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動脈硬化の主要なリスクファクターの認識,それらに対する介入と有効性についてはこれまで多くのエビデンスが積み上げられてきた.特にスタチンを中心とする脂質低下薬の介入試験から,LDL-Cの低下によって冠動脈疾患の発症と再発を予防できることが明らかとなっている.しかしながら,動脈硬化性疾患は先進諸国だけでなく発展途上国を含めた世界中で増加を続け,相変わらず死因の第一位である.わが国においても,スタチンの普及を含めた高コレステロール血症に対する対策が実施されているにもかかわらず,心筋梗塞の発症が増加する現象がいくつかのコホート研究から示されている.当然のことながら,LDL-Cは動脈硬化の多くのリスクのなかの1つであり,それをコントロールするだけで十分ではない.これまでの介入試験でもスタチンの示した心血管事故回避率は3割程度であり,残りの7割の心血管事故は存在し続けることは当然といえよう.これらのリスクはいわゆる残余リスクとしてその制御の重要性が最近特に注目され,多方面から検討されつつある.
一方,日頃の診療の場に目を向けてみると,私たちは個々の動脈硬化性疾患患者に対して,どこまで正確にその患者の病態を把握し,治療を選択しているだろうか.血液生化学検査,画像診断や機能検査などさまざまな評価の方法をもちながら,個々の患者のリスクを必ずしも正確に捉えているとはいえない.脂質異常症のプロフィールや動脈硬化の重症度,そして将来のリスクの予測を個々の症例で的確に行うことがその患者の予後改善につながる.身近な身体所見のとり方も大切である.CCUで回診をすると,急性冠症候群の症例のなかに家族性高コレステロール血症の存在が見過ごされていることも時に経験する.当たり前の話だが,ベッドサイドにおいても急増する動脈硬化性疾患とその高リスク患者の診療を,正確に,そして効率的に行うことは重要である.これまでのようにスタチンを使っておけばよいという時代から,より病態にあった診療を実践するための診察法,検査の解釈,そして薬剤選択が求められる.このような背景から,本特集ではbeyond LDLに焦点を当てて最新の動脈硬化診療のあり方を再考したい.
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