をお願いしていた.佐々木先生から教科書執筆のことを聞いた途端に,このことを思い出し,その教科書の刊行を心待ちにしていたのである.

 数日前,その教科書を佐々木先生自身から手渡されたとき,私はまず,グレイの落ち着いた表紙からなるスマートな外見に感心した.そしてページを繰ると,目に飛び込んでくるのは,実に美しいカラー図版の口絵である.佐々木先生は,大変に経験豊富,かつ優れた判断能力をもつ神経内科の臨床医であると同時に,ニューヨークのモンテフィオーレ・メディカルセンターにおいて平野朝雄先生の下で神経病理学を学ばれ,形態学の蘊奥を究めた研究者でもある.本書冒頭の口絵は,形態学者としての彼の面目躍如たるものであり,それを見ているだけでも,ほれぼれとする思いである.

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 栄養士,管理栄養士の先生方と学会や研究会で一緒になると,よく言われることは,医師は栄養学についてきちんと学んでいない,知らない,興味がない,そのような先生が多いという不満です.栄養学に関しては,我流で患者さんに接している医師が多く,栄養士の先生方が困ることもあるそうです.

 確かに,自分自身で考えても,栄養学について系統的に授業を受けたことはありませんでした.栄養学という独立した講座は本学になく,医学部のなかでも栄養学講座をもっている大学はきわめて少ないのが実情です.講座がある学校でも,栄養学部を併設している場合か,糖尿病など栄養に密接に関連する臨床教室が名前をつけているケースが多く見受けられます.一方で,高血圧や糖尿病,脂質異常症,動脈硬化,肥満などの分野では,国の健康日本21政策もあって,予防医学の概念が重視され,栄養学についても討論,研究,そして応用する下地ができつつあります.特に,特定健診・特定保健指導が開始されて5年たち,種々の医学分野で食事療法,栄養学の概念がより大きな存在となってきています.

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 柴﨑浩先生の「神経診断学を学ぶ人のために」改訂第2版が出版された.この書はすでに2009年に第1版が出版され大変好評であったが,今回,多くの改訂が加えられ装いも新たに出版されたものである.

 まず,柴﨑先生ならではの大変な労作であると感じる.序で先生自ら述べられているが,電算化や画像化がどれだけ進んでも,神経診断学は学習と経験に基づいた病歴聴取と診察のなかから生まれるものであることをまず宣言されている.最近の神経診断がややもすると画像やコンピューターに基づく知識に偏りすぎていて,安直な形で進められてしまっていることへの警鐘にもなっている.神経診断学は,理論に基づき系統的に行えば正しい診断に達することができるものであり,かつその背後に潜む神経系の美しさや素晴らしさが見えてくることを示しているのが本書である.

information

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会期●2013年10月10日(木)~12日(土)

会場●札幌コンベンションセンター(〠003-0006 札幌市白石区東札幌6条1丁目1-1)

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会期●2013年8月2日(金)~8月4日(日)

会場●神戸ファッションマート(神戸市 六甲アイランド)

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会期●2013年7月27日(土)~7月28日(日)

会場●札幌コンベンションセンター(〠003-0006 札幌市白石区東札幌6条1丁目1-1)

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基本情報

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medicina
50巻6号 (2013年6月)
電子版ISSN:1882-1189 印刷版ISSN:0025-7699 医学書院

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