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はじめに
本稿では,NINR(National Institute of Nursing Research;以下,NINR)における所内研究について述べる。本特集で紹介されている大学では,研究機関としての役割を強力に進めるためのリサーチ・センターを設置しているところが多いが,NINRはあくまでファンディングエージェンシーとしての性格が主である。一方で,大学などの研究機関の研究テーマでは不足する分野に焦点を当てる研究機関としての役割もNINRは果たしており,それを実行しているのが所内研究(Intramural Research)である。
所内研究はNINR全体の予算のうち5%があてられており,約700万ドルである(2014年)。現在はNINR予算の6%程度まで予算が拡大されており,今後,他の研究所と同様に10%をめざして拡大していく予定である。
NIH(National Institute of Health)は,オバマ前大統領が公表した「Precision Medicine Initiative」に則り,各個人のゲノム情報・環境要因・ライフスタイルが健康維持・疾病発症にどのように影響するかを解明する研究に注力している。NINRは特に長年Symptom Science(症状科学)に取り組んでおり,どの患者が有害な症状を呈するのかという予測,そして治療効果のモニタリング,また健康アウトカムや症状を改善するための介入方法の選択などについて,多くの成果をあげている(Cashion & Grady, 2015)。 Precision Medicineの推進はNINRの方針とも完全に一致し,所内研究・所外研究ともに,この傾向をより強める方針をとっている。現在では,Precision Healthが新たな用語として提唱され,医学に限らず,広く健康を包括する概念へと拡張されている。
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