臨牀透析 34巻8号 (2018年7月)

特集 透析患者の余暇とレクリエーション

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余暇とは,義務から解放され,自由に楽しむ時間であり,活動である.休息や気晴らしであるとともに,自己を豊かにする価値あるものである.透析患者は一般人口に比べ身体活動度も運動機能も低下している.透析患者が余暇を楽しむことは,健康の向上と豊かな人生につながるであろう.透析患者と余暇に関する研究報告はまだ少なく,今後の発展が期待される.

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日本は経済成長に伴い所得水準が向上し,生活も豊かになった.また,人々の価値観の多様化によって生活は物質的な豊かさから心の豊かさへとシフトし,余暇活動に対する意識も変容した.よって,余暇活動は自由な時間といった消極的な捉え方ではなく,生活をより豊かにするための必要不可欠な積極的な時間として捉えられるようになった.その結果,余暇活動は多種多様化し,大型化していった.本稿では,前半は余暇活動の種類とどのような余暇活動が好まれているのかについて概観し,後半は高齢者のレクリエーション活動およびその有用性について,筆者らの事例を含めて若干の考察を加えた.

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透析患者は日常において週3 回の通院,1 回4 時間以上の治療という時間的拘束と体力的負担を抱えている.そのなかで患者がQOL を向上させ,心身ともにより健やかに過ごすために余暇・趣味を楽しむことは重要な要素である.とくに高齢の患者ほど「スポーツ・運動(体を動かすこと)」を趣味としていると今回実施したアンケートで明らかになった.これを受けて昨今活発化している「腎臓リハビリテーション」のさらなる導入が期待される.

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余暇活動は,高齢者の身体機能の低下や認知機能の低下を予防する,うつ症状を軽減する,QOL を高めるなど,心身の健康への好影響が報告されているが,余暇活動による健康影響は男女や余暇活動の種類によって異なる可能性がある.さらに,活動頻度に関しては頻繁な活動よりも中程度のほうが,活動の自主性に関しては義務的な活動よりも自主的な活動が,健康への恩恵が大きいようである.介護予防や生きがい・健康づくり対策の一環として,余暇活動が推進されているが,本人の自主性を尊重したうえで,性に合った種類の余暇活動を適度な頻度で行えるよう活動支援を行うことが,健康長寿社会の実現につながる可能性がある.

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運動をはじめとした身体活動の多寡が,透析患者の予後に影響することが明らかになってきている.さらに,身体活動を高く保つことは,抑うつなどの心理的健康の悪化も防ぐ.とくに,余暇での運動・スポーツは,心理的な健康効果が高い.これは楽しさや達成感,人とのつながりといった心理社会的な要因によると考えられる.透析患者において,身体活動を高く保ち,座りすぎの生活習慣を見直すことは,心身の健康増進にとって大きな意味がある.一方,透析患者は運動習慣がなく低体力のことが多い.そのような場合は,ストレッチなどの低強度の運動から始め,徐々に歩数を増やすなど工夫することで,健康寿命を延ばし,QOL の維持向上に役立つと考えられる.

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CKD 患者は,高齢化や運動不足に加えて,尿毒症物質の蓄積,アシドーシス,炎症性サイトカインなどのためフレイル・PEW(protein energy wasting)をきたしやすい.運動耐容能の低下やフレイル・PEW はQOL や生命予後に大きな影響を与える.透析患者への運動療法は,最大酸素摂取量の増加,心機能改善,骨格筋線維の増加,血圧低下,血清脂質改善,PEW の改善,透析効率改善,ADL やQOL が改善するなどの効果を有する.運動様式としては,血管シャントや腹膜カテーテルの感染や圧迫に十分注意を払う必要があり,相手と接触するスポーツは避け,ウォーキングを中心とした有酸素運動,レジスタンストレーニング,柔軟体操が基本である.今後の腎臓リハビリテーションの普及・発展が期待される.

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音楽療法は代替療法として,広い分野で導入されてきているが,アメリカと比較し,日本は保険診療や音楽療法士の育成の部分で後れをとっている.音楽療法の効果は多岐にわたるが,統計学的リサーチは困難で,エビデンスレベルは高くはない.しかし実際に目にする効果は論文では表現しきれない.今後,多くの日本の医療領域に音楽療法が導入されることを望む.

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本稿では,旅行が身体,心理に与える影響とCKD(chronic kidney disease)患者のリスクについて,旅行者血栓症,高山病,旅行者下痢症,時差症候群に関連し述べた.CKD は旅行者血栓症の高リスクで,発症頻度はeGFR(estimated glomerular fi ltration rate)の低下や尿蛋白の増加に相関する.高地環境はCKD の増悪を促進する可能性があり,尿蛋白増加や末期腎不全は高山病のリスクで,透析患者では肺水腫のリスクが高まる.旅行者下痢症はCKD 患者では,免疫能低下から重篤化しやすく,透析患者はバスキュラーアクセス閉塞,CVD(cardiovascular disease)イベント,脳卒中など続発症の高リスクである.時差によるサーカディアンリズムの不調は,高血圧やCVD イベントと関連する.これらからCKD 患者の旅行は一般患者と比較しハイリスクと考える.

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日本は海に囲まれ,美しい山々の樹葉の森林,湖畔と河川の恵まれた自然環境が各地にあり,そのなかに数多くの温泉が湧き出している.日本の温泉法では温泉は湯温が摂氏25 度以上か,または規定された物資を溶存するものと定められている.温泉は,神々の時代から霊妙な効能が知られている.透析患者が温泉地に旅行したいという心理になるためには,透析管理を確実に行うとともに,安全な温泉旅行ができるように日々の自己管理が重要である.そして宿泊先医療機関の連絡先の把握や透析情報手帳を持ち歩くなどの準備も大切である.透析患者は,一般健常者にはない身体的ストレス環境にある.温泉地への旅行により,転地療養効果と温泉効果によって,相乗的な温泉医学的効果が得られる.さらに,高齢化対策の一環として,地域の健康づくりとしての活用も試みられており,温泉を利用した医療費,介護費軽減などの社会的効果も期待される.

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筆者は透析病院予約代行専門業者の代表取締役(47 歳)であり,7 時間透析を週3 回通院にて受ける透析歴10 年の患者でもある.年間160 回の透析のうち,毎年約30 回が旅行透析である.当社で雇用している社員は全員透析患者で,日本全国4,350 カ所の透析施設の95 %以上に電話取材を3 年がかりで実施,旅行透析に必要な透析実施時間帯や曜日,対応外国語の情報を完全網羅,データ化した.よって日本全国とアジア圏を中心とした透析施設の予約代行が当社のおもな仕事である.筆者や社員自ら日本全国・アジア15 カ国の観光地で旅行透析を体験しながら,安全な透析施設を開拓し,患者の皆さんに紹介してきた.水質が不安な国や透析施設には,会社の顧問でもある楢村友隆氏(東亜大学准教授,専門:透析液)にフィリピンやミャンマーなどへ同行いただき透析室の水質検査も実施している.高齢の患者のなかには,アジアはまだ後進国といった先入観をもった人が多いが,実際に透析体験を多々してみると,十分に良質で安全な透析医療を受けられること,施設によっては日本以上の高いホスピタリティがあることや日本の透析とは大きく異なる点などがわかった.もちろん,施設によってはトラブルを経験したこともある.事前に情報収集をして,施設の選択はしっかりしておくことが重要である.

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囊胞感染に対するドレナージ術は治療的かつ診断的に重要なアプローチの一つである.その際,明確なターゲット囊胞の局在診断が大前提である.しかしautosomal dominantpolycystic kidney disease(以下,ADPKD)患者は多臓器に多数の囊胞が存在し,ターゲット囊胞の同定に苦慮することがある.CT では同定できなかったが,別目的に行った心エコーで治療ターゲットが決定したADPKD の肝囊胞感染例の画像を中心に紹介する.

腎不全とともに生きる患者および家族へのナラティブ・アプローチ

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A さんは,80 代女性.50 代に慢性糸球体腎炎で血液透析を導入した.導入時はまだ事務員として勤務しており,夜間透析を開始した.娘が1 人いたが家庭があって,A さんは一人暮らしであった.60 代で脳出血を起こし,左半身麻痺となった.これまでの自宅を手放して病院近くに引っ越し,介護保険を利用しながら杖歩行で外来通院し,自宅での生活を継続していた.数年前に自宅で転倒して左上肢骨を骨折し入院した.リハビリテーションに励み再び自宅での生活を送れるようになったが,自宅以外では車椅子を利用しての生活となった.今回,妹の体調不良を心配して,A さんは体調を崩し,入院生活となった.

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Helicobacter fenneliae(以下,HF)は腸管内棲息菌であり,おもに免疫不全患者に消化器症状や敗血症を起こすことが知られている.また,本菌の培養には時間を要することが多く,かつその発育を確認しにくい問題がある.いうまでもなく抗菌薬投与前の血液培養は重要であるが,HF 感染を疑うような症例では培養期間を最低でも5 日以上設けることも重要である.本症例は透析患者にHF 感染症を認めたまれな症例であり,若干の考察を含めて報告する.

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当院では全入院患者の持参薬鑑別を行っているが,残薬の日数が合わないことや,薬袋の日付が古い薬もある.処方薬は透析患者にとって,病状の安定や合併症の予防のために大切である.しかし薬が服用しにくいと,入院中は看護師の与薬により服薬していた場合でも,退院後に自己判断で服薬を中止することも推察される.そのため,入院中に服薬に関する問題点を解決する取り組みが望まれる.

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目次

投稿規定

次号予告

編集後記

基本情報

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臨牀透析
34巻8号 (2018年7月)
電子版ISSN:2433-247X 印刷版ISSN:0910-5808 日本メディカルセンター

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