臨牀透析 34巻11号 (2018年10月)

特集 透析食の調理者と透析患者

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栄養素はmacronutrient(たんぱく質・脂肪・炭水化物)とmicronutrient(電解質・ミネラル・ビタミン)に分けられる.透析患者では,十分なたんぱく質の摂取とともに,十分なエネルギーの摂取が低栄養状態・消耗状態の抑制のために必須である.一方,電解質・ミネラルについては,ナトリウム,リン,カリウムの摂取を考慮することが必要である.ナトリウムは透析間の体重増加と関連する.リンは時間依存的に透析で除去されるが,一般的にはリン吸着薬によるコントロールが必要である.カリウムについては高齢者の低カリウム血症に注意する必要がある.水溶性ビタミンは透析で除去されるため,補充も考慮されるが,その適正な投与量は明らかになっていない.

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透析患者の食事療法は,生活環境などの違いの影響を受けやすく,対象者に応じた栄養指導が必要である.都会においては1 世代家族が多く協力者が少ないことや,通勤時間などの影響を受けることを考慮した取り組みが求められる.そのためには,調理を行うことを前提とせず,中食や宅配食などをうまく活用することが必要である.また,透析導入期においては,保存期からの変更点,とくに適切なたんぱく質摂取量の意味について,血液データなどを示したうえでの指導も重要である.

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交通の便のよい市街地に,同年代である70 歳代後半の妻と2 人で住む透析歴9 年の高齢血液透析患者が,近隣に住む高齢者コミュニティーや長女家族と共生し,自身の老齢化に応じながら,「しっかり食べる」食事療法を実践・継続するために栄養指導を行った.地域で入手可能な宅配弁当の一覧表や無塩食パンなどの情報提供を行い,近所からのいただきものの上手な使い道や手抜き料理のレシピ,米飯のリンやカリウムの簡単な減量方法,経済的制約による摂取食品の偏りへの対策などの工夫とポイントを,患者の生活背景,生きがい,経済状況等を考慮しながら行った栄養療法のアドバイスを,他症例の経験も含めて紹介する.

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50 歳代,男性,元漁師.高血圧性腎臓病と糖尿病による末期腎不全となった.居住地は離島であり,血液透析施設がなく腹膜透析を選択した.腹膜透析の離脱は住み慣れた土地からの転居を意味する.独居で中食利用が多く,可能な範囲で食事療法を行うことになった.資料による栄養指導では効果があまりなく,半年後には著明な体重増加と浮腫がみられた.配食サービスは離島のため利用回数が限られ,本人への栄養指導の強化が必要であった.調理実習を実施したところ,積極的に参加し,会話もできるようになった.その後も指導を続け,血液透析移行までの3 年7 カ月間腹膜透析を継続できた.患者に合わせた指導法を試行錯誤・実践することが重要である.

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食事を生きていくためのものとして捉えるか,楽しみとして捉えるか 内閣府の食育ガイドの最初には「食べることは生きること」と書かれている.人間の体は食べたものから作られている,そう考えれば透析患者に限ったことでなく,人間が食事をすることは生きていくためである.そして治療に必要な食事療法は,「療法」と付いていることでもわかるようにキュアである.しかし,食事は人間にとってそんなに簡単に割り切れるものではない.人間には感情があり,食事によって食欲が満たされ,さらに家族や友人などと一緒に食事することで心の満足感や楽しみを得るという精神的な側面がある.また,季節ごとの行事やお祝いの日に食べる行事食などはただ食べるためでなく,家族の幸福や健康を願い,自然の恵みへの感謝など社会的な側面をもっている.

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介護者自身が高齢となり,PD 療法という新たな手技を覚えながら認知症家族の介護を行うことはかなりストレスが大きいと考えられる.高齢者夫婦のみの世帯が増えており,子供には迷惑をかけたくないという思いから,一人ですべてを抱え込んでしまうことも多い.患者に何が負担になっているかを洗い出し,多職種がチームで関わり,負担軽減のための療養支援を行うことはQOLと療養の質の向上につなげることができると考える.患者自身の想いをしっかり傾聴し,家族の協力,地域と連携しながら情報を共有することが重要である.

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血液透析患者において,単独世帯は増加傾向にある.都市部に近い場所に住んでいる男性独身患者においては,利便性から外食中心の食生活となり,塩分・水分の過剰摂取が原因で体重増加過剰をきたしてしまう場合がある.今回,6 カ月間の継続的な栄養指導と透析室看護師による確認により,外食中心の食生活のまま塩分・水分コントロールが改善された1 症例を提示する.一方,単独世帯の透析患者は,食事準備や移動の負担から容易に食事摂取量が低下することもあり,本人の受け入れられるタイミングでの中食・宅配食の情報提供も必要である.

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小児PD 患者の栄養管理は,成長を考慮した適切なエネルギーや栄養素を摂取することが重要である.食事療法は長期間に及ぶため,成長に合わせた身体計測,検査所見や食事摂取状況などを利用して定期的に栄養評価を行う必要がある.基本は健常児と同じ食事摂取基準を遵守するが,リンや塩分の過剰摂取に注意を要する.学校給食は,多様な食品を適切に組み合わせた栄養バランスのとれた食事であるが,リン含有量が多い.本症例では給食制限や個別対応は行わず,給食の栄養量と栄養素データをもとに,家庭内の食事献立を調節した.リン制限が負担にならないよう精神的にサポートしながら自立支援を行ったことで腎移植につなぐことができた.

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比較的田舎に住む老老介護で在宅を希望している70 歳代男性患者に対する栄養指導を行った.ポイントとしてもっとも大切なことは,透析食のハードルを下げ老夫婦にとって実行可能なものにすることである.そのためには,維持透析患者の食事摂取基準をベースに,患者のこれまでの食生活に足し算,引き算をして作られるオリジナルの透析食を提案することが必要となってくる.さらに,患者家族の生活や身体状況など,背景を十分理解し,状況に合わせた柔軟な指導および経過観察も必須となる.これは,場合によってはすべての項目を目標範囲内にコントロールすることに優先して,しっかり食べるための指導であることを意味する.

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保存期CKD の教育効果―FROM―J 研究の成果から 腎臓病戦略研究(FROM―J 研究)では,自覚症状のない早期,軽症のCKD 患者に対し,かかりつけ医において,血圧,血糖管理や生活習慣指導,食事指導を継続的に行い,腎臓専門医との連携を密接に行うことが,CKD 患者の受診を中断させず,CKD の重症化予防に貢献できるかを検証することを目的とした.全国から49 の地区医師会のかかりつけ医と,各地区の日本腎臓学会の専門医,そして生活・食事指導を担う管理栄養士が研究に参画し,2,417 名のCKD 患者が研究対象として参加した.「CKD 診療ガイド」に準拠して診療に当たる通常診療群と,CKD 診療支援として受診促進支援,目標達成度の外部評価を定期的に行い,継続して生活・食事指導を行う診療支援群の2 群の比較検討を行った.

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認知症は高齢になるほど発症する危険が高まり,透析患者においても認知症を合併する患者が増えている.認知症が進行すると通院が困難になり,日常生活や生命予後にも影響することが考えられる.しかし,認知症がある透析患者が在宅を希望することも少なくない.認知症の人が住み慣れた地域(在宅)で生活を続けていくためには,なんらかの生活支援が必要となる.しかし,管理栄養士だけで十分な情報を得て,解決することは難しい.そこで,ケアマネジャーなど地域で活躍する関係スタッフと連携し,在宅での生活を継続できるよう介護サービスを利用し,患者や家族の負担軽減に努め,支援することが必要である.

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魚沼医療圏は買い物,通院などに車が不可欠である.家事全般を担当している透析患者が,大腿骨転子部骨折をし,車いす生活となった.骨折前はカリウム制限やリン制限,塩分制限に対する食事の問題点があっても,本人のみへ栄養指導を行うことで検査データの改善ができていた.骨折後は家事に関して家族の協力は得られず,食事内容の偏り,摂取エネルギー・栄養素不足となり,低栄養が問題となりONS(経口的栄養補助)が処方されている.都市部に比べ,社会サービスの選択肢が少ない過疎地では,透析患者を取り巻く状況が深刻である.本人のみへの栄養指導では解決に至らず,家族を巻き込んだ指導が必要と考える.

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1990 年代は,透析患者にとって医療や福祉の面では日本経済の発展とともに優遇されてきたが,2000 年に入って以降は,少子高齢化時代に突入し,毎回医療費の見直しが行われてきている.透析医療も例外ではなく,年々高齢化の進むなかにあって医療と介護制度の両方を十分把握したうえで上手く日常の生活に活用することが求められている.一方で,患者自らも自己管理の重要性を認識し,栄養管理を行う必要がある.

OPINION

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第28回 日本サイコネフロロジー研究会

目次

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編集後記

基本情報

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臨牀透析
34巻11号 (2018年10月)
電子版ISSN:2433-247X 印刷版ISSN:0910-5808 日本メディカルセンター

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