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神経線維腫症1型(neurofibromatosis type 1:NF1)は,神経線維腫の多発や悪性末梢神経鞘腫(malignant peripheral nerve sheath tumor:MPNST)の発生をきたす遺伝性疾患である.原因遺伝子NF1の遺伝子産物であるニューロファイブロミンは,RASを抑制性に調節する機能を有し,RAS/RAF/MEK系のシグナル伝達の重要な調節因子と考えられている.MPNSTの治療には外科的切除術や化学療法などがあるが,いまだ有効な治療法は確立されていない.著者らはこれまでの研究で,ヒトとマウスのMPNSTや神経線維腫のトランスクリプトーム解析を行い,RAS/RAF/MEK/ERK系の活性化が腫瘍形成に重要であることを示してきた.今回,それらのカスケードを制御するMEK阻害薬がNF1治療に有効であるかを検証した.
本研究では,Schwann細胞において特異的にNF1をノックアウトしたモデルマウスと,ヒトのMPNST細胞を移植したヌードマウス(human MPNST xenografts)の2種類のマウスモデルを用いてMEK阻害薬の効果を測定した.まず,NF1ノックアウトマウスにMEK阻害薬を使用したところ,治療開始後2か月間で神経線維腫の腫瘍量の縮小がMRI画像上で確認できた.また,MPNST培養細胞にMEK阻害薬を加えると,RASの下流であるERKの活性化が解除され,濃度依存性に細胞増殖が抑制された.さらに,MPNST細胞を移植したマウスモデルにおいても,MEK阻害薬投与によりMPNST腫瘍増殖が抑制され,平均生存期間が約2倍に延長された(22.5 vs. 52.5days;p<0.0001).
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