臨牀透析 31巻6号 (2015年6月)

骨関節障害・CKD-MBDの概念を再考する

  • 文献概要を表示

リンは食品中のたんぱく質や食品添加物に含まれる.食品中のリンは,大部分が有機リンである.しかし,動物性たんぱく質は容易に加水分解されて消化管から吸収されるのに対し,植物性たんぱく質は分解されにくいため,動物性と植物性たんぱく質で有機リンの吸収率が異なる.また,リン酸塩は加工食品の添加物として広く用いられているが,ほとんどが無機リンなため,容易に消化管から吸収される(吸収率90%以上).したがって,加工食品の摂取が多い場合は,過度のリン摂取になりうることに注意する.一方で,リンは食材自体からの摂取が圧倒的に多いが,単純にたんぱく質摂取量を控えることは危険である.このため,個々の食生活を踏まえ,透析患者のリン制限を指導することが重要である.

CKD-MBD 新しいリン低下薬 秋葉 隆
  • 文献概要を表示

最近,慢性腎臓病のミネラル骨異常症の成因として,高リン血症の関与が大変重要であることが認識され,高リン血症の補正により,慢性腎臓病のミネラル骨異常症のみならず,心血管合併症や腎症の進展を防止し,心血管死亡や全死亡のリスクを低下させる可能性が指摘されている.このため,血清リン濃度のコントロールのためには,透析量の増加や食餌のリン制限が基本であるものの実現が難しく,リン低下薬の開発が求められている.本稿では,陰イオン交換樹脂系,金属系,そしてそれ以外のリン低下薬に分けて,近年の開発の状況を紹介する.残念ながら,十分に患者血清リン濃度をガイドライン目標値に達することのできる薬物はいまだ存在せず,今後の開発に期待がかかっている.

  • 文献概要を表示

FGF23(fibroblast growth factor-23)とKlothoが同定され,リン(P)代謝および慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常(CKD-MBD)発症の機序を考えるうえで,重要な役割を演じていることが近年の研究でわかってきた.FGF23の作用機序は,(1)近位尿細管でP再吸収を低下させる,(2)ビタミンD産生を抑制,(3)副甲状腺では副甲状腺ホルモン(PTH)の合成・分泌を抑制,これらにより血清Pを低下させる.Klothoは腎臓,副甲状腺,下垂体などの組織に発現しており,FGF23のFGF recepter(FGFR)と複合体を形成しFGF23の作用を発揮するために必須の因子である.FGF23は血清PやPTHの上昇がみられていない早期CKDステージより上昇がみられ,CKD-MBDの早期バイオマーカーとして期待されている.またP吸着薬の使用によりFGF23を低下させる報告があり,生命予後改善への寄与に期待されている.FGF23が高いにもかかわらずPの排泄率が低い患者の予後は悪いという報告があり,FGF23抵抗性が生命予後を予知するマーカーとなる可能性があり,これにはKlotho発現の低下が関与している可能性がある.

  • 文献概要を表示

慢性腎臓病(CKD)における骨・ミネラル代謝の異常は,長期的には血管を含む全身の石灰化を介して,生命予後にも影響を及ぼす病態として,全身性疾患として「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-mineral and bone disorder;CKD-MBD)」という概念でとらえられるようになった.わが国では2006年と2012年にガイドラインが発表されたが,これらのガイドラインは生命予後をoutcomeとして策定されている.本稿では,CKD-MBDガイドラインのoutcomeと診療マーカーの臨床的意義について概説する.

  • 文献概要を表示

CKD-MBDガイドラインでは,検査値の目標値は,生命予後に関する観察研究から予後が一番好ましい検査値の範囲で規定されている.しかし,糖尿病患者のコホート研究では低いHbA1cほど良好なアウトカムと関連していたが,無作為介入研究(RCT)で血糖値をintensiveに管理すると,むしろ死亡率が上昇した.この例のように,観察研究はいつも正しいわけでなく,介入強度を比較するRCTを施行しないと真実はわからない.つまり,検査値の目標値設定というパラダイムから,介入強度の比較というパラダイムに移るべきである.なぜなら,そもそも目標値は介入薬や介入方法によって違う可能性があるためだ.万一RCTができないなら,propensity scoreやfacility-level analysisといった洗練された解析手法を観察研究で使わなければならない.

  • 文献概要を表示

慢性腎臓病(CKD)患者は透析になる前の保存期からCKDに伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)を認めている.血液中のカルシウムの低下やリンの上昇は末期腎不全にならないと起こらないが,副甲状腺ホルモン(PTH)やFGF23の上昇および1,25(OH)2ビタミンDの低下はもっと早期から認められる.血管石灰化や骨の異常,副甲状腺の腫大も保存期から認めており,保存期からのCKD-MBDに対する治療は重要である.しかしCKD-MBDに対する治療はさまざまな問題点があり,どのように行うかはまだはっきりしていない.

スクレロスチン 浅宮 有香理

  • 文献概要を表示

血管石灰化は,透析患者において心血管イベントならびに心血管死亡の独立した予後規定因子である.そして,透析患者の血管石灰化には,カルシウム含有リン吸着薬内服によるカルシウムの過剰負荷や腎不全に伴う高リン血症が大きく関与する.炭酸ランタンを用いて血管石灰化の進展抑制効果の有無を定量的に評価した報告は少ない.われわれの検討では,リン吸着薬を炭酸カルシウムから炭酸ランタンへ変更することにより,血液透析患者の冠動脈石灰化の進展は有意に抑制された.透析患者の高リン血症治療薬として炭酸ランタンを使用することは,透析患者の有する血管石灰化に対し有利な効果をもたらすものと考えられる.

抗RANKL抗体をめぐって 鈴木 正司

  • 文献概要を表示

慢性腎臓病(CKD)患者において血管石灰化はありふれた合併症であるが,これが心血管病発症リスクを増大する.病理形態学的にはプラークの石灰化と動脈中膜石灰化に分類される.プラーク石灰化は急性冠症候群や慢性心筋虚血の原因としてもっとも重要である.一方,大動脈中膜石灰化も動脈剛性を高めるために慢性心筋虚血の原因となりうる.カルシウム非含有リン吸着薬はCKD患者の生命予後を改善することが次々に報告されている.その機序は未だ明らかではないが,動脈剛性進展抑制や心筋肥大因子であるFGF23の抑制による心筋虚血の軽減による可能性が示唆されている.

  • 文献概要を表示

骨リモデリングは成人の骨格で起こる一連の骨形成と吸収機構をいい,活性化→吸収→逆転→形成→休止の順で連鎖的に起こる.基本的形状が変わらず,成長により肉眼的レベルで骨の大きさが大きくなる過程をマクロモデリングといい,形状変化が光学顕微鏡レベルの骨梁でみられる場合,ミニモデリングという.この過程では活性化→形成→休止と休止期から骨吸収過程を経ずに骨表面に直接,層板骨形成がみられる.リモデリングとミニモデリングは組織学的にはセメント線の形状に違いがみられる.リモデリングでは先行した骨吸収を示す凹凸の吸収窩(scalloping)がみられるが,ミニモデリングではセメント線は平滑になる.透析患者においては骨リモデリング頻度の著しく低下した無形成骨の骨組織においてミニモデリングが認められ,骨量維持の一因となっている可能性がある.

  • 文献概要を表示

透析患者に大腿骨近位部骨折が多いことは間違いないようである.しかし,少なくとも近年においては透析患者の大腿骨近位部骨折は副甲状腺機能異常との関連が乏しい.実験腎障害動物では,腎機能が低下するだけで骨量やミネラル代謝とは無関係に長管骨の弾性力学特性が低下した.この弾性力学特性の低下は,腎機能が低下したままでも経口吸着薬で尿毒物質の血中濃度を低下させただけで一部レスキューされた.このような病態を,われわれは「尿毒症性骨粗鬆症」と命名した.尿毒症性骨粗鬆症の病態は,加齢に伴う骨粗鬆症像に酷似している.

  • 文献概要を表示

CKDが骨折の独立した危険因子であることが指摘されている.骨折リスクとして低骨密度,年齢,性別,骨折の既往,喫煙,飲酒などが知られている.CKDの場合これに加え,腎移植の既往,骨ミネラル代謝異常,代謝性アシドーシス,尿毒素,炎症性サイトカイン,ホモシステインなどが関与するとされ,その多くは直接的/間接的に骨質を劣化させていると推定される.CKDにおける骨折予防に対してはCKD-MBDの治療をベースに,骨粗鬆症に対して骨量増加作用をもつ薬剤を考慮するが,現行の治療のみでは十分であるとはいえず,新規治療の発展が望まれる.

  • 文献概要を表示

シナカルセト塩酸塩(シナカルセト)はビタミンD製剤やリン吸着薬と並んで,CKD-MBD治療に欠かせない薬剤として認識されるようになってきた.消化器症状や低カルシウム血症などの副作用が認められるが,投与方法の工夫や治療薬の投与によって副作用をしっかりと抑えられることもわかってきた.しかしながら,副作用の軽減がもたらされない症例やシナカルセト不応と考えられる症例も散見される.とくに不応例に関しては,その原因検索が重要と考えられる.現在,さらに副作用の少ない,さらに効力の増した次世代薬剤が開発中である.

  • 文献概要を表示

わが国ではシナカルセト塩酸塩(以下,シナカルセト)が使用可能になった2008年以降,二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)に対して副甲状腺摘出術(PTx)を施行する症例数は激減している.しかしながら,シナカルセトの副作用で内服が困難でPTxを施行する症例以外にシナカルセトに抵抗しPTxを必要とする症例の割合が増加している.シナカルセト抵抗性の指標としては日本透析医学会(JSDT)ガイドラインが示すPTH値>500pg/mLは妥当で,>300pg/mLであってもとくに高リン・高カルシウム血症を示す症例ではPTxが適応となろう.超音波検査(US)で腫大した副甲状腺を確認することは,PTxを選択する補助的要因となる.PTxは生命予後,QOLの改善,骨折の予防,経済性などに優れており,高度なSHPTに関して選択すべき治療法である.

  • 文献概要を表示

慢性腎臓病(CKD)患者における糖尿病性腎症や高齢化などの患者背景の変化に加え,二次性副甲状腺機能亢進症に対する治療技術の進歩により,線維性骨炎などの高回転骨の頻度は低下傾向にある一方,無形成骨などの低回転骨の頻度は増加している.無形成骨では骨折の増加や骨折治癒の遅延のみならず,血管の異所性石灰化などに伴う心血管疾患との関連も報告されており,CKD患者の生命予後の観点からも重要な病態と考えられる.近年,骨形成促進薬であるヒト副甲状腺ホルモン製剤(テリパラチド)が使用可能となったが,CKD患者における低回転骨への治療効果や安全性は十分解明されておらず,今後も低回転骨の予後改善につながる予防や治療法の確立が課題といえる.

基本情報

31-6_cover.jpg
臨牀透析
31巻6号 (2015年6月)
電子版ISSN:2433-247X 印刷版ISSN:0910-5808 日本メディカルセンター

文献閲覧数ランキング(
2月10日~2月16日
)