Brain and Nerve 脳と神経 22巻11号 (1970年11月発行)

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筋組織化学アトラス7

重症筋無力症宇尾野　公義 22巻11号 , 1970年11月 , pp.1234-1238

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　重症筋無力症の罹患筋にはしばしばlymphorrhageがみられ，筋線維の萎縮が時に合併し，神経筋終板の変形は必発であることが認められていた。近年組織化学，免疫組織化学，電子顕微鏡的研究が進むに従い，病理形態学的には神経側の，また胸腺および自己免疫・内分泌・代謝面からは直接筋側の異常も認められ，その他ある基礎疾患から2次的に筋無力症状を来す場合もあり，従って本症の組織化学的変化も極めて多彩であることが判明した。本症の成因および疾患単位としての位置づけが再検討されている。

研究

選択的外頸動脈造影とその臨床的意義玉木　紀彦 , 松田　尨功 22巻11号 , 1970年11月 , pp.1241-1250

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緒言

　近年カテーテル法による血管造影の普及に伴って，選択的に目的とする血管のみを造影し，その病変の循環動態を詳細に分析することにより，病変の性質，手術適応，および手術方法等を術前に把握することが容易になった。脳神経外科領域においても，カテーテル法による選択的血管造影が普及してきている。

　選択的外頸動脈造影によれば内頸動脈領域の重複造影なしに頭蓋内および頭蓋外の病変をより詳細に，しかも正確に診断することができる。特に外頸動脈循環が頭蓋内および頭蓋外病変に関与する状態を分析することによって，その病変の鑑別診断，性質や，循環動態を正確に知ることが出来る。これによって脳神経外科手術の適応や手術方法の決定，その他術前および術中の患者管理も容易になる。以下私共が施行している選択的外頸動脈造影について，その技術，方法，利点および欠点を述べ，施行例を中心にその臨床意義について考察する。

特発性脳内血腫東　健一郎 , 波多野　光紀 , 渡辺　政徳 , 青木　秀夫 , 高島　正成 22巻11号 , 1970年11月 , pp.1253-1260

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緒言

　脳内血腫の原因としては，外傷，脳動脈瘤あるいは脳動静脈奇形の破裂，高血圧性脳出血などが主なものであるが，脳内血腫あるいは脳内出血を分類する場合には，外傷性と特発性（spontaneous）または1次性（primary）に分ける人が多い。したがつて特発性脳内血腫という場合には，外傷以外のすべての原因によるものを含むので，高血圧性脳内出血が大きな比率を占める。Russell^28）の特発性頭蓋内出血の剖検例461例の病因分析によつても，高血圧性のものが50％を占めている。

　しかし脳内血腫のなかには，高血圧を有しない比較的若年者におこるもので，もちろん外傷や明らかな血管奇形を有せず，主として大脳半球の白質内に，被膜を有する凝血を混じた血液貯留として発見されるものがあり，このようなものは，いわゆる卒中型の発病型式をとらず，徐々に脳圧充進症状と局所神経学的症状が発展してきて，脳腫瘍に類似した経過をとり，手術によつてはじめて血腫が発見されるものが多く，したがつて手術の予後も高血圧性脳内血腫に較べるとはるかによいものである。

脳動脈瘤直接手術の追跡調査—特に血管攣縮との関連について鈴木　二郎 , 高久　晃 , 鈴木　重晴 , 児玉　南海雄 22巻11号 , 1970年11月 , pp.1261-1267

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はじめに

　蜘蛛膜下出血の約60％が脳動脈瘤の破裂によるものであり，その治療としては脳神経外科的手術が最も卓越した方法である事は今や自明の理となっている。

　併しこれら脳動脈瘤の破裂による蜘蛛膜下出血に際しては，種々病態生理学的諸問題が介在し，中でも脳血管攣縮は蜘蛛膜下出血の予後を左右する因子として，近年諸家の注目をあびている。我々はその解明が重症蜘蛛膜下出血の外科的治療の開拓に関連して，まずとりくむべき問題であると考える。

眼窩内腫瘍の超音波診断経験西居　俊哉 , 桜井　武雄 , 間　顕 , 丸笹　雄一郎 , 藤田　一郎 , 岡　益尚 22巻11号 , 1970年11月 , pp.1269-1274

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まえがき

　一側性眼球突出を訴える患者をみることはさほど稀ではなく，それは相異なる疾患の臨床症状の1つである^{8）9）19）}。したがつて，その原疾患を正しく，早く診断することが適切な治療法を決定するために非常に必要である。

　一側性眼球突出を示す患者で，その原疾患として眼窩内腫瘍が疑われる時には，頭部眼窩X線単純および断層撮影，脳血管および眼動静脈造影，眼窩造影，radioiso—tope，電位差測定，眼窩圧測定，biopsyなど^{18）19）20）}の診断法が用いられている。私共はこれらの診断法よりもすぐれた利点をもつものとして超音波診断を推奨したいと考えるが，ここには3例の一側性眼球突出に対する超音波診断（感度断層写法）経験について，その原疾患である眼窩内腫瘍を診断同定し，治療方針決定に役立てたことをのべる。

パーキンソン症候群の安静時振戦と視床核手術に関する研究清野　修 22巻11号 , 1970年11月 , pp.1281-1291

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緒言

　安静時振戦（resting tremor）はパーキンソン症候群（以下パ症候群と省略する）の印象的な症状であり，四肢末端に多くみられる。そのサイクルは4〜7c／sであり，規則正しく律動的交代性であり，精神的緊張・不安などで増強するとされている。パ症候群の振戦や固縮に対する治療方法に，1947年Spiegel and Wycis^1）らが定位脳手術法を導入してから，各地で広く行なわれて良好な成績が得られている。新潟大学脳神経外科においても，昭和34年以後昭和44年まで，39例のパ症候群に対して56回の手術を行なつている。手術方法や破壊目標点の変遷につれて手術成績が向上し，これとともに人における大脳皮質下組織構造の機能が明らかになり，これがまた手術効果を高めるものとなつている。しかし定位脳手術が，漸次進行性のパ症候群の本質的な治療方法でないことは明白である。症例により，あるいは不完全な手術により，術後再び振戦が出現してくることがしばしばみられる。パ症候群の振戦や固縮に対する視床核破壊後の種々の成績については，極めて多くの報告があるにもかかわらず，手術後再び出現する安静時振戦に関して詳細な検討を行なつたものは少い。著者はこの点に注目して，術前術後の安静時振戦のサイクルと規則性について検討し，パ症候群の安静時振戦の本態を知らんとした。

トレフィン開頭装置—迅速開頭硬膜保護の工夫山本　信二郎 22巻11号 , 1970年11月 , pp.1293-1295

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はじめに

　頭蓋骨手術器械の中，トレフィンの使用は古く，紀元前の古代都市Niniveの発掘にも見られる^4）。この装置による開頭は極めて簡便なものであるにもかかわらず，欠点として開頭の範囲が限定されるため，近代脳神経外科の主流からはずれ，手術書にもその記載を見ないものが多い。しかし，外傷性および非外傷性の頭蓋内血腫の手術治療においては，比較的小さな骨窓で血腫除去の目的を達しうるため，最近トレフィンによる開頭が再び評価されてきた。

　一般に用いられているトレフィンの基本構造は，種々の直径の円筒の一端に鋸歯状の刃をもち，これを同心回転させるため，先端の出し入れができる中心ピンをもつものである^1）2）。この種の装置の最も大きな欠点は，細心の注意にもかかわらず，しばしば硬膜を傷つけ，さらに脳実質に切り込むことである。

多トレフィン開頭による硬膜上血腫の治療山本　信二郎 , 木島　賢治 , 村田　秀秋 , 林　実 , 埴生　知則 22巻11号 , 1970年11月 , pp.1297-1300

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はじめに

　急性硬膜上血腫は，一刻を争う緊急の血腫除去と共に，血腫再発防止の処置を要する。急性硬膜上血腫の特徴の1つは，手術成績がよく^5）7）8），この点，過半の死亡率を見る急性硬膜下血腫とは顕著な対蹠をなす。また硬膜上血腫の出血源は主として硬膜であり，血腫は早期に凝血，器質化し，硬膜は充血，出血性となる^9）11）。したがつて，その手術方法は従来一般に大きな開頭により，血腫を覆う範囲の骨窓をつくり，血腫除去とともに，出血源の処置を完全ならしめるのを原則としてきた。ことに硬膜からの出血に対する処置は，単なる血管の結紮あるいは出血点の電気凝固の方法では不十分をまぬがれず，血腫範囲の硬膜を環状に切つて，血行を遮断し再縫合することによつて完全を期待しうる^11）。しかし，血腫の範囲が著しく広い場合には，これを覆う大きな骨弁をつくること自体に困難があり，また殊に矢状静脈洞より出血し，血腫が静脈洞を圧し下げている場合には，大開頭の方法では硬膜の出血源の処置が困難となる。われわれは，トレフィンを用い，血腫の広がりにしたがつてボタン状の骨窓を並べて多数つくることにより，手術の簡単迅速，術中出血量の僅少のみならず，血腫の除去，および再出血の確実な防止の目的を達し得た。

海外文献

新生男児3,500例の染色体，他 Ratcliffe,　S．　G． , Stewart,　A．　L． , Melville,　M．　M． , Jacobs,　P．　A． 22巻11号 , 1970年11月 , pp.1291

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　成人男子で染色体数47,karyotypeXYYというのが精神科的にも注目されてきているので，著者らはそれを新生児で調べた。毛細管血0.5mlを2〜3日培養，最初の研究者が少なくとも2個の細胞で染色体を数え，第2研究者がさらに1個を調べ，3個の中に異常があれば，第3研究者が更に7個の細胞を調べ，異常が確認されたら，第2回採血，培養，検査をくりかえすという大変手数と時間のかかる研究を行なつた。周知のように著者らは英国の染色体学を新たに築いた研究者である。3500例のうち4例は培養が不満足で，3496男児となつたが，このうち20例に染色体異常があつた。まず染色体47，タイプXYY5例，いずれも他に先天奇型なし，母21〜33，父22〜38，両親染色体正常。染色体47，カリォタイプXXY3例（1例のみ停留睾丸），母24〜40歳，父24〜42歳，染色体正常。染色体46，タイプXX （♂）1例。染色体47タイプXY,G＋5例，いずれもDown症候群で心血管奇型あり。染色体45，　タイプXY, D—．　D—，　t（D_qD_q）＋2例（奇型なし），染色体45, XY, D—，　G—，　t （D_qD_q）＋1例（奇異なし）。染色体46,XY, t （B_p—；　C_p^＋）1例，46, XY, t （C_qC_q）1例，奇型なし。46, XY, D—，　t （D_qD_q）＋1例（microcephaly, cleft lip palate，　VSD）。従つて新生男児175例につき1例の染色体異常あり，47, XYYは700例に1例の頻度になる。文献ではSergovich （カナダ）1066男児で47, XYY4例，47, XXY1例，G＋trisomy1例。Lubs （USA）2222男児で47, XYY3例，47, XXY4例，translocation2,G＋trisomy2例。著者らを加えると，染色体異常は1000新生男児で5.6例，47, XYYは1.8例ということになる。これは大変なことで，日本でも是非くわしく見てもらいたい。安田トリデ破壊者の染色体はなんとも知りたしとも知りたし。

症例報告

Sudanophilic leucodystrophyの1剖検例調　輝男 , 菊池　昌弘 , 犬塚　巽 22巻11号 , 1970年11月 , pp.1305-1311

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はじめに

　Leucodystrophyは先天性遺伝性代謝障害疾患で，髄鞘形成異常のため大脳半球白質に非炎症性の広範なびまん性脱髄巣が形成されることで特徴づけられるとされている^22）。

　1885年Pelizaeus^19）は1家系5例に認められた中枢神経系の遺伝性疾患を臨床的に報告し，さらに1910年Merz—bacher^15）は同一家系14例を報告し，病理学的にびまん性に大脳半球白質に脱髄がみられたと記載した。その後いくつかの類似の症例が報告され，これらの症例はleu—codystrophyという1つの疾患群にまとめられ，臨床的ならびに病理学的特徴から種々の分類が試みられており，そのうちのいくつかの型のものは代謝障害の機構が明らかにされてきた。すなわちmetachromatic leuco—dystrophyはsulfataseの欠乏によりsulfatideが異常に蓄積することがわかり^1），sulfatide lipidosisといわれるようになつた。またgloboid cell type leucodystrophy（Krabble's disease）はcerebroside sulfotransferaseの欠乏が見出されたという^30）31）。

von Recklinghausen病を伴ないRosenthal線維に富む視神経交叉部神経膠腫の1例青木　秀暢 , 小柏　元英 , 斎藤　義一 , 涌谷　清 22巻11号 , 1970年11月 , pp.1313-1318

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はじめに

　von Recklinghausen病（以下R病と略す）は頭蓋内の種々の腫瘍を合併することがあり，母斑症の中でも特異な地位を占めている。特に神経鞘腫，髄膜腫，神経膠腫などを伴なうことが多い。そのうち視神経および視交叉部神経膠腫の合併率は，外国の文献では37.6％（Bürki^4）），21.8％（Marshall^15）），10％（Davis^6））などと高率にみられるのに反し，本邦での合併報告例はきわめてまれである。われわれはR病を伴ない，手術により視交叉部神経膠腫を確認し，いわゆる"Rosenthal線維"を豊富に認めた興味ある1例を経験したので症例を報告し本疾患とこの線維との関連について考察を加えたい。

分裂病様状態を呈した脳底部異常血管網の1例早崎　和也 22巻11号 , 1970年11月 , pp.1319-1323

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はじめに

　内頸動脈の狭窄および脳底部の異常血管網を呈し，種種の神経症状を呈する疾患群が，すでに，多数報告されている^{2）4）7）10）}。しかし，精神症状を主徴とした症例の報告は少ない^{5）8）12）}。われわれは遺伝負因を有し，結婚をきつかけとして精神症状が顕現化し，精神分裂病の疑いという診断で入院，脳血管写によつて内頸動脈サイフォン部狭窄と脳底部に異常網状血管像が認められた症例を経験した。心因反応ないし精神分裂病の診断について考えさせられたので，ここに報告する。

第3脳室上衣嚢胞について—1手術例の報告と文献的検討坂田　一記 , 山田　弘 , 星野　睦夫 , 今村　健 , 松井　順吾 , 高橋　親彦 22巻11号 , 1970年11月 , pp.1325-1332

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はじめに

　第3脳室上衣嚢胞あるいはMonro孔嚢胞と称される疾患は比較的稀なものとされているが，本邦においては特に稀なようである。われわれは最近本症と思われる1例を経験し，これを手術的に治癒せしめ得たので報告し文献的検討を加えたい。

書評

—吉井信夫　慶大・脳神経外科，中央検査科脳波室室長著—図説　脳波検査の実際吉井　直三郎 22巻11号 , 1970年11月 , pp.1311

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　脳波に関しては，日本の学者の手になるものも，外国学者によるものもふくめて，入門，技術，診断，解読，といろいろ特徴のある本が出されている。その上にさらに吉井信夫博士が本書を出版されるには，それなりの理由がある。著者が序文の中でのべているごとく，本書は「複雑な脳の構造と機能についてできるだけ平易に解説するとともに，難解といわれる電気を専門用語を用いず，やさしい言葉で説明し，知らず知らずのうちに脳波計，分析器，計算器などについての知識を得られる」ように書かれており，「著者の経験にもとづき，脳波のとり方，電極とその使い方，雑音とその防ぎ方，賦活法とその要領，脳波検査のコツなど」についても親切に述べられている。たとえば「脳波検査の手続きと記録の管理保存」という項では「脳波検査予約票」というのが示されていて，検査前の患者の服薬のしかたや「乳幼児は検査時に自然睡眠に入れるよう朝早く起こして下さい」などの注意がでている。その他，事務上の手続きから検査室の組織にいたるまで，慶大中検脳波室を例にあげてくわしく説明されている。また脳波検査を要するおもな疾患について臨床的な事項と脳波所見を関連させ，多数の図をみながら具体的に理解し，習得しうるよう工夫されている。検査中の偶発故事とその救急処置や，脳波計については，製品の日本工業規格改正案を資料として付録につけ，脳波用語の説明には国際脳波学会用諮委員会報告を加えていて，要するに読者にとつては大変親切の行きとどいた本である。

—保崎　秀夫・山縣　博　著—器質脳疾患検査法野上　芳美 22巻11号 , 1970年11月 , pp.1337

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　このたび保崎・山縣両氏の「器質脳疾患検査法」が出版された。標題と著者名とから想像されるように，本書は大脳巣症状を主として対象としている。これまでの内科診断学や神経学の教科書には専門家によらない旧来からの記述が踏襲されがちであることは私の常日頃の不満であつたし，この精神神経学の境界領域に関する単行本がわが国にはきわめて乏しく，しかも初心者向けの手引きとなる手頃な書物も皆無に近いので，本書のような形の入門書の刊行は誠に時宜を得たものと感じる。

海外だより

Mayo Clinicから三田　哲司 22巻11号 , 1970年11月 , pp.1334-1336

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　Mayo ClinicのあるこのRochesterは，しばしばニューヨーク洲Rochester （Kodakの会社がある）と間違えられます。私も昨夏，当地に参りますまでは，Ma—yo Clinicが，こんな北の田舎町によるとは，知りませんでした。このRochesterは，人口約55,000，北海道，旭川あたりの緯度に，位置しています。風景もどこか，北海道に似ている様に，当初，思いました。田園都市と云うよりも，田舎町と云つた方がよい位，小さな静かな病院町です。芝生と樹木が豊富で，町の中でも，リスや小鳥が人を恐れず，私達の目を楽しませてくれます。高層建築もなく，19階建のMayo, Clinicが最高で，澄みきつた空に，Mayo, Plummer両Buildingが，つきたつています。ミネソタ州は10,000Lake stateと呼称される湿原地帯で，山らしい山もなく，どちらの方向から，Rochesterに近づいても，まず最初にMayoの建物が目に入ります。この様な辺ぴな所にMayo Clinicがどうして作られ，今，尚，繁栄を続けていることを，不思議に思うこともありました。

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編集後記臺　弘 22巻11号 , 1970年11月 , pp.1338

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　世界精神医学会連合（WPA）の主催による分裂病シンポジウムに出席するため，ソ連で忙しい10日間を過ごした時のささやかな印象を述べてみたい。

　ソ連邦医学アカデミーの精神医学研究所はモスコーにあつて，この国の精神医学の中央研究所的存在であるらしい。ホテルに迎えに来てくれた所員に案内されて研究所を訪ねると，まず所長室に通されて所長から研究所の構成と機能を説明され，それから旧知の研究部長と挨拶をかわした後，案内役の研究室長とたつぷり話し合った。室長は自分の研究室の各部屋を見せてくれてそこの研究者を紹介してくれた。ソ連は階層制のはつきりした国だと聞いていたが，上から下へ段々とおりて行く所は面白いものだと感心した。この研究所は規模が大きいばかりでなく，設備もととのつているようである。

基本情報

Brain and Nerve 脳と神経
22巻11号
(1970年11月発行)

電子版ISSN：2185-405X 印刷版ISSN：0006-8969 医学書院

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