臨床皮膚科 72巻8号 (2018年7月)

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要約 旭川医大皮膚科では皮膚科心身症と診断した患者に性格検査(TEG Ⅱ)を施行し,患者の性格傾向の把握や患者の特性にあわせたセルフケア指導などに役立てている.また,経時的に検査を施行し心身医学療法の効果を評価する目的にも使用している.TEG Ⅱの結果から患者の特性を本人の強みとして伸ばしていくことも,自己変容する契機とすることも可能である.われわれは,患者の皮膚症状をコントロールしつつ,自己肯定感を増幅させ,その後の人生をより自分らしく歩んでいけるようになることを診療の最終ゴールにしており,その手段の1つとしてTEG Ⅱを活用している.

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要約 52歳,女性.初診の1年前から顔面に瘙痒を伴う紅斑が出現し,増悪寛解を繰り返していた.近医皮膚科で化粧品のパッチテストを実施し,美白美容液で陽性を確認後,当院に紹介された.美白美容液の成分パッチテストを施行したところ,ウコンで陽性を示し,ウコンによる接触皮膚炎と診断した.ウコンの主成分であるクルクミンは,食料品や漢方外用薬,化粧品に広く使用されている.ウコン含有漢方外用薬による接触皮膚炎の報告はあるが,ウコン含有化粧品による接触皮膚炎は本邦初である.難治性の顔面湿疹症例では,治療薬と化粧品に共通する成分が悪化因子になることもあるので,患者が使用している化粧品に加えて治療薬のパッチテストも検討すべきである.また自験例のように経口摂取する可能性のある成分を含有する化粧品が増えている現状では,積極的に原因成分まで特定する必要があるのかもしれない.それらの結果を踏まえることで適切な生活指導を行うことができる.

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要約 38歳,女性.急速進行性糸球体腎炎のため腎不全に陥り,血液透析濾過療法が開始された.3年後から全身の瘙痒と皮疹が出現し5年後に当科を受診した.体幹四肢に紅斑や小水疱が散在し,生検病理組織像で表皮下水疱を認めた.自己免疫水疱症やアミロイドーシス,ポルフィリン症は否定的で,夏季に悪化傾向があることや自然消退することから透析水疱症と診断した.オンライン血液透析濾過療法の導入とアズレンスルホン酸ナトリウム水和物・L-グルタミン配合顆粒(マーズレン®S配合顆粒)の内服を行ったところ,水疱新生はおさまり寛解状態を保っている.透析水疱症は自然軽快するといわれる疾患であるがゆえに,経過観察あるいは見逃されている可能性があるが,治療手段があることは患者のQOL改善につながると考える.

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要約 61歳,男性.初診2年前より左肘関節に熱感,疼痛,腫脹,可動域制限が出現し,その後,両膝関節と左肩関節にも疼痛と可動域制限が出現し増悪した.初診時,左肩関節・肘関節の可動域が制限され,両膝関節の屈曲も困難であった.左肘は深部にびまん性の皮膚硬化を触知し,褐色の色素沈着を呈し,両膝周囲には網目状の暗紫紅色斑があった.深在性モルフェア,好酸球性筋膜炎を疑った.抗Scl-70抗体,抗RNAポリメラーゼⅢ抗体,抗セントロメア抗体は陰性であり,末梢血好酸球数,血清クレアチニンキナーゼ値や血清アルドラーゼ値も正常範囲内であった.左肘の造影MRI検査で左上腕三頭筋内と筋付着部に高信号域があり,同部位の病理組織学的検査では真皮全層で膠原線維が膨化し増生していたが,好酸球浸潤はなかった.以上より深在性モルフェアと診断した.副腎皮質ステロイドの内服で皮膚および関節症状は著明に改善した.

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要約 46歳,女性.2011年8月より大腿部の筋肉痛,手指の皮疹が出現し当科を受診.内眼角に紅斑,舌にアフタ,手指にGottron徴候を認めた.血液検査にてアルドラーゼとKL-6の上昇,抗MDA5抗体陽性,胸部CTにて両下肺野に網状影を認めた.以上より間質性肺炎を合併したclinically amyopathic dermatomyositisと診断した.ステロイドパルス療法後,プレドニゾロン内服を開始.初期治療から2年6か月でプレドニゾロン内服を終了した.内服終了後4か月が経過し,咳嗽および皮疹が再燃,同時にKL-6の上昇,胸部CTにて網状影の悪化を認めた.以上より間質性肺炎の再燃と考え,プレドニゾロン再投与およびシクロスポリン併用療法を行った.以後症状は改善し,現在はプレドニゾロン漸減中で再燃は認めていない.急速進行性間質性肺炎とは異なる経過をたどる抗MDA-5抗体陽性皮膚筋炎も存在し,寛解後の再燃にも注意が必要である.

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要約 症例1:43歳,女性.41歳頃に口唇や手指に色素斑が出現,口腔粘膜にも色素斑が多発した.上口唇の色素斑の生検病理組織像では基底層のメラノサイトが軽度増加し,真皮浅層にメラノファージが散見された.メラノサイトの形態異常や母斑細胞はなかった.症例2:53歳,女性.43歳頃に口唇に色素斑が出現,手指や口腔粘膜にも生じた.下口唇の色素斑の病理組織像は症例1と同様であった.両症例ともに消化管ポリポーシスなどの他臓器病変や家族歴はなかった.以上よりLaugier-Hunziker-Baran症候群と診断した.本症は特にPeutz-Jeghers症候群との鑑別が重要であり,消化器症状の確認や必要に応じその精査が必要である.本症の色素斑のダーモスコピー所見は皮溝・皮丘パターンのどちらも呈しうるといわれている.本症に悪性黒色腫が合併した報告もあり皮丘パターンを呈する色素斑は病理組織学的検討が必要である.

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要約 55歳,男性.5年前より関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)に対しプレドニゾロン(PSL),タクロリムス,サラゾスルファピリジン(SASP)の内服で加療中.以前下腿潰瘍を皮膚生検し悪性関節リウマチ(malignant rheumatoid arthritis:MRA)と診断された.生検4か月後より両下腿に水疱を伴う紅斑が出現した.皮膚病理組織像は表皮下水疱と真皮全層に好中球主体の炎症細胞浸潤があり,血管炎の所見は認めなかった.Rheumatoid neutrophilic dermatitis(RND)と診断しジアフェニルスルホン(DDS)50mg/日の内服と,MRAに対してエンドキサンパルス(intermittent pulse intravenous cyclophosphamide therapy:IVCY)療法を併用し,RAの病勢の低下とともに皮疹は改善した.RNDで水疱を呈した報告例を検討したところ,真皮乳頭層の好中球性膿瘍や治療でDDSが著効している点においてDuhring疱疹状皮膚炎や線状IgA水疱性皮膚症との共通性がみられ,臨床像が類似しているところも興味深いと思われた.

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要約 89歳,女性.初診の半年前に屋外で転倒し,左手背に外傷を受傷した.その1か月後より同部位に鱗屑と紅斑が出現した.初診時,左手背に5.0×3.7cm大のきめが粗く厚い鱗屑で覆われた円形の疣状局面を認めた.細菌培養や真菌培養はともに陰性であった.臨床像や病理組織所見から増殖型の壊疽性膿皮症と診断した.病変が徐々に増大していたため,ステロイド外用を開始したところ,左手背の病変は消退した.しかし,前腕や頭部に鱗屑性紅斑が出現した.同部位の病理組織学的所見から尋常性乾癬と診断した.経過から初診時の疣状局面は乾癬の一症状であり,psoriasis verrucosa(疣状乾癬)であったと考えられた.疣状局面を呈する疾患として,psoriasis verrucosaも鑑別に入れる必要がある.

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要約 42歳,男性.20年来の両側中指MP関節背側・右前腕伸側・両肘関節伸側・両膝関節前面にある弾性硬の可動性の乏しい皮下結節の精査目的に2016年4月に受診した.血液検査にて顕著な高LDLコレステロール血症があり,さらに問診にて母親,兄弟間,祖母にも脂質異常症の家族歴があった.右肘関節伸側の皮下結節を切除生検したところ,病理組織学的に泡沫細胞がみられ腱黄色腫と診断した.高LDLコレステロール血症,および腱黄色腫・両側アキレス腱肥厚により家族性高コレステロール血症の診断基準を満たした.関節背面の皮下結節の鑑別診断として腱黄色腫を念頭に置くべきと考えた.

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要約 61歳,男性.初診2年前より両陰茎基部に軽度瘙痒を伴う複数の褐紅色皮疹を自覚していた.病理組織像ではgrenz zoneを伴い,真皮に腫瘍細胞が結節性に増生し濾胞様構造もみられた.腫瘍細胞はCD20,CD79a,bcl-2陽性であり,遺伝子検査にて免疫グロブリンH鎖JH領域にて遺伝子の再構成を認めた.画像検索にて他臓器やリンパ節に異常は認めず,粘膜関連リンパ組織節外性辺縁帯リンパ腫(extranodal marginal zone lymphoma of mucosa-associated lymphoid tissue:以下,MALTリンパ腫)と診断した.病変から1cmマージンにて切除し,術後2年現在まで再発は認めていない.MALTリンパ腫は皮膚原発悪性リンパ腫の7%を占め,比較的稀な疾患であり,過去に男性の陰部に生じた報告はない.致死的となる症例は少ないものの,今後の症例の蓄積により,治療法の確立が待たれる.

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要約 83歳,女性.半年前より鼻尖部の発赤と違和感を自覚し,精査加療目的で当科を受診した.鼻全体が淡紅色調を呈し,鼻尖部から鼻背,両鼻翼にかけて非常に硬い皮膚硬結を触知した.鼻尖部より施行した生検皮膚病理組織像より,microcystic adnexal carcinoma(MAC)と診断した.手術による全切除も検討したが,患者が手術を拒否したため,診断確定後は経過観察の方針とした.初診時より約2年が経過しているが,病変の拡大はなく,転移の所見も認めていない.MACは局所再発が多いが,死亡例や遠隔転移は稀な低悪性度の皮膚付属器腫瘍と考えられる.患者の年齢や発症部位などを考慮し,症例ごとに治療方針や切除マージンを決定することが重要である.

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要約 78歳,女性.初診3年前より左外陰部に紅色丘疹を認め,徐々に増大したため当科を受診した.初診時,左外陰部に径30mm大の表面平滑な紅色結節を認めた.病理組織学的に,真皮浅層から深層にかけて薄い線維性隔壁で区切られた大小さまざまな腫瘍胞巣があり,腫瘍細胞は好酸性の細胞質やクロマチンに濃染する核を有していた.免疫組織学的所見にてCK7陽性,CK20陰性で,chromogranin Aとsynaptophysinが陽性であった.以上より神経内分泌分化を伴う皮膚粘液癌と診断し拡大切除術を行った.しかし3年後および4年後に外陰部周囲に紅色結節が新生し,病理組織学的に皮膚粘液癌の再発およびin-transit転移と診断した.皮膚粘液癌は局所再発率の高い悪性腫瘍であるが,本邦の再発例は2年以内に生じている症例が多い.しかし自験例のように2年以上経過し再発する症例もあるため,長期的な経過観察が必要である.

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要約 40歳,男性.既往歴なし.2015年4月,右臀部に皮膚潰瘍が出現した.前医にて抗菌薬内服や外用治療にて加療されたが改善せず.徐々に拡大したため当科を紹介され受診した.潰瘍部からの皮膚生検,抗酸菌培養,PCR法検査により,Mycobacterium tuberculosisが検出され,真性皮膚結核と診断した.初診時には気付かれなかった湿性咳嗽を再診時に確認したため当院の呼吸器内科を受診し,胸部X線で肺結核が判明した.自験例のごとく,40歳台発症の皮膚結核例では基礎疾患がなく感染経路が不明なことが多い.比較的若い例で呼吸器の自覚症状に乏しく既往歴や基礎疾患がない症例においても,結核感染症を疑う必要がある.

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要約 73歳,男性.初診の約4年前,下血と胸水貯留で入院した際,酸素マスク使用中に耳介付け根上部に傷ができ,数年後に同部に巨大なケロイドを形成した.保存的な治療は難しいと考え,切除の方針とした.新たな創傷を最小限にするために,ケロイド病巣内の線維化した部分のみ切除し,残した表層を皮弁として皮膚欠損部を被覆した.術後2か月で部分的に再発傾向がみられたが,ステロイド局注を行い術後7か月まで悪化なく経過している.医療機器関連の創傷によってケロイドが発症する可能性に留意し,発症予防と早期の治癒を図ることが大切である.また,耳のケロイドに対して,後療法を併用した外科的治療が選択肢として考えられる.

マイオピニオン

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 1. 良い診療ガイドラインとは

 後述するMinds(マインズ)は診療ガイドラインを「診療上の重要度の高い医療行為について,エビデンスのシステマティックレビューとその総体評価,益と害のバランスなどを考量して,患者と医療者の意思決定を支援するために最適と考えられる推奨を提示する文書」と定義している.したがって,書かれている内容について,目の前の患者に適用してよいか,そのリスク/ベネフィットを患者ごとに検討する必要がある.診療ガイドラインは決して無批判に従う手順書(マニュアル)ではない.

 個人的に良い診療ガイドラインの条件として,①「短時間で理解できる」,②「特定の状況における方針が明快」,③「解説が腑に落ちる」の3つを挙げたい.

連載 Clinical Exercise・131

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症例

患 者:11歳,女児

主 訴:肘関節周囲の皮下,皮内結節

家族歴・既往歴:特記すべきことなし.

現病歴:初診の約5年前より顔面,四肢に紅斑を生じた.また,股関節痛,足関節痛,大腿部の筋痛が出現した.転倒しやすくなったため小児科を受診し,治療中である.約2年前より右肘痛を生じ,肘関節周囲の皮内,皮下に多発性の結節を触れるようになった.結節の治療目的に当科を受診した.

現 症:額,頰部,上眼瞼,肩にわずかに鱗屑を付す紅斑,項部に紅斑,鱗屑,痂皮,びらん,皮膚萎縮,色素脱失がみられた(図1a).手指PIP,DIP関節背面に紅色丘疹,爪囲に紅斑があった(図1b).上腕,前腕(図1c),大腿伸側にも萎縮性紅斑を認め,軽度のかゆみを伴っていた.また,両肘関節周囲の皮内,皮下に指頭大までの硬い結節を多数触知した.肘関節は可動域が制限され,伸展時に疼痛があった.

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目次

欧文目次

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 欧米における悪性黒色腫は表在拡大型,悪性黒子型などの皮膚型がほとんどであるのに対し,アジアでは末端黒子型や粘膜型が多い.

 Haywardらは皮膚型140例と末端黒子型35例/粘膜型8例の計183検体を用いて全ゲノムシーケンスを解析し,1塩基置換・挿入/欠失,染色体構造変化(1,000塩基以上の重複や欠失など),コーディング領域の変異,非コーディング領域の変異について,それぞれのサブタイプの特徴を明らかにした.

次号予告

あとがき 阿部 理一郎
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 専門外来として薬疹とリンパ腫を診ています.ですがほとんどの患者さんは菌状息肉腫の方です.以前はアトピー性皮膚炎や脱毛症を担当していたこともありましたが,患者さんが減らずに増加の一途で大変でした.しかしリンパ腫も同じで,まさに慢性疾患として長年病気とつきあっていく類いのものです.

 県内の先生方から多くの患者さんをご紹介いただき,個々の症例で現時点での最適な治療を施せるよう取り組んでいます.菌状息肉腫は非常に緩徐に進行しますし,早めに多剤化学療法を行ってもかえって予後が悪くなるというデータがあることもあり,これまではできるだけ負担の少ない‘弱い’治療を長期に行っていました.ですが最近は,進行させないことに主眼を置いた薬剤が登場してきました.もちろん高い頻度で副作用が生じますが日常生活を妨げるレベルにまではいかないものが多く,選択の幅が広がってきています.今後は,奏効することを目指すのではなく,‘積極的’にSD(stable disease,腫瘍の大きさが変化しない状態)を維持する,という方針に変わっていくと思います.

基本情報

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臨床皮膚科
72巻8号 (2018年7月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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