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CFIRの概要
実装研究のための統合フレームワーク(Consolidated Framework for Implementation Research: 以下CFIR)は,2009年に発表された実装科学のフレームワークである(Damschroder et al.,2009)。実装科学では,個別研究や特定の文脈を超えて知見を一般化するため,データ収集,分析,解釈の指針となる理論,モデル,フレームワーク(Theory, Model, Framework:TMFs)の活用を重要視している(Nilsen 2015)。TMFsは,実装の取り組みがどのようにインパクトを生み出すのかについての論理を理解し,その影響を測定するための明確な構成概念を示してくれるものである(島津ら,2022)。開発者のDamschroderらは,『ヘルスケアにおけるイノベーションの普及と実装モデル』(Greenhalgh, Glenn, Fraser, Paul, & Olivia, 2004)を基盤として19の理論やモデルを選定し,エビデンスに基づく介入(Evidence-based Intervention:EBI)の実装に影響しうる要因およびその構成概念について統合し,CFIRを開発した。
実装科学のTMFsは,①研究から実践への橋渡しの過程を記述するもの(プロセスモデル),②実装アウトカムに影響する要因を理解し説明するもの(決定要因フレームワーク,古典的な理論,実装理論),③実装の評価を助けるもの(評価フレームワーク)の3つに大別され,CFIRは②の決定要因フレームワークに分類される(Nilsen, 2015)。実装科学では,同じ介入でも実装の程度が異なる原因は,文脈の違いにあると考える(Nilsen & Bernhardsson, 2019)。決定要因フレームワークはその文脈および文脈がアウトカムに与える影響を理解するのに役立つ。実装科学では,実装の文脈を理解する際に,しばしば,実装に影響を与える阻害・促進要因を特定する。CFIRはそうした阻害・促進要因を特定する際のガイドとなる包括的で標準化された,決定要因の構成概念のリストであり,実装研究の共通言語を提供するものといえる(Damschroder & Hagedorn, 2011)。これまでに国外の多くの研究で活用され,被引用文献数も11,000以上にのぼる(2024年4月時点),実装科学の中心的なフレームワークの1つである。
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