臨床皮膚科 72巻1号 (2018年1月)

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要約 69歳,女性.十数年前に心臓疾患に対して外科的治療を施行後,胸部正中の手術創がケロイドとなり,種々のステロイド外用治療を行われた.同部位の治療をフルドロキシコルチドテープに変更した1週間後より貼付部に一致した落屑性紅斑が出現した.ケロイド上に存在する鱗屑をKOH直接鏡検法にて観察したところ糸状菌が存在し,スライドカルチャーにて大分生子を形成していたためMicrosporum canisによる体部白癬と診断した.フルドロキシコルチドテープの中止ならびにルリコナゾールの外用にて2週間で軽快した.貼付剤による密閉環境に加え,ステロイドによる局所の感染抵抗力の低下などが要因と考えられ,使用部位に一致した皮疹をみた際は,接触性皮膚炎のみならず真菌症を鑑別する必要があると考えられた.

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要約 28歳,女性.既往歴特記すべきことなし.初診6日前,左前腕に1cm大の有痛性硬結を認めた.その後,左大腿,臀部にも硬結が出現し大きさを増し,1日前より全身の潮紅,発熱,悪寒を自覚した.初診時,全身のびまん性紅斑と左前腕,左大腿,左臀部に一部膿栓を伴う皮下硬結を認め,血圧低下がみられた.左前腕膿汁,鼻腔よりエンテロトキシンB(staphylococcal enterotoxin B:SEB)陽性のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)が検出された.抗菌薬加療にて軽快し,第13病日に退院した.退院翌日に手指,手掌の膜様落屑を認めた.多臓器障害はなかったため,The Center for Disease Control(CDC)のTSSの診断基準を満たさず,probable toxic shock syndrome(probable TSS)と診断した.腟分泌物からは黄色ブドウ球菌は検出されず,癤より発症したと考えられた.今後病原性の強い市中感染型MRSA(community-associated MRSA:CA-MRSA)による皮膚感染症の増加が懸念され,これに関連したTSSを見逃さないようにすることが重要である.

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要約 50歳台,フィリピン人女性.初診の1年前より両手背に瘙痒を伴う皮疹が出現し,徐々に拡大したため当科受診.初診時,顔面,後頸部,上腕伸側,前腕,両手背に弾性硬の結節,局面が多発し,後頸部から背部にかけ浮腫状の皮膚硬化がみられた.血液検査ではC型肝炎ウイルス抗体陽性,肝酵素上昇,血清ヒアルロン酸値の上昇を認めた.病理組織学的所見と併せ粘液水腫性苔癬と診断した.副腎皮質ホルモン外用薬の外用,抗ヒスタミン薬の内服を行ったが効果に乏しく,C型肝炎に対し,レジパスビル/ソホスビル配合錠の内服を開始したところ,3週後にはHCV-RNAは検出感度以下となり,皮膚症状と瘙痒感は徐々に改善した.治療抵抗性の粘液水腫性苔癬ではC型肝炎を検索し,積極的な治療を考慮するべきである.

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要約 73歳,男性.3日前より右腰痛,便秘,排尿障害を認め,内科を受診した.腹部CT検査を施行し,右内腹斜筋の膨化を認め,右腰部に紅斑,水疱を認めたため当科を受診した.臨床症状および検査所見より右L1領域の帯状疱疹と診断し,腹筋麻痺,膀胱直腸障害の合併と考えた.アシクロビル点滴静注,プレドニゾロン(PSL内服),α1ブロッカーおよび抗コリンエステラーゼ阻害薬内服,自己導尿,下剤投与を行い,腹筋麻痺と膀胱直腸障害の改善を認めた.帯状疱疹の神経合併症として,自律神経障害,運動神経麻痺が生じることがある.自験例は,L1領域を支配する腸骨下腹神経障害により腹筋麻痺と膀胱直腸障害を合併した稀な症例と考えた.自験例では腹筋麻痺が偶発的に指摘されたが,軽症例では見逃される可能性もある.帯状疱疹は日常診療で遭遇する機会が多いが,自律神経障害,運動神経麻痺を併発しうることに留意して診察する必要がある.

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要約 71歳,男性.初診の2か月前頃より両足底にびりびりとした疼痛が生じ,初診の1か月前頃から両下腿の片側面に限局した境界明瞭な暗紅色斑が出現した.血中ニコチン酸の低下,胃全摘の既往,アルコール多飲歴などからペラグラと診断した.ニコチン酸アミド内服を開始したところ,約1か月で皮疹は略治した.神経学的所見から末梢神経障害と診断したが,アルコール性のもの,ペラグラによるものは共通点が多く鑑別が困難であった.1991〜2016年の報告例をまとめると,皮膚症状と神経症状を合併したのは19%であった.ペラグラの誘因としては,アルコール性が最も多く,消化管手術,食欲不振と続くため,生活習慣や環境要因を含めた詳細な問診が重要である.

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要約 62歳,女性.数日前から両側季肋部に表皮と連続性のある硬い皮下結節を自覚し受診した.皮膚生検では脂肪織炎の所見で経過観察とした.初診から2年後に再生検し,皮下脂肪織を中心に形質細胞様細胞のびまん性浸潤やリンパ濾胞を認めた.皮下結節を全摘出したところ,CD68陽性,S100蛋白陽性,CD1a陰性の大型の組織球の増殖とemperipolesisを認めた.皮膚以外の臓器病変や検査異常を認めず,皮膚Rosai-Dorfman病と診断した.2度の生検では非特異的所見であったが,全摘出標本の仔細な検討により確定診断に至った.本邦における皮膚Rosai-Dorfman病は調べえた限り25例と少数で,その臨床所見もさまざまである.原因や治療法は確立されていないが,経過は良好だった.今後,さらに皮膚Rosai-Dorfman病の症例が蓄積され,治療法が確立されることが待たれる.

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要約 78歳,男性.初診の9日前,足背に紅斑を自覚.数日の経過で皮疹は急激に拡大し,両前腕,臀部,両下肢に大小の紫斑,水疱を生じ,黒色痂疲を付す広範囲な潰瘍も出現した.同時に発熱,頻回の下痢,全身倦怠感を認め入院した.病理組織学的には脱顆粒を示す著明な好酸球浸潤を伴う白血球破砕性血管炎を認めた.血管炎に対し,メチルプレドニゾロンによるステロイドハーフパルスを施行したところ症状は速やかに終息,現在ステロイドを漸減しているが再燃なく経過している.鑑別診断として,好酸球性多発血管炎性肉芽腫症,IgA血管炎,薬剤性血管炎,また経過中に早期胃癌が発覚したことから腫瘍関連血管炎を鑑別に挙げた.

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要約 36歳,女性.初診1か月前からの複数回の下痢,血便を主訴に近医を受診し大腸内視鏡検査で潰瘍性大腸炎と診断され当院受診した.絶食とプレドニゾロン 50mg/日の点滴で加療中,点滴刺入部に膿瘍が出現し当科を受診した.初診時,点滴刺入部を含め両上肢に多発性の無菌性膿瘍を認めた.病理組織像では,真皮全層性に密な好中球の浸潤を認めた.血液検査ではCRP高値,赤沈の亢進,血清補体価の上昇を認めた.HLA-B51は陰性で,眼科的,神経内科的にBehçet病に合致する所見は認められなかった.以上の臨床像,検査所見より潰瘍性大腸炎に伴った好中球性皮膚症と診断した.顆粒球吸着療法を開始したところ腸炎および皮膚症状は著明に改善し,サラゾピリンの内服で皮膚症状の再燃は認められていない.顆粒球吸着療法は潰瘍性大腸炎に伴った好中球性皮膚症に対して有用な治療選択肢と考えた.

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要約 65歳,男性.背部,右側腹部に多発する,鶏卵大から鵞卵大までの浸潤を触れる環状紅斑と腰背部に散在する紅色丘疹を主訴に受診した.同時期より頻回の下痢と血便を伴った.皮疹の病理組織像で真皮浅層から中層に弾性線維の消失した部分とその周囲のリンパ球,組織球浸潤および多核巨細胞がみられ,一部には弾性線維を貪食する多核巨細胞が観察された.また下痢,血便の精査で大腸内視鏡検査を施行し潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)と診断された.病理組織所見と併せて,UCを伴ったannular elastolytic giant cell granuloma(AEGCG)と診断した.メサラジン内服により腹部症状は著明に改善し,ステロイド外用を併用し,皮疹も退色傾向を示したが,新生皮疹も出現しており,皮疹に対する効果の評価は難しかった.自験例は糖尿病の合併のない,非露光部に生じ,同時期からUCを合併したAEGCGであり,両者の合併例の報告はいまだないがAEGCG症例では種々の合併症検索が必要と考えられた.

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要約 2歳5か月,女児.1歳半頃より腰部中央に弾性硬の半球状結節があった.生検病理組織像で脂肪芽細胞が認められ,脂肪芽腫(lipoblastoma)と診断した.生検7か月後,増大傾向がみられたため全身麻酔下で摘出術を施行した.過去20年間の本邦報告例の文献的考察では,男児に多く,3歳以下が92.7%であった.部位としては頸部が最も多く,腫瘍長径は平均6.3cmと比較的大きかった.治療は全例で手術が行われ,diffuse typeの3例で再発があった.自験例はcircumscribed typeであり,予後は良好である可能性が高い.治療では全例で手術が選択されており,増大傾向を示すその特徴からも早期に全切除することが有用であると考えられた.

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要約 73歳,女性.1年半前に自覚した右大陰唇の皮下結節が徐々に増大し,18mm大の球状の弾性硬結節となった.表面は平滑に触知され,皮膚下床との可動性良好であった.MRIのT1,T2強調で均一な低信号,脂肪抑制像では軽度高信号,エコーでは内部不均一な低エコー像を示した.病理組織像は皮下の境界明瞭な円形の病変で,周囲を線維性間質で被包されていた.紡錘形の核をもつ腫瘍細胞が稠密に増殖し,介在する分岐状血管が散見された.CD34,bcl-2,CD99は陽性,αSMA,S100蛋白陰性で,solitary fibrous tumor(SFT)と診断した.SFTは病理組織学的に周囲を覆う線維性皮膜や,腫瘍内の鹿の角状に分岐した小血管の存在などの特徴がある.軟部組織の腫瘍の中では,同様にCD34陽性の隆起性皮膚線維肉腫と鑑別を要するが,上記の点で鑑別できると考えた.

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要約 81歳,女性.38歳時に左乳癌に対し乳房切除術,術後に放射線化学療法を受けた.2年前より放射線照射野の左胸部に黒色結節が出現し増大傾向にあるため近医を受診した.病理組織検査で基底細胞癌と判明し当科を紹介され受診した.左胸部の多形皮膚萎縮を来した面上に径15mm大の腫瘤を形成しダーモスコピーではlarge blue-gray ovoid nestsと不規則な血管拡張を認めた.基底細胞癌の多くは顔面に発症し体幹発症は少ないが,今回われわれは43年前の放射線照射野に生じた基底細胞癌の症例を経験した.放射線療法後には種々の二次性悪性腫瘍が発生することが知られているが,皮膚悪性腫瘍は発症までの潜伏期間は非常に長い.二次性の基底細胞癌は継時的に多発し,複数の異なる組織型の皮膚腫瘍が続発することもある.今後自験例のような症例の増加が予想されるため,放射線療法の既往と照射野に生じた皮膚腫瘍に対しわれわれ皮膚科医は積極的に生検や切除を行い,長期にわたり経過をみる必要がある.

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要約 78歳,男性.初診3週間前に墓地で転倒し,左手背と顔面に挫創を受傷,クラリスロマイシンを処方されたが,挫創が改善せず当科を受診した.左環指の腫脹が強く,指輪抜去困難であった.左手背および左肘関節内側に発赤と皮下腫瘤を認め,リンパ管に沿って症状が広がっていた.手背から採取した組織培養より放線菌が疑われ,16S rRNA遺伝子の塩基配列からNocardia brasiliensisと同定した.切開排膿の2日後に入院の上ミノサイクリンとレボフロキサシンの投与で症状は改善した.退院時に浮腫で抜去困難であった環指の指輪を外したところ,2日後に症状が再燃し,再度入院加療を要した.抗菌薬に加え,局所温熱療法を施行し退院した.土壌での挫創を契機に皮膚リンパ管型スポロトリコーシス様のリンパ管炎を伴う症例では,皮膚ノカルジア症も考え,皮膚生検と培養が重要である.また治療を妨げる器具は,早期に除去すべきと考える.

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要約 野村皮膚科医院で2014年4月〜2016年7月の間にベピオゲル®を処方した尋常性痤瘡患者608例(男性87例,女性521例,平均年齢27.0歳)について,副作用についての調査を行った.副作用を認めなかった例48%,副作用を認めるが使用継続が可能だった例16%,副作用を認め使用を中止した例10%,再診があるが経過途中などで詳細が不明だった例13%,再診がなかった例13%であった.副作用を認めなかった例に比べ,継続例,中止例になるほど年齢は高くなる傾向にあった.また,女性のほうが副作用は生じやすい傾向にあった.継続例・中止例とも,副作用発現時期は1か月後,使用直後,2週間後の順に多く,症状は紅斑,乾燥,瘙痒の順に多く認められた.継続例では,保湿剤併用,使用量や使用間隔,使用方法の改善などにより継続が可能となっていた.

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 1. 大学病院の役割

 大学病院は一般の病院とは異なる役割がある.それは診療行為を行うことだけでなく,将来の医師を育てる教育の場としての役割や,将来の医学の発展に貢献するような研究を行う場としての役割である.診療についても,患者さんの多くは診療所や一般病院での検査や治療が困難な,より高度な医療を必要とする状態であり,その地域の医療の「最後の砦」としての役割が求めらる.そして私が勤務する京都府立医科大学では,さらに京都府全域の地域医療を支える役割が求められ,大学に所属する医師を医師の不足している地域へ週1〜2回派遣している.片道数時間かかるような地域もある.大学病院に勤務している医師は,大学病院で重症の患者を診ながら地域の病院にも診察の応援にいく.そしてその上に教育・研究というさらなる役割が重なってくる.当然これだけの仕事をこなすにはかなりのマンパワーが必要となる.しかしながら実際は十分なマンパワーが足りているとは言えず,現場は多くの議論すべき課題を抱えている.本稿では,大学で臨床と研究・教育を両立することの魅力・難しさ・今後の課題などについて私なりの考え,意見を述べたいと思う.

連載 Clinical Exercise・125

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症例

患 者:20歳,男性,日本人

主 訴:左足内果の圧痛を伴う紅色結節

家族歴:特記すべきことなし.

既往歴:臀部慢性膿皮症

現病歴:某年8月にボリビアで登山中,四肢を数か所虫に刺された.同年9月上旬日本に帰国後も左足内果の結節が残存し,同部に疼痛がみられたため当科を受診した.

現症と経過:初診時,左足内果に軽度圧痛を伴う結節がみられた.両下腿に丘疹・色素沈着が散在していた.左足の結節は炎症性粉瘤,他は虫刺症を考えステロイド外用薬と抗菌薬の内服を行ったが効果はなかった.初診から11日後,左足内果に大豆大の紅色結節を認め,中央に小孔がみられた(図1a).右下腿屈側にも胡桃大の中央に小孔を伴う暗紅色結節がみられた(図1b).

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欧文目次

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 これまで,厚さが中等度(1.2〜3.5mm)の悪性黒色腫を有し,リンパ節転移を認める患者において,センチネルリンパ節生検は,悪性黒色腫特異的生存期間の延長に関連することが示されていた.しかし,センチネルリンパ節転移陽性患者に対する完全リンパ節郭清の有用性は明らかにされていなかった.

 本論文では,国際共同研究の第Ⅲ相試験で,センチネルリンパ節転移陽性患者に対する完全リンパ節郭清の有用性につき検討された.病理学的検討または分子学的検討によりセンチネルリンパ節転移陽性と診断された患者が,即時に完全リンパ節郭清を行う群(郭清群)と超音波検査によりリンパ節を観察し転移が疑われた際に郭清を行う群(経過観察群)に無作為に割り付けられた.主要評価項目は悪性黒色腫特異的生存とされ,副次的評価項目は,無病生存,センチネルリンパ節以外のリンパ節転移の累積発生率などとされた.

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 免疫チェックポイント阻害剤は,内在性の抗腫瘍応答を賦活化する働きを持ち,近年,さまざまな種類の癌治療に用いられている.著者らはこれまでの研究で,ミスマッチ修復機構(mismatch repair:MMR)の欠損を有する大腸癌において抗PD-1抗体が著効することを示してきた.MMR欠損を有する癌では何千何百もの体細胞遺伝子変異が蓄積され,数多くの腫瘍特異的変異抗原(mutation-associated neoantigens:MANA)が増加することが明らかとなってきた.著者らは,抗PD-1抗体存在下において,MANA特異的T細胞が増え,T細胞による免疫応答が活性化されるという仮説を提唱した.

 本研究では,12癌腫のMMR欠損を有する進行癌患者86人を対象に,抗PD-1抗体であるペムブロリズマブを2週間ごとに投与した.その結果,53%の症例で奏効がみられ,うち21%で完全奏効となり,疾患制御率(完全奏効+部分奏効+安定)は77%を達成した.奏効は持続的であり,12か月後の無増悪生存期間は64%,全生存期間は76%であった.また,測定可能な範囲で客観奏効が得られた20人の患者に対して,初期治療開始後1〜5か月後の間に生検を行った.その結果,12人で腫瘍細胞の消失がみられ,腫瘍組織における腫瘍細胞の消失と,無増悪生存期間との相関が示された.

次号予告

あとがき 阿部 理一郎
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 先日,天野正宏教授からお呼びがかかり,久しぶりに宮崎へ行きました.宮崎は幼少時代と,小学6年から中学3年までを過ごした場所です.ホテルが以前住んでいた場所に近かったので,記憶をたどって歩いてみることにしました.目に映る風景はすっかり様変わりしており寂しく思いましたが,たどり着いた中学校は思い出の中のままの姿で,プールや体育館,そして玄関前のフェニックスも昔のままでした.続いてたどり着いた小学校も校舎はそのままで,30年前に窓から友達が手を振ってくれたことを思い出しました.登下校時いつも構内を横切っていた宮崎大学は移転してしまっていましたが,なんだか昔の自分に道案内されながら歩いているように思えました.小学生のときに漠然と医師に憧れて,医師になりたいと考えはじめたことも思い出し,その頃思い描いた将来の自分になっているのか,そんなことを考えながら歩き続けました.

 その後,祖母に久しぶりに会いに行きました.今年百歳となり,老いた姿を想像していましたが,相変わらず矍鑠とした様子で,お昼にすき焼きを食べていたのには驚きました.祖母の顔に星のように浮かぶ黒いものをぼんやりと眺めながら,何度目かの同じ質問に答えました.たぶん,今私がどこに住んでいるかわからないかもしれませんし,もしかしたら子供の頃の私に話しかけていたのかもしれません.

基本情報

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臨床皮膚科
72巻1号 (2018年1月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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