臨床皮膚科 72巻7号 (2018年6月)

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要約 皮膚科医へのアンケート調査にて多くの医師がピアス・トラブルを経験していることが明らかとなった.ピアス・トラブルは自己処理などの不適切なピアーシングによることが多く,米国皮膚科学会が推奨するように皮膚科医が率先して適切なピアーシングを行うことでこれを予防するべきである.ピアーシングの際には適切に耳朶を圧迫固定し,かつ緩めにピアスを装着することでピアスの埋没などによる合併症を予防できる.視認性が良く,刺入部を患者が確認しやすいことも必要である.筆者が行う手法はトラコーマ鉗子で耳朶を圧迫固定するもので,安全で安価なピアーシングを行うことが可能である.

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要約 72歳,男性.2016年5月より全身に痒みのある皮疹が出現した.ステロイド外用治療を行ったが軽快しなかった.初診時,顔面全体,体幹,四肢にびまん性に鱗屑を伴う紅斑を認めた.病理組織所見も踏まえ湿疹続発性紅皮症と考え入院で外用治療を行い軽快した.退院1週間後に発熱を伴い皮疹が再燃し,顔面に著明な浮腫,四肢,体幹には紫斑がみられた.著明な白血球の増加,血小板減少,sIL-2Rの増加がみられ皮疹の生検病理組織像で真皮内に異型リンパ球が浸潤していた.免疫組織染色所見,末梢血の細胞表面マーカーからT細胞前リンパ球性白血病と診断した.紅皮症では常に造血器疾患に伴う皮膚浸潤を念頭に置く必要がある.

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要約 58歳,男性.顔面の紅斑と乾性咳嗽を主訴に受診した.両側上眼瞼の浮腫性紅斑,爪囲紅斑・爪上皮の延長,近位筋の筋力低下,CK高値より皮膚筋炎と診断した.抗transcriptional intermediary factor(TIF)-1γ抗体陽性であった.精査にて肺腺癌と多発転移が判明し,プレドニゾロン(PSL)75mg/日内服と化学療法を開始した.PSL開始後皮膚症状や筋症状は著明に改善し,CK値も正常化した.しかしPSL 65mg/日へ減量後14日目に嚥下障害が急性増悪し食事摂取不可能となった.当初は皮膚筋炎による嚥下障害を考えたが皮疹や筋症状の再燃はなかった.嚥下造影検査で造影剤の食道外への漏出を認め,CTで頸部周囲に遊離ガス像を検出したことから食道穿孔に起因する嚥下障害と診断した.穿孔は絶食による保存的加療にて膿胸や縦隔炎を生じることなく自然軽快し嚥下機能は改善傾向となった.皮膚筋炎における嚥下障害は原病の悪化のみでなく,稀ではあるが消化管穿孔が原因のことがあり,画像検査が診断に有用である.

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要約 38歳,女性.2016年7月,近医歯科で歯根管処置を行われ,約6時間後に呼吸苦と瘙痒感,12時間後に全身に瘙痒性紅斑が出現し当院を受診した.ステロイド内服加療に抵抗性であったが,歯根管を除去したところ軽快した.加療後に実施したプリックテストでは,局麻剤を含め全て陰性であったが,パッチテスト,スクラッチパッチテストでは歯根管治療薬ペリオドン,ホルムアルデヒドで陽性を呈した.歯根管を外し軽快したことと皮膚テストの結果から,ペリオドン®中のパラホルムアルデヒドによる即時型アレルギーと考えた.歯科治療後のアナフィラキシーや蕁麻疹などの症状を見た場合は,歯科治療材料が原因である可能性も念頭に置くべきと考える.

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要約 49歳,男性.初診1週間前より眼のひりひり感と口内炎が出現.2日前より軀幹四肢と陰囊に疼痛を伴う紅斑,亀頭部にびらんが出現したため,当科を受診した.初診時,臍周囲,背部,左大腿部に境界明瞭な小豆大から鶏卵大までの浸潤を触れる紅斑が散在していた.左第1指間に大豆大の淡い紅斑,陰囊に紅斑あり,亀頭部には小豆大までのびらんが見られた.多発固定薬疹を疑ったが内服歴はフェキソフェナジンのみだった.プレドニゾロン10mgの内服を開始し皮疹は改善したが,第6病日に増悪した.詳細な問診により,皮疹出現前のレボフロキサシン(LVFX)の内服歴が判明した.病理組織像は表皮の一部で基底層の液状変性,真皮浅層にはメラノファージが散見され,LVFXによる多発固定薬疹と診断した.薬剤リンパ球刺激試験とパッチテストは陰性であった.固定薬疹は誘発を繰り返し多発型へ移行して重篤となる場合もあり,原因薬剤の確定が重要である.

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要約 91歳,女性.80歳時に軀幹・四肢に水疱が出現し,水疱性類天疱瘡(bullous pemphigoid:BP)と診断された.ステロイド内服にて寛解し,少量のステロイド内服にて皮疹の再燃なく経過していた.86歳時に右鼠径部に痂皮を伴う隆起性紅斑が出現した.91歳時に同部は鶏卵大の腫瘤となり,その後,周囲に紅斑・水疱が出現し当科を再受診した.腫瘤は病理組織像よりbasosquamous carcinoma(BSC)と診断した.また,腫瘤周囲の紅斑・水疱部は,病理組織所見およびBP180抗体値が高値であったことよりBPに合致する所見であった.右鼠径部の腫瘍の摘出後,水疱・びらんは改善し,摘出前は高値であった抗BP180抗体値が低下した.自験例ではBSCの出現により局所の自己免疫応答が修飾されBPが再燃した可能性が示唆された.

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要約 19歳,男性.約1年前より背部,腰部,両下腿に白斑が出現し増加したため当科を受診した.腰部に両側性,帯状に母指頭大から鶏卵大の境界不明瞭な白斑が散在し,両下腿には直径2〜20mmの境界明瞭な白斑が多数みられた.腰部の白斑部と色素沈着部を含めた皮膚を生検した.病理組織所見で,白斑部では表皮内のメラニンおよびメラノサイトが減少していた.また初診時採血でFT3・FT4が高値,TSHが低値であったため甲状腺機能亢進症を疑った.内分泌内科で精査の結果,Basedow病と診断し,チアマゾールの内服を開始した.白斑には週1回のナローバンドUVB治療を開始した.尋常性白斑には種々の自己免疫疾患が合併し,中でも甲状腺疾患の合併が多い.過去の報告を考慮すると,特に面積の大きい非分節型白斑の場合には甲状腺機能や他の自己免疫疾患の合併の有無を評価することが大切と考えた.

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要約 58歳,男性.初診の約20年前から左第5趾先端に皮膚腫瘤が出現し,緩徐に増大したが放置していた.正常皮膚色で22×20×12mm大の一部に過角化を伴う足趾様の皮膚腫瘤であった.臨床所見と病理組織学的所見から後天性指趾被角線維腫(acquired digital fibrokeratoma)と診断した.切除することで再発もなく予後は良好であった.本症の原因はいまだ不明であるが,反復性の微細な刺激が関与していることが推測されている.また発症部位により多種多様な形状になりうる.自験例では小趾の先端に発症し自覚症状がなかったため,長期にわたり放置され大型化し,痕跡的多指症と鑑別を要する特徴的な臨床像を呈していた.

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要約 52歳,男性.27歳時に前胸部腫瘤を切除され,その後同部位に2度局所再発を繰り返し,今回3度目の再発をした腫瘤に対し切除術を行った.病理組織学的に,腫大する核を有する紡錘形細胞が花むしろ状に浸潤増殖したCD34強陽性の部分と,魚骨様形態を呈し,核分裂像は10個以上/10HPF認められ,CD34発現が減弱した線維肉腫様変化を伴った部分が混在していた.腫瘍組織のRT-PCR法によりCOL1A1-PDGFβ融合遺伝子を検出したことなどより,線維肉腫様変化を伴った隆起性皮膚線維肉腫と診断した.隆起性皮膚線維肉腫は中間性悪性度を示すが,線維肉腫様変化を伴うものでは局所再発や遠隔転移を生じやすいことが報告されている.線維肉腫様変化を伴う例では,通常型より悪性度が高いことを認識し,長期間にわたって慎重に経過を観察することが推奨される.

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要約 3歳,男児.初診の3か月前より捨て猫を飼育していた.初診の2か月前より左顔面と左側頭部に小紅斑が多発した.前医でステロイド,抗菌薬,抗ウイルス薬による治療を受けたが増悪したため,当科を紹介され受診した.初診時,小紅斑は膿疱・痂皮を伴い,膿疱内容物の直接鏡検で糸状の菌要素を認めた.患児の膿疱内容物およびネコの毛の真菌培養から,白色羊毛状のコロニーが分離され,菌学的所見およびリボゾームRNA遺伝子internal transcribed spacer領域の塩基配列からMicrosporum canisと同定した.ルリコナゾール外用のみでは改善しなかったため,イトラコナゾール5mg/kg/日内服とし,9週間で治癒した.経過中,LDH値上昇の副作用がみられた.M. canisによる小児の頭部顔面白癬は,血液検査を行いながら,抗真菌薬内服療法を選択すべきと考えられた.

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要約 67歳,女性.関節リウマチにてプレドニゾロン,メソトレキサート,インフリキシマブにて加療中.畑で農作業をした5日後より発熱,全身倦怠感,軽度の意識混濁,皮疹を生じたため,当院内科に入院となり,翌日当科を紹介受診した.初診時,左下腿に痂皮を伴う鶏卵大の紫紅色斑と,四肢,体幹に紅斑,丘疹が散在してみられ,ツツガムシ病と判断してミノサイクリン塩酸塩200mg/日を約3週間投与し略治した.血清学的検査,および刺し口の痂皮組織を用いたpolymerase chain reaction法よりOrientia tsutsugamushi Kuroki型によるツツガムシ病と確定診断した.自験例では刺し口の紅斑が大きく,回復期の特異抗体価の上昇がやや鈍い傾向にあったことは関節リウマチに対する免疫抑制療法が影響しているのではないかと推測した.また,ツツガムシ病には少なくとも6つの血清型が知られており,標準3型のみを用いた血清検査では正確な診断が困難と思われる.

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要約 乾癬における局所療法の主体は外用療法であり,ステロイド外用薬と活性型ビタミンD3外用薬が中心である.しかし薬剤の有効性と患者満足度は必ずしも一致せず,また海外では配合外用薬治療による患者満足度の評価が実施されているが本邦ではまだ行われていない.今回われわれは,この新しい配合外用薬の有用性と患者満足度を把握することを目的として調査を行った.全身療法と外用療法を併用していた乾癬患者18例と外用療法のみを行っていた乾癬患者3例の計21例に対し,外用薬をカルシポトリオール水和物/ベタメタゾンジプロピオン酸エステル配合薬に変更し,治療効果を経時的に検討した.その結果,大多数の症例で外用薬変更前と比べて皮疹の改善がみられ,患者満足度も半数で改善がみられた.このことから配合外用薬への切り替えは皮疹と患者満足度を改善し,治療効果を維持するためにはそれらを経時的に確認することが大切であると考えた.

マイオピニオン

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 1. はじめに

 乾癬の治療計画を立てる場合,疾患の重症度,病型,患者のQOL(quality of life,生活の質),合併症の有無,薬剤の有効性,利便性,安全性,経済性などの種々の因子を考慮し,患者ごとに最適な方法を選択する.経済性に関しては,乾癬患者が希望する月額負担は5,000〜10,000円程度とされている1).一般的に予算を観点に治療方針を考えることは少ないが,近年,続々と登場した乾癬の新治療薬は高額なものも少なくなく,患者の経済的負担を無視することはできない.今回は毎月の治療費を概算し,その予算内での最適な治療法や工夫を提案する.

 なお,乾癬の治療法は種々あり,先発品,後発品などの組み合わせも存在する.今回は使用頻度の高いものを中心に記述した.

連載 Clinical Exercise・130

Q考えられる疾患は何か? 米田 和史
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症例

患 者:23歳,男性

主 訴:体幹の多発性丘疹

家族歴:母方の祖母の妹2人が同症

既往歴:気管支喘息

現病歴:小児期より上肢の疼痛発作,頭痛,発汗低下,体幹に多発する丘疹を自覚していた.初診の1週間前から下肢に疼痛が出現したため,当院内科を受診した.体幹の皮疹について当科に紹介された.

現 症:初診時,前胸部および腹部に黒色〜暗赤色の自覚症状のない粟粒大の小丘疹が多発していた(図1).ダーモスコピーでは血管腫でみられるred lacnaeの所見を認めた.

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目次

欧文目次

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 マイクロバイオームは免疫系に関与し,ヒトの健康に影響を与える.本論文では,ヒト皮膚常在菌が,アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis:AD)を悪化させる因子である黄色ブドウ球菌に対し抗菌活性を有することで,宿主防御に関与するかを検討した.

 AD患者49人および健常人30人の皮膚から細菌を収集し培養,解析を行った.単離されたコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase-negative Staphylococcus:CoNS)の黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性の頻度は健常人と比較しAD患者で低く,黄色ブドウ球菌の培養陽性率はAD患者で有意に高かった.また,CoNSの中で,抗黄色ブドウ球菌活性を持つ種は,主にS. epidermidisまたはS. hominisであることが判明した.抗菌活性物質はCoNSが産生する抗菌ペプチドSh-lantibiotic-αβとして同定され,ヒト抗菌ペプチドと相乗作用を持つことが示された.これらのCoNSをマウスやヒト皮膚に貼付すると黄色ブドウ球菌のコロニー形成は有意に減少し,生体下やヒト皮膚での抗黄色ブドウ球菌活性が確かめられた.

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 神経線維腫症1型(neurofibromatosis type 1:NF1)は,神経線維腫の多発や悪性末梢神経鞘腫(malignant peripheral nerve sheath tumor:MPNST)の発生をきたす遺伝性疾患である.原因遺伝子NF1の遺伝子産物であるニューロファイブロミンは,RASを抑制性に調節する機能を有し,RAS/RAF/MEK系のシグナル伝達の重要な調節因子と考えられている.MPNSTの治療には外科的切除術や化学療法などがあるが,いまだ有効な治療法は確立されていない.著者らはこれまでの研究で,ヒトとマウスのMPNSTや神経線維腫のトランスクリプトーム解析を行い,RAS/RAF/MEK/ERK系の活性化が腫瘍形成に重要であることを示してきた.今回,それらのカスケードを制御するMEK阻害薬がNF1治療に有効であるかを検証した.

 本研究では,Schwann細胞において特異的にNF1をノックアウトしたモデルマウスと,ヒトのMPNST細胞を移植したヌードマウス(human MPNST xenografts)の2種類のマウスモデルを用いてMEK阻害薬の効果を測定した.まず,NF1ノックアウトマウスにMEK阻害薬を使用したところ,治療開始後2か月間で神経線維腫の腫瘍量の縮小がMRI画像上で確認できた.また,MPNST培養細胞にMEK阻害薬を加えると,RASの下流であるERKの活性化が解除され,濃度依存性に細胞増殖が抑制された.さらに,MPNST細胞を移植したマウスモデルにおいても,MEK阻害薬投与によりMPNST腫瘍増殖が抑制され,平均生存期間が約2倍に延長された(22.5 vs. 52.5days;p<0.0001).

次号予告

あとがき 大山 学
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 よく細君に「あなたは“待て”ができない」とたしなめられる.元々,せっかちなほうではあるが,日々の業務をこなし続けるうちに,無意識に何事につけても,つい他人の都合を慮ることなく自分のタイミングで動いてしまうことが常となりつつあるらしい.言われる度に反省はするし,直す気もあるのだが,習慣となってしまったものは余程意識しないと直せないもののようだ.困ったものである.

 私が日常を過ごす三鷹・吉祥寺周辺は,まだところどころに武蔵野の面影を残し,人々の営みも都心と比べると何となくゆったりとしている.都心で働いていた頃は気にも留めなかったが,会議やら講義やらで,新宿,お茶の水あたりに出ると駅の改札やコンビニのレジなどで多くの“待て”ができない人たちに出くわして,自分のことは棚に上げて驚いてしまう.

基本情報

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臨床皮膚科
72巻7号 (2018年6月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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