胸部外科 61巻13号 (2008年12月)

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手術時に胸腔洗浄細胞診を施行した原発性肺癌168例を対象に、細胞診結果と予後との関係を検討した。全例開胸所見で胸水や播種巣は認めなかった。細胞診陰性は156例(男100例・女56例・平均65.2歳:A群)、陽性は12例(男9例・女3例・平均62.3歳:B群)であった。組織型は、A群が腺癌110例、扁平上皮癌35例、その他11例、B群は順に9例、0例、3例であった。組織学的因子は、B群においてN因子でN1およびN2例、p因子でp2以上例が有意に多かった。再発はA群33例、B群8例に認め、B群で発生率が有意に高かった。再発形式は、A群が局所再発13例、B群が2例、遠隔転移はそれぞれ20例、6例で、有意差はなかった。B群の生存率はA群に比較して有意に不良で、同時期の悪性胸水陽性15例と同等であった。各予後因子による多変量解析を行ったところ、N因子と胸腔洗浄細胞診が独立した予後因子であった。

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69歳女。呼吸困難が出現し、急性僧帽弁閉鎖不全症による急性心不全と診断され、挿管・人工呼吸器管理を行った。薬物治療を開始するも改善せず、人工呼吸器から離脱できないため、第17病日に僧帽弁形成術を施行した。麻酔導入直後に気管チューブから大量の出血を認め、気管支ファイバー検査でチューブ先端付近の径3cmの炎症性肉芽からの出血を認めた。大量出血にてチューブ閉塞となり、経皮的心肺補助装置(PCPS)を導入した。気管チューブを分離換気チューブに入れ替え、片肺換気として止血を試みたが、肉芽自体に痰や血液が付着し粘稠となっており、肉芽でチューブ先端が閉塞して換気ができず、気管支ファイバーによる肉芽除去も困難であった。このため気管チューブを抜去して胃内視鏡を気管に直接挿入し、出血部肉芽を電気メスで焼灼止血しながらバスケットカテーテルで肉芽を除去した。その後再挿管を行ったところ換気可能となり、PCPSから離脱できた。全身状態改善を待って僧帽弁形成術および三尖弁形成術を施行し、術後経過良好で退院した。

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心臓血管手術後に上室性頻脈性不整脈が持続した12例を対象に、超短時間作用型β遮断薬landiololの低用量投与5例(男3例・女2例・平均73.2歳:A群)、高用量投与3例(男1例・女2例・平均68.3歳:B群)、プラセボ投与4例(男3例・女1例・平均74.8歳:C群)に無作為に割り付け、効果を比較した。A群のlandiolol投与量は0.01~0.02mg/kg/分、B群は0.04mg/kg/分とした。治験薬投与終了後に20%以上の徐拍化、心拍数100回/分未満を達成した改善例は、C群0例、A群4例、B群2例で、有害事象や副作用はなかった。心拍数は、C群は投与直前平均131回/分から投与終了時134回/分と大きな変化はなかったが、A群は133回/分から98回/分、B群は124回/分から97回/分と有意に減少した。心係数は、C群は平均4.3%の減少であったのに対し、A群は9.6%、B群は13.2%と有意に減少した。1回拍出量は、C群は4.4%減少、A群は24.0%の有意上昇、B群は12.8%の上昇を示した。

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71歳男。感冒症状後に胸部圧迫感を自覚し、近医での造影CTで心嚢内腫瘤を指摘され当科紹介となった。マルチスライスヘリカルCTで心嚢内左側に辺縁に石灰化を伴う9.5×7.3cmの腫瘤を、心カテーテル検査で左冠状動脈回旋枝(LCX)に発生した冠状動脈瘻と合併する巨大冠状動脈瘤を認めた。左室造影像で冠状動脈瘤内への血流が造影され、その際に左室憩室の合併も判明した。開胸術を施行し、心膜内の腫瘤を切開したところ、内腔に径1.5mmの交通孔が2ヶ所存在した。1ヶ所は術前の冠状動脈造影像でのLCXからの流入口と一致し、これを縫合閉鎖した。他方の交通孔は左室後壁へ連続しており、左室流入部は憩室様に瘤化し、ほぼ全体が左室心筋内に埋没していた。この憩室様瘤を剥離切開し、左室への開口部を縫合閉鎖した。最後に瘤部分の縫縮縫合閉鎖を行った。術後経過良好で、第22病日に独歩退院した。

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症例1:76歳女。労作時呼吸困難が出現し、心エコーで大動脈弁狭窄症(AS)と診断された。手術待機中に心不全が悪化して人工呼吸管理とカテコラミン投与を要し、全身状態改善後に大動脈弁置換術(AVR)を施行した。頻脈性不整脈の予防目的にlandiololを麻酔中から1μg/kg/分で開始し、術後上室性頻拍が出現したが、5μg/kg/分までの増量で洞調律に復帰した。徐脈出現に対しては減量・中止で対処し、経過良好で第15病日に退院した。症例2:71歳女。労作時息切れを自覚し、心エコーでASと診断された。AVRを施行し、人工心肺の離脱は問題なかったが、ICUに移動後心室細動から心停止を来たした。再開胸して心臓マッサージを行い、大腿動静脈から経皮的心肺補助(PCPS)を確立した。心機能は徐々に回復して第2病日にPCPS離脱し、心拍数コントロール目的にlandiololを3μg/kg/分で開始して第5病日まで使用した。頻脈性不整脈や致死性心室性不整脈は認めず、リハビリ後に退院となった。

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60歳女。血痰を主訴とした。胸部X線で右上肺野に辺縁不整な浸潤影を認め、CTでは右肺上葉S2に23×13mmの結節を認め、胸膜陥入像および周囲のスリガラス影を伴っていた。下葉への浸潤や播種の所見はなく、縦隔条件では結節内部に血管集束像を疑う所見を認めた。18FDG-PETでは右肺上葉S2にSUV max 6.06の高集積を認めた。気管支鏡所見で気管支内腔に異常はなく、擦過細胞診および洗浄細胞診も陰性であったが、肺癌の可能性を否定できず、開胸術を施行した。腫瘍は周囲との癒着があり、穿刺吸引細胞診で悪性細胞は認めなかったが、肺癌完全否定には至らず、右肺上葉切除を行った。摘出標本で腫瘍内に1cmの針状の硬い異物を認め、硝子質化された骨様物質であり、魚骨と考えられた。病理所見で腫瘤は多数のリンパ濾胞と不規則な血管増生、線維化を伴った慢性炎症を背景とする肉芽組織であり、悪性所見は認めなかった。術後は問題なく、術後8日目に退院した。

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上胸部の陥凹が著しい成人漏斗胸に対する乳輪切開法を用いた筋層下Nuss法の手技を紹介し、本法を施行した漏斗胸患者8例(男・平均28.6歳)の成績を報告した。漏斗胸の程度は全例grade IIで、1例は再手術であった。乳輪外側に半円状に3cmの切開を加え、皮下脂肪組織を乳腺組織外側で切開し筋膜上に達した。前方に向けて大胸筋を剥離し、肋間筋を切除して胸腔内に入り、エンジンジャッキ等を用いて前胸壁を挙上し、前胸壁を軟らかくした。術中、bar挿入時に困難はなく、固定は肋骨に非吸収性のテフロン含浸ダクロンブレード縫合糸を用い、4ヶ所で行った。全例に術後良好な前胸壁の挙上が得られ、術前に認めた心臓および肺の圧迫は解除された。術後のbarの位置異常はなく、乳輪切開を用いることにより、手術創はほとんど目立たなかった。

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74歳男。呼吸困難を来たし、心エコーで大動脈弁逆流4度、左冠状動脈洞拡大を認めた。CTでは左冠状動脈洞は31×35mmの瘤を形成し、冠状動脈造影では左前下行枝と回旋枝の分離起始が判明した。開胸術を施行し、左冠状動脈洞の突出部位に二つの冠状動脈入り口部を認め、一つにまとめて径12mmの冠状動脈ボタンとしてくり抜いた。次いで冠状動脈ボタンと径10mmのGelweave人工血管を吻合した。右冠状動脈入口部も同様にボタンにくり抜き、径8mmの人工血管と吻合した。左冠尖弁輪部は拡張しており、三尖の中心部のコアプレーション不良を認め、大動脈弁を切除して人工弁と人工血管を大動脈弁輪に縫着した。人工弁はCarpentier-Edwardsウシ心嚢膜弁23mmを、人工血管はValsalva洞構造を持つGelwear Valsalva 28mmを用いた。人工血管のスカート部分遠位端に2ヶ所側孔を開け、冠状動脈ボタンと吻合した人工血管の中枢端をそれぞれ吻合した。術後経過は良好である。

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49歳女。2年前に労作時息切れを自覚し、慢性閉塞性肺疾患の診断で加療されていたが、心臓超音波でValsalva洞動脈瘤を指摘され当科紹介となった。心カテーテル所見で無冠状動脈洞から生じた巨大なValsalva洞動脈瘤を認め、無症状であったが瘤破裂の危険性を考慮して開胸術を施行した。Valsalva洞動脈瘤は心内腔と接しない心外型で、人工心肺確立、心停止後に上行大動脈を横切りし、無冠状動脈洞に20×15mmの瘤口を認めた。ウマ心筋パッチを用い、5-0プロリン糸の連続縫合で瘤口を閉鎖した。人工心肺からの離脱は容易で、術後は順調に経過し、CTで瘤の血栓塞栓を確認した。

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15歳男。生下時より感冒時に喘鳴を認め、気管支肺炎の診断で入退院を繰り返していた。中学生時には嚥下時違和感を自覚し、高校進学後は運動時の強い呼吸困難と過換気症状を呈し、嚥下困難の増悪を認めた。精査のため呼吸器内科を受診し、呼吸機能所見で1秒率の低下、閉塞性障害を認めた。食道造影で左右後方に外部からの圧迫による強い狭窄像を認め、胸部MRIでは上行大動脈が左右の大動脈弓に分岐し、気管・食道をリング状に取り囲んでおり、重複大動脈弓と診断した。大動脈弓は右が径16mm、左が14mmであった。開胸術を施行し、左大動脈弓を左鎖骨下動脈分岐部末梢、動脈管索末梢で遮断した後、離断して両断端を連続二重縫合で閉鎖した。離断後も換気障害が残存したため、さらに動脈管索を切離した。術後4日に退院し、労作時呼吸困難、嚥下障害は改善し、1ヵ月後の呼吸機能検査で1秒率の改善を確認した。

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69歳女。31歳時に甲状腺癌で甲状腺亜全摘を施行されていた。感冒症状を自覚し、他院でのCTで右肺S5に14mmの境界明瞭な結節を指摘され経過観察されていた。約1年後、24mmと増大を認めたため紹介受診した。血液生化学検査、腫瘍マーカー、甲状腺機能に異常所見はなく、骨シンチグラムでは集積を認めなかった。右原発性肺癌を疑い、手術施行となった。胸腔鏡で胸腔内観察し、右肺中葉に結節を同定した。胸水は認めなかったが、胸腔洗浄細胞診はclass IVであった。中葉部分切除術を施行し、腫瘍は境界明瞭で、迅速病理結果は砂粒小体を伴う腺癌であった。摘出標本は境界明瞭な白色、充実性の腫瘍で、病理組織学的には乳頭構造を持つ腺癌であり、免疫染色ではTTF-1陽性、サイログロブリン弱陽性で、甲状腺癌肺転移と診断された。術後経過良好で第6病日に退院した。その後残存甲状腺全摘、リンパ節郭清術を受け、リンパ節に再発を認めたが、残存甲状腺には病変を認めなかった。今後アイソトープ治療を予定している。

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68歳男。咳嗽が出現し、近医胸部X線で右上肺野に異常影を指摘され紹介となった。血算、生化学、腫瘍マーカーに異常値はなく、呼吸機能検査では閉塞性換気障害を認めた。CTで右上葉S1に気管に隣接する最大径4.5cmの充実性腫瘤を認め、一部は上大静脈に接していた。気管支鏡検査でも確定診断できず、縦隔浸潤肺癌疑いとして手術を施行した。アプローチは、縦隔浸潤が存在した場合の術野展開の容易性と、閉塞性換気障害合併に対する呼吸筋損傷回避の必要性から胸骨正中切開とした。胸腔鏡で胸膜播種や縦隔浸潤は認めず、迅速病理結果は大細胞癌疑いで、右上葉切除+縦隔リンパ節郭清を行った。創痛は軽度で、呼吸器合併症はなく順調に経過し、術後10日に退院した。その後再入院してcarboplatin+paclitaxelの化学療法を施行し、術後3ヵ月の呼吸機能検査では閉塞性換気障害は認めたが、機能低下は軽度であった。術後8ヵ月に多発肝転移を認め、追加化学療法を施行中である。

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生後32日女。在胎中より胸水を指摘されており、出生時Apgarスコア1/7で、挿管後NICU入室となった。胸部X線で右胸水を認めたが、ドレナージで状態は回復し、気管内チューブも抜管できた。胸水は淡黄色で、蛋白質は血清値の1/2以上、細胞診では90%以上のリンパ球を含み、先天性乳び胸と診断された。MCTミルクによる治療が開始され、いったん乳びは減少したが、生後28日頃より再度増加し、胸腔鏡下手術を施行した。貯留していた乳びを吸引し、胸腔内に胸管、リンパ管、乳びの流出などは認めず、縦隔面にフィブリン糊3ccを重層法で散布し、手術終了とした。術後一般用乳児ミルクに変更しても乳びの貯留はなく、7日目に胸腔ドレーンを抜去し、54日目に退院した。その後も再発はない。

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生後14日女。生後2日より多呼吸、四肢冷感が出現し、チアノーゼ、呼吸状態悪化を来たして人工呼吸器管理となった。心臓超音波で大動脈弓離断症B型を認め、これに伴うductal shockと診断された。Alprostadil alfadexによる加療でいったん改善したが、生後12日に乏尿、心不全症状悪化が生じ、再度のductal shockで手術適応となった。胸部X線では心拡大、肺血管陰影の増強がみられ、心臓超音波では大動脈弓離断症の他、膜性部心室中隔欠損症(VSD)、心房中隔欠損症(ASD)を認めた。一期的根治術を選択し、動脈管組織を切除した後、上行大動脈と下行大動脈を直接縫合した。次いで右房を切開し、VSDパッチ閉鎖、ASD直接縫合閉鎖を行った。術中より無尿となり、右房へ直接カテーテルを挿入して持続的血液濾過透析を開始した。徐々に循環動態は安定し、腹膜透析に変更して術後18日目に終了、84日目に退院した。術後9ヵ月に吻合部での圧較差を認め、経皮的バルーン血管形成術を施行し、経過観察中である。

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52歳男。検診で胸部異常影を指摘された。血液生化学検査、腫瘍マーカーに異常はなく、呼吸機能検査では軽度の拘束性障害を認めた。X線で左主気管支透亮像内に円形の腫瘤影を認め、CTでは左主気管支内に内腔をほぼ閉塞する径1cmの円形腫瘤陰影を認めた。気管支鏡では気管分岐部より7~8軟骨輪末梢側に、気管膜様部を下にして右壁に茎を持つ隆起性腫瘤を認めた。生検で悪性所見は得られず、気管支原発の良性腫瘍として開胸術を施行した。腫瘍は左主気管支の中央付近に膜様部から容易に触知でき、同部を1軟骨輪楔状に切除し、断端を端々吻合した。病理所見で、腫瘍は粘液様の間質の中に好酸性の細胞質を持つ細胞が、結合性のゆるい胞巣を形成して増生していた。細胞質はPAS染色陽性を認め、免疫染色ではS-100蛋白陽性、アクチン、NSE、クロモグラニンA陰性であった。病理診断は気管支由来の腫瘍、多形腺腫であった。経過良好であり、術後9年で再発徴候はない。

基本情報

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胸部外科
61巻13号 (2008年12月)
電子版ISSN:2432-9436 印刷版ISSN:0021-5252 南江堂

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