臨牀透析 38巻7号 (2022年7月発行)

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特集　バスキュラーアクセス-作製・管理・修復の基本方針　2nd Edtion

本扉 38巻7号 , 2022年7月 , pp.673-673

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執筆者一覧 38巻7号 , 2022年7月 , pp.674-674

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序文伊丹　儀友 38巻7号 , 2022年7月 , pp.675-676

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前回『臨牀透析』で「バスキュラーアクセス-作製・管理・修復の基本方針」が故大平整爾先生を中心として発刊されたのは2011年6月の増刊号であった．それから11年が経つ．その年の9月に日本透析医学会から「血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン」も発刊された．その後本邦のガイドラインは改訂されていない．

目次 38巻7号 , 2022年7月 , pp.677-684

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第1章　VAの現状　1　日本のVAの現状と今後の展望川西　秀樹 38巻7号 , 2022年7月 , pp.685-690

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・日本では自己血管内シャント（AVF）が大多数を占めているが，高齢化の影響でAVG，CVC症例が徐々に増加している．またVAIVTの症例数の増加が顕著である．

・各国でVA関連ガイドラインの作成が行われているが，治療形態の変遷に従って改定されてきている．

・診療報酬改定ごとにVA関連点数は変動しており，治療体系への直接的影響が認められる．

第1章　VAの現状　2　いつVAを作製すべきか？花房　規男 38巻7号 , 2022年7月 , pp.691-696

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・アクセス作製時期の決定については，①透析導入が必要となる腎機能，②腎機能の低下速度，③アクセス（血管）の発達に見込まれる時間を考慮する必要がある．

・透析導入が必要となる腎機能はわが国では平均eGFR 5.43 mL/min/1.73 m2であるが，腎不全症候の存在，合併症の存在を考慮する必要がある．

・透析導入時期の推定については，推測式が複数提唱されている．eGFRの低下速度は必ずしも一定ではなく，加速する場合にはAVFが作製できない可能性が高まる．

・血流量，血管径，血管の深さはAVFの発達と関連する因子である．アクセスの発達に関連する因子を考慮し，発達に時間がかかることが予想される場合には，その分早めにAVFを作製する必要がある．

第1章　VAの現状　3　AVF/AVG/CVCのそれぞれの利点と欠点江里口　雅裕 , 鶴屋　和彦 38巻7号 , 2022年7月 , pp.697-705

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・VAの開存率，感染リスク，生命予後はAVF＞AVG＞CVCの順に良好である．

・表在化動脈は日本特有のVAであり，CVCが適応となる患者に考慮されることが多い．

・心機能低下，四肢動静脈の荒廃や末梢循環障害など患者背景によっては，AVF・AVG造設が困難でありCVC・表在化動脈が選択される．

第1章　VAの現状　4　高齢者にとって最適なVAとは大久保　健太郎 38巻7号 , 2022年7月 , pp.706-715

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・感染リスクと開存率を考慮すると，高齢者においてもAVFが第一選択となる．

・AVFは成熟の具合によって，穿刺困難や過剰血流になるデメリットがある．

・高齢化に伴うさまざまな問題点を考慮し，個々に応じて最も負担の少ないVAを柔軟に選択する必要がある．

第1章　VAの現状　5　VAが心臓に与える影響常喜　信彦 , 原田　美菜子 38巻7号 , 2022年7月 , pp.716-721

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・誰でも容易に穿刺が可能で，かつ十分な透析効率を達成しうる内シャントが求められている．

・血流量が豊富であれば，血管の発達もよく穿刺も容易になり，脱血量も確保できる．一方で，そのことは心臓への負荷の代償として成立していることを忘れてはならない．

・高心拍出量性心不全の自覚症状さえなければ，“よい”内シャントと考えてよいのであろうか．今後の検討が必要である．

第2章　VA作製前の準備評価　1　作製前の全身評価今　裕史 , 板倉　恒輝 , 大橋　慶太 , 高橋　遼 , 水上　達三 , 佐藤　文昭 38巻7号 , 2022年7月 , pp.723-728

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・問診による既往歴，上肢や胸部の手術・処置歴の聴取はきわめて重要である．

・動静脈の視診，触診による理学的検査は入念に行い，血管超音波検査にてmappingも行う．

・心臓超音波検査にて心機能の評価を行い，著しい心機能低下を認める場合はAVF，AVGは避ける．

第2章　VA作製前の準備評価　2　血管評価（エコー検査を含めて）飯田　潤一 , 桐木　洋明 , 遠山　康平 , 小林　知弘 , 坂本　和也 , 櫛田　隆久 , 熊谷　文昭 38巻7号 , 2022年7月 , pp.729-738

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・VA作製のための血管評価の時期は，病態により異なる．

・視診と触診，術前血管エコ-，術前造影を駆使して血管評価を行う．

・血管評価にて手術成功率が50％以上ある場合は，前腕中央部までのAVFを選択する．

第3章　AVF作製と管理の実際　1　AVFの部位選択，AVFの標準法と変法春口　洋昭 38巻7号 , 2022年7月 , pp.739-745

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・糖尿病性腎症や高齢者の増加により，AVF作製が困難となることがあるが，可能なかぎりAVFを作製することが望ましい．

・標準的なAVFとして，前腕橈側，前腕尺側，前腕肘窩部のAVFがあるが，可能なかぎり末梢で作製するのが望ましい．

・静脈を転位して作製する変法は，標準的な作製が困難な場合に有用である．

第3章　AVF作製と管理の実際　2　AVF作製と一次閉塞を防ぐ方策池田　潔 38巻7号 , 2022年7月 , pp.746-752

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・超音波によってAVF作製のための動静脈を十分に観察してから，デザインを考慮する．

・パラシュート法の利点について理解し，狭窄のない，過剰とならないAVFを作製する．

・十分な薬物による一次開存を支持するデータは存在しない．

・一次閉塞予防のためのモニタリングが重要である．

第3章　AVF作製と管理の実際　3　AVF周術期対策副島　一晃 , 江口　剛人 , 板井　陽平 , 早田　学 , 神吉　智子 38巻7号 , 2022年7月 , pp.753-762

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・AVF作製術を日帰りで施行するとき，認知機能が低下した患者の場合は，術前に十分な説明と同意を得たうえで，手術中に患者が不穏状態になった場合の鎮静の体制を確保して手術に臨む必要がある．

・患者の病歴により内服薬の必要性が異なるので薬剤別に統一した調整は困難で，患者ごとに細やかな調整が必要である．

・手術中，患者は，不安や緊張が極度に高まった状態で手術に耐えている．手術室での看護においては患者の状態をたえず観察し患者の訴えに耳を傾け，患者が安心して手術を受けられるように支援することが重要である．

・AVF作製術は清潔手術に分類され，予防的抗菌薬投与は皮膚常在菌をターゲットとした術前投与が推奨される．血流再開後の動脈スパスムに対しては補液やヘパリン投与で対応し，術後の出血に対しては，丁寧な結紮止血操作を行い「完全な止血」状態を達成する．

第3章　AVF作製と管理の実際　4　AVF再循環の評価と対応北野　泰佑 , 森下　義幸 38巻7号 , 2022年7月 , pp.763-769

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・理学的所見や超音波検査に加え，実血液流量や再循環率の測定はVAの機能評価の一助となる．

・再循環率を積極的に測定することは，シャントの代表的なトラブルである血管狭窄のスクリーニングともなりうる．

・個々の透析施設の設備やマンパワー，患者数に応じた再循環率のモニタリングを提案する．

第4章　AVG・動脈表在化作製と管理の実際　1　AVGの作製方法/マテリアル久木田　和丘 , 杉山　昂 , 谷山　宣之 , 熱田　義顕 , 佐藤　正法 , 服部　優宏 38巻7号 , 2022年7月 , pp.771-776

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・AVGは透析患者の高齢化，糖尿病性腎症の増加あるいは透析期間の長期化により次第にその使用が増加している．

・移植後にもカテーテル透析あるいはアクセスロスにならないよう，インターベンション治療などを加えながら長期の開存を図る必要がある．

第4章　AVG・動脈表在化作製と管理の実際　2　AVGを長く開存させるために小鹿　雅隆 38巻7号 , 2022年7月 , pp.777-782

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・AVGは近年ますます重要となっているが，合併症も多いため人工血管の特性を理解した管理が重要である．

・とくに感染対策，流出路狭窄対策が長期使用のために重要となる．

・今後新たな治療デバイスの普及により開存率の向上が見込まれる．

第4章　AVG・動脈表在化作製と管理の実際　3　AVGのトラブル管理深澤　瑞也 38巻7号 , 2022年7月 , pp.783-789

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・臨床的にグラフト感染を疑った場合は，タイミングを逸さず加療を行う．

・感染の広がり確認に体表超音波検査が有効である．

・人工血管に感染が及んだ場合には，外科的に感染部を除去する必要がある．

・非感染性合併症には屈曲，血清腫，瘤形成，狭窄・閉塞がある．

・狭窄に対してはナイチノール製ステントにe-PTFEを接着させた人工血管被覆ステントが認可された．

第4章　AVG・動脈表在化作製と管理の実際　4　動脈表在化の方法・管理佐藤　暢 38巻7号 , 2022年7月 , pp.790-795

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・動脈表在化は低心機能患者などのVAに採用される．

・末梢循環不全を予防するために上腕深動脈，上尺側側副動脈は温存する．

・上腕動脈の剝離の際には並走する正中神経の走行に注意する．

・穿刺しやすく合併症をきたしにくいように，十分配慮してデザイン・表在化する必要がある．

第5章　穿刺法と管理の実際　1　アクセス穿刺と消毒秋葉　隆 38巻7号 , 2022年7月 , pp.797-802

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・穿刺時には，バスキュラーアクセスの状態を「見て」「聞いて」「触って」異常のないことを確認する．

・動脈側穿刺では血管走行，深さ，太さ，硬さなどを確認して，穿刺針の先端位置を決定する．静脈側穿刺は再循環を避けるため動脈側とできるだけ離して穿刺する．

・穿刺針と血液回路の接続時には，抜針事故や回路離脱のないように穿刺針の固定，血液回路の接続・固定に注意を払う．

・抜針事故は圧倒的に静脈側に多いので，ループ固定法等の工夫をする．

・穿刺前の皮膚消毒，カテーテル挿入時および維持中の皮膚消毒は，CHG含有アルコール製剤が推奨される．

・透析用カテーテルを回路に接続する時に使用する消毒薬は，カテーテルの材料に適合したものを用いる．

第5章　穿刺法と管理の実際　2　穿刺管理高橋　孝幸 , 前波　輝彦 38巻7号 , 2022年7月 , pp.803-811

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・VA穿刺の前には，必ず理学所見でVAを評価する．シャントトラブルスコアリングも有用である．

・AVFの吻合部近傍への穿刺や同一部位への頻回穿刺を避け，広い範囲を使用するよう心掛ける．

・AVGは「線で刺さずに点で刺す」ことを意識して瘤形成しないように注意する．

・AVGの感染は敗血症に至りやすく非常に危険であるため，直ちに専門施設へ紹介する．

・穿刺困難例や表在化動脈穿刺では，超音波ガイド下での穿刺を推奨する．

第5章　穿刺法と管理の実際　3　ボタンホール穿刺法の利点と問題点新里　高弘 , 當間　茂樹 , 柴田　和彦 38巻7号 , 2022年7月 , pp.812-819

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・ボタンホール穿刺はアクセス血管の寿命を延ばす．

・ボタンホール穿刺を長く続けると穿刺部は隆起し，隆起の頂上には拡大したボタンホールトンネルの開口部が認められるようになる．

・穿刺部が隆起型変形に陥った場合のアクセス血管感染のリスクは，穿刺部が平坦であった場合のリスクの5.369倍（p＜0.0085）であった．

・穿刺部の隆起型変形は，抜針後の湿潤療法や穿刺前における穿刺部へのエムラクリームの塗布によって防ぐことができる．

・一部の患者でボタンホールトンネルから黄色ブドウ球菌あるいは表皮ブドウ球菌が検出された．

・次の仮説が導ける．ボタンホール穿刺部が隆起性に変形すると，時にこの部位に細菌がコロニーを形成する．そのような状態において，なんらかの理由で生体の防御力が低下するとアクセス血管感染症が成立する．

第5章　穿刺法と管理の実際　4　エコー下穿刺の実際と問題点佐藤　純彦 , 佐久間　宏冶 , 内海　展子 , 川鍋　雄司 , 本庄　美恵子 , 石塚　俊治 38巻7号 , 2022年7月 , pp.820-828

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・高齢化や糖尿病性腎症など血管が荒廃し穿刺困難な症例が増加しており，エコー下穿刺の有用性も増している．

・長軸法，短軸法を上手く組み合わせた安全，確実な穿刺が，VA長期使用に際して重要である．

・VAトラブル（閉塞や狭窄などの血流不全）に際しても，エコー下穿刺により脱血・返血が可能な場合も多い．

・エコー下穿刺により穿刺技術や想像力の向上が図られるが，エコーに頼りすぎず自分の「手」に自信をもつよう心がけたい．

第6章　AVF/AVG作製・PTA時の麻酔松田　浩明 38巻7号 , 2022年7月 , pp.829-835

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・バスキュラーアクセス関連手術に対する区域麻酔では，上腕の手術には腕神経叢ブロックの鎖骨上アプローチが，前腕の手術には同ブロックの腋窩アプローチが適応となる．

・腋窩アプローチでは，前腕術野の皮膚知覚神経である，筋皮神経，内側前腕皮神経，橈骨神経の選択的ブロックが有効かつ肝要である．

・PTA時の麻酔には，治療対象となる橈側皮静脈領域の皮膚知覚を麻酔する筋皮神経ブロックが有用である．

第7章　カテーテル挿入と管理の実際　1　カテーテルの挿入方法/部位/種類宮田　昭 38巻7号 , 2022年7月 , pp.837-844

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・近年の透析患者の高齢化と糖尿病性腎症増加に伴い，心機能低下，ADL低下，血管荒廃症例が増加し，自家動静脈内シャント・人工血管内シャントの設置と維持が困難な症例が増加しつつある．

・長期留置カテーテルはこれらの症例に対するバスキュラーアクセスとして増加傾向にある．

・長期留置カテーテルには多くの種類があり，それぞれに特徴を有するが，本法の目的に照らすと，血栓形成など閉塞の可能性が低い，感染をきたしにくい，構造的に丈夫で長期にわたって破損しにくいなどが性能として要求される．

・埋植手技は比較的容易であるが，一定の設備と手技に慣熟した術者・スタッフが必要であり，万一の術中合併症に対処できる準備が必要である．

第7章　カテーテル挿入と管理の実際　2　カテーテル管理・血栓/脱血不良野口　智永 38巻7号 , 2022年7月 , pp.845-851

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・カフ型カテーテル出口部は直接石鹼洗浄・シャワー浴を行う．

・脱血不良には適切な対処を行い，入れ替え術を回避するように努力する．

第8章　VA関連感染症と対策・治療　1　カテーテル関連感染症―予防と治療廣谷　紗千子 38巻7号 , 2022年7月 , pp.853-864

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・2011年刊行の本邦・米国ガイドラインでは基本的操作，カテーテル感染の段階的検討法，感染の部位別対処法などが示されている．

・近年刊行された「透析施設における標準的な透析操作と感染予防に関するガイドライン（五訂版）」に示された手順・処置につき，各施設で最適な方法を考案する．

・感染が起こってしまった場合は，「JAID/JSC感染症治療ガイドライン2017-敗血症およびカテーテル関連血流感染症」を参照することにより抗菌薬を選択し，前向きに治療することが可能である．

第8章　VA関連感染症と対策・治療　2　AVF/AVG感染について―予防と治療兵藤　透 , 柴原　伸久 , 石井　大輔 , 中倉　兵庫 , 吉田　一成 38巻7号 , 2022年7月 , pp.865-871

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・2017〜2020年の欧米4団体のガイドラインからの追記事項を記した．

・MRSAの存在する施設や保菌者も多いことから，AVG作製に際し，術前のバンコマイシンやテイコプラニンの周術期の予防的抗生剤静注投与が推奨されている．

・ボタンホール穿刺を行っている症例では，感染の，いわば遠隔転移による合併症（心内膜炎，脊髄膿瘍，細菌性関節炎など）も考慮する．

・Fall-back technique（頼みの綱，最後の拠り所の手技）として上腕動脈を結紮して感染グラフトを除去する方法が紹介されている．末梢虚血による影響が避けられる症例に限られる．

第9章　患者教育・看護　1　患者教育―VAの発達，保護，日常管理について松岡　哲平 38巻7号 , 2022年7月 , pp.873-882

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・バスキュラーアクセス（VA）には，自己血管内シャント（AVF）・人工血管内シャント（AVG）・動脈表在化・カテーテル（一時的静脈カテーテル・長期留置型カテーテル）があり，それぞれに特有の合併症がある．

・合併症に至ることなく，継続して必要な透析量が得られるよう，日頃から十分に管理する必要がある．

・適切な管理には患者自身がVAに関心をもち，VA管理の必要性を理解する必要があり，医療者は患者にわかりやすく教育しなければならない．

第9章　患者教育・看護　2　患者教育（血管アクセスケアを含めて）―看護師の立場から片村　幸代 , 増田　めぐみ , 門嶋　洋子 38巻7号 , 2022年7月 , pp.883-890

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・小児，成人，高齢者など患者の背景に応じ，心理的プロセスを察知して関わることが必要である．

・VAトラブル・合併症を念頭に，異常の早期発見に努める．

・患者の自己管理では日常的に「視る」「聴く」「触る」ことを指導する．

第9章　患者教育・看護　Column　在宅血液透析の自己アクセス管理鈴木　一裕 38巻7号 , 2022年7月 , pp.891-892

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近年，在宅血液透析（HHD）患者数は増加してきており，2019年末で746名の患者がHHDを受けている．HHDの最大のメリットは，施設透析では月14回に制限されている透析回数に限度がなく，週当りの透析回数を増やせることである．頻回透析は生命予後改善が報告されており，透析前リン値や体重コントロールが容易になることから，食事や飲水制限が大幅に緩和される．透析回数が判明しているHHD患者588名中489名が隔日透析以上の透析を受けており，191名のHHD患者が週5日以上の頻回透析を受けている．透析回数増加によるメリットは大きいが，頻回透析では頻回の穿刺によるシャントの荒廃という問題が発生し，シャント狭窄や閉塞リスクも上昇する可能性がある．シャント感染に関しては，穿刺時の適切な消毒や穿刺手技の徹底，頻回透析による全身状態改善と免疫力向上で感染リスクは高まらないといわれている．また，穿刺による疼痛は大きな問題であり，疼痛を軽減するためにボタンホール穿刺や長期留置カテーテルによる透析も行われてきている．

第10章　VAトラブルの管理・対策　1　AVG/AVFモニタリング三輪　尚史 , 櫻井　寛 , 桃原　啓介 , 板倉　正幸 , 坪井　正人 , 佐藤　隆 38巻7号 , 2022年7月 , pp.893-900

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・超音波機器の発達によりVA超音波検査件数が近年全国的に増加している．しかしどの施設も独自の手法で行っており統一した見解は得られていない．

・当院ではAVF，AVGともに一定の基準値を用いて超音波検査を行っている．各施設が熟考し，さらなるVA超音波検査の発展が期待される．

第10章　VAトラブルの管理・対策　2　PTAの基本とカテーテルの選択佐藤　隆 , 森脇　総治 , 坪井　正人 38巻7号 , 2022年7月 , pp.901-912

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・本邦では多種多様な血管拡張用バルーンカテーテルが市販されている．

・バルーンカテーテルの選択に際しては，その拡張特性，カテーテル特性を考慮し，治療対象病変に適するデバイスを選択することが重要である．

・新たなPTA関連デバイスの登場は，今後の治療成績向上に大きく貢献する可能性がある反面，医療経済的負担を考慮した慎重な使用が必要とされる．

第10章　VAトラブルの管理・対策　3　狭窄/閉塞（PTAの方法）清水　泰輔 , 佐野　達郎 , 安部　望 , 肥田　徹 , 小川　智也 38巻7号 , 2022年7月 , pp.913-930

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・透視下およびエコーガイド下における狭窄および閉塞病変に対するPTAの概要について記した．

・2020年に新規デバイスとしてステントグラフトや薬剤塗布バルーンカテーテルが相次いで登場し，PTAに新たな展開が期待されている．

第10章　VAトラブルの管理・対策　4　狭窄・閉塞（外科的方法）矢野　健太郎 , 土田　健司 38巻7号 , 2022年7月 , pp.931-937

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・長時間経過している血栓性閉塞や，血栓量が多い症例に対しては，PTAと外科的血栓除去術の併用を考慮する必要がある．

・高度石灰化狭窄に伴う血栓性閉塞は，血管の蛇行や瘤化を伴うことも多く，PTAでの治療に難渋することも多いため，外科的再建の選択が賢明と考える．

・肘下から深部静脈へ交通しているシャントにおいては，PTAを行っても，その蛇行により十分な拡張が得られないことが多く，静脈-静脈バイパスの良い適応と考えられる．

・患者にとって安全で負担の少ない手技を第一に考え，必要に応じて外科的治療の介入や併用を考慮すべきである．

第10章　VAトラブルの管理・対策　5　瘤/血清腫室谷　典義 38巻7号 , 2022年7月 , pp.938-944

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・シャント瘤には，緊急を要するものと，準緊急のものと，経過をみてよいものがある．

・血清腫はe-PTFEグラフトのA側吻合部に生ずる腫瘤様病変である．エコー上は，均質な腫瘤として描出される．治療は腫瘤部をグラフトとともに除去し，ポリウレタングラフトに置換する．

・①切る，②剝がす，③縫う，④結ぶ，という四つの操作の組み合わせを，基本に忠実に順序よく滞りなく行うことが手術の極意である．

第10章　VAトラブルの管理・対策　6　静脈高血圧番匠谷　将孝 , 川西　秀樹 38巻7号 , 2022年7月 , pp.945-950

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・静脈高血圧症とは，内シャント肢において，中枢側の静脈狭窄・閉塞に伴い，シャント血流の静脈還流不全が生じる病態である．

・静脈高血圧症の診断には，超音波検査，血管造影検査，もしくはCT angiographyによる病変部位の特定が必須となる．

・静脈高血圧症の治療は，経皮的シャント血管拡張術が第一選択であるが，治療困難症例では，外科的治療を選択する．

・静脈高血圧症は，治療後の再狭窄により再発する可能性が高いため，定期的なシャント肢のモニタリングが必要不可欠である．

第10章　VAトラブルの管理・対策　7　スチール症候群長沼　俊秀 , 武本　佳昭 , 黒木　慶和 , 内田　潤次 38巻7号 , 2022年7月 , pp.951-956

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・スチール症候群の診断は，症状と客観的評価を統合して行い，他の原因によるものと鑑別を行う．

・動脈硬化や末梢循環障害をベースにもち末梢血管抵抗の高い患者は潜在的にスチール症候群発症のリスクをもつ．

・シャントの過剰流量はスチール症候群のリスクである．

・スチール症候群に対する手術は多くの術式が考案されているため，個々の症例において最適な術式を選択する必要がある．

第10章　VAトラブルの管理・対策　8　過剰血流野島　武久 , 本宮　康樹 38巻7号 , 2022年7月 , pp.957-968

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・過剰血流内シャントでは，必要をはるかに上回る短絡血流量により循環動態の許容を凌駕した状態となる．

・症状は，高拍出性心不全，不整脈，息切れ，静脈高血圧症，スチール症候群や全身のスチール現象が引き起こされる．

・正確な診断と状況に応じた適切な治療が求められる．

・血流抑制手術では，開存性を損なうことなく長期にわたり安定した血流量となる治療介入が必要となる．

第10章　VAトラブルの管理・対策　9　中心静脈狭窄症および閉塞症堀田　祐紀 , 役田　洋平 , 名村　正伸 , 池田　正寿 38巻7号 , 2022年7月 , pp.969-980

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・透析時に返血圧の上昇，静脈高血圧，透析肢の高度な腫脹・痛みなどが認められた場合には透析シャントの中心静脈狭窄症あるいは閉塞症を疑い，シャントの血管エコー・血管造影・MDCTにより診断する．

・透析シャントの中心静脈病変に対しては血管内治療（PTA）が第一選択とされるが，その適応および禁忌を十分に熟知することが必要である．

・中心静脈病変のPTAではバルーン拡張術を基本とするが，バルーン拡張後の急性血流障害，短期間に繰り返す再狭窄病変あるいは長い慢性完全閉塞病変ではステント留置が行われる．

・中心静脈病変にステントを留置する際には，病変部位および狭窄形態により自己拡張型ステントとバルーン拡張型ステントの使い分けが必要である．

・中心静脈病変に対するPTAの一次開存率は必ずしも良好ではないが二次開存率は良好であり，繰り返しPTAを行うことでシャント血管の長期温存が可能である．

第10章　VAトラブルの管理・対策　10　アクセス関連疼痛後藤　順一 , 高橋　宏明 , 堀江　卓 , 小野寺　一彦 , 目黒　順一 , 米川　元樹 38巻7号 , 2022年7月 , pp.981-986

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・アクセス関連疼痛の治療のためには原因を特定することが重要であり，詳細な聴き取りや診察，検査が必要である．

・対処としてまずは鎮痛薬や局所処置を行い，改善できない場合や原因が特定できる場合には手術的治療も考慮する．

・時に難治性のアクセス関連疼痛もあり，丁寧な診断，治療が必要である．

第11章　VA関連事故安藤　亮一 38巻7号 , 2022年7月 , pp.987-994

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・VA関連事故としては，抜針事故がもっとも多く，重篤な事故となる可能性が高く，穿刺・止血での事故が次いで多い．

・VAカテーテル留置時の事故，VAカテーテル抜去時の空気塞栓症は頻度は多くないが死亡につながることがある．

・抜針事故は患者の高齢化および接続部離断事故の減少に応じて増加傾向で，患者の高齢化に伴う認知症が自己抜去の第一の原因である．

第12章　小児におけるVAおよびVA形態と予後幡谷　浩史 38巻7号 , 2022年7月 , pp.995-998

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・可能であればAVFが小児でも第一選択であるが，患者要因，治療期間，術者の経験などを考慮して決定する．

・10〜15歳の患者の2/3でCVCが選択されている一方，小さい体格に適したCVCの選択肢が少ない．

・感染合併症はCVCに多く，その多くは敗血症を合併する．

第13章　VAの形態と死亡率・合併症伊丹　儀友 , 高崎　恵美 , 山下　直哉 38巻7号 , 2022年7月 , pp.999-1005

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・バスキュラーアクセス（VA）には自己血管使用皮下動静脈廔（AVF，内シャント），人工血管使用皮下動静脈廔（AVG，人工血管），中心静脈カテーテル（CVC）がある．

・VAのなかでは一番耐用が長く，感染症が少なく死亡率も少ないとされるAVFが第一選択肢とされる．

・AVFは透析患者の高齢化に伴い，成熟しない率が増加している．

・高齢患者では予後を考慮するとAVG使用も選択肢となる．

・CVCの使用は透析導入初期の死亡率に関連している可能性がある．

索引 38巻7号 , 2022年7月 , pp.1006-1010

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奥付 38巻7号 , 2022年7月 , pp.1011-1011

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臨牀透析
38巻7号
(2022年7月発行)

電子版ISSN：2433-247X 印刷版ISSN：0910-5808 日本メディカルセンター

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