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『臨床皮膚科』から「天疱瘡研究を通じて思うこと」とのテーマでの執筆依頼をいただいた.私の研究の経歴は,慶應義塾大学で大学院生として入局し,西川武二先生,天谷雅行先生の指導のもとデスモグレインELISAの開発の研究をしてきた.現在,日常診療で使用されている検査の開発に携われたことはとても貴重な経験であった.また,その後2回留学経験があり,ノースウェスタン大学のKathleen Green先生の研究室ではデスモゾームの生化学的解析と,ペンシルバニア大学のJohn Stanley先生の研究室ではファージディスプレイを用いた落葉状天疱瘡患者からモノクローナル抗体の単離という研究をしてきた.8年前に東邦大学に赴任してからも,さらに天疱瘡の研究を継続している.継続は力なりとは言うものの,大学院から始めて約27年間というなんとも長い期間研究をしてきてしまったと思う.しかし,まだ続けられている環境にいることに感謝したい.東邦大学で研究室の立ち上げを任されて,指導する立場になって気をつけていたことを書きたいと思う.
赴任してきたときには,皮膚科の研究スペースはあるものの,研究室はほとんど稼働していなかった.ほぼ一から立ち上げという状態であった.ELISAのプレートリーダーなどの機材などもなく,他科の研究室の機材を借りて研究をし,試薬なども慶應義塾大学から分与してもらうような状態であった.少しずつ大学院生と一緒にラボを整備していった.何から初めてよいかわからず,まず水疱症の患者血清の解析を自前でできるようにしていこうと考えた.予算もあまりないので,全く新しいことを始めるよりは,自分のやってきたことを継続,発展させるほうが良いと思い,留学先で単離してきたデスモグレイン1モノクローナル抗体を利用した研究課題を決めていった.結果的に天疱瘡研究が長くなってしまったと思う.
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