Japanese
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特集 パーキンソン病の症候学―新しい視点―
2.Kinesie paradoxale―矛盾運動について
Kinesie Paradoxale-Paradoxical Movement
井関 一海
1
,
福山 秀直
1
Kazumi Iseki
1
,
Hidenao Fukuyama
1
1京都大学大学院医学研究科附属高次脳機能総合研究センター
1Human Brain Research Center, Kyoto University Graduate School of Medicine
キーワード:
Kinesie paradoxale
,
paradoxical movement
,
Parkinson's disease
,
SPECT
Keyword:
Kinesie paradoxale
,
paradoxical movement
,
Parkinson's disease
,
SPECT
pp.739-746
発行日 2006年9月1日
Published Date 2006/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406100391
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はじめに
Kinesie paradoxalの歴史は1921年にSouqes31)により,進行期にあるパーキンソン症候群で重篤な歩行障害のある患者において,歩行が一過性にあるとき急に改善を認めるという症例が報告されたことに端を発する。これらの患者では,あるとき急に走れたり,また障害物を避けて足を高く挙上する,また階段を一段とばして昇る,といった現象を認めることが報告された。また,会話による意思疎通がほぼ不可能な患者においても,あるときには来賓と通常の会話をするといった現象も報告された。これらの現象は一過性の特異な現象としてKinesie paradoxale と命名された24)。
その後,Martin22)によりすくみ足症状(frozen gait)に対しては進行方向に垂直方向の横線や,高さのある立体的な横棒が有効であることが示された。また,パーキンソン病の患者の前に飛んできたサッカーボールをみて駆け出し,それを蹴ることができたといった症例も報告されている3)。これらの現象はKinesie paradoxaleを示しているものと考えられる24)。
Kinesie paradoxaleに対する日本語訳としては矛盾運動という用語が広く用いられている。
この現象について今回は最近の知見をまじえ紹介していくこととする。
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