書評
—吉井 信夫 慶大・脳神経外科,中央検査科脳波室室長 著—図説 脳波検査の実際
吉井 直三郎
1
1阪大生理学
pp.1311
発行日 1970年11月1日
Published Date 1970/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406202813
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脳波に関しては,日本の学者の手になるものも,外国学者によるものもふくめて,入門,技術,診断,解読,といろいろ特徴のある本が出されている。その上にさらに吉井信夫博士が本書を出版されるには,それなりの理由がある。著者が序文の中でのべているごとく,本書は「複雑な脳の構造と機能についてできるだけ平易に解説するとともに,難解といわれる電気を専門用語を用いず,やさしい言葉で説明し,知らず知らずのうちに脳波計,分析器,計算器などについての知識を得られる」ように書かれており,「著者の経験にもとづき,脳波のとり方,電極とその使い方,雑音とその防ぎ方,賦活法とその要領,脳波検査のコツなど」についても親切に述べられている。たとえば「脳波検査の手続きと記録の管理保存」という項では「脳波検査予約票」というのが示されていて,検査前の患者の服薬のしかたや「乳幼児は検査時に自然睡眠に入れるよう朝早く起こして下さい」などの注意がでている。その他,事務上の手続きから検査室の組織にいたるまで,慶大中検脳波室を例にあげてくわしく説明されている。また脳波検査を要するおもな疾患について臨床的な事項と脳波所見を関連させ,多数の図をみながら具体的に理解し,習得しうるよう工夫されている。検査中の偶発故事とその救急処置や,脳波計については,製品の日本工業規格改正案を資料として付録につけ,脳波用語の説明には国際脳波学会用諮委員会報告を加えていて,要するに読者にとつては大変親切の行きとどいた本である。
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