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文献紹介 ミスマッチ修復機構の欠損による抗PD-1抗体の奏効予測
齋藤 苑子
1
1慶應義塾大学
pp.61
発行日 2018年1月1日
Published Date 2018/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412205299
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免疫チェックポイント阻害剤は,内在性の抗腫瘍応答を賦活化する働きを持ち,近年,さまざまな種類の癌治療に用いられている.著者らはこれまでの研究で,ミスマッチ修復機構(mismatch repair:MMR)の欠損を有する大腸癌において抗PD-1抗体が著効することを示してきた.MMR欠損を有する癌では何千何百もの体細胞遺伝子変異が蓄積され,数多くの腫瘍特異的変異抗原(mutation-associated neoantigens:MANA)が増加することが明らかとなってきた.著者らは,抗PD-1抗体存在下において,MANA特異的T細胞が増え,T細胞による免疫応答が活性化されるという仮説を提唱した.
本研究では,12癌腫のMMR欠損を有する進行癌患者86人を対象に,抗PD-1抗体であるペムブロリズマブを2週間ごとに投与した.その結果,53%の症例で奏効がみられ,うち21%で完全奏効となり,疾患制御率(完全奏効+部分奏効+安定)は77%を達成した.奏効は持続的であり,12か月後の無増悪生存期間は64%,全生存期間は76%であった.また,測定可能な範囲で客観奏効が得られた20人の患者に対して,初期治療開始後1〜5か月後の間に生検を行った.その結果,12人で腫瘍細胞の消失がみられ,腫瘍組織における腫瘍細胞の消失と,無増悪生存期間との相関が示された.
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