Hospitalist 7巻2号 (2019年6月)

特集 総合内科のための集中治療

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森羅万象に歴史があるのは当然のことである。昔と今はそれなりの意味があってつながっている。時には伝承があり,時には改革があり,それぞれに理由がある。歴史を知ることはその意味で重要であると考える。

 医学も同様であるはずだが,集中治療において歴史はそれほど重要視されてこなかったかもしれない。しかし,今の日本の集中治療医学をみると,本当に歴史を知ることは無駄ではないと実感する。現在地を確かめ,これから進むべき方向を読み解くことができるはずである。令和になってこのポイントが転換点かもしれないと思っている。

Part 1:集中治療の基礎知識

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日本のICUをみると入室疾患,重症度は多様で,医師のかかわり方もまちまちである。その結果,さまざまな形態のICUが運営されている。一方で,どのような形態のICUが患者予後を改善するのか,どのような管理をすればよいかに関してはあまり議論されてこなかった。そこで本稿では論点を整理し,ICUの在り方を今一度考えてみたい。

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院内迅速対応システムRapid Response System(RRS)は,入院患者の病状変化を早期にとらえ,適切な対応ができるチームを派遣し,患者を安定化させるためのシステムである1)

 本稿では,日本で広まりつつあるこのRRSの概念と,誰がどのようにかかわっていくべきかについて概説する。

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ICUでは医学的側面だけでなく,倫理的側面から治療方針の決定をする必要がある。患者や家族の希望は刻一刻と変化する。変化に対して常に気を配り,必要に応じて話し合いを何度も設け,希望の変化に柔軟に対応する。

 本稿では,この倫理的側面に関して集中治療医の立場から解説する。

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集中治療を受けるような重症患者は,人工呼吸器や体外循環での管理が必要であったり,あるいは,てんかん重積発作をもつなど,“鎮静”が望ましいとされる状況に常にある。重症患者を管理する際は,“鎮静”は切っても切り離すことができないといってもよいだろう。しかし,集中治療を専門とする医療従事者にとっても,“鎮静”に関してベストな判断を下すことは容易ではないのである。

 現に“鎮静”そして“鎮痛”,さらには“せん妄”の話題は,2013年に改訂されたPADガイドライン1)が発表された頃から,急速に集中治療の世界に広がったといっても過言ではない。その前身であるガイドライン2)は2002年に発表されてはいたが,広く浸透することはなかった。「とりあえず鎮静」という考えが蔓延していた時代であり,「鎮痛をせずに鎮静を行う」「不穏患者は鎮静する」という考えを,多くの医療従事者がもっていたことは否めない。しかし,2013年に灯ったPADへの関心により,鎮痛first,せん妄予防への理解が深まり,重症患者管理のケアは進化を遂げた。そして2018年には,PADISガイドライン3)として大きくアップデートされた。この領域は,ことさら関心の高まっている分野であり,集中治療を専門としない医療従事者にも理解を深めていただきたい。

 本稿では,症例を提示し,PADISガイドラインを中心に,鎮痛・鎮静・せん妄の概要について,CQに答える形で解説する。

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低酸素脳症〔低(無)酸素・虚血性脳症〕とは,循環不全や呼吸不全などが原因となり,脳への十分な酸素供給が障害された病態を意味する。低酸素性虚血性脳症hypoxic-ischemic encephalopathyともよばれる。組織への血流量の低下,つまり「虚血」を意味する場合と,血液の酸素運搬能の低下,つまり「低酸素血症」を意味する場合の2つの病態が混在することが多い。心停止,各種ショック,窒息などが原因となる。

 本稿では,成人の低酸素脳症の発症機序,その後の管理について,最新の知見を交えて解説する。

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人工呼吸器管理は,機器を用いたICU治療としては最も代表的なものである。しかし一般内科医にとっては用語がわかりにくいなどから,敬遠しがちである。本稿では基本的な人工呼吸の考え方と管理法について,ARDS症例を例に解説する。

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人工呼吸器管理からの離脱にあたっては,人工呼吸器管理が必要となった原因が除去あるいは対処されており,また全身状態が安定していることが前提となる。循環不全や腎不全による代謝障害は,呼吸管理,特にCO2管理に密接に関与しており,十分にコントロールされていることが望ましい。これらの前提条件が達成された場合に,人工呼吸器管理の総仕上げである人工呼吸器離脱の最終プロセスに進むことになる。本稿では,その人工呼吸器管理のフィナーレである「人工呼吸器離脱」について概説する。

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Hospitalistの読者の多くは内科系医師であると思われる。そのような医師にとって気道確保とは,マッキントッシュ型喉頭鏡による気管挿管とほぼ同意である。そのため,困難気道とはその気管挿管が難しい症例であり,困難気道管理difficult airway management(DAM)とはその対策と考えておおむね問題はない。気道確保の方法には,気管挿管以外にいくつもあり,正確には,そのおのおのの手技に関連した困難がある。本稿では,DAMによる気道確保について概説する。

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個別の臓器によるのではなく,全身の問題を評価,診断し介入しなければならないという点において,総合内科と集中治療は実は非常に近い領域であるといえる。幅広い視点で診断,治療を考えることができる総合医が,重症患者の診療に必要な「酸素の需要と供給」にかかわる基本的な技能と考え方を有していることは,重症患者の診療にあたり非常に有益であろう。

 2000年前後に心肺蘇生のシミュレーショントレーニングが普及して以降,外傷,産科救急,内科救急などの救急集中治療領域において,各種のシミュレーションコースが行われてきた。それらは,この酸素供給の確保という基本的な考え方を共有している。気道・呼吸・循環・意識を評価し介入する,いわゆるABCDアプローチとよばれる考え方である。

 本稿では,総合医がこの酸素供給にかかわる手技・考え方を習得するのに役立つシミュレーショントレーニングについて紹介する。

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2000年代初頭にNIV(非侵襲的換気療法)が爆発的に普及した。2010年代に,やはりHFNC(high-flow nasal cannula)が爆発的に普及した。両者をどう使い分けるかが現在のビッグテーマである。ともに比較的扱いやすいデバイスであるが,それぞれ特長と限界をもつ。本稿では,CQに即してそれらを整理する。

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急性呼吸促迫症候群(ARDS*1)は,ICUにおける最も死亡率の高い疾患群であり,医学が大きく進歩しているにもかかわらず現在でも重症ARDSの死亡率は40%と非常に高い1)

 ICUにおいて人工呼吸器管理が行われる患者の1/4はARDSといわれているが1),そもそもARDSという疾患概念が曖昧で,国際的な定義2)は「ARDSとは何か?」に答えてくれるものではない。また,ARDSそのものを根本的に改善させる治療法は発見されていないなか,治療において重要なキーワードは「肺保護換気」となり,常に人工呼吸器による換気と患者自身の呼吸が肺を傷つけないように管理することが求められる。

 本稿では,このとらえにくいARDSの診断・治療についてホスピタリストが知っておくべき内容をまとめた。日常のARDS診療の一助としてほしい。

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循環にはさまざまな指標があるが,単一の指標だけでは判断できず,それぞれに限界があり,何を使えばいいのか統一されていないことが多いと思われる。ICUにおける循環管理ではどのような点に注意すればよいのだろうか?

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2016年に敗血症の新しい定義(Sepsis-3)が,2018年には1時間バンドルが新たに発表され,世界的に敗血症をめぐる状況は大きく変化してきている。本稿では,国内の現状をふまえ,従来の敗血症の定義から大きく変わった点を中心に解説する。

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栄養療法とその周辺領域に関して,近年多角的な視点で研究が数多く報告されている。“If the gut works, use it!”の表現に集約されているように,重症患者の栄養療法は経腸栄養(EN*1)が主役であり,臨床でも広く実践されている。しかし,どれくらいの栄養量を,どの時期から,何を目標に行えばよいのか? については明確な解答は得られてはいない。残念なことに,ENを行うことが死亡率の改善に寄与するという研究結果はない。一方でENのメリットは期待しているほど大きいものではなく,静脈栄養(PN*2)を上手に実践することで,今まで懸念されていた合併症などに差はない,つまりPNが見直され始めているような潮流も,新しい研究結果1, 2)からは感じられる。

 栄養療法の有効性に関するエビデンスが乏しいとしても,overfeedingや合併症を避け,さらなる栄養不良を最小限にとどめることは重症患者に対する治療の一環として実践すべきである3)。本稿では重症急性膵炎の症例をもとにポイントをまとめる。

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はじめに対照的な2つの症例を提示する。いずれも既往歴のない40歳の男性に生じた急性腎障害(AKI*1)であるが,2症例のマネジメントは大きく異なる。そもそもAKIは腎機能の低下のみによって診断され(表1),その成因を問わない。したがってAKIの臨床像は症例によって大きく異なり,1つの治療方針で対応することは極めて難しい。そのためAKIに対してさまざまなクリニカルクエスチョン(CQ)が未解決のまま残っている。

 本稿では,AKI診療において多くの臨床医が悩むであろうCQに対して現在の知見を解説する。

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すべての患者に重症管理を必要とするICUでは,さまざまな病態に対するさまざまな輸血が求められる。なかには不適切とも思われる輸血が行われるケースも散見され,その要否を的確に判断するのは容易ではない。

 本稿では,ICUで遭遇する代表的な疾患を念頭に,血小板減少や凝固線溶異常の鑑別,そして適切な輸血療法のあり方〔赤血球製剤・新鮮凍結血漿(FFP*1)・血小板製剤〕について概説する。

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感染症で発熱は重要な症状である。しかし,発熱があるから感染症とはいえない。そこで,本稿では発熱から感染を疑うのはどのようなときであるか,さらに対応として解熱すべきか,熱が治療効果の指標となるかなどについて解説する。

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CQ:ICUではインスリンドリップを用いて厳格に血糖を管理したほうがよいか?

CQ:ICUでの血糖の管理目標は?

CQ:敗血症性ショック患者では相対的副腎不全を診断・治療すべきか?

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ICU管理の向上により合併症は減少しているが,ひとたび合併症を起こすと死亡リスクは上昇し,入院日数が長期化するなど不利益を生じるため,いかに予防するかが重要である。予防方法によっては,益よりも害が大きいものもあり,全患者に行えばよいというものではない。

 本稿では,①〜⑥の6つの予防についてとり上げ,それぞれの介入の益と害について解説し,適切な予防法について考えていきたい。

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集中治療の進歩により,ICUから生存退院する患者が増加した。超高齢社会に突入し,ICU患者数も増加を認めるなか,ICUから生存退院した患者の長期の認知機能,身体機能,メンタルヘルスの障害が問題視されるようになり,PICS(post intensive care syndrome)とよばれ注目を集めている。長期的なQOLの向上こそが集中治療の次なる目標であり,そのために日々の診療においてどのような点に気をつけなければならないのかを考える。

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PICS(post intensive care syndrome)を予防するためには,PICSのリスクを軽減することが大切である。PICSに進展し得るせん妄の減少や,人工呼吸器管理期間の短縮が証明された方法を,日々の臨床のなかで確実に実践していく必要がある。PICS予防のエッセンスは,画期的な治療法や治療薬でなく,日々のごく普通の診療,ケアのなかに隠されている。

 敗血症の治療,人工呼吸器関連肺炎や消化管出血の予防など,集中治療分野にはいくつかの「バンドル」が存在する。バンドルは「束」という意味で,有効性が示されている方法を複数組み合わせ,実践することで,その実施率を高め,良好なアウトカムを達成する仕組みである。PICSの予防には「ABCDEFバンドル」がある。

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2004年4月より卒後研修(臨床研修)が義務化されたが,研修プログラムの運営や実施体制は各医療機関の裁量に委ねられているところが大きい。さらには,臨床研修における客観的アウトカム指標は確立されておらず,教育内容は医療機関によってさまざまである。その結果,研修医のスキルにも大きな差が生まれているのが現状である。

 このような現状において,研修医教育の標準化および質向上は喫緊の課題である。NPO法人日本医療教育プログラム推進機構Japan Institute for Advancement of Medical Education Program(JAMEP)では,それらの課題解決を目指し,研修教育の支援活動を実施している1)

 本稿では,なかでもHospitalist読者の方にも関心が高いであろう基本的臨床能力評価試験について紹介する。

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1. Dapagliflozin and cardiovascular outcomes in type 2 diabetes. N Engl J Med 2019;380:347-57. PMID:30415602

[研究デザイン]

第Ⅲb相多国籍多施設二重盲検プラセボ対照無作為化試験

[背景・目的]

2型糖尿病において,糖尿を促進するNa/グルコース共役輸送担体2(SGLT2)の阻害薬であるダパグリフロジンの安全性評価は定まっていない。動脈硬化性心血管疾患を有するまたはそのリスクのある2型糖尿病患者において,ダパグリフロジンがプラセボと比較して主要心血管イベントを減少させるか検証する。

[対象]

心血管疾患リスクまたは心血管疾患の既往(虚血性心疾患,虚血性脳卒中,末梢動脈疾患)のある40歳以上の2型糖尿病患者〔HbA1c 6.5〜12.0%,クレアチニン・クリアランス(CCr)≧60mL〕。心血管疾患リスク:男性≧55歳,女性≧60歳の患者で次のいずれかを1つ以上有する。[高血圧,脂質異常症(LDL>130mg/dLまたは脂質降下薬の使用),喫煙](33か国882施設,登録開始2013年4月25日〜最終解析2018年9月11日)

[介入・方法]

基準を満たした患者は4〜8週の間に組み入れられ,単純盲検(検者盲検)の導入期間に全員プラセボを内服し,採血と尿検査を行った。導入期間後も基準を満たしている患者を,ダパグリフロジン10mgを内服するダパグリフロジン群とプラセボ群に1:1に無作為に割り付けた(隠蔽化あり,患者-検者盲検)。

[プライマリアウトカム]

安全性評価項目:心血管死亡,心筋梗塞,虚血性脳卒中で定義される心血管イベント(MACE)の複合アウトカム。有効性評価項目:①MACE,②心血管死,心不全による入院の複合アウトカム(ITT解析)

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目次

次号目次

基本情報

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Hospitalist
7巻2号 (2019年6月)
電子版ISSN:2433-510X 印刷版ISSN:2188-0409 メディカル・サイエンス・インターナショナル

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