循環器ジャーナル 66巻2号 (2018年4月)

特集 Structural Heart Diseaseインターベンション—「新しい」インターベンションのすべて

序文 林田 健太郎
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 近年,Structural Heart Disease(SHD:心構造疾患,もしくは構造的心疾患)に対するインターベンションが脚光を浴びつつある.これは従来広く施行されてきた冠動脈インターベンションに対し,「心臓の構造異常」に対するインターベンション,つまり別のジャンルとして捉えられている.

 しかし,これは必ずしも新しいものではなく,例えば1984年にわが国の井上寛治先生が開発され現在世界標準となっている僧帽弁狭窄症に対する経皮的僧帽弁裂開術(percutaneous transvenous mitral commissurotomy;PTMC)1)や,肥大型閉塞性心筋症(hypertrophic obstructive cardiomyopathy;HOCM)に対する経皮的中隔心筋焼灼術(percutaneous transluminal septal myocardial ablation;PTSMA)2)は比較的古くから行われてきた.また心房中隔欠損症に対する閉塞栓の治療などは,欧米では比較的早期から導入されている.

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Point

・大動脈弁通過血流速度が4m/sec未満の症例にclass Ⅰの治療適応はない.

・症状が大動脈弁狭窄症(AS)によるものなのかを慎重に検討する必要がある.

・二尖弁やリウマチ性ASに対するTAVIの有効性は確立していない.

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Point

・PARTNER1 trialでは開胸が不可能である患者に対するTAVIの有効性とハイリスク患者へのTAVIがSAVRと比べ非劣性であると証明した.また,CoreValve US pivotal trialではハイリスク患者でのTAVIがSAVRに対して有意に死亡率を下げることが証明された.

・PARTNER2 trialやSURTAVI trialで開胸中等度リスク患者へのTAVIがSAVRと比べて死亡脳梗塞において非劣性が証明された.

・2017年のESC/EACTSガイドラインではTAVIとSAVRの選定に当たる推奨ラインが75歳と以前のガイドラインよりも若年に明確に定義された.

・開胸低リスク患者へのTAVIとSAVRを比較したPARTNER3 trialが行われ終了し,結果が期待されている.

・日本の現状ではTAVIの適応は開胸がハイリスクもしくは不可能な患者となっているが,中等度リスク患者への適応拡大が望まれる.

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Point

・大動脈二尖弁症例へのTAVIは,新世代デバイス(Sapien 3, Evolut R, Lotus valve)の使用により,三尖弁大動脈弁狭窄症に対するTAVIと同等の結果を得ることができる.

・大動脈二尖弁症例へのTAVIの成績は,主にレジストリーからの報告であり,適応には,ハートチームによる個々の症例に応じた適切な判断が必要である.

・大動脈二尖弁へのカテーテル人工弁とそのサイズ選択には,確立された方法はなく,supra-annulusの面積,周囲長,短径・長径,commissural lengthなど,aortic valve complex全体の解剖を考慮して決める必要がある.

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Point

・経カテーテル大動脈弁植込み術(transcatheter aortic valve implantation;TAVI)前の冠動脈完全血行再建は議論のあるところ(少なくとも,必須とはいえない).

・冠動脈ステント留置術(percutaneous coronary intervention;PCI)を先行すると,抗血小板薬2剤併用療法(dual antiplatelet therapy;DAPT)下にTAVIを施行することになり得,TAVI周術期の出血性合併症のリスクが懸念される.

・植込み時に高頻拍ペーシングが必要となるバルン拡張型のEdwards Lifesciences社 SAPIENは,XTから3に進化したことで,前拡張の必要性が乏しくなった.また自己拡張型のMedtronic社CoreValve/Evolut-Rはそもそも高頻拍ペーシングが必要でない.つまり現在の新世代人工弁を用いた洗練されたTAVIストラテジーでは,意図的な血圧低下,冠血流低下時間が極めて短く,冠動脈狭窄のインパクトが小さくなっている.

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Point

・腎機能障害はTAVI施行患者における短期ならびに長期予後における死亡の独立規定因子である.

・腎機能障害はAKIの発症予測因子であるだけでなく,AKI自体が短期および長期予後における死亡を増加させる因子である.

・術前のスクリーニングにおいてMRIは造影CTとほぼ同等の測定結果であり,代替として使用可能である.

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Point

・Frailty(フレイル)はTAVI術後の予後と相関する.

・TAVI患者の適応にはFrailtyを考慮する必要がある.

TAVI後CTと至適抗血栓療法 柳澤 亮
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Point

・TAVI後の4DCTにより検出される無症候性血栓症が問題視され,TAVI後レジメンの見直しの必要性といった大きな問題に波及している.

・至適抗血栓療法を模索するべく無作為化比較対照試験や観察研究が現在多く進行している.

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Point

・医療経済評価(費用対効果評価)とは,比較対照との比較で追加効果と増分費用とを同時に分析・評価するもので,計算された値を増分費用対効果比(ICER)と呼ぶ.

・TAVIに関する費用対効果評価は国内外で実施されており,適応対象の患者集団において費用対効果が良好との報告が公表されている.

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Point

・MitraClipの適切な患者選択を検討するうえで,欧米における治療の現状とエビデンスを知ることは重要である.

・EVEREST Ⅱ試験は外科手術可能のMR例を対象とし,MitraClip群は外科治療に比し再手術が有意に多い結果であった.

・同試験は,高齢,機能性MR,EF60%未満の例では,外科治療とMitraClip治療の成績は同等であること,器質性MRの例では外科手術の成績が優れることを明らかにした.

・欧州の多施設レジストリでは高齢,機能性MR例を治療対象の主体とし,高い手技成功率とQOL改善が示されている.

・MitraClipはMR合併心不全の重要な治療選択肢として期待されるが,現時点では生命予後改善を示すデータはなく,今後の知見が待たれる.

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Point

・MitraClipは積極的治療介入が難しかったfunctional MR治療に存在するunmet needsを解消する選択肢として期待される.

・心不全症状改善や左室の逆リモデリングなどは示されているが,生命予後改善に関してはさらなるエビデンスの蓄積が待たれる.

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Point

・僧帽弁閉鎖不全症は最も頻度の高い弁膜症疾患であるが,手術適応のある患者の半数近くが手術に至っていない.

・MitraClip治療の位置付けは,手術がハイリスクな器質性MR症例への治療であると確立されつつある.

・MitraClip治療の適応となる患者スクリーニングには,経胸壁心エコー検査が重要である.

・長期成績においては,初期にMR再発を認めなければ術後5年間は手術と同等の効果を得られる.

Ⅲ.先天性,その他

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Point

・カテーテルを用いた構造的心疾患治療が広まるなかで,経皮的弁膜症治療以外のclosure device(閉鎖栓)を用いた治療が増えつつある.

・カテーテルによるデバイス留置で修復可能な成人先天性心疾患は,主に心房中隔欠損,卵円孔開存,動脈管開存であるが,このほかにも頻度は少ないが心室中隔欠損,大動脈肺動脈窓やバルサルバ洞動脈瘤破裂など緊急治療を要する疾患もある.

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Point

・心筋梗塞後心室中隔欠損に対する治療は外科手術が第一選択ではあるが,疾患そのものが重篤であること,手術侵襲が大きいことから臨床成績は不良であり,手術そのものが行われない症例もある.

・海外の一部ではAMPLATZER閉鎖栓による経カテーテル治療が積極的に行われている.

・筆者らは適応外使用として数例治療を行っており,その経験も提示する.

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Point

・肺動脈血栓内膜摘除術(PEA)の適応にならないすべての症例がバルーン肺動脈形成術(BPA)の適応となりうる.

・病変の首座を考慮して治療を行えば,BPAはPEAに並ぶ根治的治療となることが期待される.

・BPAは致死的な合併症を起こすこともあり,誰もが試みるべき手技ではない.

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Point

・薬剤抵抗性閉塞性肥大型心筋症に対しては積極的に中隔心筋縮小術を積極的に行うことが症状の消失とQOL改善に確実に結びつく.

・外科的中隔心筋切除術と経皮的アルコール中隔心筋焼灼術(PTSMA)の良好な治療成績が報告されている.

・良好な治療成績を得るには詳細な画像診断を行い閉塞の原因を評価することが重要である.

・術中に超選択的心筋コントラストエコーを用いることで,有効かつ安全な治療成績が得られる.

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Point

・溶血性貧血や心不全を来した人工弁周囲逆流に対する治療は,外科的再手術のほかに近年では経カテーテル人工弁周囲逆流閉鎖術が行われるようになっている.

・経カテーテル人工弁周囲逆流閉鎖術は人工弁周囲逆流の位置によっていろいろなアプローチのしかたがある.

・経カテーテル人工弁周囲逆流に用いられるデバイスはほとんどオフラベルデバイスであり,今後のさらなる専用デバイスの開発が求められる.

Ⅳ.新しいインターベンション

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Point

・奇異性脳塞栓の再発予防に対するPFO閉鎖術の有効性が最新の3つの論文によって確認された.

・米国では2016年10月にFDAの承認を受けており,国内での早期承認が期待される.

・治療適応の判断には脳卒中医と循環器内科医との緊密な連携が必要である.

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Point

・心原性の脳梗塞予防において,欧米でカテーテルによる左心耳閉鎖デバイスが開発され臨床応用されている.

・脳梗塞ハイリスク,出血ハイリスクの心房細動患者が同デバイス治療の対象患者になる.

・手技の成熟,術者の成熟,デバイスの改良によって,より安全確実に手技が行われるようになってきている.

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Point

・治療抵抗性高血圧に対する腎除神経術(腎動脈アブレーション)は高血圧患者に対する新しい治療として注目を浴びている.

・しかしながらSymplicity HTN-3試験においては有効性を示すことができなかった.

・新しいデバイスを用いることで腎動脈アブレーションの有効性を示す報告もあり,また様々な臨床試験も現在進行中であることから,今後の展望が期待される領域である.

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Point

・僧帽弁閉鎖不全症(mitral regurgitation;MR)および三尖弁閉鎖不全症(tricuspid regurgitation;TR)に対する経カテーテル治療は,主に手術リスクの高い患者の治療オプションとして登場してきた.

・経カテーテル治療は,既に確立している外科的治療法を多少変更したものであることが多い.カテーテルによるデバイス治療はこれら外科的治療をより少ない手技リスクで真似て行うというのがコンセプトである.

・本稿では,僧帽弁および三尖弁に対する新しいカテーテル治療につき,最新のエビデンスと今後の展望をまとめる.

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基本情報

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循環器ジャーナル
66巻2号 (2018年4月)
電子版ISSN:2432-3292 印刷版ISSN:2432-3284 医学書院

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