REVIEW & PREVIEW
大腸癌患者へのアスピリン投与の効果
川上 浩司
1
1京都大学大学院医学研究科 薬剤疫学分野
pp.1116-1117
発行日 2013年6月10日
Published Date 2013/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402106861
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最近の動向
最近,大腸癌あるいは直腸癌患者において,phosphatidylinositol 3-kinase(PI3K)の触媒サブユニットをコードするPIK3CA遺伝子の変異が,アジュバント使用でのアスピリンの効果に影響するという分子疫学研究が報告された.PIK3CA遺伝子に変異のある大腸癌患者に対して,診断後にアスピリンを投与した場合,大腸癌特異的死亡が82%も減少したのである.しかし,PIK3CA遺伝子に変異のない場合には,アスピリン投与は生存に影響を与えなかった.驚異的な結果となったこの研究をさらに進めることにより,PIK3CA遺伝子をバイオマーカーとして使用することで,アスピリン投与による大腸癌の治療上の便益を予測できるようになることが期待されている.
本稿では,これに関連した薬剤疫学研究の動向を概説する.
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