臨床雑誌内科 87巻5号 (2001年5月)

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1型糖尿病患者を対象とした米国の大規模臨床試験DCCT,2型糖尿病患者を対象とした我が国の熊本スタディ及び英国のUKPDSによって明らかとなった,糖尿病診療における問題点を概説した.1型糖尿病患者では,強化インスリン療法による厳格な血糖コントロールが細小血管合併症の発症進展を抑制し,かつ患者のQOL及び医療経済的立場から考えても実現可能で有効な手法であることが示された.又,2型糖尿病の治療においても,厳格な血糖と血圧のコントロールが同様に有効な手法であることが示され,厳格な血清脂質のコントロールにおいてもエビデンスがみえはじめている

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日本人と,日本人とは遺伝的に同一であるが出生時から高度に欧米化した生活環境にいる日系米人の,二つの集団の比較調査を通して,日本人のインスリン抵抗性の,主に環境因子に基づく特徴を述べた.今のところ,日本人は糖尿病におけるインスリン抵抗性の占める要素が日系米人に比べて少ない.しかし,年代別の脂肪摂取の増加や腹腔内脂肪面積で日米間に差がないという結果は,日本人が日系米人のインスリン抵抗性のパターンに近づきつつあることを示すものである

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近年,肥満,耐糖能異常,高脂血症,高血圧症等の代謝異常は,各々の異常は軽度であっても,複数合併した病態では動脈硬化性疾患が高頻度に合併することが明らかにされた.これらの代謝異常は動脈硬化の発症,進展と綿密な関係をもつ危険因子として注目されるようになった.このような危険因子の集積は,危険因子重積症候群と呼ばれる.これらは内臓脂肪症候群,Syndrome X,死の四重奏,インスリン抵抗性症候群などと呼ばれるものと,本質的には同じものである.各々の危険因子の関連性とその病態について概説した

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インスリン拮抗ホルモンである成長ホルモン,コルチゾール等の過剰状態では,インスリン抵抗性を示すことが多い.インスリン拮抗ホルモン過剰によりインスリン抵抗性を示す末端肥大症,バセドウ病,Cushing症候群における糖代謝異常等の病態について述べた

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糖尿病患者の予後に与える高血圧の影響で重要なことは,血圧の絶対値であり,たとえ高血圧の範疇になくても糖尿病性合併症の発症,進展に影響を与えることである.したがって,糖尿病患者における血圧管理は高血圧単独の患者よりも厳重に行う必要があると考えられる.高血圧の管理のガイドラインとして知られるJNC-VIや1999年WHO/ISHのガイドラインでは,同様に糖尿病患者の降圧治療は130/85mmHgの正常高値からを治療対象としており,治療目標は130/85mmHg以下を目指すように勧告している.とくに糖尿病性腎症を合併した患者では,治療目標をより低く設定し125/75mmHg未満としており,日常の糖尿病診療でも積極的な降圧治療が望まれる

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インスリン抵抗性の亢進とそれに伴う高脂血症,及びそれらに影響する因子について述べた.最近の動物モデルから得られた知見によると,脂肪組織は過剰或いは過少のいずれでも,インスリン抵抗性の亢進と脂質代謝の異常を生じることが示されている.インスリン抵抗性亢進に至る原因は異なっても,両者の臨床像は極めて類似している.これらの病態及び,現在進行しつつあるチアゾリジン誘導体の作用機序の解明を通じ,動脈硬化の主要な危険因子であるインスリン抵抗性の亢進やそれに伴う高脂血症の成因の理解,治療法の開発が進むことが期待される

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糖毒性は,インスリン抵抗性発症の初期段階から起こっており,膵β細胞を疲弊させるばかりでなく,様々な糖尿病性合併症の原因ともなっている.又,動物実験の結果からも,肝等のインスリン感受性臓器において,高血糖がインスリン抵抗性の増悪因子であることが確認された.つまり,糖尿病治療によって糖毒性の解除は必要不可欠であり,腎の尿細管に存在するNa・糖共輸送担体の特異的阻害薬であるT-1095は,糖尿病治療薬としての可能性がある

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急性期非塞栓性脳梗塞患者のうち,sodium ozagrelを投与した506例(男291例,女215例)を,投与後に順調に改善した417例をA群,一時的に神経症候が悪化したが最終的に改善した35例をB群,改善が認められなかった49例をC群として比較検討した.A群では動脈硬化が軽く,ラクナ梗塞であることが多いのに対し,C群では大半は主幹動脈の高度な硬化・狭窄であった.B群は,A・C群の中間の狭窄程度であった.薬剤投与を中止した症例は7例で,4例に出血性病変を認めた.sodium ozagrel投与後のADLの改善は良好であった

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症例は肥大型心筋症の52歳男で,息子が突然死したために心配となり精査目的で受診した.経胸壁心エコーにて,心室中隔膜様部に心室中隔欠損(VSD)の自然閉鎖と思われる右室に突出する心室瘤を認め,その内部に浮遊する血栓を認めた.心エコーの翌日,左背部の激痛が出現し,泌尿器科にて尿管結石と診断され消炎鎮痛薬の投与を受けて症状は改善した.2週間後に経食道エコーを施行したところ,心室瘤内部の血栓が認められなかった.そのため,左背部痛は心室内の血栓が末梢に飛んだために生じた血流障害による塞栓症状であると考えられ,warfarinの投与を開始した.腹部造影CTでは腎梗塞後と思われる所見が認められた.その後,腎機能の悪化はなかった

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症例は70歳女で,悪寒,戦慄を伴う発熱を主訴とした.腹部X線にて下痢に伴うと思われる大腸内の軽度ニボー形成を認めた.敗血症を疑い,血小板減少などからDICへの進展も考慮し,補液,ガベキサートを使用,抗生物質はFOM,SBT/CPZを使用した.その後,著明な白血球増加と左方移動,血小板減少の進行,CKの急激な上昇,腎機能の低下を認め,横紋筋融解症と診断した.腎不全への進行防止のため,血液濾過を開始した.血液培養から大腸菌が検出され,敗血症を伴う横紋筋融解症と診断した.入院翌日には解熱し,炎症反応も速やかに軽快した.以後の経過は良好で,CKや腎機能も正常化した

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症例は47歳男で頸部リンパ節腫脹を主訴とした.生検リンパ節の病理組織像は反応性リンパ節炎の像を呈し,トキソプラズマIgM抗体及びIgG抗体の増加を認め,トキソプラズマ初感染を疑った.sulfamonomethoxine,acetylspiramycinの投与を開始し,投与後10日頃よりリンパ節の縮小を認めた.4週間内服を継続した後に,投与を中止したが再発は認められていない.又,治療に伴いトキソプラズマIgM抗体は次第に低下した.又,リンパ節組織よりトキソプラズマ原虫特異的遺伝子(SAG1)を同定した

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症例1は強皮症の74歳女で呼吸困難を主訴とした.胸部単純X線にて両側肺底部に間質性陰影を認め,肺線維症の感染合併を考え抗生物質を投与したが,改善を認めなかった.その後,急速に腎機能が悪化し,心不全を発症した.MPO-ANCAが高値であったため,血管炎の合併を考え筋生検を施行したところ,小動脈のフィブリノイド壊死を認めた.メチルプレドニゾロンによるパルス療法を施行したが,死亡した.症例2は70歳女で,発熱を主訴とした.胸部X線にて両側肺部に間質性陰影と左下肺野の腫瘤影を認めた.MPO-ANCAの高値を認めた.筋生検で,筋束間に小動脈のフィブリノイド壊死を認めたため,血管炎と診断した.プレドニゾロン投与直後より,症状の改善を認めた

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症例は63歳女で痴呆と歩行障害を主訴とした.頭部造影CT及びMRIにて,脳室拡大と右尾状核の小梗塞を認めた.頭痛や嘔吐等の頭蓋内圧亢進症状が進行したため,脳室-心房シャント術を施行した.術後,歩行が可能となり,痴呆も消失した.術後4週後に全身痙攣が出現し,昏睡状態となった.頭部MRIで多発性に造影される腫瘍と髄膜を認め,髄液検査にて腺癌細胞が検出された.腺癌による髄膜癌腫症と考えられた.既往歴及び67Gaシンチグラフィで大腸に集積像を認めたことから,横行結腸癌によるものと診断した.その後,全身状態が悪化し,全経過2ヵ月で死亡した

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症例は46歳女で手足が動かしづらいことを主訴とした.臨床所見及び検査所見は全身性エリテマトーデス(SLE)の診断基準を満たしていた.頭部MRI検査では,脳全体の萎縮を認め,主病変は左レンズ核後方を中心に,下方では大脳脚を経て,橋まで錐体路に沿って進展し,上方では放線冠から半卵円に広がっていた.又,両側性に脳室周囲や半卵円中心に白質病変が多発していた.CNSループスを疑い,ステロイドパルス療法を施行した.ステロイド治療後,運動障害は徐々に改善し,検査所見の改善も認められた.ステロイド治療後の頭部MRI所見では,病変の縮小を認め,左側脳室体部後方にT1,T2強調像で不均一な高信号を呈する出血性変化と考えられる病巣がみられた

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症例は20歳女で,帯状疱疹髄膜炎に対しアシクロビル(ACV)の静脈内投与が開始された.第4病日には解熱し,頭痛等の症状も改善傾向にあったが,第8病日より右耳痛が出現し,第12病日より右顔面神経麻痺と共に舌の前2/3の味覚低下や唾液・涙液分泌低下が出現した.Ramsay-Hunt症候群の併発と診断し,ACVの静脈内投与を継続すると共に,第13病日よりプレドニゾロンとビタミン剤の経口投与を追加した.しかし明らかな改善を認めず,ACVを第15病日に経口投与に変更,第22病日に中止,プレドニゾロンも漸減して第20病日に中止し,以後ビタミン剤のみを継続した.第25病日,軽度の右顔面神経麻痺と帯状疱疹部の痂皮脱落後の掻痒感を残したまま退院となった.血清中の帯状疱疹ウイルス抗体価は64倍に上昇していた

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症例は55歳女で,肝腫瘍の精査目的で受診した.ALPの高値を認め,胸部CTでは肺野全体に散布する小粒状影が肺静脈に沿って分布していた.腹部USでは肝辺縁に低エコーの腫瘍を認め,右葉には腫瘍と接する肝嚢胞を認めた.単純CTでは肝臓辺縁を中心に瀰漫性の低吸収域を認め,MRIより腫瘍の増殖による嚢胞内の二次性出血を考えた.腫瘍の増大,進行を認めたため,肝生検を施行しepithelioid hemangioendothelioma(EHE)と診断した.IL-2+フルオロウラシルの動注療法を計6クール施行した.治療後,腫瘍の明らかな縮小は認めなかったが,増大傾向は認められなかった.現時点で腫瘍の増大傾向は認めていない

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症例は15歳男で止血困難を主訴とした.臨床症状,検査所見より急性前骨髄球性白血病(APL)と診断し,all transretinoic acid併用下顎療法を施行し,2コースで完全緩解が得られた.末梢血及び骨髄血におけるPML-RARα遺伝子再構成の消失も確認され,地固め療法第2コース目の造血回復後に末梢血幹細胞採取を行い,3コース終了後に自家末梢血幹細胞移植(auto-PBSCT)を施行した.移植後,サイトメガロウイルス再活性化による伝染性単核球症様症候群が発生し,γ-グロブリン製剤による治療を開始し,症状の収束を認めた.第66日目に退院となった

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症例は58歳男で,両側眼球突出と視力低下を主訴とした.頸部,腋窩,鼠径部リンパ節の多発性腫脹を認め,頸部リンパ節生検により悪性リンパ腫と診断した.表面抗原の検索の結果,CD5,CD19,CD20,HLA-DR,SmIg陽性のB細胞性リンパ腫であった.又,免疫組織学的にサイクリンD1の過剰発現が見られ,マントル細胞リンパ腫と診断した.hyperCVAD+高用量MTX/AraC療法を施行した.2コース終了時点で,視力の回復と視神経乳頭浮腫の著明な改善傾向が見られている.又,両側眼球周囲の腫脹と眼球突出の明らかな縮小も認めている

基本情報

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臨床雑誌内科
87巻5号 (2001年5月)
電子版ISSN:2432-9452 印刷版ISSN:0022-1961 南江堂

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