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認知症について取り組むことになったきっかけ
私は1994年,静岡県富士宮市役所に一般事務職として採用されて以来,情報管理業務,保健業務,人事研修業務等を経て,2007年に,福祉部門に配属になった。初めて福祉の仕事に就くことになってまもなく,県から,認知症地域支援体制構築等推進事業(国のモデル事業)の話があった。最初は私も認知症関連のセミナーに同行する程度だったのだが,12月になって急に,担当を言い渡されたのである。推測するに,県の委託事業を受けるにあたり,補正予算を組んだものの,事業が一向に進まなかったからだと思う。そして慌てて同年12月24日付けで県と契約を結ぶことになり,さて実質3か月で何ができるだろうかと考えた。
当時の富士宮市は,2005年度の地域福祉計画策定において総合相談に取り組むことを明記したことにより,市役所1階の介護障害支援課内に,直営の地域包括支援センターを新設した。高齢者だけでなく,障害者・児童・家庭内暴力など,福祉に関する初期総合相談窓口として位置づけたことが注目を浴びていた。そこで働く地域包括支援センタースタッフの相談スキルは非常に高く,どのような相談にも対応し,初期のアセスメントから,高齢者・障害者・生活保護等の各諸制度を紹介するまでの流れは順調に機能しているように見えた。しかし,たとえ制度につながったとしても,質の高いサービスを提供するためには,さまざまな専門職種団体(医療関係者・福祉事業者・権利擁護ネットワーク等)による情報連携が必要だったり,また制度につながらなかった人や,制度につながったとしても制度上で解決できない新たな問題が発生した人などについては,社会福祉協議会活動等の地域住民等による支援(インフォーマル支援)が必要になったりする。しかし当時は,それぞれがばらばらに動いている状況下で,市民が安心して地域で暮らすためにそれらをどのようにつなぎあわせていくべきかは,いまだ誰も整理ができていなかったように思えた。
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