medicina 42巻9号 (2005年9月)

今月の主題 アルコールと内科疾患

Introduction

アルコールとヒトの歴史 石井 裕正
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ポイント

最古の酒はぶどう酒とされ,紀元前5000年ころから造られていた.

米をごうんで造った「口ごうみの酒」が日本の酒の原形と考えられる.

酒は「百薬の長」にも「万病の元」にもなる両刃の剣である.

アルコールの飲み方と生活

アルコールの作用機序 西山 仁
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ポイント

経口摂取されたアルコールは,約20%が胃,約80%が小腸で吸収される.胃の状態(切除の有無,胃の運動,内部の食物など),アルコールの濃度,アルコールの種類などによって,吸収速度が異なる.胃切除後の飲酒には,ことのほか注意を要する.

中等量の飲酒は脳梗塞や虚血性心疾患の予防になるといわれているが,アルコールによる障害の発生に目を向けるべきである.

アルコールは中枢神経系に抑制的に作用する.アルコールによる抑制が,脳幹部の呼吸中枢に至ると呼吸停止をもたらす.一気飲みや飲酒の強要は,厳に慎まなくてはいけない.

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ポイント

飲酒後の酩酊度は遺伝的個人差の存在により,必ずしも飲酒量と一致しない.

血液中エタノール濃度4mg/ml程度で昏睡状態が起こる.

生体中のエタノール濃度は飲酒量を反映するが,アセトアルデヒド濃度は異なる.

飲酒により赤ら顔になる人(flusher)はアセトアルデヒドの上昇で急性的な悪酔状態になりやすい.

「一気飲み」は生体中のエタノール濃度を急速に上昇させ,急性アルコール中毒を惹起させるため死の危険を伴う.

道路交通法の酒気帯び運転は呼気中アルコール濃度0.15mg/l,血液中アルコール濃度0.3mg/mlである.

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ポイント

適量として1日純アルコール20g(アルコール1単位),女性はその半分に控える.

顔の赤くなるタイプは悪酔いしやすく,常習飲酒者では食道がんのリスクが高い.

食べながら,ゆっくり飲む.

胃切除者はアルコール依存症になるリスクが高い.

少量飲酒者は全死亡リスクもがん死亡リスクも低い.

アルコールと救急

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ポイント

急性アルコール中毒は,通常の酩酊から強い酩酊以上を括った概念である.

酩酊の深度は血中アルコール濃度にほぼ相関するが,アルコールに対する耐性の違いで血中濃度と乖離することが少なくない.特にアルコール依存症者でそれが顕著である.

ブラックアウトはアルコール依存症に限らず起きる.

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ポイント

ケトアシドーシスは,低栄養状態のアルコール多飲者が飲酒を続けたり,突然アルコール摂取をやめて生じる病態である.

食事摂取不良による飢餓と,摂取されたアルコールの酸化により呈するケトアシドーシスである.

アニオンギャップの開大した代謝性アシドーシスが特徴である.

治療は輸液とビタミンB1補給,さらにケトーシス改善のためのブドウ糖補給である.

アルコールによる臓器障害

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ポイント

アルコール多飲は,代謝物による毒性のみならず,栄養障害や肝障害など二次的な原因も含めさまざまな神経毒性を引き起こす.

アルコール依存者では,自覚症状を示さなくとも高頻度に神経障害を合併する.難治性が多いが,早期治療で回復するものもあり,早期診断・治療が重要である.

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ポイント

アルコール性ニューロパチーの特徴は,痛みを主症状としたものであり,運動障害は目立たない.

アルコールの多量摂取者では,ビタミンB1欠乏によるberiberi ニューロパチーも起こるが,知覚障害とともに,運動麻痺,心不全症状などが起こりやすいのが特徴である.

アルコールの多量摂取によって,ナイアシン不足になり,ペラグラが起こることがある.

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ポイント

アルコールは,薬剤,ストレスに次ぐAGML(急性胃粘膜病変)の発症要因である.

慢性胃潰瘍の発症や再発へのアルコールの関与は乏しい.

食事とともに摂取するアルコール量が増えると,持続的なLES(下部食道括約筋)圧低下,食道蠕動運動抑制,胃排出能の低下を招き,GER(胃食道逆流)が助長される.

習慣的な過度の飲酒はGERD(胃食道逆流症)発症の危険因子と考えられる.

アルコールと肝炎と肝硬変 堀江 義則
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ポイント

肝障害の発症頻度と重症度は,飲酒量によって定性的には規定される.

女性は男性より,少量かつ短期間の飲酒でアルコール性肝硬変に至る

肝炎ウイルスは,大酒家の肝細胞癌の発症には強く関与するが,アルコール性肝炎や肝硬変の進展への関与は少ない.

大酒家にはまず適正飲酒への節酒指導が必要であるが,アルコール依存症者には断酒指導が必要である.

アルコールと膵炎 西野 博一
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ポイント

急性膵炎の約30%,慢性膵炎の約70%がアルコール性である.

アルコール性膵炎では血清アミラーゼ値の上昇が認められない症例もあるため,必ず他の膵酵素(リパーゼ,エラスターゼ1,トリプシン)を併せて測定する.

アルコール性急性膵炎では,敗血症による死亡率が高い.

アルコール性慢性膵炎の膵管像の変化は高度であり,進行性である.

アルコール性慢性膵炎の約75%に膵石を認め,半数に糖尿病を合併する.

アルコール性慢性膵炎の予後は最も悪い.

治療の原則は禁酒であるが,困難な場合が多く,生活指導が必要である.

アルコールと循環器疾患 沖中 務
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ポイント

アルコールは心不全,高血圧,不整脈,突然死の原因になる.

アルコール性心筋症は心不全を発症する前から拡張機能障害がみられる.

少量から中等量の習慣飲酒は心臓血管疾患発生を予防する効果がある.

習慣性でなくても一度に大量の飲酒をすると心血管疾患のリスクが上がる.

アルコールと筋疾患 荻野 美恵子
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ポイント

アルコール摂取に伴い,機序は明らかではないが,直接筋障害をきたしうる.

急性アルコール性筋障害は大量のアルコール摂取に伴い,骨格筋融解をきたすものである

慢性アルコール性筋障害はアルコール常用者の40~60%に認められる.

慢性アルコール性筋障害は筋萎縮が特徴であり,アルコール摂取の中止にて改善しうる.

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ポイント

アルコールに関連して,低リン(P)血症,低マグネシウム(Mg)血症,低カリウム(K)血症,代謝性アシドーシスが認められる.

飲酒に伴う栄養障害,下痢,肝障害は電解質バランスに影響する.

低リン(P)血症,低マグネシウム(Mg)血症は,摂取不足と尿中排泄の増加から生じる.

ケトアシドーシス,乳酸アシドーシスはanion gapが増加する代謝性アシドーシスを示す.

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ポイント

アルコール大量摂取者は,免疫能が低下しており易感染性である.

大量飲酒は市中肺炎の危険因子であり,大酒家には呼吸器感染症が生じやすい.

非代償性肝硬変を合併している場合,vibrio属感染症およびspontaneous bacterial peritonitisの発症に注意する.

アルコールと血液障害 小野寺 雅史
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ポイント

アルコールは造血系,止血系いずれの系にも直接的,間接的障害を及ぼす.

大赤血球症はアルコール障害ときわめて関連性が高い.

造血障害の診断にはアルコール性障害の有無を必ず確認する.

アルコールと癌 吉岡 孝志
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ポイント

アルコール飲料は,発癌の原因となる.

飲酒関連癌には,口腔・喉頭・食道・肝臓癌がある.

直腸癌や乳癌もアルコールとの関連が示唆されている.

アルコールと発癌への,アルデヒド脱水素酵素の遺伝子多型の関連が注目されている.

少量の飲酒やビールで発癌リスクが下がる可能性が示唆されている.

アルコールと皮膚疾患 早川 和人
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ポイント

アルコール多飲者にみられる皮膚の症状,疾患には多種類のものがある.このうち慢性肝疾患,特に肝硬変患者では,くも状血管腫をはじめとする血管拡張性の種々の皮膚病変が生じる.

アルコール多量摂取との関連が特に深い疾患としてペラグラと晩発性皮膚ポルフィリン症があり,これらは特徴ある皮膚症状を呈することを知っておく必要がある.

アルコールと妊娠と授乳 髙島 敬忠
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ポイント

アルコールは胎児期や乳児期においても,母体を通じて体内に取り込まれ,受動的に障害を与える.

特に妊娠可能な婦人層にとっては妊娠中の禁酒は必須の社会常識であるという知識の普及が肝要である.そのためには,アルコールもタバコやAIDS同様,学校教育の中で取り扱われるべきであろう.

アルコールと代謝疾患

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ポイント

アルコールは単独摂取や低栄養状態での摂取の際に血糖値を低下させる.

アルコールは体内で1g=7kcalのエネルギー源となるため,長期的には血糖コントロールを悪化させる.

SU薬内服患者では,アルコール摂取による低血糖に注意が必要である.

適量のアルコール摂取は糖尿病大血管障害を予防する.

糖尿病患者の飲酒は,患者指導が十分になされたうえで許可されるものである.

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ポイント

アルコールは内因性尿酸産生増加と尿酸排泄低下を起こし,尿酸値を上昇させる.

ビールから摂取するプリン体よりも体内で合成されるプリン体に由来する尿酸のほうが圧倒的に多い.

尿酸値上昇にはアルコールの量,食事中のプリン体,肥満,ストレスが関与する.

アルコールと脂質代謝異常 島野 仁
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ポイント

アルコールは肝臓でのトリグリセリドの合成を高め,高トリグリセリド血症を引き起こす.

アルコールは脂肪肝の主因である.

アルコールは糖尿病悪化の主因の1つである.

適度のアルコールはHDLコレステロールを上昇させる利点があるものの,過量になればトリグリセリドを上昇させるため,高脂血症,糖尿病患者には節酒,禁酒が必要である.

アルコール依存の対策

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ポイント

アルコール依存は頻度の高い病気です.

アルコール依存を見逃さないようにしましょう.

患者に対しては,診断名と断酒が回復のための唯一の手段であることを伝えましょう.

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ポイント

アルコール依存症は飲酒による生活習慣病であり,早期の発見・対処が求められる.

アルコール依存症は脳の疾患である.

問題飲酒を含むスクリーニングにはAUDITやCAGEが用いられる.

依存症のスクリーニングにはKASTが用いられる.

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ポイント

内科の診療では,肝障害,高脂血症,糖尿病,高血圧症,胃炎,うつ症,不眠症などの原因として,過度の飲酒習慣がある可能性を常に念頭に置く必要がある.

初診時,飲酒習慣の有無を必ず問診する.飲酒習慣があれば,アルコール依存症である可能性と,そのタイプ,重症度などを診断する.

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ポイント

治療の目的は,離脱への対応,断酒の開始,合併症の治療,そして依存症への洞察を深めて断酒の動機づけを強化することにある.

治療法としては,依存症の理解を深めるための教育や集団による精神療法,認知行動療法が中心である.さらに自助グループへの参加や抗酒剤の服用などを行っていく.

アルコールと家庭内の問題 岡崎 直人
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ポイント

アルコールと家庭内の問題ではまず暴力についてのアセスメントと対応が大切である.

次に家族機能の損傷の程度や家族の飲酒へのとらわれや巻き込まれの程度を評価する.

そして,家族からの介入が可能かどうかを探り,本人への問題の直面化により,アルコール問題に対する治療の必要性を説く.

断酒後の家族の問題にも十分に注意する.

アルコールと薬物

アルコール離脱の薬物治療 荒川 千晶
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ポイント

アルコール離脱には早期離脱症状,アルコール性幻覚,離脱てんかん,後期離脱症状(振戦せん妄)があり,それらの症状の理解が重要である.

アルコール離脱の治療の主体はベンゾジアゼピン系製剤である.

CIWA-Arのようなスケールを用いて重症度を判定することにより,治療方針を決定していくことが望ましい.

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ポイント

アルコールの薬理作用は,①中枢神経系の抑制,②末梢血管の拡張,③肝臓での糖新生抑制の3つに分類される.

アルコールと薬物の併用によって起こる相互作用は,①アルコールと薬物の薬理効果の相乗(相加)作用〔薬力学的相互作用〕と,②アルコールと薬物の代謝拮抗阻害〔薬物動態学的相互作用〕に大別される.

常用飲酒者は,常時のアルコール負荷により肝代謝酵素チトクロームP450(CYP)酵素が誘導されているため,投与薬物の薬物動態に影響を及ぼす.

アルコールと薬物の相互作用は遺伝的多型,飲酒習慣,飲酒量,併用薬物の代謝酵素に対する影響などで大きく異なり,結果は一様ではないために予測が困難である.

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ポイント

アルコールと向精神薬の併用時には薬物動態的な副作用と薬物力学的な副作用が生じる.

アルコールをベンゾジアゼピン系薬物と併用すると中枢神経抑制作用が増強される.

アルコールと抗うつ薬あるいは抗精神病薬との併用時にも認知機能や精神運動機能への影響が生じる.

理解のための28題

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問題 418

 症 例:41歳,女性.

 主 訴:直腸ポリープ精査.

 既往歴:12歳;虫垂炎にて手術.

 家族歴:特記事項なし.

 現病歴:2000年1月19日,人間ドックを受けた際に直腸指診にてポリープを疑われ,精査加療目的で当科紹介となる.自覚症状なし.喫煙歴なし.機会飲酒.

 入院時現症:身長164.0cm,体重47.0 kg,意識清明,血圧110/62mmHg,脈拍72/分・整.体温36.5℃.結膜に貧血,黄疸なし.胸部に特記所見なし.腹部は平坦・軟.右下腹部に手術痕を認める.圧痛を認めず.下腿浮腫なし.表在リンパ節を触知せず.神経学的異常所見なし.

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昨今,「医療改革」という言葉がよく語られる.しかし,その多くは経済論理優先で語られており,患者や医療現場の医師が抱える現実的な問題を踏まえていないことも少なくない.

 いま,日本の医療はどのような変化にさらされており,医療はどう変わらなければならないのか?

 「しりあす・とーく」では今回,次回の2回にわたり,鋭い医事評論で知られる李啓充氏,医療の最前線で活躍する郡義明氏,大西利明氏の3氏に日本の医療の現実からみた,「本当に必要な医療改革」についてお話をしていただいた.

■李 本日は,お忙しいところをありがとうございます.郡先生には,天理よろづ相談所病院総合診療教育部部長として,研修医の教育に当たっておられる立場と,勤務医として長い間のご経験をお持ちの立場の両面からご発言いただき,大西先生には,プライマリケアの第一線を担う開業医の視線から日本の医療についてお話しいただきたいと思います.

危険がいっぱい―ケーススタディ・医療事故と研修医教育 第9回

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今回の症例は、意識障害をきたしているところを隣人に発見され、救急外来を受診した62歳の男性糖尿病患者である.

 アリス(司会役) 本日の症例は,意識障害で救急受診した62歳の男性糖尿病患者です.

 ダン(症例提示役) 患者は10年以上糖尿病と高血圧で外来フォローされている62歳黒人男性です.一人暮らしなので時々隣人がチェックしに訪問するのですが,今日はドアのベルに反応がなく,部屋に入ってみるともうろうとしていたので車で救急外来にかつぎこまれました(注1).救急外来に着いたときの血糖値は46,ただちにブドウ糖とビタミンB1を静脈注射されています.脈拍は108,血圧は134/66,呼吸数は20でした.意識は回復しましたが,ろれつが回らず,30分後の血糖は62で,再びブドウ糖静注がなされ,10%ぶどう糖液の点滴静注が開始されました.発熱や嘔吐や咳,失禁はありませんでした.

「デキル!」と言わせるコンサルテーション 第9回

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急患室でのコンサルテーションの一場面

(急患外来当番の研修医から仮眠中の循環器専門医にコールがあった)

●研修医:「夜分遅くにすみません.患者さんは陳旧性心筋梗塞で当院循環器科に通院中の方です.昨日,夕飯後から呼吸困難が出現し,横になって眠れないということで,歩いてこられたのですが……」

■専門医:「すぐ行く!」

(急患室で,患者さんは仰臥位で横たわり,頻呼吸の状態である)

■専門医:「ベッドアップして,酸素を増やして! すぐCCUに運びます」

▲看護師:「先生,血圧が200です」

●研修医:「胸部X線と動脈血ガスは採りましたが,まだ結果はきていません」

■専門医:「顔をみて聴診すれば,心不全の急激な悪化は明らかでしょう? いつ患者さんは来られたの?」

●研修医:「30分ほど前です.横になっての安静を指示したら,だんだん苦しそうになって……」

循環器は時間との戦い

 高血圧が引き金になって悪化する心不全は「Flash edema」と呼ばれ,急激に進行します.外来に歩いてきたのに,仰臥位になった途端苦しくなって,さらに血圧があがり(後負荷が強くなり),肺うっ血が強くなり,悪循環に陥り,挿管になることもあります.初期治療が大変重要です.循環器疾患はemergencyが多く,最初の判断を誤れば手遅れになることもあります.重篤そうな気配を感じたら,まず電話でコンサルテーションしましょう.あなたが“デキ・レジ”でも“ダメ・レジ”でも「この患者さん悪そう.」を直感してください.わからなければ誰かを呼びなさい.まず,循環器は時間との戦い,です.

東大病院内科研修医セミナー 6

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Introduction

どのような場合にWernicke脳症を疑うか?

Wernicke脳症の予防はどうするか?

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症 例:5歳,女児.

 主 訴:発熱,頭痛,全身痙攣.

 既往歴:発達は正常で,熱性痙攣の既往なし.ほか,特記すべきことなし.

 現病歴:受診前日より鼻汁と37℃台の発熱がみられていたが,全身状態は良好であった.当日は朝から熱が38℃台になり,頭痛も訴えたために学校を休んで寝ていた.昼から嘔吐が数回みられたが,この時点では意識はしっかりしており,受け答えも普通にできていた.15時過ぎに突然眼球が上転し,全身の間代痙攣が出現したために救急車で来院した.痙攣は,3分ほどで自然消失した.

病理との付き合い方 病理医からのメッセージ(6)

病理解剖 新井 冨生
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病院における病理医の仕事の一つに病理解剖がある.病理解剖は亡くなられた方を対象とし,全身を検索対象とする点で,生検,手術標本,細胞診と異なる.また,医療の高度化に伴い最近臨床医も専門化,細分化が著しく,全身をみる病理解剖は意義深いと考えられる.病理解剖の主な目的は死因の特定,病態の解明,治療効果の判定などであり,医療における精度管理の役割もある.本稿では,まず病理解剖の法的事項に触れた後,病理医からのメッセージ(表1)を時間的流れに沿って紹介する.

病理解剖に関する法的事項

 1. 死体解剖保存法

 病理解剖の実施は法律に基づいて行わなければならない.本来,遺体を傷つけることは刑法190条死体損壊罪にあたる犯罪行為であるが,法律で規定された範囲内では遵法行為となる.死体解剖は1949(昭和24)年に制定された「死体解剖保存法」により実施されている.この法律には,解剖の目的,実施の手続き,解剖の執刀者,解剖実施場所などが規定されている.

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 プライマリ・ケアの醍醐味は,外来診療である.本邦の医学教育は従来より入院に重きが置かれてきた.新臨床研修制度が始まり,医学生や研修医の目がプライマリ・ケアや家庭医に注がれているが,2年間のスーパーローテート研修では入院医療を重視した体制にならざるを得ないであろう.しかし,入院での患者管理の作法と外来診療は全く別物である.本書は,外来診療に必要とされる内科にとどまらない各科の知識を,コンパクトかつ的確に集約し,態度や情報ツールまでをもまとめあげている.見事であり,驚異である.原著者の序文にある「外来ですばやく使える参考資料~覚え書き的マニュアル」となっており,発刊の目的「医療事故を未然に防ぎ,自信をもった診療ができるよう効率的に支援し,研修医に安眠の機会をもたらす」を達成しうる納得の出来栄えである.翻訳・発行いただいた野口善令先生ほか関係者の皆様に心より感謝申し上げたい.以下に,本書の注目点を少しばかり詳述したい.

 まず,皮膚疾患,耳鼻咽喉疾患,眼科疾患,整形外科疾患,精神疾患,女性の健康,男性の健康,といった内科以外の領域についての各章が設けられており,いずれもしっかりと記述されている.『米国・ワシントンマニュアル「外来版」(救急外来マニュアルではない!)』 に,これらの項が取り入れられていることを皆様はいかがお考えであろうか? 一般外来診療マニュアルに,これらの項目が当然のように包含されているのである.専門分化した米国であってもカバーすべきこの領域について,日本の開業医や一般内科外来で必要とされないわけがない.必要とされていないと考る方々がおられたらそれは誤解であり,医師側からニーズを排除しているに過ぎないのである.また,それらの内容も充実している.ためしに腰痛の項目をお読みいただきたい.見逃してはならない“レッドフラッグサイン”を押えるだけで診療のレベルがアップし,“患者さんに知っておいてほしいこと”の項目だけでも診療が楽になるであろう(例えば,「腰痛の9割は,保存的療法のみで8~12週間のうちに完全に回復する」).実践を重視した米国式医学教育のエッセンスが感じ取れるところである.

基本情報

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medicina
42巻9号 (2005年9月)
電子版ISSN:1882-1189 印刷版ISSN:0025-7699 医学書院

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