地域リハビリテーション 13巻11号 (2018年11月)

特集 教育機関へのリハビリテーション職の支援

西脇 恵子
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 障害の重度・重複化,多様化に対応するために学校教育の中でリハ専門職の役割が注目されています。これまで学校は教員以外のかかわりが少ない所でしたが,近年,支援学校の自立活動教諭での参加という形でリハ専門職が学校の中で活動することが増えてきました。

 本特集では,PT・OT・STの各専門職のこれまでの取り組みと教員との連携について紹介し,今後の発展につなげたいと思います。

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はじめに

 文部科学省の調査によれば,30人クラスに在籍する中には,おおよそ2人の児童生徒に発達障害があるとされている1)。これらの児童生徒への対応は,学校教育上,喫緊で大きな課題であることはいうまでもない。一方,発達障害に関しては,2004年12月10日に発達障害者支援法(法律第167号)が制定され,翌年の2005年4月に施行され,その後2016年5月にその法律の一部が改正された2)3)

 こうした中で,文部科学省は,「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」(2003年)と中央教育審議会報告「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」(2012年)の両報告において,質の高い教育的対応を支える人材として,PTやOTをはじめとするリハセラピスト等の外部専門家を広く活用して障害に応じた適切な教育を行う必要性があることを提言した4)5)

 従来,特別支援教育への外部専門家の活用におけるPT,OTの役割は,肢体不自由を主としていた。しかしながら,特別支援教育における外部専門家のかかわりは,肢体不自由ばかりではなく発達障害を含むすべての子どもたちが,その対象となるだろう6)

 本稿では,これまでの主として肢体不自由特別支援学校などの教育機関へのリハ専門職の支援の在り方を概括する中で,特別支援学校や発達障害のある子どもたちを含め今後のリハ専門職の役割についてPTの立場から述べていきたい。

 本稿の構成は,1.はじめに,2.特別支援教育におけるリハ支援の歴史的変遷,3.特別支援教育における教育的理学療法の定義とその位置づけ,4.リハセラピストによる外部・内部専門家としての支援について,5.まとめ,6.おわりに,とした。

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はじめに

 「水曜日はゼロティーさんの日!」−筆者が勤務していた京都市の某特別支援学校で,担当していた児童がよくこんな声をかけてくれた。その児童は,OTの文字を見てどうやら「ゼロティー」だと思ったようで,こんな面白い勘違いもあるのかと感心させられた。今にして思えば,訪問や巡回といった形態ではなく,(週に1日程度とはいえ)学校の一スタッフとして継続的に児童生徒とかかわっていたからこそ,このようなフレーズを聞くことができたのかもしれない。

 一般に,特別支援学校は障害種別ごとに編成される場合が多い。これに対して,京都市の特別支援学校では,8校のうち4校が,障害種別を超えて,児童生徒が居住地域に近い学校で学ぶ総合制・地域制を採っている。このため,学校の名称も特別支援学校ではなく,「総合支援学校」とされる。約1,100名の児童生徒が市内の総合支援学校に在籍し,そのうちの約7割が地域制の総合支援学校に通学している(2018年時点)1)

 筆者は,週に6時間という契約で,特別非常勤講師(いわゆる外部専門家)として地域制の総合支援学校に勤務していた。本稿では,その経験を踏まえて,特別支援学校教育におけるOTの役割や立ち位置について私見を述べる。まず,国内の特別支援学校教育に携わるOTの現状を概観したあと,筆者自身がOTとして特別支援学校教育にどのように関与したかを赤裸々に紹介し,そこから得た知見を共有することにしたい。

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はじめに

 子どもは生まれてすぐに親からの養育を受け,親子の触れ合いやコミュニケーションを通して愛着や信頼感が育まれ,ことばを覚え,人間関係が形成されていく。その後,保育園・幼稚園に入ると,他者と生活を共有し,集団生活への適応が図られていく。そして就学後は学業が深められ,大人になって社会に出ていくための準備をしていくのである(図1)。

 このように子どもは家庭を中心として育ち,学校などに所属するようになると日中の多く時間をそこで過ごしている。そのため,学校などでのきこえやことば・コミュニケーションの問題は,子どもの生活や学習に少なからず影響を及ぼすことになる。

 従来学校においては,特殊教育として障害のある子どもへの対応が行われてきた。2007年には特別支援教育がスタートし10年余りが経過しているが,その間にリハなどの専門家が学校にかかわるようになってきた。本稿では言語聴覚士(ST)の立場から,特別支援教育におけるリハ専門職の役割について概説する。

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はじめに

 群馬県は,緑が豊かで,水がきれいで,温泉やスキー場がたくさんあり,自然に恵まれており,近年その独特な郷土の特徴が注目をあびている。

 郷土の特徴となる文化の1つに「上毛カルタ(じょうもうかるた)」がある。群馬県民の多くが44枚すべてを暗記しているほどだ。小さい頃から親しむことで,群馬県の風土,名所,歴史的人物,観光スポットなどを自然に学べる。「ら」の札は,「雷と空風,義理人情(らいとからかぜぎりにんじょう)」と言う。「雷と空風」は,群馬県には多く発生する雷と,冬に山から吹き下ろす乾いた強い風(からっかぜ)を表す。「義理人情」は,このような厳しい気象条件の中で育まれた上州人の県民性を表していると感じる。

 「かかあ天下(かかあでんか)」という言葉もある。これは,「うちのかかあは(働き者で)天下一」と言われている。郷土芸能である八木節には,「男度胸は上州気質,女愛嬌は上州娘(おとこどきょうはじょうしゅうかたぎ,おんなあいきょはじょうしゅうむすめ)」という謡い文句もある。

 そんな群馬県が,筆者は大好きだ。

巻頭言

リハ患者体験記 堤 孝子
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 2年前に交通事故に遭い,救急車で搬送された。幸い,命に別状はなく,寛骨臼骨折で整形外科入院となった。約2カ月の入院と告げられ,職場を離れることへの不安が大きかったが,腹をくくってここで仕事をしようと考え,個室を希望した。自ら望んだことではないが,命に別状がなく,予後に大きな課題を残すこともないこの受傷という現実を,私は楽しむことにし,ここから私の楽しいリハ患者体験が始まった。

 主治医にPTであることを伝え,大まかなリハ計画を自分で作成し,その計画と治癒を一致させることが私の目標となった。恥骨,坐骨,仙骨の骨折による,屈筋・内転筋など股関節周囲筋群の痛みと筋力低下が主症状であったが,痛みによる緊張・恐怖・逃避姿勢などは,本人にしかわからない貴重な体験であり,セラピストに最も配慮してほしい症状であった。痛みというものがこれほど運動機能そのものを低下させてしまうものだとは,体験しないとわからないものだ。約1週間は体位交換に介助が必要であったが,これも介助技術と配慮が大きく影響する。介助者により,患者側の痛みの発生や緊張感の度合いがこれほど違うものかと腹が立ったり感謝したり,毎回の体交も楽しみになってきた。

Book Review

発達障害の作業療法 永井 洋一
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 最初に,本誌は筆者にとって首を長くして待ち望んでいた出版物の1つである。なぜなら,法律によって定義される「発達障害児・者」に対する作業療法のかかわりについて包括的に述べたものがなかなか見当たらなかったからである。企画された編集委員諸氏にまずもってお礼を申し上げたい。

 本増刊号を読者に推薦する理由はいくつかあるが,第一に対象者の年齢が幼児期から成人まで広範囲にわたっていることが挙げられる。今回の増刊号では大学生への支援や就労支援に関していくつかの事例も含めて取り上げられており,この分野で孤軍奮闘しているOTにとっては熟読する価値のある記事となろう。

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 以前,ハウステンボスを設計した池田武邦氏の卒寿(90歳)の祝で対談を行ったことがある。その時に,「人生の先輩として,これからどのような生活をしていこうとお考えですか?」と聞いてみた。すると,返ってきた答えはなんと,「学び,新たなことを研鑽できるような毎日を過ごしたい!」であった。これには,とっても驚かされた。以来,筆者はこのようなスーパー老人のことを“高貴高齢者”と呼んではどうか!と提案したくらいである。

 今回紹介する本『地域リハビリテーションと私』の編著者こそ,まさに「高貴高齢者」の一人であり,関係諸氏は誰もが尊敬している澤村誠志先生87歳である。

連載 脳卒中慢性期のリハビリテーションメソッド 起き上がり編・第5回

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 前回は起き上がりの際に麻痺側下肢を降ろせない症例について,運動系からの評価と介入方法の例を紹介した。寝返りの際と上体を起こす際の2つの場面が課題として挙げられ,それぞれにて脊柱,背面筋,腹部筋,骨盤・股関節が機能的にどう働くか,降ろせない場合の評価や介入の方法を紹介した。第5回目となる今回は知覚・認知系からの評価と介入の方法を考えていきたい。

連載 高次脳機能障害者のための脳機能アッププログラム・第11回

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 今回は,「DDクッキーの製造」について職員のきんちゃんと私(ちずさん)が解説し,「受注発送作業」を職員のムーランさんが解説します。

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はじめに

 平成会(以下,当会)は1999年に設立され,長野県の中南信地域で41の介護事業を運営する社会福祉法人である。実施する事業は特別養護老人ホームや介護老人保健施設等の大規模事業所をはじめグループホーム等の地域密着型施設,また訪問・通所の在宅系サービスに至るまで規模や形態はさまざまである(表)。

 施設サービスでは,在宅生活が困難となった人が,質の高い支援体制の中,豊かな日常生活が継続できる高機能施設の役割を担う。2015年の介護保険制度の改正では,特別養護老人ホームの入所基準が原則要介護3以上になるなど,今後,介護保険施設の重度化は加速的に進むことが見込まれ,中重度者に対応した高度なケアを提供する体制づくりが必要不可欠となっている。今回,平成会のシーティング・チームの立ち上げの経緯と2事例について報告する。

連載 そうだったのか!地域リハビリテーション活動支援事業・第11回

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表:地域リハビリテーション活動支援事業の,地域ケア個別会議と住民運営の通いの場について,リハ専門職が何をすべきか,少しわかった気がします。残りの訪問や通所についてもポイントを教えてください。

裏:訪問,通所というと,訪問リハや通所リハをイメージしますよね。

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はじめに

 介護・終末期リハビリテーションにおけるポジショニングは,個々の状態に合わせた姿勢や動作の管理が必要となります。褥瘡予防,摂食・嚥下,呼吸の管理は,それぞれ内容は異なりますが,姿勢管理や動作,環境という意味では共通点も多く,多職種が連携・協働することで対象者のADL・QOL維持・向上につながると思われます。本稿は,対象者の生活環境を視野に入れた介護・終末期リハビリテーションにおけるポジショニングに必要な視点と考え方を紹介します。

連載 神奈川県立特別支援学校での内部専門家としての専門職の活用・第5回

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高等学校の現状と神奈川県の取り組み

 平成21年に文部科学省1)が行った報告によると,通常の学級に在籍する中学校3年生のうち,発達障害等困難のある生徒の割合は約2.9%であり,そのうち約75.7%が高等学校に進学するとしている。併せて,表1のとおり,彼らの進学先の課程・学科には偏りが見られることが指摘されている。

 高等学校に対する支援を行う際に小中学校とは異なる課題として挙げられるのが,義務教育ではなく自分で学校を選んで入学試験を経ていること,そして,単位の取得が進級や卒業の必須条件であり,学業成績の評価の基準がより厳正を期されることである。そうした理由もあり,中学校までは合理的配慮として認められていたものが,そのまま高等学校でも同じように認められるとは限らないのである。また,たとえ生徒が自分自身の抱える困難さに支援の必要性を感じていたとしても,他者の目を気にして支援を申し出ること自体がより難しくなっている場合もあることが指摘されている2)

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基本情報

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地域リハビリテーション
13巻11号 (2018年11月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1880-5523 三輪書店

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