焦点 看護学における「生活者」という視点─「生活」の諸相とその看護学的省察
看護学における「生活者」という視点についての省察
黒江 ゆり子
1
,
藤澤 まこと
1
,
三宅 薫
1
,
普照 早苗
1
,
田内 香織
1
1岐阜県立看護大学地域基礎看護学講座
キーワード:
生活者
,
生活の主体者
,
オータナティブな生き方
,
差異性
,
看護学
Keyword:
生活者
,
生活の主体者
,
オータナティブな生き方
,
差異性
,
看護学
pp.337-343
発行日 2006年9月1日
Published Date 2006/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100145
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はじめに
「生活者」とは,勤労者や消費者などのような行動の形態や属性ではなく,それを超えて特定の行動原理に立つ人々,あるいは立つことをめざす人々を指すことが1996年に天野によって著されている(天野,1996,pp. 7-14)。そして,この「生活者」という言葉は,生産現場から発言する「労働者」や消費の場から発言する「消費者」に対置するものとして示され,その両方を含む全体としての生活の場から発想し,問題解決を図ろうとする人々として提示されている。「生活にはモノやサービスの消費だけでなく,その前提としての生産や労働があり,また最も基本的には人間の生死や環境との関わりがある。『生活者』という言葉は,生活が本来もっているそうした全体性と,この全体を自らの手のなかにおきたいと願う主体としての人々をさしている」(天野,1996,p. 13)と説明されている。
「生活者」という言葉は,1980年代末から政治家の発言や企業広告に頻出しはじめ,それは瞬く間に多くの領域で用いられるようになったとされているが,近年,看護学の領域においても「生活者」という言葉が用いられるようになっている。しかしながらどのような意味で用いられているかは明確にされていない。看護学のなかで「生活者」がいつ頃からどのように用いられているか,およびどのような意図をもって用いられたかについて検討してみようと思う。
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