看護研究 50巻2号 (2017年4月)

特集 若手研究者育成のさらなる進展─海外大学の視察を中心に

真田 弘美
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 国立大学が大きな変革の時期を迎えている。平成16年に開始された国立大学の法人化を皮切りに,第1期(平成16〜21年度),第2期(平成22〜27年度),および第2期中の改革促進期間を経て,平成28年度より第3期の中期目標期間へと最後のステップを踏み出したところである。この間,グローバル化,さらなる少子高齢化,新興国の台頭など日本の国立大学の置かれる状況は厳しさを増す一方であり,東京大学もその例外ではない。平成25年度にはミッションの再定義も実施された。東京大学保健系は,「国際的に活躍し保健学の発展を牽引する研究者・教育者養成」を実施する3大学の1つに定義され,「高い研究実績を活かし,世界を牽引する先端的で特色ある研究を推進するとともに,健康総合科学の広範な領域に係る知識・技術・研究の基礎力を有し,多様な課題を発見・解決できる健康と疾病,保健と医療を担う研究者を育成する」ことをミッションとしている。各国立大学においてもこの再定義されたミッションに基づき,独自性を発揮する必要性に迫られている。

 看護学分野では,海外との人材流動性の向上が臨床レベルでは先行しており,研究分野でもさらなるグローバル化が求められている。独立した生産性が高い研究者の増加がわが国の看護系大学においては重要であることが認識されているが,看護系大学の急増は深刻な教員不足をもたらしている側面もあり,日々の臨床実習指導や学務に時間が割かれ,研究のアクティビティが高いとはいえない状況が続いている。10年後,20年後の看護学の将来に向けて,いまこのときに看護系大学における若手研究者の育成に関して,そのシステムを刷新する必要性があるといえる。

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健康課題と社会構造の転換が要請するケアイノベーション

 少子・超高齢社会を迎え,「治す医療」から「支える医療」への大転換が求められている。健康寿命の延伸のために,国民の生活の困難性を緩和し,国民が自律的に暮らすことのできる“ケア”社会の実現が課題である。世界も未体験の人口構造のもと,グローバルに多様化する社会における“ケア”社会実現のためには,“ケア”の中核を担う看護学が,新たな分野を学として築くことが必須といえる。従来看護学が沿ってきた対象別分野は,臨床実践者養成(対象理解とケア実践)のための構造であり,「支える医療」を学問として構築するための構造にはなっていない。

 少子・超高齢社会の看護学が中核を担う“ケア”を体系化するためには,異分野融合型イノベーティブ看護学研究の推進が必要である。平成26年に公表された提言書「ケアの時代を先導する若手看護学研究者の育成」では,急激に変わりうる社会において看護学が役割を果たすためには,次世代の看護学研究者の養成が急務であり,異分野との融合的な研究が求められていることが明確に示されている(日本学術会議健康・生活科学委員会看護学分科会,2014)。特に,「ケアイノベーションを先導できる若手看護学研究者育成をめざす異分野融合研究・教育環境の醸成」が必須であり,そのためには看護学を基盤に置き,他の学問体系,例えば生体工学や分子生物学,情報工学や政策科学など,これまで必ずしも領域を越えて十分に協働がなされてこなかった分野との融合がキーワードとなっている。そして異分野融合研究を推進するために必須となる人材育成の強化も,併せて強調されている。すなわち,若いうちから異分野融合研究を行ない,基盤的な研究から,最終的には実用化・制度化を見据えた長い視野での研究を実行できる研究体制の盤石化である。また,そのための産官学連携の重要性についても述べられている。さらに,世界に類をみない少子・超高齢社会を経験するわが国において,日本の看護学の発展が,世界の看護学を先導することも夢ではない。そのためには,医療全体における看護の価値を示す研究,すなわち政策研究は必須となる。さらに新しい日本独自の看護学の理論構築は,少子・超高齢社会に生きる人々にとって大きな福音をもたらすであろう。

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はじめに

 アメリカのメリーランド州ベセスダに位置する米国国立看護研究所(National Institute of Nursing Research;以下,NINR)は米国国立衛生研究所NIH(National Institute of Health)に27ある研究所・センターのうちの1つであり,1986年に設立されたNational Center for Nursing Research(NCNR)を前身として,1993年に設立された。NIHはアメリカの健康科学に関する最大のリサーチファンディングエージェンシーであり,米国保健福祉省の下位組織である。

 今回の訪問では,ファンディングエージェンシーとしての役割と,所内研究(Intramural research: 本特集,pp.133-138参照)の実際について理解を深めるため,1995年よりNINRのDirectorとして活躍されているDr. Patricia A. Gradyへのインタビューを行なった。

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はじめに

 ペンシルベニア大学(University of Pennsylvania;以下,UPenn)は,ペンシルベニア州フィラデルフィアに位置する総合大学である。1740年に開学し,看護学部をはじめとする12の学部があり,教員数は4600名以上,学生数は学部,大学院それぞれ1万人を超えている(UPennホームページ,http://www.upenn.edu/)。

 School of Nursing(看護学部)は1886年に開学し,教員(faculty)63名のほか,教育を主に担当する講師(lecturer)が33名,学生数は約1300名である。U.S. News & World Reportのランキングで看護学部として2位(2017年),大学院が1位(2016年),またQS World Universityのランキングでは1位(2016年)を獲得している。学部卒業生のほとんどが修士号を獲得するために進学する,大学院教育や研究を中心とした大学である(UPenn School of Nursingホームページ,http://www.nursing.upenn.edu/)。

 古びた美しさのあるキャンパスに,看護学部の名前が大きく打たれた建物がそびえていた(写真1)。ちょうど上述のU.S. News & World Reportの大学院ランキングが出たばかりで,1位であることを誇る飾り付けが,学外,学内のいたるところに掲示されていた(写真2)。

 訪問した際には,Global Health AffairsのAssistant DeanであるNancy Biller氏,行動学研究センター長Barbara Riegel氏,健康と公正研究センター長Janet Deatrick氏,老年看護学教授Sarah Kagan氏(写真3),Robert Wood Johnson Foundationの寄付による准教授Matt McHugh氏,研究イノベーション担当Associate DeanのTerry Richmond氏にお話を伺うことができた。

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はじめに

 東京大学医学部附属Global Nursing Research Centerの設立に向け,アメリカの研究大学における若手研究者の育成,リサーチ・センターの運営について視察するため,2016年2月10日,Johns Hopkins University(以下,JHU)のSchool of Nursing(看護学部)を訪問した。

 JHUは,1876年にアメリカのメリーランド州ボルチモアに設立された私立大学である。School of Engineering,School of Medicine,Bloomberg School of Public Health,School of Nursingなどの9つの学部・部門を擁し,学生数2万1504名,教員数7108名が在籍している(Johns Hopkins University, 2016)。学生のうち3000名以上は,海外からの留学生であり,1万人以上の卒業生が162か国で活動している。アメリカの大学のなかでも特に,グローバルに活躍できる人材の育成を推し進めている。

 School of Nursingは,School of Medicine,Bloomberg School of Public Healthから独立して設置されており,学生数は1103名(学部生712名,大学院生391名),教員数は222名(常勤62名,非常勤160名)である(Johns Hopkins University, 2016)。School of Nursingの建物は,ボルチモア市内にあるMedical Campusの東側に位置し,正面にはJohns Hopkins Hospitalがある。壁面には「Johns Hopkins University School of Nursing」の名が彫られ,中には演習室や教員のオフィスなどが入っている(写真1,2)。School of Nursingでは,Department of Acute and Chronic CareとDepartment of Community-Public Healthの2分野が設置されている(図1)。

 2017年発表のUS News & World Reportによると,JHUのSchool of Nursingにおける修士課程教育は,2016年のランキングで全米1位の評価を受けている。また,School of NursingにおけるNational Institute of Health(NIH)からのグラントは約683万ドルで,全米3位(2015年)に位置している(Blue Ridge Institute for Medical Research, 2016)。このように,JHUのSchool of Nursingでは,質の高い教育・研究が行なわれている。

 また,JHUがあるメリーランド州で看護師としての免許を取得するには,他の州と同じく,看護師の養成プログラムを修了することが必要である。この養成プログラムを修了することで,看護師資格試験(National Council Licensure EXamination-Registered Nurse ; NCLEX-RN)の受験資格を有する。その後,メリーランド州の看護協会にNCLEX-RNの受験申請・免許申請を行ない,試験に合格することが求められる。受験申請・免許申請は,自身の籍がある州の看護協会にできるほか,Multistate Licensure Compactに参加している州同士なら,自身の籍を問わず自由に受験申請・免許申請が可能である。そこに参加している他の州ですでに免許を取得している場合は,メリーランド州の看護協会などの認証を経て,看護師免許を取得できる。メリーランド州で取得した看護師免許は,2年に1度更新する必要がある。

 本稿では,JHUのSchool of Nursingにおける若手研究者の育て方,リサーチ・センターの運営について述べたい。

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はじめに

 カリフォルニア大学サンフランシスコ校(University of California, San Francisco;以下,UCSF)は,1873年に設置されたアメリカのカリフォルニア州サンフランシスコ市にある州立大学である。保健医療分野を専門にした大学院大学であり,4つのキャンパスと,市内にさまざまな関連施設を有している。学部をもたないことが特徴で,Medical center,小児病院,4つの大学院(歯学,医学,看護学,薬学)から構成される。在籍者数は学生数2940名,研修医1620名,ポスドク1030名。看護系の学生数は合計476名である(表1)。

 われわれが訪問したSchool of Nursing(看護学部)は,最も長い歴史をもつメインキャンパスであるParnassusキャンパスの中に建物があり,Medical centerやMedical sciencesと隣接した場所に位置する(写真1, 2)。School of Nursingは5つの専門分野(Community Health Systems,Family Health Care Nursing,Physiological Nursing,Social & Behavioral Sciences,Institute for Health & Aging)があり,5つのリサーチ・センター(「Center for Global Health」「UCSF Center for Nursing Research & Innovation」「The UCSF/John A. Hartford Center of Geriatric Nursing Excellence」「UCSF Health Workforce Research Center on Long-Term Care」「The Institute of Health & Aging」)を有している。

 US News & World Reportによると,UCSFのSchool of Nursingは,全米2位(2016年)の評価を受けている。また,National Institute of Health(以下,NIH)からのグラントは年間1000万ドル以上である。その額は,School of Nursingのグラントとしては全米1位(2015年)であり,アメリカの看護教育・研究を牽引するトップスクールであることがうかがえる。また,Medical School(医学部)とSchool of Nursingの両者がともに上位5位以内にランキングされている大学はUCSFのみであり,保健医療に関する4つの大学院,および隣接するMedical Center/小児病院と連携をとりながら,質の高い教育・研究がなされている。

 アメリカのSchool of NursingのトップスクールであるUCSFの視察を通して,若手研究者育成のためのさまざまな取り組みが行なわれ,外部資金による複数のリサーチ・センターを立ち上げ,教育・研究活動が精力的に行なわれている様子を垣間見ることができた。

 以下,若手研究者の育て方とリサーチ・センターの運営方法について報告する。

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はじめに

 本稿では,NINR(National Institute of Nursing Research;以下,NINR)における所内研究について述べる。本特集で紹介されている大学では,研究機関としての役割を強力に進めるためのリサーチ・センターを設置しているところが多いが,NINRはあくまでファンディングエージェンシーとしての性格が主である。一方で,大学などの研究機関の研究テーマでは不足する分野に焦点を当てる研究機関としての役割もNINRは果たしており,それを実行しているのが所内研究(Intramural Research)である。

 所内研究はNINR全体の予算のうち5%があてられており,約700万ドルである(2014年)。現在はNINR予算の6%程度まで予算が拡大されており,今後,他の研究所と同様に10%をめざして拡大していく予定である。

 NIH(National Institute of Health)は,オバマ前大統領が公表した「Precision Medicine Initiative」に則り,各個人のゲノム情報・環境要因・ライフスタイルが健康維持・疾病発症にどのように影響するかを解明する研究に注力している。NINRは特に長年Symptom Science(症状科学)に取り組んでおり,どの患者が有害な症状を呈するのかという予測,そして治療効果のモニタリング,また健康アウトカムや症状を改善するための介入方法の選択などについて,多くの成果をあげている(Cashion & Grady, 2015)。 Precision Medicineの推進はNINRの方針とも完全に一致し,所内研究・所外研究ともに,この傾向をより強める方針をとっている。現在では,Precision Healthが新たな用語として提唱され,医学に限らず,広く健康を包括する概念へと拡張されている。

視察報告─看工連携の視点

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はじめに

 看護学と異分野,特に看護学と工学との研究連携について,若手研究者育成とリサーチ・センター運営の視点で調査するため,2016年2月29日〜3月2日の3日間,ミズーリ大学コロンビア校(University of Missouri-Columbia;UMC)を訪問した。主なターゲットは高齢者ケアにかかわる研究連携である。

 ミズーリ大学(University of Missouri;MU)は,ミズーリ州コロンビアに本拠のあるミズーリ州最大の州立大学である。UMCはミズーリ大学群のメインキャンパスであり,1839年に設置された。MUは,コロンビア校,セントルイス校,カンザスシティ校,ローラ校(ミズーリ工科大学)の4校からなり,コロンビア校はその中心的存在である。セントルイス校とカンザスシティ校にはパートタイムの学生も多い。北米のトップクラスの研究型大学の組織,アメリカ大学協会AAU(the Association of American Universities)の一校であり(カナダではトロント大学とマギル大学の2校),ジャーナリズム,法学,農学の分野で著名な大学である。またセメスター制を採用している。

 UMCには,学部2万8000人,大学院6500人の学生が在籍している。教員数は約4500人,職員は1万2000人程度である。学部留学生は5%(中国人,韓国人,サウジアラビア人など),大学院の留学生は3%程度である。運営費は600万ドル弱で,メインキャンパス(写真1)が500ha以上ある。虎(Tiger)をシンボルとし,スクールカラーも虎にちなんで黒と金である。

 MUの設置主体は州であり,ミズーリ州自体はアメリカ中西部のミシシッピ川沿いにあり,人口は全米18位の600万人程度,面積は全米21位である。州都はジェファーソンシティであるが,代表的な都市としてはイリノイ州との州境にあるセントルイス市とカンザス州との州境にあるカンザスシティがある。コロンビアは,州中央部に位置し,人口は10万人弱,カンザスシティ,セントルイス,スプリングフィールド,インディペンデンスに次ぐ州第5の都市である。UMCをはじめとする大学3校がキャンパスを構えており,そのため同市は若者が多く自由な雰囲気が強いといわれている。

 ミズーリ大学ヘルスシステム(University of Missouri Health System)には,Sinclair School of Nursing, School of Health Professions, School of Medicineと8つの医療施設が含まれる。MUの看護系は,看護師の養成を主眼としつつ専門看護師や研究者の育成もめざしている。

 ミズーリ州においても,他の地域と同様,看護師としての免許を習得するには看護師の養成プログラムを修了することが必要である。養成プログラムとして,Hospital diploma(2〜3年),Hospital-based programs(2年),College or university programs(2〜4年)などがあり,この養成プログラムを修了することで看護師資格試験(NCLEX-RN)の受験資格を有する。各州の看護協会にNCLEX-RNの受験申請・免許申請を行ない,合格することが求められる。受験申請・免許申請は,自身の籍がある州の看護協会にできるほか,Multistate Licensure Compactに参加している州同士は自由に受験申請・免許申請が可能である。すでに他の州で免許を取得している場合は,ミズーリ州の看護協会の認証を経て看護師免許を取得できる。看護師免許に関する規程は各州で異なり,看護師免許は2年に1度更新することが多いが,ミズーリ州でも同様である。更新には継続教育を計30時間受講することを求められる場合もあり,ミズーリ州の看護協会で更新手続きを行なう。

 MUの看護系にはBSN(4年制のTraditional BSN,ヘルスサイエンス分野の学位をもつものの15か月プログラムAccelerated BSN,120 credit hoursで学ぶRN to BSNのオンラインコース)と1968年に設置されたMasters,さらにDoctor of Nursing Practice(DNP),PhD が含まれる。学生数は,例えば2016年度の卒業生が学部(Traditional BSN)50名,Accelerated students 38名,オンラインRN to BSNコース18名,合計106 名である。2016年度の修士修了生は10名,DNP博士課程修了が36名,PhD博士課程修了は1名である。

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はじめに

 カナダにおける看護学と工学との研究連携と,若手研究者育成やリサーチ・センターの実態を調査するために,2016年2月26日〜27日にブリティッシュ・コロンビア大学(The University of British Columbia;以下,UBC)を訪問した(写真1)。

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 この特集では,日本の看護学研究の明日を見はるかす参考にするために,アメリカとカナダの看護系大学および米国国立衛生研究所(National Institute of Health)の看護研究センター(National Institute of Nursing Research;NINR)で,私どもが見学・学習した内容をまとめた。いずれの大学も,若手研究者の育成に多大な時間とエネルギーを費やし,看護学が未来に向けて発展できるよう壮大な投資を行なっていた。大学・研究センターの運営は,研究費の再獲得が計画的になされるように戦略的に行なわれていた。さらに,患者の最も身近にいて,その安寧の確保・維持に努めるという看護の第一のアイデンティティを武器として研究戦略に位置づけ,多くの他領域の研究者の信頼と協力を得ていた。

 今回の訪問で気づいたことは,このような各大学の取り組みを,国内の大学が相談し合い,相互協調的・発展的に展開しているという点だった。訪問したのはいずれも北米の主要な研究中心型の大学だったが,ある大学の学部長は,私たちが次の来訪先を告げると,そこの学部長をよく知っている様子で,頻繁にコミュニケーションをとっていることがうかがわれた。

連載 創造360°─多領域の現場から・2

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さまざまな領域の研究に焦点を当て,360°全方位から看護研究の壮大な海原に光を照らします。

介護現場の観察と分析により,人間の身体に新たな発見と驚きをもたらし,多くの反響を呼んでいる書『介護するからだ』(医学書院)。

人間行動学者としての,観察眼と分析眼に迫ります。

連載 理論構築を学ぶ─看護現象から知を生むために・2

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はじめに

 第1回は,「看護が求める知や理論とは何か」ということをテーマに,看護の理論構築の概要が示された。ところで読者の皆様は,看護に理論が必要な理由について考えたことはあるだろうか。看護理論は必然性があって生まれてきたものであるが,先人がたどった歴史を知ることなしに,その答えにたどりつくことは難しいであろう。そこで第2回は,看護領域の発展とともに,理論がどのように求められ,構築され,活用されてきたのかについて考える。

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 著者は看護師の資格を有しているが,保健学博士として当時では異色の「生化学」の授業を,看護基礎教育(大学,専門学校)で長年,教授してこられた。その経験と学生に対する熱い思いが結実し,看護学生のための学習書として本書が出版された。著者とは看護教員時代から30年来の交誼をいただいているが,学問に対して探求心が強く,何事にも真摯に向き合う姿勢に学ぶところが多く,尊敬している。

 今回,本書に目を通して素晴らしいと感じたのは,1項目ずつすべて見開きになっていて,左ページに解説文,右ページに解説に合わせたイラストがカラーで描かれているところである。専門書としてはいままで目に触れたことのない新鮮な構成である。複雑な内容を,学生の目線に立ち理解が深まるように平易な文体で簡潔に,しかも,重要項目をゴシック体や赤字で表示している。解説文のみでも理解はできるものの,イメージした内容を確認するためにイラストを眺めると「あぁ〜そういうことなのか」「自分の身体内部の状態を確認できる!」と,学生でなくともわくわくする。

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看護学における質的研究についての私見

 私自身は医療の専門家ではない。しかし,1970年代後半から医療人類学を研究するようになり,それ以来の経験から看護研究における質的研究の位置づけについて,次のように考えている。

 現在,医療の発展は目覚ましく,日本では医療制度は常に見直され,現状により適した方向に向けて整備されようとしている。そのなかで看護は確固とした専門領域として,医療の世界でも社会一般でも認知されている。もはや,「看護師は医師の行なう治療の補助者」という認識はみられない。看護は,専門分化され複雑になった医療現場で,患者を医療の領域へ導き入れつつ,医療行為について服薬行動も含めて理解を深めてもらい,コンプライアンスを高める役割を担っている。同様に,急速に進歩する医療現場において,患者は自分の病気や受けることになる治療について戸惑うことが多く,そうした患者への看護行為の領域は広がり,個々の患者を理解した上で,その患者に最も適した対応をとる必要性が高まってきた。こうして,看護師は高い専門性をもつことが要求されるようになっている。

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 2016年8月27〜28日に,東京都大田区にある東邦大学看護学部において,日本混合研究法学会(Japan Society for Mixed Methods Research ; JSMMR,以下,本学会)第2回年次大会が開催された。

 混合研究法の考え方そのものは長い歴史を有するが,日本国内における本学会は一昨年に産声をあげたばかりである。第2回大会テーマを「混合研究法への誘い─多様性からの創発」とし,多様なバックグラウンドの参加者による相互作用から,各自が新たな一歩を見いだすことが期待された。

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今月の本

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次号予告・編集後記

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基本情報

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看護研究
50巻2号 (2017年4月)
電子版ISSN:1882-1405 印刷版ISSN:0022-8370 医学書院

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