書評
―中村好一 著―基礎から学ぶ楽しい疫学 第3版
廣田 良夫
1
1大阪市立大学大学院・公衆衛生学
pp.966
発行日 2013年6月10日
Published Date 2013/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402106862
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中村好一先生著の『基礎から学ぶ楽しい疫学』が,「黄色い本」の愛称で好評を得ていることを,この5年間ほど聞き及んでいた.今般,本書の第3版発行に当たり書評の依頼を受けたことを機に,全ページにくまなく目を通した.元来,医学部学生を対象にまとめられたようであるが,医学・公衆衛生の広範な領域で既に活躍されている多くの方々にも読んで欲しい,そして必ずや疫学を楽しく学んでいただけることを確信できるテキストである.
国内外を問わず多くの疫学のテキストでは,本書の3つの章(疾病頻度の測定,疫学研究手法,偏りと交絡)の内容を中心に,「理解できぬ奴が悪い」と言わんばかりのしかつめらしい文章が続く.それはあたかも,「疫学者以外の者に疫学を容易に理解されてたまるものか」といった疫学者の偏屈な誇りが,行間にびっしりと詰まっているかのような雰囲気を醸し出している.その結果,多くの読者がもはや学ぶ気力を失って,「疫学は楽しくない」「疫学なんてわからなくとも構わない」と刷り込まれてしまっている.「疫学者とは数をかぞえることが得意な医師のことである」というジョークの所以でもある.
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