要約 80歳台,男性.初診の1か月前より口腔内にびらんが出現した後,四肢にも水疱が拡大したため前医を受診した.尋常性天疱瘡が疑われ,当科紹介となった.初診時,広範な口腔内びらんを認め,1cmほどの比較的緊満な水疱が体幹や四肢に多数散在していた.血液所見と病理所見から尋常性天疱瘡と考え治療を開始したが,腫瘍随伴性天疱瘡(paraneoplastic pemphigus:PNP)も疑われた.全身単純CTにて後腹膜に腫瘤陰影を認め,CTガイド下生検にて濾胞性リンパ腫と判明した.抗デスモグレイン(Dsg)1,3抗体,エンボプラキン,ペリプラキンに対する自己抗体が陽性でありPNPと確定診断した.プレドニゾロンとリツキシマブを中心に治療をしたところ,皮膚症状は改善しリンパ腫も縮小傾向である.PNPを疑った場合,早期に画像検査を行い,随伴腫瘍を早期に治療する必要がある.リツキシマブは難治性天疱瘡での有効性が報告されているが,自験例のような濾胞性リンパ腫合併PNPでも治療選択肢となりうることが示された.