臨床皮膚科 75巻2号 (2021年2月)

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要約 72歳,男性.アレルギー性鼻炎に経皮吸収型エメダスチンフマル酸塩(エメダスチンパッチ)を処方され,腹部に初めて貼付した翌日に皮疹を生じた.パッチテストで主成分エメダスチンフマル酸塩(EF),添加物ポリイソブチレン(PI)で陽性であり,エメダスチンパッチのEFとPIによるアレルギー性接触皮膚炎と診断した.PI含有テープやEFの内服からの感作を推察したが,内服および外用歴は不明であった.エメダスチンパッチによるアレルギー性接触皮膚炎は発売後初めての報告となるが,長期投与試験での紅斑,瘙痒感の出現率は9.8〜16.9%,初回投与による皮膚炎の出現率は7.7%であった.一般的に貼付剤や点眼液では,主剤濃度が高く設定されアレルギー性接触皮膚炎を惹起しやすいと推察した.現在,transdermal drug delivery system製剤はさまざまな疾患に応用されている.貼付剤に含有される主剤だけでなく,PIなどの粘着剤も含めた全成分パッチテストを施行し,使用できる貼付剤を選択することが重要である.

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要約 74歳,男性.初診の約2週間前に右耳介の発赤,腫脹,疼痛が出現し,近医にて抗菌薬の内服加療を受けるも改善に乏しく当科を紹介受診した.経過と臨床から再発性多発軟骨炎を疑い,右耳介から皮膚生検を行った.病理組織学的所見では,軟骨周囲に好中球を主体とする稠密な炎症細胞浸潤がみられた.CTにて気道病変はなかったが,間質性肺炎の所見が得られた.初診2週間後より鼻軟骨炎も出現したため,Damiani基準に基づき再発性多発軟骨炎と診断し,プレドニゾロン内服を開始した.その後ジアフェニルスルホンの内服を併用し,軟骨炎,間質性肺炎ともに軽快した.本症の生命予後は8年生存率が94%であるが,気道・心血管病変は重大な合併症である.過去に間質性肺炎を合併した再発性多発軟骨炎の報告は自験例を含めて6例あり,再発性多発軟骨炎をみた場合,呼吸器症状がなくとも画像検査を行い,気道のみならず肺野病変も確認すべきと考えた.

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要約 69歳,男性.2年前から瘙痒を伴った紅斑が繰り返し出現し,2週間前から急激に皮疹が拡大した.初診時,全身にびらんと痂皮を有する紅褐色斑と小丘疹が多発し,痒疹様の結節が混在していた.顔面,下肢には小水疱がみられた.病理組織学的所見,免疫組織学的所見,免疫ブロット所見から,抗ラミニンγ1類天疱瘡と診断した.ステロイド外用,ミノサイクリン塩酸塩,ニコチン酸アミドを投与し,紅斑や小水疱は消失した.しかし,皮疹の多くは初診時にもみられた痒疹様の結節へと変化した.同部位の病理組織学的所見では,表皮下に裂隙の形成があり,水疱性変化の関与が示唆された.自験例を抗ラミニンγ1類天疱瘡の一亜型と考えている.本疾患でも,結節性痒疹様の臨床像を呈することがあることを認識しておく必要がある.

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要約 52歳,女性.10年前より肛門周囲に瘙痒を伴う皮疹の出現を自覚していた.近医での外用治療で皮疹は軽快と増悪を繰り返しており,数か月前より瘙痒感が増悪してきたため当科を受診した.初診時,肛門周囲にクルミ大の一部浸軟し亀裂を伴う淡紅色斑を認めた.その他の間擦部に皮疹はみられなかった.病変部の病理組織像は基底層上層に裂隙があり,表皮内にdilapidated brick wallを呈する棘融解像を認め,Hailey-Hailey病と診断した.本症の皮疹は間擦部に多発することが多いが,肛囲に限局する症例は稀であり,その場合診断が困難である.自験例では毎日自転車に乗る習慣があり,物理的な刺激が多かったことが悪化の要因とも考えられた.ステロイド外用治療と並行して生活指導も行い皮疹はいったん落ち着いた.外用治療抵抗性で,肛囲に亀裂とその周囲に白色浸軟を伴う紅斑を見た場合,本症も鑑別に精査すべきであると考えた.

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要約 9か月,女児.初診の4か月前にBCG(Bacille Calmette-Guerin)接種,接種2か月後から顔面にはじまり四肢に硬い紅色丘疹が多発した.BCG接種後の副反応等を疑い,下腿の丘疹よりパンチ生検施行.病理組織学的所見では真皮内に膠原線維の変性像とそれを取り囲む柵状に配列した組織球浸潤がみられた.以上のことから,汎発型環状肉芽腫と診断した.その後無治療経過観察により,症状出現から約3か月後に自然消退した.小児の環状肉芽腫は臨床診断が困難なことがあり,自験例は結核疹などのBCG接種後副反応との鑑別を要した.典型的な環状肉芽腫の組織像からBCG接種の関与したGAと診断しえた.BCG接種後副反応の大半はGAと同様経過観察にて自然治癒することが多いが,BCG骨炎(骨髄炎)や全身播種状BCG感染症などは重症化し,積極的加療が必要な場合もあるため,BCG接種後の難治性丘疹をみた際には皮膚生検も含めた適切な診断,加療が重要である.

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要約 乳児血管腫に対しプロプラノロール内服療法は高い奏効率を有し,多くの症例で投与後病変の増大の停止ないし縮小を認める.しかし,われわれは有効性に乏しい2症例を経験した.症例1は内服160日目後も治療反応性を認めず,冷凍凝固療法を追加した.症例2では,プロプラノロール内服中断中に腫瘍が増大し,その後再投与しても治療効果を得ることができなかった.乳児血管腫は特徴的な臨床像・臨床経過を有するもののいまだ原因が解明されていない.プロプラノロール内服療法の登場により治療戦略は大きく進歩したが,その作用機序には諸説存在する.反応不良例についての詳細な発生部位や副作用の有無,プロプラノロールの血中濃度と奏効率などのデータの蓄積が,プロプラノロール治療抵抗性のメカニズムの解明の一助となる可能性が期待される.

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要約 55歳,男性.受診1か月前に右肘部の約3mm大の隆起性病変に気付いた.同時期頃から咳嗽があり,胸痛を自覚するようになり当院を受診した.右肘頭尺側には約25×20mm大の淡黄紅色調のドーム状結節がみられた.CTにて右尿管,両肺,肝に腫瘍性病変がみられ,骨シンチグラフィでは眼窩,胸腰椎,脛骨への転移の可能性が示唆された.尿管の生検で尿管癌と診断された.皮膚病変も同様の病理組織像を呈しており,尿管癌の皮膚転移と診断した.手術適応はなく,泌尿器科にて原発巣に対してゲムシタビン,シスプラチン併用療法を開始したが,2クール目終了後に永眠した.皮膚病変は術後再発なく経過していた.尿管癌は移行上皮由来の稀な悪性腫瘍であり,皮膚転移の報告はさらに少なく典型的な臨床像はない.皮膚転移時には他臓器への遠隔転移もきたし予後不良な症例がほとんどであるが,発疹の形態に捕われずに皮膚生検を積極的に行うべきであると考えた.

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要約 16歳,男性.約5年前より右大腿部屈側に淡い色素斑があった.半年前より同部に皮下腫瘤を自覚して,当科を紹介受診した.初診時,右大腿部屈側に広範囲の色素斑とそのほぼ中央に直径約2cmの皮下腫瘤を認めた.病変部の皮膚表面は乾燥しており,瘙痒を伴っていた.また,両大腿を比較すると,右大腿部に局所的な多毛(硬毛)を認めた.また,毛包に一致した丘疹も観察された.皮下結節部の超音波検査では,皮下から脂肪織間に境界明瞭な低エコーの領域を認め,内部に高輝度の線状エコー像が観察された.色素斑部の病理組織検査では,基底層に沿ってメラニン顆粒が増数し,真皮内膠原線維間に平滑筋の集塊を認めた.以上より,色素斑はBecker母斑,皮下腫瘤は毛巣洞と診断した.毛巣洞はBecker母斑の多毛が原因と考え,剃毛を指示したところ1年後には皮下腫瘤は消失した.Becker母斑に合併した毛巣洞の第1例を記載し,超音波検査の有用性について若干の考察を加えた.

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要約 35歳,女性.ヨツユビハリネズミの飼育歴がある.初診2週間前から左手に痒みを伴う紅斑が出現した.ステロイド外用で改善せず,左鼻下,左耳介,左前腕,右手,右膝にも紅斑が出現した.初診時,左手に鱗屑や小水疱を伴う紅斑を認めた.同部の直接鏡検で菌糸と分節胞子を認めた.巨大培養では乳白色粉状のコロニーを形成した.スライドカルチャーでは球状〜洋梨状の小分生子を認めたが,大分生子やらせん体は確認できなかった.リボソームRNA遺伝子のD1/D2領域およびβ-tubulinの塩基配列から,分離菌をTrichophyton erinaceiと同定した.テルビナフィン塩酸塩125mg/dayの内服とテルビナフィン塩酸塩クリーム1%の外用を行い,皮疹は改善した.左前腕の紅斑のみ治療開始後に悪化したが,ステロイド外用で治癒した.左手以外の顔面や四肢の皮疹は,片側性ではあるが,白癬疹と考えた.強い炎症を伴う手白癬では,好獣性の皮膚糸状菌を疑い,動物との接触歴を聴取すべきである.

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要約 36歳,カナダ人男性.インドに1か月間滞在し,9月下旬に現居住地である日本に帰国した.帰国する1週間前より頭痛と関節痛が出現し,その後手足の腫脹が出現した.帰国後2日目から四肢体幹に紅斑が出現し,発熱はなかったが食欲不振を認めた.チクングニア遺伝子検査は陰性であったが,IgM,IgG抗体陽性であり,チクングニア熱と診断した.発症4日目に紅斑は消退傾向となったが,関節痛は3か月ほど持続した.チクングニア熱は2007年にイタリアでインドからの渡航者がもたらしたとされるアウトブレイクの報告があり,今後日本でのアウトブレイクが生じる可能性もある.海外渡航歴のある関節痛を伴う発疹患者では同症も念頭に置くことが肝要である.

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要約 84歳,女性.初診の1か月前から両下腿に2〜5cm大で自発痛・圧痛を伴う紅色の皮下結節が出現した.皮膚生検にて,病理組織学的にghost-like cellを伴う皮下脂肪組織の壊死巣を認め,皮下結節性脂肪壊死症と診断した.血液検査でリパーゼ,トリプシンなどの膵酵素が高値を示し,腹部造影CTで膵体尾部に径65mm大の腫瘤性病変を認めた.消化器外科にて膵腫瘍摘出術が行われ,診断は腺房細胞癌であった.皮下結節は術後速やかに色素沈着を残して消退し,膵酵素も正常化した.本症例では,皮下結節性脂肪壊死症の診断を契機として無症状の膵癌を発見し,根治術を行うことができた.下肢の有痛性皮下結節をみたときは,本症を鑑別に挙げて積極的に皮膚生検や膵酵素の測定を行い,膵疾患の検索を行うことが重要である.

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要約 小学4年,女児.進級後に眉毛から始まった抜毛行動が頭髪に移行・増悪した.皮膚科から児童精神科に紹介され,精神科での治療経過を検討した.児童精神科面接では,家庭や学校(進級)での環境変化に伴う児のストレス負荷に注目し,保護者に抜毛行動を“ストレス負荷のバロメーター”ととらえて児を叱責しないよう助言するとともに,児が抜毛せず穏やかに過ごせるよう,親子で日課を見直すよう促した.一時軽快した抜毛は5年進級後に再燃したため,担任やスクールカウンセラーとの面談を保護者に促し,学校(学習・交友)環境の調整をはかった.家族機能の向上と児の情緒的成長を促すよう診療を継続するなかで抜毛は軽快し,6年時に治療終結した.皮膚科で抜毛症症例に精神科との医療連携なく対応する場合においても,家庭と学校での藤軽減に注目した多面的な治療アプローチの活用が望まれる.

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要約 39歳,男性.主訴は右足背の腫瘤.既往歴としては職場の検診で高尿酸血症を指摘されていたが,病院受診はしていなかった.また,今までに痛風関節炎の既往はなかった.約1年前に右足背,右手背,両膝蓋に皮下腫瘍が出現し,徐々に増大してきた.約1か月前より右足背の皮下腫瘤が潰瘍となり,同部の圧痛が出現したため受診した.右足背腫瘍の内容物は偏光顕微鏡像にて尿酸塩結晶であった.また,右足背のCTで,骨が結節を取り囲みひさしのように突き出るoverhanging marginを認めたことも痛風結節であると判断する有用な所見であった.整形外科にて痛風結節掻把術を施行され,腫瘤は縮小した.痛風結節の患者が,皮下腫瘤を主訴として最初に皮膚科を受診することもある.皮膚科医にとっても痛風結節の好発部位や特徴,画像所見などは必要な知識であると考える.

マイオピニオン

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 『臨床皮膚科』から「天疱瘡研究を通じて思うこと」とのテーマでの執筆依頼をいただいた.私の研究の経歴は,慶應義塾大学で大学院生として入局し,西川武二先生,天谷雅行先生の指導のもとデスモグレインELISAの開発の研究をしてきた.現在,日常診療で使用されている検査の開発に携われたことはとても貴重な経験であった.また,その後2回留学経験があり,ノースウェスタン大学のKathleen Green先生の研究室ではデスモゾームの生化学的解析と,ペンシルバニア大学のJohn Stanley先生の研究室ではファージディスプレイを用いた落葉状天疱瘡患者からモノクローナル抗体の単離という研究をしてきた.8年前に東邦大学に赴任してからも,さらに天疱瘡の研究を継続している.継続は力なりとは言うものの,大学院から始めて約27年間というなんとも長い期間研究をしてきてしまったと思う.しかし,まだ続けられている環境にいることに感謝したい.東邦大学で研究室の立ち上げを任されて,指導する立場になって気をつけていたことを書きたいと思う.

 赴任してきたときには,皮膚科の研究スペースはあるものの,研究室はほとんど稼働していなかった.ほぼ一から立ち上げという状態であった.ELISAのプレートリーダーなどの機材などもなく,他科の研究室の機材を借りて研究をし,試薬なども慶應義塾大学から分与してもらうような状態であった.少しずつ大学院生と一緒にラボを整備していった.何から初めてよいかわからず,まず水疱症の患者血清の解析を自前でできるようにしていこうと考えた.予算もあまりないので,全く新しいことを始めるよりは,自分のやってきたことを継続,発展させるほうが良いと思い,留学先で単離してきたデスモグレイン1モノクローナル抗体を利用した研究課題を決めていった.結果的に天疱瘡研究が長くなってしまったと思う.

連載 Clinical Exercise・162

考えられる疾患は何か? 大西 誉光
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症例

患 者:33歳,男性

主 訴:両側外眼角の皮疹

家族歴・既往歴:特記すべきことなし.

現病歴:初診の5年前に両側外眼角の自覚症状のない皮疹に気付いた.その後2年間で徐々に大きくなったが,それ以降の変化はなく,季節的な消長はなかった.整容的に気になり当科を受診した.

現 症:両側外眼角に1個ずつ径4mm大のドーム状に隆起する小結節が存在した(図1a).小結節は常色で軽度の透光性があり,弾性硬に触知された(図1b).

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目次

欧文目次

文献紹介

書評

次号予告

あとがき 石河 晃
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 国は令和2年度中に後発品(ジェネリック医薬品)の使用率を80%以上にする目標を設定している.そのため,DPC病院機能評価係数に関わるジェネリック医薬品使用割合の引き上げ等に加え,外来後発医薬品使用体制加算を新設するなど,多くの施策が打たれている.医療財政が破綻してはならないので,国を挙げてのキャンペーンはある意味,仕方のないところである.後発医薬品は先発品と同じ,と説明されているが,ほぼ同等であるが,同じではない.多くの皮膚科医は外用剤の同等性に特に大きな疑問を感じている.本邦では外用剤は主剤の経皮吸収の同等性が示されれば後発品として認められ,臨床試験は課されていない.しかしながら,外用剤は基剤の違いにより使用感や効果の持続に影響が少なからず及ぶ.必ずしも後発品の質が悪いという訳ではないが,保湿剤の先発品Hローションが後発品のBローションと「同じです」と言われたら,皆,口をそろえて「それは違う」と答えることでしょう.

基本情報

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臨床皮膚科
75巻2号 (2021年2月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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